エレトゥス大陸
■ エレトゥス大陸――雷導の文明と沈黙の兵器国家
エレトゥス大陸は、七極均衡体制下において最も特異かつ危険な存在として、各大陸の政治中枢において常に注視され続けている地域である。
その特異性の根源は、単に軍事力の大小ではない。エレトゥスは雷属性魔導技術を文明基盤の中心に据え、あらゆる社会構造・産業・都市機能が雷導エネルギーに依存する形で構成されている。
この雷導技術こそが、終焉戦役における決定的な変数となった。雷導兵器群は、従来の戦争概念を無力化し、即応性・制御性・エネルギー効率において他の魔導体系を凌駕した。敵の技量や数、士気といった「戦争の常識」が、エレトゥスの前では意味を失ったのである。
◆ 兵器の再定義――戦後の変質
終焉戦役後、エレトゥス大陸は表向き、雷導兵器の開発凍結と軍団解体を宣言した。事実として、主要工廠は閉鎖され、兵器設計図は封印された。
だが本質的には、エレトゥスは「兵器を手放してはいない」。ただ、“兵器という言葉”を手放したに過ぎない。
雷導技術はその名目を変え、以下の三分野に再定義された。
・都市防衛用の即応魔導防壁
・災害制御装置としての雷導偏向結界
・高効率な都市インフラと魔導網
これらはすべて「生活基盤」や「防災システム」として条約上合法であり、軍事的性格を一切帯びていないとされている。だが実態は明白だ。都市そのものが戦時に即座に武装化可能な構造を持ち、日常の魔導循環がそのまま戦闘演算とリンク可能な状態で維持されている。
雷は沈黙したわけではない。ただ、都市という器に溶け込み、いつでも走り出せるように蓄えられているのだ。
◆ 条約と現実の狭間で――「見えない戦争」の維持
エレトゥスは七極均衡条約を正式に批准し、全条項を遵守している。特に「属性技術の軍事転用禁止」や「大陸間戦争の抑止」には形式的には忠実だ。
だが同時に、エレトゥスは「合法である限り、最大限の技術深化を行う」という冷徹な合理性に従い、雷導技術を軍事以外の名目で進化させ続けている。
この構造に対し、他大陸――とりわけルミナス聖皇国は深い不信を抱いている。表向きの外交関係は整い、条約上の協力も確認されているが、水面下では常時の監視と情報収集が常態化している。
具体的には以下の項目が継続監視対象とされている:
・雷導網の出力変動
・都市魔導インフラの更新頻度
・技術研究機関の人員移動
・エネルギー輸入量と魔導触媒の消費傾向
ルミナスにとって、エレトゥスは単なる軍事的脅威ではない。それは「理念なき合理主義」の体現であり、かつて“神の名のもと”に世界を動かした自分自身の影でもあるのだ。
◆ 「兵器国家」は終わったのか?
