だってぞんびだもん!
あたしってば、ついさっき、トラックに撥ねられて死んだはずだってのに当たり前みたいに立ち上がって痛みも感じない。
もしかしたら、あれは夢だったのかもしれないなんて思うけれど、視線を動かせば、腕と足が地面に転がっていた。
なんとなく、直感的に、拾わなきゃって思った。拾ったってくっつく保証なんてないのに、ただ、拾わなきゃって思った。
まるで虫けらみたいに地面を這って、右手を回収した。けれども左足はちょっと遠い。こうしている間にまた、ほかの車に撥ねられるかもしれない。急がないとと鈍い頭が考えている。
なんだか変な感じだ。
悲鳴みたいな声も聞こえる。
右手を使えば少しは速く動けるかも。
右手を元あった場所に近づけると、なんとなくくっついた気がする。
これなら左足もくっつくかも。
そのまま這って左足を目指す。
よくまあこんなに飛ばしてくれたわね。って思うくらい左足が遠く感じる。
それでも右手がくっつく前よりは速く先へ進む。
声がなにかを言っているけれど、内容がわからない。まるで外国語を聞いている気分だ。
うるさいな。
中身がわからない声って、普通に聞くよりずっと気分が悪い。
やっとの思いで左足に辿り着く。
くっつくかなと左足があった辺りに近づけるとくっついたっぽい。
よいしょ。と立ちあがろうとするとふらふらした。
うまくバランスが取れなくて尻餅をついてしまう。
くっついたばかりだから仕方がない。
もう一度、少し弾みをつけて立ち上がる。
今度はなんとか立てた。
そして辺りを見回してみる。
あたしを撥ねたトラックは電信柱に突っ込んだらしい。先っぽがぺっしゃんこになっているトラックが見えた。
ざまぁみろ。
こっちだって手足が吹っ飛んで大変だったんだから。
トラックを嘲笑っていると、周りにたくさんの視線があることに気がついた。
なんだろう。人がたくさんいる。
なにか光ったり、よくわからない言葉を発したり。
あれ、なんだっけ? 知ってる気がする。
ああ、そうだ。
シェアしなきゃ。たくさん見てもらうために。
あれがないとシェアできない。
たくさん人がいて、みんなあれを持ってるからどれかを貰えばいい。
いちばん近くにいたあたしと同じくらいの背丈の子。近づこうとするとあれをこっちに向けたまま後ろに下がっていく。
甲高い声でなにかを言っているけどうるさい。
もう黙ってよ。
右腕で振り払おうとしたら腕が抜けてその子の頭にぶっかった。
あーあ、くっついたばかりだから外れやすいのね。
でも丁度いいや。
右手を拾うついでにあれを貰う。
シェアしなきゃ。
シェアってなんだっけ?
まあ、いいや。
とりあえず、なんか光るやつ。
よくわからないけれど表面を指でなぞると見た目が変わる。
あ、あたしが見える。
うっわー、顔色わっる。
まあ、手足が吹っ飛んだばっかりだから仕方ないか。
どっちかっていうと奇跡の生還って感じ?
なんか凄そうだからシェアしないと。
なんか指で触ってると、一瞬あたしが止まってまた動く。
これなんだっけ?
ああ、シェアするやつだ。
どうせならもう少しかわいくしたい。
どうやるんだっけ?
知ってるはずなのによくわからない。
周りの声がうるさい。
たくさん光ってる。
あれ? あたし今ものすごく注目されてる?
そりゃあそうだよね。奇跡だもん。
腕またくっついたし。
そうだ、せっかく有名になるんだからサービスしないと。
なんだっけ?
ほら、一緒に光ってシェアするの。
近くにいたあたしより背の低い人に近づくと、やっぱり後ろに下がってく。
せっかくサービスしてあげようとしてるのに。
まあ、いいや。
あたしはあたしでシェアしないと。
さっきどうやったっけ?
そうだ、指で触るとあたしが止まる。
これなんていうんだっけ?
だいぶコツが掴めてきた気がする。
止まったあたしに触れると、止まったあたしがたくさん並ぶ。
かわいいの選ばなきゃ。
全部顔色悪いけど。
「ミサ!」
声がする。
よくわからないけどその音だけ聞き覚えがある気がした。
音のした方を見れば、あたしと同じくらいの背の子が、よくわからない言葉を並べている。
変なの。
あの子だけあれを向けてこない。
少し近づいても後ろに下がらない。
あ、そっか。
一緒にシェアしたいんだ。
もちろんサービスしてあげる。
「ミサ」
もう一度知ってる音がする。
シェアしようとあれを向ける前に、突然その子があたしを抱きしめた。
なに?
よくわからない。
でも動けないくらいぎゅっと抱きしめて、知らない言葉を並べるその子の目は少し濡れている気がする。
どうしていいのかわからない。
たぶんこーゆー時にすることがあった気がする。
なんとなく、左手がその子に伸びる。
なんだろう。
こうしなきゃいけない気がして、背中をトントンと叩いた。
そしたらその子は驚いたようにあたしを見て笑う。
またミサって音がした気がした。
なにを言っているのかわからないのに、その子の音は悪い気がしない。
なんだっけ?
よくわからない。
でも、この子とシェアしないと。
あれを構える。
そしたら、その子の手があたしの手に重なって、代わりにあれを指で触れた。
あたしたちが止まる。
なんか、いい顔してる気がする。
あたしは顔色悪いし、あの子の目は濡れてるのに変なの。




