叶わない恋なら諦めましょう
***BL*** 血の繋がらない兄様が好きだ。叶わないなら、離れてしまった方が良い。 ハッピーエンド
彼にとって、僕はいつまで経っても弟で、この恋を諦めないといけないと思う。
何度も何度もアピールしたけど、弟以上にはなれないなら、、、
**********
私の母は、身体の弱い人だった。とても綺麗な人で父は母を愛していた。
父と母は幼馴染で、若くして結婚をした。
お互い、十五歳だった。
身体が弱いのに、どうしても父の子供を産みたくて、妊娠し、出産は長い時間を掛けた。私が産まれた時はみんな喜んだそうだ。
母は、私が三歳の頃亡くなった。
今でも葬儀の日の事は、何となく覚えている。
冷たい雨。
皆の黒い服、黒い靴、黒い手袋、黒い帽子、黒い傘。
全てが黒で統一された淋しい日だった。
雨が降るから、辺りも暗く、色の無い世界だった。
それから七年経ち、私が十歳になると、父は新しい母を連れて来た。彼女には七歳の子供がいた。
彼も三歳の時、父親を亡くしたそうだ。
だから、彼が自分の分身の様で、愛おしく感じた。
新しい母と父は、仲が良かった。
彼女は優しかった。私は彼女も弟も大好きだった。もちろん本当の母の事も。
二人が結婚して、新しい命が産まれた。男の子だった。鳴き声が力強くて、生命力に溢れていた。
私と弟は、一番下の弟を大切にした。小さな弟は、誰が見ても可愛かった。
*****
高等部に上がる前、私は突然、三歳下の弟と血が繋がらない事に気が付いた。
一番下の弟は父の子だった。でも、アウレーリオとは母親も父親も違った。
血が繋がらない、、、。それでも、彼は私の大事な弟だ。
アウレーリオは、繊細な子供だった。肌の白いブロンドの髪。私とイヴァーノは父親譲りの黒髪だった。
いや、初めてアウレーリオに会った時、血が繋がらない事は漠然と分かっていた。ただ、十歳の私に、そんな事は関係無かった。
可愛い可愛い弟だったんだ。
**********
僕の兄様は、いつも格好良かった。女の子にもモテたし、男友達も多かった。
僕は、兄様を取られたく無くて、いつも兄様にくっついていた。
「ダメだよ!僕の兄様なんだから!」
「近寄らないで!僕の兄様だよ!」
そう言っては、兄様と親しく話す友達を引き離した。
「君は弟に好かれているね」
と兄様の友人に笑われたけど、僕は本気だった。
でも、兄様が高等部に通う様になると、僕との距離が広がった。
兄様の友達が大人に見えて、僕は子供だった、、、。
僕は兄様といつも一緒にいたい。でも、兄様は友達を選ぶ。
だから、沢山我儘を言った。
「行かないで!僕と遊んで!」
すると兄様は僕も一緒に仲間に入れてくれた。
だから、僕はいつも良い子でいようとした。
だって、兄様に好かれたかったんだ。
初めて会った時、兄様は確か十歳。すごくお兄さんに見えた。新しい父様よりも優しくて、格好良かった。僕はただそれだけで、兄様を好きになった。
僕がこの屋敷に来た時、兄様は僕の手を繋いでくれて、見知らぬ場所で緊張した僕に、優しくしてくれた。
*****
この好きの種類が分からなかった。兄弟に対する好きなのか、特別の好きなのか、、、。
でも、ある日、兄様が女の子と二人きりでいる所を見た時、理性を失った。
嫌だと思った。
僕の兄様に近づかないで!