かつてエレトゥスは、雷導兵器の大量展開によって世界に衝撃を与えた純粋な兵器国家だった。
そして今、エレトゥスはその形を変えた。
都市が兵器となり、文明が軍備の器として再構成されている。
これは条約が想定した「軍縮」とは根本的に異なる発展である。
エレトゥスは、戦争を否定したのではなく、
戦争を“平時の機能”として文明に内包する国家へと進化した。
この事実は、七極均衡体制における最大の盲点である。
条約は兵器の保有を禁じたが、
「兵器が国家構造そのものである」という事態は想定されていなかったのだ。
■ 国際的立場と今後の火種
現在、エレトゥス大陸は条約上は平和国家であり、正式な条約違反も確認されていない。
だが、各国の情報機関と安全保障会議の資料には、常に「潜在的軍事超大国」として記録されており、戦略的監視の最優先対象とされている。
その理由は明確だ。
・軍事的即応力の保持(都市=兵器構造)
・条文の範囲内での実質的軍事研究の継続
・国家理念が極めて無言的であり、侵略・防衛の境界線が見えない
・一国の判断で「再武装」が即時可能なインフラと人材基盤
この構造は、軍事力による「抑止」では対処しきれない。
なぜならエレトゥスはすでに、
「戦わずして、戦場を持つ」国家になっているからである。
■ 結論:雷は眠っているのではない
エレトゥス大陸は、兵器を保有していない。
だが同時に、それ以上に危険な状態――「兵器が制度と社会の奥深くに溶けている状態」にある。
平和条約は守られている。
だが、それは戦争の否定ではなく、
“戦争の形を変える”という選択の隠蔽にすぎない。
雷は、眠っていない。
ただ今は、都市という巨大な導線の中で、次の出力指令を静かに待っているだけなのだ。
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■ エレトゥス大陸連合国(正式名称:雷導連合構成圏〈雷導連邦エレグラフィア〉)
【雷導連邦エレグラフィア
(Electro‑Federation Elegrafhia)】
古来より「雷」と霊素が強く流れる地盤に位置するエレトゥス大陸の文明は、終焉戦役後に世界の注意を一身に集めた。かつての兵器国家は、戦後再構築を経て「雷導連合構成圏」として国際社会に参加したが、現在はその正式名称を 「雷導連邦エレグラフィア」 とし、七極均衡世界のなかで独自の政治社会体系を構築している。
【概略】
エレトゥスは、帝国暦1290年代以降、属性戦争後の「雷導技術の標準化と再配分」を目的として各地域が協議・合意の末に連合を形成した多国共同体である。
だがその実態は、強大な魔導技術を擁する中核国家が、周辺諸国を“同意の形式”で束ねる 技術的覇権共同体 であり、真の意味で対等な連邦ではない。
あくまで「連合」という体裁を保ちながら、その中には 力の差・発言権の差・技術独占 という現実が根深く存在している。
【雷導技術を文明基盤とする国家】
エレグラフィアは、雷属性魔導技術を文明基盤の柱に据える特異な社会構造を持つ。魔導技術は市民生活への利便性・防災インフラ・都市制御に浸透し、一見平和な都市機能を支える「生活装置」として存在する。
だが実際には、これらの都市機能はすべて戦術・即応性を想定した構造を内包しており、戦闘とインフラが両立する“見えない武装社会”となっている。
・都市防衛用即応魔導防壁
・災害制御型雷導偏向結界
・高効率な魔導都市インフラ
これらはすべて軍事的性格を明示せずに成立しているが、実態としては戦時動員可能な戦力であり、都市圏そのものが「戦場装置」として設計されている。
【歴史】
◆ 史前
エレトゥス大陸は古代より霊素潮流の影響が強く、属性魔導技術の発展とともに文明を発展させてきた。雷導技術は古典時代から存在したが、世界的な軍事・政治勢力として頭角を現すのは第二紀以降である。
