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異世界転生者は黒船になりうるか。  作者: バネ屋
第三章 グレイス家の若君
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#14 若き誓い


「皆様、本日はご多忙のなか、トーマス・グレイスとクリスティーナ・ブランの婚約披露にお集まりいただき!ありがとうございます!皆様からのお祝いの言葉に、わたくしもクリスティーナ嬢も大変感激しております!

 えっと、わたくしは8歳の未熟な子供ですので、ここからは自分の言葉で今の気持ちを皆様にお伝えしたく思います」


 貴族らしくない言い回しにゲストの面々がざわつきだしたが、父上はなにも言わずにいてくれたので、続ける。


「昨日、城下に入ると同時に領民の歓迎を受け、足の震えが収まりませんでした。今回、4年ぶり2度目の帰還で、まだ何も貢献出来ていないこのような私でも、領民のみなさんが受け入れてくれたことが、うれしくてたまりませんでした。

 そして、城と領民を守る兵士のみなさん。領内の政を担って下さる家臣のみなさん。グレイス領の発展に尽力してくださっている各分野代表者の方々。それと今日、出席できなかった方々も、皆様が日ごろの激務に努めて下さることに、尊敬と感謝の気持ちで頭が下がる思いです」


 ざわついていたゲストたちは自然と静まり、俺の声に耳を傾けてくれているようだ。


「このテーブルに並ぶパンとスープが、領民の血と汗の賜物であることに感謝し、すべての領民のおかげでグレイス領の平和と繁栄が作り上げられていることを忘れず、私もその一人となれるよう、命の続く限り、この地にこの身を捧げると誓います。どうかこの若輩者を末永く見守り、ご指導いただくよう、お願いします。

 以上、トーマス・グレイスからの感謝の言葉とさせていただきます。ご清聴、ありがとうございました」


 マイクなんてものは無いので、ホール全体に聞こえるように最後まで声を張ったが、最後のほうは声がかすれた。

 それでもなんとか挨拶で締めて頭を下げると、家臣は一糸乱れず無言で全員が起立すると胸に手を当て、ゲスト席からは拍手が沸き、そして、警備にあたっている衛兵たちは、鞘に納めたままの剣で床を一斉に叩き始めた。


 うおっ!?ブーイングか!?と一瞬焦ったが、「お前の言葉を聞いて、ここにいる全ての者が忠誠と共感の気持ちをあらわしているのだ」と父上が教えてくれた。

 一番前の席ではクリスティーナ嬢まで立ち上がり、胸に手を当て、真っすぐに俺を見つめていた


 なんとかなるものだな。

 会社勤めでは、もっと厄介な修羅場なんていくらでもあったし、体は子供でも、なんだかんだと度胸はこの身に宿っているのかもしれないな。

 それにしても、8歳らしく振る舞うのも大変だ。


「皆の者!グレイスの未来を担う若き二人に、もう一度拍手を!」


「おぉー!」パチパチパチ


 緊張感から解放されて席に戻ると、クリスティーナ嬢から小声で「お役目ご苦労様でした。大変ご立派でした」と労いの言葉をもらい、続いてコーデン叔父上の音頭で乾杯すると、食事が始まった。


 しかし、家臣やゲストが俺たちのところに次々とやってきては祝辞を述べていくので、フォークとナイフを持つことすらできず、終わり間際に冷めたスープを少し口にすることができただけで、7の刻の鐘が聞こえると、腹ペコのままパーティーは終了した。


 父上、コーデン夫妻に続いて、クリスティーナ嬢をエスコートして退場すると、父上からは「ご苦労だった。明日はゆっくり休め」と労われ、叔父上からは「お前のおかげで大成功に終われた。グレイス家の歴史に残る、いい夜会となったぞ」と褒められた。

 へへへ、そうでもないっすよ。と言いたいところだが、二人とも怖いので、「ありがとうございます」とだけ返事をして、クリスティーナ嬢と二人で自室へ向かった。


 廊下を歩いていると、世話係から「お夜食をご用意しておりますので、クリスティーナ様とご一緒にどうぞ」と言われたので、俺の部屋で一緒に食事をとることになった。


 部屋に入ると、パーティーで並んでいたサラダやスープ、焼き魚に鶏肉と芋を煮込んだ料理が並んでいた。パーティーの時に聞いた話では、この地の郷土料理らしい。


「おお、これ、食べたかったんですよ。でもそのような余裕がなくて、もうお腹が鳴って大変でした」


「坊ちゃま!いえ、トーマス様!そのようなはしたないことを言ってはなりません!嫡子たるもの、空腹でも笑って見せるのが貴族の矜持というものです!」


「あ、はい。武士は食わねど高楊枝ですね」


 いつもの坊ちゃま呼びを訂正してまで名前で呼びなおすなんて、もうお坊ちゃま扱いしませんよ!ということだろうか?今更だが、婚約者がいる身で坊ちゃまもないか。


「タカヨウジとはなんですか?」


「あ、いえ、なんでもありません。クリスティーナ嬢もお腹がすいたでしょう。食べましょう」


「はい。ご相伴に預かります」


 ついうっかり近代日本のことわざなんて口走ってしまい、世話係につっこまれてしまった。

 なんにしても、お腹がすいているので今は食事だ。

 二人で並んで座り、一緒に食事を始めると、食事中は滅多に話さないクリスティーナ嬢のほうから話しかけてきた。


「明日はお休みとのことですが、ご一緒させていただいてもよろしいですか?」


「ええ、ご一緒するのは構いませんが、なにかしたいことでも?」


「ここ数日、勉強ができておりませんし、城内も見て回りたいと思いまして」


「なるほど。では明日は、城内の視察をさせてもらうように叔父上にお願いしてみます。勉強は僕も気になることがありますので、一緒に調べましょうか」


「はい、よろしくお願いします」


 この後、空腹が満たされると疲れがどっと出てきて眠くなり、それはクリスティーナ嬢も同じだったようなので、客室まで送り届け、自室に戻り早めにベッドに入ると、爆睡した。







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