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「このラーメンを食べ終えたら、いつものところに行こう」

作者: おりん
掲載日:2026/08/18

「このラーメンを食べ終わったら」



食券を買う。


テーブル席に案内される。


広は・ふつう・多め・濃いめ


冴子は・固め・少なめ・ふつう


「広はいつも、それだね」


「いろいろ考えるのが面倒だから」


「ふーん」


冴子は言い、つづけて、


「もしかして、あたしといるのもいろいろ考えるのが面倒だから?」


「そんなことない。冴子といるのは安心したいから。会っていつもとおなじか確かめたいから」



よく見かける女性店員がラーメンを持ってきた。


「おまちどうさまです。・ふつう・多め・濃いめです」


「こちら、・固め・少なめ・ふつうです」



広はレンゲでスープを飲んだ。


「今日の冴子は機嫌が悪い」


「なんで?」


冴子はレンゲでスープを飲んだ。


「ふだんの冴子なら、麺を固めにしない。固めにするのは、決まってなにかに気を悪くしているときだ」


「ホントに?」


「機嫌がよいときは脂を多めにする」


「えー!嘘だ」


「嘘だ。そんなこと、冴子をひとめ見ればわかる」


「なんだ。じゃあ、何で気を悪くしているのかわかる?」


「30歳の誕生日にいつものラーメンに来たから。もしかして僕が冴子の誕生日を忘れているかもって思っている」


広は麺を啜った。


冴子は麺を啜った。


「このラーメンを食べ終わったら、いつものところに行こう」


広は、ほうれん草を箸でつかんで食べて、


「わからない?」


と、冴子を誘った。


冴子は、ほうれん草を箸でつかんで食べた。


広はレンゲでスープを飲んだ。


冴子はレンゲでスープを飲んだ。


「でもあそこはいま暗いわよ」


「構わないだろ?」


「うん」




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