◆ 帝国暦1287年〜
帝国暦1287年
七大陸を巻き込む属性戦争が終結。雷導兵器の過剰使用により地盤崩壊・都市崩壊が多発。
帝国暦1291年
機械都市エレクトロニアが再稼働。雷導炉の稼働により霊素の安定化と高度制御が可能に。
帝国暦1295年
「雷導再生会議」が開催され、大陸各地域が再興と防衛のための共同体形成を模索。
帝国暦1300年
雷導連合結成。構成地域は7国家。名称は現代まで受け継がれるが、内部的には中核国家主導の技術覇権体制として成立。
帝国暦1330年
統一軍事基準「LCA(雷導適性訓練)」と《教導局》制度が整備され、共通兵士育成が開始。これが後の雷導兵育成体系確立の基盤となる。
帝国暦1350年〜
各構成国間で主権・技術・文化摩擦が進行。特に《ヨナリア島王国》との価値観衝突が顕著となる。
◆ 連合の成立史
〈年代/出来事〉
□ 帝国暦1287年 / 属性戦争終結。雷導兵器の過剰使用による地殻異常と都市崩壊が各地で多発。
□ 帝国暦1291年 / 機械都市エレクトロニアが再稼働。雷導炉による霊素安定化技術が確立。
□ 帝国暦1295年 / 「雷導再生会議」が開催され、大陸各地域が再興と防衛のための連携を模索。
□ 帝国暦1300年 / 中央高層区 《ゼンネリウム》を中枢とする雷導連合が正式発足。構成国は7ヶ国。
□ 帝国暦1330年 / 統一軍事基準「LCA(雷導適性訓練)」と《教導局》制度が整備され、共通兵士育成が始まる。
□ 帝国暦1350年以降 / 構成国間の主権問題が浮上。特に“ヨナリア島王国”との文化・価値観摩擦が進行。
【成立史と制度的基盤の形成】
エレトゥス連合は、属性戦争(帝国暦1287年)における雷導兵器の過剰使用により発生した地殻異常と都市崩壊を契機に、大陸規模の霊素制御と再興政策を目的として誕生した。その基礎となったのは、エレクトロニアにおける霊素安定化技術の確立(1291年)、ならびに「雷導再生会議」(1295年)による地域連携である。
1300年には、中枢高層都市を拠点とした雷導連合が正式に発足。技術的優位を握るエレクトロニア都市圏を中心に、7つの特化国家が分野ごとの機能分担によって統合された。
その後、LCA制度(雷導適性訓練)と教導局システム(1330年)が制定され、雷導兵団の共通育成方針が整備されたことにより、軍事的・教育的な統一体制が確立。一方で、1350年以降は各国の主権意識や文化的差異が顕在化し、特に“ヨナリア島王国”との対立が構造的に深まり始めている。
【社会構造:技術階層主義と分権的専門国家】
連合は、各構成国が専門的機能に特化する形で成り立つ「分業型連邦制」を採用しており、エレクトロニアを筆頭に次のような技術的・社会的階層構造が存在する。
・中枢管理国家:霊素の制御・監視を担う超管理型都市国家。市民の自由は限定され、「脳波・霊素動態の常時監視」「適性等級による階層分化」が徹底されている。
・生産国家(オルド=ハイアス):霊素資源と重工業を担う連邦体。極端な労働集中と公害、少年兵問題など、内部格差と不安定性を孕む。
・供給国家(ネムス=ヴァレ):非軍事・農業特化の中立国家。気候制御と食糧供給により、連合安定の基礎を担う穏健派。
・研究国家:地下都市群で霊素心理・人格再編研究を行う。高度技術と倫理的問題を併存。
・軍事港湾国家(フロム海峡):沿岸・海峡都市群で構成される軍需国家。分権自治と軍港機能の分離が特徴。
・記録行政国家:歴史・法・霊素倫理の記録と監督を行う。軍備を持たず、文官制と知的統治が発達。
・文化特化国家:精神媒介術式と霊諦信仰による霊素運用文化を保持。中央からの標準化政策に強く抵抗。
【政治構造:非対称的連邦統治モデル】
名目上は「連邦(Federal Union)」であるが、実態は中枢国家が主導する非対称的統合体制である。
