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異世界転生者は黒船になりうるか。  作者: バネ屋
第三章 グレイス家の若君
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#15 軍服の若君


 翌朝、世話係にお伺いを立ててもらい、コーデン叔父上に面会すると、「ちょうどよかった。お前に話があったのだ」と言われ、領内に滞在中の専属護衛となる二人の兵士を紹介された。


「シロツグと申します!トーマス閣下護衛の役目!名誉の極みです!」

「シャントット・コーラスと申します。トーマス様の身の安全、我らが命をとしてお守りいたします」


 シロツグと名乗る兵士は、10代で身長180センチはあるだろうか。がっちりとした体格に短髪で、いかにも体育会系の見た目とノリの男性だ。

 対してシャントットと名乗る兵士は、驚いたことに女性で、年齢は20前後だろうか。身長も体格も年相応に見えるが、ショートヘアでキリッとした顔つきが印象的だ。

 そして、二人とも紺色の学生服のような軍服を着ている。


「よろしくお願いします。あまり堅苦しくならずに肩の力を抜きましょう。気持ちも体も緊張していると、何かアクシデントがあったときに、初動が遅れるものですよ」


「聞いての通り、トーマスは8歳にしてこの有様だ。子供だと思わず、なにかあればすぐにトーマスへ報告して、指示を仰げ」


「ハッ!」

「ハッ!」


 有様って、どういう意味だ。

 やはり、子供らしくないということか。

 王都のグレイス邸だとそれが普通過ぎて誰にも違和感を抱かせずに済んでいたのに、4年ぶりの叔父上にとっては、子供らしくないと映ってしまったのだろう。しかし、今更ごまかしても手遅れだろうから、このままで通すしかないな。


「あ、1つお願いがあるのですが、私にも軍服を用意して頂けますか?」


「え!?」

「はい?」


「お前はまた、何を言い出しているのだ?」


「このような貴族らしい装いのままうろうろしていては、目立ってしまいますからね。リスクを考えれば、私もお二人と同じ軍服にすれば、目立たずに済むかと思いまして」


「たしかにそうだな。すぐに手配させよう」


 本当はパフォーマンスとしての狙いもあるが、それを言ってしまっては興醒めしてしまうだろうから、あえてここでは安全リスクをアピールしておいた。


 8歳の俺の身長と体格では、男性用の軍服はぶかぶかなので、女性用のもので一番小さいサイズを用意してもらった。

 それをシャントットに預かってもらい、本題だった城内視察の許可も貰うと、二人を伴って自室に戻った。


 さっそく着替えようとすると、世話係が「なにをお考えになっているのですか!?」と怒り出したが、「コーデン叔父上の許可は頂いています」と話すと、渋々着替えを手伝ってくれて、結局は「大急ぎで丈を直します!」と言って、ズボンの裾を直してくれた。


「あ、あの、本当によろしいのですか?」


 領主の息子が軍服を着ることに、不安を吐露するのはシロツグ。あとで上司に怒られたりしないか、不安なのだろうか。


「軍服のほうが、動きやすくて安全ですからね。それに、すごく恰好良くて着てみたかったんですよ。もし、上官や上長に注意されるようなことがあれば、すぐに私に言って下さい。私から事情を説明すれば、お二人がお叱りを受けることもないでしょう」


「トーマス様は、お噂通りの方なのですね」


「噂ですか?」


 今度は、シャントットがなにか言い出した。

 噂ってなんだろう・・・めちゃくちゃ不安になるんだけど。領都に入ってまだ三日目だというのに、「ガキのくせに生意気だ」とか言われているのだろうか。


「聡明で誇り高く、我々下々のことも気にかけてくださり、領民と共にあろうという熱意を持った名君だと」


「それは褒めすぎですよ。私はただの合理主義者です」


 噂の元は、恐らく昨夜のスピーチなのだろう。内容が少し立派過ぎたか。しかし、いまさら気にしても後の祭りだ。

 二人と雑談を続けていると、クリスティーナ嬢の世話係が「準備ができました」と知らせにきたので、軍服のまま二人を伴い、客室へ向かった。

 途中で会う城内の兵士や家臣、使用人などに「ご苦労様です」と挨拶すると、どの人も驚いた表情を浮かべて言葉を失っていた。

 どうやら、逆に目立ってしまっているようだ。でも、三日もすれば、みんな慣れるだろう。こういうのは継続することが大切。明日からもこれでいこう。


「クリスティーナ嬢、トーマスです。お迎えに上がりました」


 扉をノックして名乗ると、従者が扉を開けてくれたので、護衛の二人を廊下に待たせて入室する。


「おはようございます。昨夜は、よく休まれましたか?」


「おはようございます、トーマス様。おかげ様で、ゆっくり・・・」


 ん?

 いつものように挨拶を交わしていると、クリスティーナ嬢が言葉を詰まらせている。

 顔を上げて様子を見ると、カテーシーのポーズのまま固まっているぞ。


「どうされました?」


「あの、その服は?」


「ああ、これですか。軍服です。叔父上にお願いして用意してもらいました。動きやすそうで恰好いいので、着てみたかったんですよ。似合っていませんか?」


「いえ、その、とても凛々しくて、素敵です」


 扇で口元を隠している。どうやら、気に入ってくれたようだ。ふふふ


「お褒めいただき、ありがとうございます。さっそくですが、叔父上に城内視察の許可を頂けましたので、これから行きましょうか」


「はい。よろしくお願いします」


 さて、どこから周ろうか。

 城内の探索に、50代の中年がワクワクしているな。







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