瞬間、そう思いながら、これが恋だと気が付いた。気付いてしまったんだ。
僕は僕の恋心を、兄様に気付かれないようにしながらも、本当は気付いて欲しかった。
*****
それから僕は更に良い子を演じた。
「兄様、お帰りなさい!」
兄様の隣はいつも僕の場所だった。小さな弟が兄様の隣に座ろうとすれば、僕は良い子のフリをして、イヴァーノを膝に抱く。
夕食の時間は兄様の話しが聞ける。父様が、子供達に1日の報告をさせるから。僕は兄様の学校の話しを聞くのが大好きだった。
夜の勉強の時間は、二人で机に向かう。兄様は僕の集中力が落ちると、少しだけ勉強以外の話しをして、それからまた続きをするように促す。
分からない事を聞けば、丁寧に教えてくれるから、僕は勉強の時間も好きだった。
しかも、この時間だけはイヴァーノに邪魔される事は無かった。僕と兄様の二人きりの時間。
勉強が終わると、母様が二人に紅茶を入れてくれる。その頃にはイヴァーノは布団で寝ているから、ゆっくり紅茶が飲める。
週末は、勉強が終わると兄様と夜更かしをする。
兄様の部屋に行き、兄様の布団の上で眠くなるまで本を読む。
兄様は小説をずっと読み続け、僕はその横で昔兄様が読んだお薦めの本を読む。
そして、力尽きる様に二人で眠る。
嵐の夜は、二人で部屋を暗くして、窓から雷を眺める。遥か遠くの稲光りが綺麗だった。
大雨の日も、二人で窓から外を見る。
兄様は本を持ち寄り、窓辺で読書を始めてしまうけど、僕は吹き荒れる風に樹々が揺れるのを見てばかりいた。
今、思えば、兄様との時間は誰よりも長かった。
**********
アウレーリオは、いつもニコニコしていた。全身で私を好きだと言っている。
私は彼が好きだった。
可愛いアウレーリオ、でも、私達は兄弟で、私は兄だった。
だから、この気持ちは隠すしか無かった。
彼は屈託無く私に抱き付く。いつも、私の隣に隙間無く座り、イヴァーノを膝に乗せる。彼をあやしながら、私の顔を見る時の笑顔は愛らしい。
勉強時間も彼は熱心で、分からない事は直ぐに聞いて来る。二人だけの時間は、とても穏やかで心地良かった。
この時間がいつまでも続くとは思わない。
分かっているのに、それを自ら手放す事は出来なかった。
アウレーリオが高等部に上がる一年前。
彼は寮のある学校に行きたいと言い出した。
何故、、、?
アウレーリオの事が好きな、イヴァーノは反対した。家族がわざわざ離れ離れになる必要は無いと怒った。
「なんで?!どうしてそんな所に行きたいのっ!」
六歳のイヴァーノに責められ、アウレーリオは小さく笑った。
ただそれだけだった。理由は言わない。
理由を言わない為、両親も直ぐには認める訳にもいかず、一時保留となった。
私はアウレーリオの部屋に行く。ノックをしても返事は無かった。
部屋にいない様なので、自室に戻る事にした。
部屋に戻っても、頭の整理が追いつかない。
**********
来年は、高等部に入学だけど、僕は兄様とは違う学園に、進学する事にした。
そして、出来るだけ此処から遠い場所を選ぶんだ。
寮があれば尚良い。
遠く離れて、兄様を忘れたかった。兄様に対する気持ちを捨てたかった。
同じ学園に進んでしまえば、きっと辛い思いをする。
叶わない恋なら、諦めるしか無い。
僕は、兄様を諦める為に寮に入りたかった。
中等部の先生に、寮のある学園の話しを聞いた時、僕はそこに入れれば、と思った。
先生に学園名と住所を教えて貰う。
「入寮しても、長期休暇には帰る事になる」
と言われて、少しがっかりした。夏の休暇は3ヶ月もある。毎年、此処に帰って来る事になるのか、、、。