・最高機関 《連合評議会》では、各国代表が政策決定に関与するが、技術支配力・情報網の掌握により、エレクトロニアの影響力が圧倒的。
・教導局制度により、軍事育成・教育指導は中枢規格に準拠。これに対し、ヨナリア・フロムなど一部自治国家は例外規定を持つ。
・各国の主権保持は尊重されるが、連合予算・兵団配備・霊素倫理法などの中枢介入は増加傾向にある。
【現代的課題と構造的リスク】
・倫理対立:人格改変技術や兵器化に対する倫理的反発 (ヨナリア、セリファス)と、実利を優先する中枢国家の摩擦
・文化的衝突:精神媒介術式や「霊諦信仰」を巡る術式哲学の根本的対立
・内的非対称性:霊素供給・兵力提供に対する不公平感、中央集権の進行と地方の反発
・軍事依存性:対外防衛におけるフロム・ラシディア依存体質が平時の圧力構造を生む
連合は、構造的分業体制ゆえに強固な統合力と同時に、文化・倫理・階層対立という分断リスクを抱える「高圧安定体制」である。
【構成地域・主要国家/都市】
エレトゥス大陸連合諸国・地域
①《エレクトロニア都市圏》
【中枢制御国家/雷導連合の管理中枢国家】
■ 位置
エレトゥス大陸中部、沿海から内陸に広がる雷霊素集中帯の上に形成された多層型都市圏。
雷導炉を中核に、自然霊素流を人工制御するための地殻安定化帯が形成されている。
■ 成立経緯と国家機構の特異性
かつてこの地は、古代雷文明の残骸とされる断片的な霊素遺構が発見された区域だった。
帝国暦1220年代、雷素抽出理論が確立されると同時に、エレクトロニアは技術官僚団によって都市実験区として設計され、初期の人工霊素炉が設置された。
帝国暦1291年、属性戦争後の混乱の中で再稼働された新世代霊素炉《ヴァーティカル・レイ・リアクタ(VRR)》を中核とする制御都市が正式稼働。
エレクトロニアは“雷霊素の人工安定供給装置国家”として、連合成立(帝国暦1300年)以前から他地域に技術と霊素を供給しており、雷導連合発足の母体となった中枢機関である。
その後の連合形成において、エレクトロニアは自然な流れで中央行政・軍事・教育・霊素制御を一手に担う中心都市国家となった。
● 歴史的背景
・帝国暦初期は中小の技術都市国家が点在する非連携圏であったが、属性戦争の過程で技術同盟 《エレクトロ同盟帯》が誕生。
・「第一雷導炉」の安定稼働を契機に、戦後復興と霊素制御の要所として重要性を増し、雷導連合設立時に事実上の管理中枢に。
・元々は「臨時管理区」だったが、技術官僚による自己統治を経て、独自の法制・軍制・霊素制度を確立した。
■ 都市構造と機能分化
エレクトロニアは垂直構造×分散都市構造を併せ持つ国家であり、首都機能を持つ中枢核 《ゼンネリウム》を中心に、高度制御型の都市群が周囲に展開している。
▸ 都市層構造
・上層区
統合政庁・雷導中枢庁・霊素監察院など、国家中枢機関が集中。立法・政策決定層および霊素制御機構の監督者が居住。アクセスには政治資格が必要。
・中層区
研究機関、軍管区(雷導兵団中央司令)、LCA中央育成局などが存在。国民の1割程度が勤務・通学する知識・軍事・学術複合エリア。
・下層区
労働者居住区、基礎インフラ維持区域、廃棄物・霊素排熱帯、旧時代の構造体を再利用した居住構造。失業層・低等級労働層が集中。
■ 社会構造と国民制度
● 技術官僚による統制社会
国家運営は「雷導執政官会議(Central Electromagistrate)」が主導。これは官僚・科学者・霊素監察官による専門家集団統治であり、表向きの市民代表議会は諮問機関に過ぎない。
● 適性等級制度
市民には、出生・教育・霊素適性・精神安定指数などに基づいた「適性等級(T-Rank)」が割り振られ、それに応じて以下が決定される:
・就業分野(霊素制御職、軍属、行政補助、基礎維持労働など)
