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【技術仕様書】試作飛空挺《Ex-XIV》



【技術仕様書】試作飛空挺 《Ex-XIV》構造・機能概要


分類:非推進型共鳴浮遊機/試作第十四号

設計責任者:イグザス・ベルネロ

研究開発組織:元帝国技術局・独立研究棟(現:風鏡山群第七渓谷実験区)

目的:非軍事用途における個人搭乗型空中浮遊機の設計実証および流体共鳴理論の実用検証




■ 1. 設計思想とコンセプト


《Ex-XIV》は、従来の魔導飛空挺における「高推進・高出力」志向に対し、「風との共鳴」「空気の流れに乗る」という受動的空中制御を設計原理とする実験機である。


本機は、従来の推進ノズルや旋回翼を排し、機体外郭に内蔵された多層偏向翼および空間重ね式流体インテーク機構により、自然気流を推力へと変換する。


また、炉心結晶による低損失魔力供給を基盤とし、機体そのものの空中定在性(Aerostatic Equilibrium)を制御下に置く構造を有する。




■ 2. 基本諸元


【項目/内容】

□ 全長 / 約11.7 メルト

□ 最大搭乗人数 / 3名(操縦席1、副操縦席2)

□ 外形 / 有機曲線型・繭状船体構造

□ 主翼構成 / 多層式偏向翼(上下二対配置)

□ 表面材質 / 鱗片状微細プレート+偏光膜加工

□ 構造材質 / 独自合成軽量複合材(低魔導反応性)

□ 推進方式 / 空力圧差変換型偏向推進

□ 浮力制御 / 圧縮浮力板+定在浮遊制御系統

□ 魔力源 / 炉心結晶(魔力転写ナノアレイ搭載)

□ 最大航行持続時間 / 通常型の約3倍(理論値)

□ 機体質量制御 / 魔導流動結界による質量低減処理

□ 最大飛行高度 / 中高度域(雲層到達未検証)

□ 騒音・振動 / 実質ゼロ(起動時を含む)




■ 3. 外郭設計と空力構造


◼︎3.1 船体構造


本機は従来の船型機体と異なり、前傾姿勢の繭型フォルムを採用。空力的な前面抵抗を最小限に抑えると同時に、空気の流れを船体全体に沿わせて滑らかに後方へ逃す設計である。


船体の表面は、鱗片状の微細プレートで構成され、外部乱流の吸収と視覚偏光効果を発揮。素材は非鉄性軽合金に魔導的耐圧加工を施した多層ラミネート構造。


プレート間には自律揺動機構が内蔵され、圧力変化を瞬時に吸収する。



◼︎3.2 偏向翼


主翼は二対(上下段)で配置され、それぞれが多関節・独立稼働可能な可変機構を有す。これにより、風向変化や魔導干渉を受けた場合でも動的な気流整流が可能。


偏向翼の調整により局所的な空力圧差を生成し、推進運動を実現する。




■ 4. 魔導炉とエネルギー伝達機構


◼︎4.1 炉心結晶


炉心は半透明円環型魔導結晶体をベースにした次世代魔力炉。通常の魔導炉とは異なり、「出力強化」ではなく「損失低減」に重きを置いた設計。


内部にはナノ単位で構築された魔力転写陣列が組み込まれており、魔力伝導効率を最大で従来比300%に引き上げる。


結晶表面には極小幾何紋様の魔術陣転写構造があり、伝導路最適化によって熱ロスを抑制。



◼︎4.2 質量低減処理


機体外殻には流動魔導結界が常時展開され、物理的重量を部分的に“切り離す”設計。これにより、機体そのものが準浮遊状態に近づき、浮力維持に必要な魔力コストを大幅に削減する。




■ 5. 操縦・通信・内部設計


・操縦席:視覚・触覚優位のアナログ制御機+魔導入力補助

・副操縦席:簡易制御盤+観測ユニット

・通信:短距離範囲内での符術式非干渉通信(空中でも安定)

・快適性:試作機ゆえに最低限(居住性・航行補助なし)




■ 6. 飛行性能評価(初回滑空試験)


・推進音:検出限界以下(無音)

・発進挙動:風圧上昇に合わせた浮力板制御により、自然浮遊的滑空を開始

・航行挙動:機体が空気層に“乗る”ような運動パターン。滑空線は自然の気流経路に完全同調

・揚力制御:外殻の空力整流および偏向翼の圧調整により、滑空時の姿勢安定性は極めて高い

・搭乗者コメント:「飛んでいるというより、空に浮かばされている感覚」




■ 7. 工学的課題と将来的展望


【項目/状況】

□ 航続距離 / 現状では限定的。連続浮遊時間は炉心魔力残量に依存

□ 高高度対応 / 現時点で雲上層への到達未確認

□ 耐候・対流干渉性能 / 試験データ蓄積中(暴風域未踏破)

□ 公共機体への転用可能性 / 軽量化と制御簡略化に課題あり

□ 魔力依存度 / 魔導結晶素材の入手性が不安定




■ 8. 結論


《Ex-XIV》は、既存の飛空挺技術とは一線を画し、「空気・風・魔力」の三者を共鳴的媒体として活用する革新的工学の結晶である。その飛行体験は従来の速度/性能追求型とは異なり、まさに「空に許される感覚」を再現するものである。


本機の技術は今後、空域移動の非軍事化・非騒音化・省魔力化の分野において、新たな設計指針を与える可能性を持つ。


Ex-XIVは、推進から共鳴への転換点である。


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