それでも、毎日兄様と顔を合わせるよりかは、良いかも知れない、、、。そう思って父様の部屋をノックする。
「入りなさい」
緊張しながら、扉を開ける。
「アウレーリオ、どうした?」
僕は父様の机の前まで進み
「進学の件で相談したくて」
と言った。
父様は動かしていた手を止めて、部屋の真ん中にある椅子に掛ける様に言った。
僕は椅子に座り、暫く待つ。
父様がペンを置き、椅子から立ち上がり、向かいに座る。
「どうしても寮に入りたいのかい?」
「はい」
「アウレーリオは、私に遠慮をしているのかな?」
「遠慮?」
「君だけが私と血が繋がっていないから、、、」
「あ、、、」
誤解させてしまった。
「違います。そうじゃないんです」
「それなら、何故?」
「寮生活をしてみたいんです」
「それだけの理由では、賛成出来ない」
「あの、、、。先生に教えて貰ったんです」
そう言って、メモを見せた。
「資料だけでも取り寄せて良いですか?」
「それは構わないが、まだ、進学については保留だよ。予定通り、ファウスティーノと同じ学園だ」
「はい、分かりました」
「アウレーリオ、私達は君を愛している。本当だ。それは忘れないでくれ」
僕は父様にお辞儀をして、部屋を出た。
*****
自分の部屋に戻ると、早速手紙を書く準備をした。
ノックの音。
「アウレーリオ、、、」
兄様の声だ、、、。僕は動けなかった。
心臓がドキドキする。扉を開けたい、、、。
でもダメだ、我慢するんだ。
今、扉を開けたら意志が弱まる。
もう一度ノックの音。
僕は扉をじっと見つめて、息を呑む。
3度目のノックの音はしなかった。
ため息を吐いて、手紙を書く。
、、、兄様を諦めるんだ、、、。
**********
寮の話しが出てから、アウレーリオと話しが出来ない。
出来れば二人きりで話したいと思うのに、、、もしかして、避けられているんだろうか、、、。
*****
アウレーリオの寮の話しが、立ち消えになったと思った頃、夕食時、父が一通の封筒を持って来た。
「アウレーリオ、寮の資料が届いたよ」
そう言って、彼に大きな封筒を渡した。
「有難う御座います」
アウレーリオが受け取ると、イヴァーノの機嫌が悪くなった。
「アウレーリオ、まだ、りょうに行きたいの?」
「資料を取り寄せただけだよ。どんな学園か興味があるだろ?」
イヴァーノは納得いかない顔をしていた。
彼みたいに、私も感情を表に出したかった。
でも、それをすると私の好きが溢れてしまいそうで怖かった、、、。
アウレーリオは、私の顔を見なくなった。
屋敷の中ですれ違っても、挨拶をするだけで、こちらを見ない。
私も最初は彼を見ない様にしていた。そうすれば、私の気持ちが伝わる事は無いと思っていた。
しかし、ある時、彼が私を見ないのなら、私が彼を見ても良いのでは無いか、と思った。
彼がこの屋敷からいなくなるまで、彼を見続けたい、、、。
彼の希望する学園は、私が通う学園よりも難しく、入学試験があった。
彼は、毎日学校から帰ると部屋に閉じ籠り、熱心に勉強をした。
そこまで行きたい気持ちがあるなら、私も彼を応援しようと思う。
夕食の時
「アウレーリオ」
と名前を呼ぶと、彼は固まった。視線を向ける事無く
「何でしょう、、、」
と言うと、そのまま食事を続けた。淋しかった。
「もし、勉強で分からない事があったら、教えるよ」
「有難う御座います」
会話はそれで終わってしまった。
彼との会話はそれが最後になってしまった。
いつから、こんな関係になってしまったんだろう。昔はあんなに仲が良かったのに、、、。
私は淋しくて、悲しかった。
**********
兄様に名前を呼ばれて、胸が締め付けられる様だった。
もっと、僕の名前を呼んで!