・居住区画(層区・自治区・再教育区)
・情報アクセス権限(報道・教育・霊素知識への可視制限)
・家族形成権・子育て認可の有無
● 教育・訓練制度
幼少期から霊素感受性の検査が義務化され、一定水準以上の者は強制的にLCA系列教育機関に進学。中等以降は軍属訓練・適性訓練と連動する。
■ 霊素と生活の関係
都市機能そのものが巨大な雷導変換装置の一部であり、市民の生活(活動・労働・精神波形)を介して霊素が収集・変換・蓄積される。このため、市民一人ひとりは「発電装置であり資源」として扱われる側面が強い。
・全市民に「霊素ID(EID)」が付与され、日常的に霊素動態・精神状態・社会行動が記録
・一定水準以上の不安定・逸脱行動は「自律制御法」に基づき、補正措置(隔離・再訓練)が適用される
■ 現代的課題と内部病理
・高密度霊素による神経障害・精神異常が一定割合で発生。都市では「適応障害死」「強制再配置」などの事例が隠蔽されがち。
・霊素犯罪(精神改変・記憶攪乱・同調干渉)が年々増加しており、監察院の取締強化が進行中。
・労働・軍属階級では、感情喪失症・脱感情適応症候群(EDA)の発症率が急増。
・表向きには“合理と管理の模範国家”とされるが、技術依存型ディストピアとしての懸念が国際的にも指摘されている。
■ 備考:他国との関係性
・エレクトロニアは他構成国に対して技術的・軍事的主導権を持つ一方、倫理的・文化的価値観の乖離から頻繁な対立を生んでいる。
・特にヨナリア島王国とは「精神媒介術式」を巡る深刻な倫理論争が続いており、霊素制御の一元管理体制をめぐる調整が今後の火種である。
② 《オルド=ハイアス連邦》【高地工業連邦国家群】
■ 位置・領域構造
エレトゥス大陸南西部一帯に広がる複数の高地都市国家と山岳領域から構成される資源連邦国家。標高2,000mを超える地域が多く、極端な地形と気候に適応する形で発展。現在は鉱業都市・霊磁鍛冶工房・企業自治区・軍政区の多層的な統治構造を持つ。
■ 成立経緯と国家的特性
・起源は帝国暦600年代、雷素鉱を巡る山間部の遊牧氏族間での資源抗争と、その終結を目指した《タングレン協定》にある。これが氏族連合(後のハイアス条約機構)の基礎となった。
・以後、時代ごとに雷導技術を制する者が地域支配権を持つ慣習が生まれ、氏族支配から企業資本、軍事政権までが混在する複合統治体に変質。
・属性戦争後、霊磁鉱や雷鉱の圧倒的資源量と、鍛冶・加工・兵器組立の歴史的蓄積により、雷導兵器製造の中枢国家群として雷導連合に組み込まれた。
■ 地理・自然環境と産業的背景
・地形:火山帯を含む複雑な地殻変動地帯。山脈間に鉱山都市が点在し、地下坑道は延長1,000kmを超える。
・土壌:雷鉱含有率が高く、赤土は酸化鉄・霊磁成分を多く含む。土地は不毛に近く、農業は限定的。
・災害環境:断層運動による地震・火山性噴気・霊素暴走災害が頻発。鉱毒や地熱障害による「霊性疾患」も社会問題化。
・高地生活:大気圧・酸素濃度の差により、生育環境が厳しく、住民は代謝・霊素耐性の独自進化を遂げている。
■ 社会構造・政治体制の複雑性
● 分裂的な統治機構
・連邦評議会は存在するが形骸化。実権は鉱区ごとの「政治母体」(氏族会議・企業連合・軍政評議会)に分散。
・例えば:
- 《ザイフ鉱山域》:三代続く軍政による戒厳統治。炭鉱少年兵が主要労働力。
- 《ヘラグ重工区》:雷導兵器メーカーの企業都市。経営層が市政と治安を掌握。
- 《カラグ草原帯》:氏族制度の名残を色濃く残す議会制の遊牧自治区。
● 社会的格差と労働制度
・「氏族準所属制」により、生まれた土地・血筋・労働契約によって生活・教育・移動が制限される。
・労働人口の過半数が18歳未満。未成年労働と訓練徴用が合法化されており、これは連合内の人権問題の火種。
・地下労働者・霊素鉱従事者に多発する“雷肺症”や“霊磁癲癇”などの職業病が深刻化。補償制度は未整備。
● 政治体制・国家構造の実態
・表向きの体制:オルド=ハイアスは形式上「連邦議会制」だが、実際は鉱区ごとの“機能別自治”で成り立ち、中央政府の統制力は限定的。
・主要政体の内訳:
- 氏族領:伝統的遊牧・採掘部族による合議制支配
- 企業領:採掘・加工企業による私有都市体制(事実上の企業独裁)
・軍政区:旧雷導軍司令部が駐留し続ける鉱区。治安維持名目で半軍事統治
・利権調整:資源輸出、兵器納品、労働配分を巡る対立が絶えず、「鉱区間紛争」が日常的に発生。
■ 軍事・技術と雷導連合内の位置
・重工業および雷導軍事技術の中核。特に以下の分野で突出:
- 装甲外骨格
- 霊磁反応炉部品
- 戦術機構用スラスター・脚部ユニット
- 雷導弾頭・散霊投射兵器
- 国内技術者のほとんどが軍需企業に準属しており、一般教育より職能訓練が優先される。
● 兵役制度と少年徴用
・名目上の「訓練付き労働実習制度(通称:青火コース)」を通じて、12歳以上の少年労働者が兵器製造・整備・前線補給に配属。
・一部は雷導兵候補としてスカウトされ、戦術学校ではなく実戦現場で“実地適性評価”を受ける。
・これに対しセリファスやヨナリア、ネムスなどが国際的に問題提起を繰り返している。
■ 現代的課題と国際的懸念
・内部治安が極めて不安定。「灰の手」「山霊連」「地下赤誓団」などの武装反体制組織が鉱山蜂起を繰り返している。
・労働移動の制限と教育格差により、脱連邦志向の若年層が増加し、密出国や連合他国への難民流出も。
・高霊素依存の産業構造から脱却できず、エネルギー転換や環境再生の国家戦略が未整備。
■ 雷導連合内での位置づけとパラドックス
・軍需・資源供給なしでは連合の軍事運用が成立しないため、国際的な人権批判を受けながらも不可欠な存在。
・「黒鉄の盾」「山脈の心臓」と呼ばれる一方、霊素災害の震源地とされ、“管理対象”としても密かに監視されている。
■ 現代的課題と未来展望
・短期的には、資源依存型経済の限界と深刻な環境破壊が連邦の持続可能性を脅かしている。
・技術的には、霊素環境制御技術の導入の遅れが鉱山の安全性を低下させ、作業効率や人命コストを悪化させている。
・外交的には、「エレクトロニアへの過度な輸出依存」が中央技術官僚層による支配強化を招き、連邦内の独立志向や反中央思想が拡大中。
③ 《ネムス=ヴァレ平原共和国》【民生型中立国家/農業連邦】
■ 位置・領域
ネムス=ヴァレは大陸中東部、かつて“穀倉地帯”と呼ばれた広大な沖積平野と丘陵地帯に広がる農業特化型連邦国家。複数の自律農業都市圏が連邦評議会を構成し、共通法のもとで穏健な中立政策と霊素農業技術の維持管理を行っている。
■ 国家成立の経緯と独立的立場の確立
・属性戦争時における都市崩壊と物流寸断により、大陸全域で大陸全域で深刻な食糧危機(通称:第二干魃)が発生。各地の共同体が霊素農法の再編成を模索し、特にネムス地方に点在していた独立農業共同体が雷霊素による環境再構築技術(気候制御農業)に成功。
・帝国暦1295年、各共同体は「地利の連帯による生活共同主義」を理念に連邦協定を結び、《ネムス=ヴァレ共和国》が発足。
・同時に、大陸諸国との間で「霊素農業中立協定(通称:ネムス協定)」を締結し、技術提供と引き換えに政治的・軍事的中立性の保障を確保した。
・当初は防衛力皆無の弱小共同体だったが、他国の兵站依存を逆手に取り、外交的な独立保障(食糧協定)を各地と締結。
・帝国暦1305年、“穏健中立国家としての法的地位”が雷導連合内で正式に認められた。
■ 自然環境・地理的特性
・土壌:雷霊素に対する適応性が極めて高い炭質黒土(エレクタローム層)を有し、施術型耕作術と組み合わせることで高効率作物生成が可能。