そんな気持ちを悟られない様にするだけで、一杯一杯だった。
まだ、父には入寮の許可を貰っていない。
寮に入りたいと言う理由だけでは、弱いと言うのだ。学力も、まだ追い付いていない。このまま試験を受けても、確実に落ちるのは分かっている。
兎に角、夏過ぎまでは学力を上げたい。
入寮すれば、五年間だ。五年も掛ければ兄様を忘れられるだろう。
**********
アウレーリオが部屋に引き篭もる様になり、イヴァーノは不満だらけだった。きっと淋しいんだ。
入寮の事は今でも反対している。
「イヴァーノ、たまには街に行こうか」
「ファウスティーノ兄さまと?」
「嫌かな?」
「何かごちそうしてくれるなら、いいよ!」
「そうだね。美味しい物を食べよう」
「アウレーリオにおみやげ、かってくれる?」
ふふ、そう言う所は優しいんだな、、、。
「良いよ。勉強の合間に食べるおやつを探そう」
私達は、馬車に乗り、町まで行った。
イヴァーノは、久しぶりの町に興奮していた。
「迷子にならない様に、手を繋いで」
六歳の彼は恥ずかしがった。
「でも、人も多いし、迷子になったら困るでしょ?」
「もう、六さいだよ!まいごなんてならないよ!」
そう言うと、好き勝手に店を見て回る。
アウレーリオは必ず私と手を繋いだから、心配になった。
「ファウスティーノ兄さま、見て見て!」
私の腕を引きながら、興味がどんどん移って行く。
「あ!これ!アウレーリオのおみやげにどうかな?」
砂糖菓子、、、可愛いな、、、。色取り取りの小さな砂糖菓子の入った瓶。これなら、勉強中に少しずつ食べられる。
「イヴァーノ、これにしようか?」
横を見ると彼はいなかった。
「イヴァーノ?」
私は辺りを探す、いない。隣の店にも、反対隣の店にもいない。
まさか、道路を挟んだ向こう側に渡った?
後ろの通りを見ると、今にも道路を渡りそうな彼がいた。ダメだっ!馬車が来ている!
「イヴァーノっ!」
私は走り出し、彼を追い掛ける。彼が道路に出てしまった!馬車がっ!
**********
目が覚めると、身体中が痛かった。
布団の中でモゾリと動くと、痛みで声も出ない。
天井を見ると自分の部屋だった。
身体中が重たい痛みでため息が出た。
「兄様、、、」
見ると枕元にアウレーリオがいた。
「何やってるんですか?」
怒られているみたいだ。
「イヴァーノは?」
「アイツは兄様のお陰で、無疵です。アイツが怪我をすれば良かったのに!」
「そんな、、、」
アウレーリオが涙を流した。
「、、、兄様が死ぬかと思った、、、」
「ごめんね。イヴァーノを見失っちゃったんだ」
「どうせ、アイツがちょろちょろしたんでしょ?」
袖口で涙を拭いて文句を言う。
「まだ、子供だからね、、、」
じっとしていても痛いのに、ちょっと身体を動かすと激痛が走る。
息を堪えて、痛みが去るのを待った。
「アウレーリオ、勉強は捗ってる?」
「、、、うん、でも、まだ追い付いてない」
「そんなに、行きたい学園なの?」
「、、、」
「、、、アウレーリオがいなくなったら、淋しいよ、、、」
「兄様が好きなんだ、、、」
「私も好きだよ」
「違う、、、そう言う好きじゃ無くて、、、特別の好きなんだ、、、」
「特別?」
「だから、、、兄様から離れたい、、、」
「母様と父様を呼ぶよ。イヴァーノも、、、みんな心配している」
そう言うと、アウレーリオは私の唇にそっとキスをして、部屋を出て行った。
特別の好き、、、?え?、、、あの、、、?
え、、、?
自分の身に何が起きたのか、分からなかった。
えっと、、、キス、、、?あれ、、、?
母と父が入って来た。後ろには、わんわん泣くイヴァーノがいた。
「アウレーリオのばかぁ!」
え?