・地形:緩やかな丘陵と帯状平原が交互に連なり、防風林帯と水流制御系によって広域環境を人工的に安定化。
・地勢: 西部の丘陵帯は牧畜と果樹栽培、中央平原は稲作・霊素野菜生産、東部の河川流域は淡水・水耕作物の生産地として機能分化。
・インフラ: 全国的に張り巡らされた「気候制御塔群」と人工水路が灌漑・湿度調整・雷害緩和などを実施。
・霊素特性: 天然雷脈が浅層に流れているが、過度な人工干渉は避け、“霊素との共生”を基本理念にしている。
・気象制御:気候塔と「雷気封環網」によって干ばつ・冷害・嵐の被害を最小限に抑えるシステムが確立。
・生態系:霊素変動による生物多様性の偏りも見られ、生物農薬や生態系維持型農法が技術文化として根付いている。
■ 社会制度・行政体制
● 連邦制度と評議会政治
・各農業都市(=自給自治圏)は高度な自治権を持ち、「作物議会(The Agrarian Assembly)」に代表を送ることで中央行政に参加。
・連邦憲章により、食糧生産の自己完結性、軍事忌避原則、技術中立保持が法的に定められている。
・実務レベルでは、「霊素農政局」「土壌生態庁」「水利協同局」など、環境と技術の統治機関が政治の主軸。
● 市民構造と生活単位
・市民の90%以上が「農業ギルド」に属しており、これが生活・医療・教育・自治まで担う横断型共同体。
・ギルドは職能別に細分化され(例:霊素気候技術士、耕地監理士、農具霊匠など)、独自の資格制度と世襲継承を持つ。
・教育は「自然=霊素=生活」の連続性を基盤とし、小中等教育から専門農業術式まで一貫して指導。
■ 軍事・外交戦略
・憲法により常備軍の保持を禁じられており、雷導兵団への派兵も最低限(衛生部・輸送技術者中心)。
・各自治圏には「緊急災害対処隊(C.R.R.F.)」があり、これは気候障害・霊素流出・物流寸断などに対応する防災専門部隊であり軍ではない。
・外交では「霊素農法の非武装中立化」「技術越境禁止」などを軸に、ラシディア・セリファス・ヨナリアとの倫理同盟的な非公式外交を維持。
■ 現代的課題と不安要素
● 技術安全保障の揺らぎ
・近年、都市制御塔や灌漑術式に対するサイバー攻撃(出自不明)が複数発生。特に外部AI制御装置との干渉が懸念されている。
・自動化技術を導入しきれていないため、制御塔システムの再起動や霊素排出調整を手動で行う旧式運用が災害時のリスクとなる。
● 若年層の価値観変化
・都市化された他国(特にエレクトロニアやフロム)との文化格差により、一部の若年層が「農業国家の限界性」に不満を抱き、外部への流出が続発。
・教導局制度への不参加により、連合内での出世経路や影響力に限界があり、「国際的孤立化」が起きかけている。
● 食料外交のジレンマ
・自国の中立を維持する一方で、他国の食料依存を背景とした政治的圧力(価格・輸出制限交渉など)が増加。
・「飢餓を外交カードにすべきでない」という国是と、現実の防衛資源不足の間で政策的な葛藤が表面化している。
■ 文化・価値観
・土地と霊素は不可分であり、「大地に詩を、作物に名を与える」文化が存在。
・過剰な工業化や兵器化を「霊素の冒涜」と見なす倫理観が国民に根付いており、技術よりも“適応”を重んじる。
・葬儀は「種の還元儀」と呼ばれ、死者は“種として再び大地に返る”ことが霊的完成とされる。
■ 備考:連合内の位置づけ
・ネムス=ヴァレは雷導連合内で最も「倫理的な存在」と見なされており、技術中立・資源自律のモデルケースとされる。
・他国にとっては“理想”でありながら、“交渉が利かない存在”として警戒されることも多い。
・セリファスやヨナリアとは霊素倫理観で共通点が多く、非公式な文化・教育交流も継続中。
④《ラシディア深層自治区》
【半独立地下国家/学術統制研究都市群】
■ 位置と成立経緯