「今、そこで、アウレーリオに頭を叩かれたのよ。思いっきり、容赦無く、、、」
「ファウスティーノ、大丈夫かい?イヴァーノを助けた時に、馬車にぶつかった様だ。下敷きにならなくて良かった。地面に倒れた事もあって、身体中痛いだろうが、酷い骨折箇所は無いそうだ。でも、暫くは安静だよ」
「済みません、、、」
「いや、イヴァーノを助けてくれて有難う、、、。痛みが続くだろう、、、余り酷ければ痛み止めがあるから」
「有難う御座います」
「ファウスティーノ兄さま、ごめんなさい。早くよくなってね」
「イヴァーノ、、、大丈夫だよ。あのね、、、あの時見ていたお菓子、覚えている?」
「おかし?」
「小さな可愛い砂糖菓子が瓶に入っていたんだ」
「わかるよ!」
「あれを、アウレーリオにプレゼントしたいんだ。母様と買いに行ってくれる?」
「うん!いいよ!母さま、あした行ける?」
母はにっこり笑った。
痛みが出て来た私は、その後一人にして貰い、暫く眠る事にした。
夜中に痛みで目が覚める。
「う、、、」
「兄様、、、痛い?」
「、、、痛い、、、」
「薬、飲む?」
「、、、飲む」
アウレーリオが枕元の椅子に座っていた。
「アウレーリオ、、、」
私の身体を支えて起こしてくれる。
水差しから水を汲み、まず一杯飲ませてくれた。
冷たくて美味しい。
「薬、飲める?」
粉薬だった。
「粉はちょっと、、、」
咽そうだった。
「ちょっと待ってて」
そう言うと部屋を出て行く。
私は枕に寄り掛かり、額を触る。熱が出ている。
暫くして、アウレーリオはポタージュと小皿に載った何かを持って来た。
「ポタージュ、飲める?」
「お腹空いた、、、」
アウレーリオは椅子に座ると、ポタージュをスプーンで掬って食べさせてくれた。
「美味しい、、、」
完食すると、小皿に入った物を混ぜる。
「薬、蜂蜜と一緒にして貰ったから」
それもスプーンで掬って、一口で飲ませてくれた。
最後に水を飲み、彼に手伝って貰って横になる。
サイドテーブルの小さな灯りが、彼の不安そうな顔を照らす。
私は、そっと布団から手を出し、彼の膝に触れた。
「ごめんなさい、、、」
「、、、?」
「好きになって、ごめんなさい、、、。兄様の事、ちゃんと忘れるから、、、ちゃんと諦めるから、、、」
涙を流していた。
熱と痛みでボーっとしながら
「泣かないで、アウレーリオ、、、私も、君が好きだから、、、」
言ってしまった。
「え?」
「あ、、、」
私は苦笑した。つい、言ってしまったんだ、、、。
「兄様?」
「私も、君が特別好きなんだ、、、」
一筋涙が流れた。
アウレーリオは私の額に触れ、熱があるのを確認すると、静かに立ち上がり、食器を片付けに行く。
「すぐ、、、戻るから」
瞬きを数回した。涙を誤魔化している。
ウトウトしていると、冷たい布が額に触れた。気持ち良い。痛みは完全に無くならなかった。身体中がギシギシ痛む。多少薬も効いているのか、アウレーリオが額の布を取り換える度に、深い眠りに入って行った。
*****
熱は三日程続いた、四日目は微熱だった。身体の痛みは大分減り、動かさなければ、耐えられる様になった。
「兄様、食事を持って来ました」
食べやすい様に、フルーツが盛りだくさんだった。
「はい、あーん」
私は素直に口を開ける。最初は恥ずかしかったのに、慣れとは恐ろしい、、、。
「お昼は何が食べたいですか?」
「サンドイッチ」
「わかりました。学校に行って来るので、帰ったらまた来ますね」
あれからアウレーリオは、私から離れなくなってしまった。
これで良いのかと、少し心配になりながら、ベッドに寄り掛かる。
窓の外は良い天気だった。そろそろ外に出たいな、、、。
お昼前に先生の診察を受け、散歩に行きたい話しをする。
まだ、微熱があるから熱が下がり切れば、少しずつ外に出ても良いと言われた。
先生は
「無理してはいけませんよ」
と優しく微笑んでくれた。
診察が終わり、ウトウトしているとアウレーリオが帰って来た。
帰ると一番に私の部屋に寄る。
「お帰り」
「ただいま」
「学校どうだった?」
「楽勝!」
受験勉強の成果が出ているんだ、、、。嬉しい様な、淋しい様な気がする。、、、変な気分だ。
「兄様、、、」
「何?」
「ファウスティーノって呼んでも良い?」
「勿論、いつまでも兄様だと、幼く感じるよね」
アウレーリオはちょっと剥れた。
私のベッド脇に腰掛け
「僕はもう、子供じゃ無いよ」
と言う。
「ファウスティーノ、、、」
私の頬に手を添える。
え、、、?
「愛してる、、、」
そう言って、口付けをする。
私は瞬きをするしか無かった、、、。
「僕の事、特別の好きって言ってくれたよね、、、」
コクリと頷く。
「だから、、、」
もう一度口付けされる。
私は顔が赤くなるのを感じた。
「アウレーリオ、、、私はまだ熱があって、、、」
「うん、今日はここまでにするよ。治ったら、ちゃんとね」
にっこり笑って立ち上がる。
ちゃんとって、どう言う事だろう、、、。
「サンドイッチ貰って来るよ。一緒に食べよう!」
**********
サンドイッチは、厚切りのハムと野菜が沢山入っていた。
「ファウスティーノ兄さま!」
アウレーリオの後ろから、ヒョコッとイヴァーノが顔を出す。
「へへ、僕も一緒に食べたいです」
可愛い、、、。
アウレーリオが私にサンドイッチのお皿をトレーごと渡す。自分はいつもの椅子に座る。
「イヴァーノはそっちのテーブルで」
「え?イヤだよ。アウレーリオ兄さまのとなりがいい!」
「椅子無いから」
「もって行くよ!」
部屋の隅にある椅子を、重たそうに運ぶ。二歩歩くと一度置くの為、なかなか進まない。
アウレーリオが痺れを切らして、手伝いに行った。
片手でヒョイっと持ち上げると、イヴァーノの瞳がキラキラ光る。尊敬の眼差しだ。
間隔を開けて椅子を置き、アウレーリオは元の椅子に座る。
イヴァーノは、椅子を寄せる。
「あんまり近過ぎると食べ辛い、、、」
「へへへ」
イヴァーノは、やっぱりアウレーリオが好きなんだな。
「先生に外に出たいって話したら、微熱が取れたら良いって」
「今日もあるの?」
「まだ、ほんの少しね」
「そっか、、、」
「でも、もうすぐ落ち着くと思うよ。そうしたら、少しずつ外に出て良いって」
「まず、庭でお茶会からだな」
「おちゃ会!ぼくもしたいっ!」
アウレーリオは少し嫌そうな顔をした。
サンドイッチを食べ終わると
「ほら、イヴァーノは友達が来るんだろ?もう行け」
と促す。
「アウレーリオは?」
「俺はファウスティーノと話しがあるから」
ん?俺?
「ちぇっ、おれなんてかっこうつけちゃってさ!」
ブツブツ言いながら、ちゃんとみんなの食器を片付けてくれる。
「アウレーリオ、いす、かたづけておいてよ!」
「はい、はい」
何か微笑ましいな、、、。
「俺も勉強道具持って来るよ」
そう言って立ち上がる。
「、、、ねぇ、いつから俺って言ってるの?」
「学校ではずっと俺。ファウスティーノに好かれたかったから、良い子してたの」
そ、、、そうなんだ、、、。
「もうすぐ、高等部だからさ。いつまでも「僕」、じゃ無いから」
「へぇ、、、」
「何?格好良い?」
すっと、顔が近付いて、私の顔を上に向ける。
遠慮無くキスをする
「アウレーリオ、、、何か、変わった、、、」
「ファウスティーノに好きって言って貰えたから、、、。好きなままで良いんだって思って、、、」
**********
その後も、アウレーリオは良く勉強をした。学校から帰ると私の部屋に来て、勉強をする。
私も遅れを取り戻す様に勉強をした。
たまに、庭でお茶会の準備をしながら勉強をしたり、私が歩ける様になると、街まで行って気晴らしをしながら勉強をしている。
本当に頑張ってるんだな。このまま行けば、彼は入寮して、遠い学園に行ってしまう。
その事を考えると、少し淋しくなる。
行かないで、、、とは、言えない。彼の希望なら、叶えて上げたい。
でも、彼のいないこの屋敷は、きっと淋しくなる、、、。
「アウレーリオ、、、」
「ん?」
彼は勉強に集中している。
「誕生日プレゼント、何が良い?」
「え?」
顔を上げた。綺麗な顔だ。
「君が遠くに行く前に、、、何か形に残る物を渡したい」
「、、、何でも良いの?」
「何でも、君の望む物を、、、」
、、、やっぱり、いなくなるのは淋しい、、、。
「ファウスティーノ、、、」
私の指先を掴んでくれる。
「もう直ぐ試験だから、終わったら、俺の欲しい物教えるよ」
そうだ、試験が終わる迄、浮かれた事を考えない方が良い、、、。
でも、試験が終わり、合格してしまったら、、、。彼は遠くに行ってしまうんだ、、、。
**********
気が付いたら試験は終わっていたらしい。結果が出るのはいつだろう。アウレーリオに聞くのが怖くて、聞けなかった。
「ファウスティーノ、誕生日プレゼント、、、欲しいんだけど」
週末の夜だった。彼はいつもの様に、私の部屋にいた。
「明日、買いに行く?」
試験も終わったし、朝から夜まで、ゆっくり買い物しても良い。
「今、、、欲しい」
「え?一緒に買う予定だったから、何も準備して無いよ」
アウレーリオは私の手を取り、ベッドに誘う。
「俺の欲しい物をくれるって言った」
手を引きながら、ベッドに乗る。
「、、、?。アウレーリオ?」
クルッと向きを変えられ、仰向けになった。
「ファウスティーノ、、、。俺、頑張ったんだ、、、。ご褒美、頂戴、、、」
そう言って、キスをする。
でも、アウレーリオが頑張ったから、君は私から離れてしまう、、、。
涙が溢れる。
「アウレーリオ、、、。愛してる、、、」
私は、彼の頬を包み、キスをする。
「君だけをずっと、愛するよ。どんなに遠く離れていても、君だけ、、、」
涙が止まらない。
「大丈夫、すぐ会えるから、、、安心して」
彼のキスは優しかった。もっともっと、欲しくなる。彼は、私の涙を掬う様にキスをして、頬を掠め、唇を開く。
離れたく無い、、、。今、彼が望む、全てを差し出したい、、、愛してる。
**********
一通の畏まった手紙が届いた。
あれはきっと、試験の結果だ、、、。
彼は頑張っていた。
だから合格して欲しい。
そう思いながら、ほんの少し、行かないで欲しいと願ってしまう、、、。
自分が嫌いになりそうだった。
夕食時、父がアウレーリオに封筒を渡す。
彼は静かに手紙を開く、暫く目を通し
「合格しました、、、」
と言った。
ああ、、、離れ離れになってしまう、、、。
「良く頑張った」
父の声
「有難う御座います」
私もお祝いを言わないと、、、
「ファウスティーノ、春から同級生だよ」
「、、、え?」
「飛び級の試験を受けたんだ」
「、、、え?」
「ファウスティーノと同じ学年になりたかったからね!」
「えええぇぇー、、、?」
「あの学園には手が届きそうも無かったんだけど、折角頑張って勉強したから、チャレンジしてみたんだよ。多分ギリギリだけど、合格。ファウスティーノと同じクラスになるかは分からないけど、一緒に通えるよ!」
「びっ、、、くりした、、、。おめでとう、ファウスティーノ、、、」
私は嬉しくて涙を溢した。
「アウレーリオ、りょうに入らないの?!ほんとにっ?!やったー!!」
私もイヴァーノの様に、大きな声で叫びたかった。
三年飛び級は無理があったけど、異世界なので、、、