● 地理的位置:
エレトゥス大陸中央西部、かつての王国領ラシディアの直下。現在のエレクトロニア都市圏との地政学的“重なり”にあるが、完全に地下へ移行した独立行政領。
■ 歴史的背景と「地下移住」の必然性
● 科学技術の暴走と崩壊
ラシディアは帝国暦900年代初頭、「雷素理論黎明期」の先端を走っていた高学術国家であり、精神領域と雷霊素の相互干渉に関する研究を初めて体系化した。
しかし、過剰な雷導圧を地脈に直接干渉させた実験が暴走し、地表一帯に“霊素濁流”と呼ばれる広域汚染現象を発生させる(事件名:《沈降事変》)。
結果として、広大な都市圏は「霊素過飽和による常時幻覚層」に包まれ、居住不可の“死域”と化した。
王族・研究者・市民らは地下の鉱床や天然洞窟へ逃れ、旧ラシディア遺構と古代文明の残存施設を接続・再利用して地下移住国家体制を構築する。
■ 国家体制と行政構造
● 政治・行政モデル:
評議制テクノクラシー(専門職統治制)を採用。立法・行政権は《解析庁(Analysis Bureau)》が司り、各学域(Departmental Domain)が自治的に機能。
・国民は「専門資格(Academic Warrant)」と「学識等級」によって法的地位・居住階層・投票権が決まる。
・一般的な市民権は、最低限の科学教育と試験を経て「知的適性者」として認定されて初めて付与される。
・学域間の権力争いや成果主義的序列制度が固定化しつつあり、若年層の精神疾患や社会離脱者の増加が問題に。
■ 都市構造・地下環境と技術
● 居住・機能配置:
・地下層は大きく5階層に分かれ、それぞれに生存インフラ/研究機構/市民生活/霊素管理/封鎖区が配置されている。
・最大の都市核 《カレイド=レイヤ》は直径8kmに及ぶドーム型空間で、光学投影式の昼夜サイクルと人工気象が制御されている。
● 環境維持技術:
・人工霊素灯(Lucis Array): 地脈から抽出した低純度霊素を可視光変換。波長管理により精神状態の安定も狙う。
・風導循環システム(Aerovent Circuit): 鉱脈内の空洞を通じて空気を循環。季節感は存在せず、居住者は「時間薬」を服用して体内リズムを維持。
・水系管理: 地下水層と再生水循環網を組み合わせ、極限まで閉鎖系に近づけた自給システム。
■ 社会制度と倫理問題
● 市民構造:
・市民は原則として1つ以上の研究ギルドまたは技術院に所属。
・「人格再構築」「記憶干渉」「精神同調演算」など、高度に倫理的限界に接する領域が主力技術分野。
・一部市民は自らの記憶データを外部化し、人格補正や多重認知化(複数プロファイル)を施した状態で生活している。
・社会的に“純正人格”よりも“調整済み人格”が優遇される傾向が強まっており、内在する差別構造が国際的非難の的にもなっている。
■ 軍事技術・連合内での立場
● 軍事応用:
・主力技術は精神干渉兵器・幻視誘導装置・人格撹乱弾・思考遅延波術式などの「非物理型戦術技術」。
・ラシディア製兵装の多くは“生体と意識”の領域に作用するため、敵味方問わず使用には厳格なガイドラインが必要。
・一部では「戦場倫理違反(Cognitive Warfare Protocol Violation)」と見なされるケースも。
● 連合との関係:
・雷導連合には形式的に加盟しているが、常に準独立外交権限を保持。
・教導局制度には協力しており、精神干渉訓練カリキュラムの監修などに関与。
・一方で、セリファス・ヨナリアといった倫理派国家とは思想的な対立軸を持つ。
■ 現代的課題と内部のゆらぎ
● 倫理と制度の境界問題:
・「人格変調」や「霊素誘導による自己認識改変」は、もはや国家政策レベルの治療・教育制度に組み込まれており、外部からの批判を受けつつも変更の気配はない。
・現在、人格複製を用いた戦術AI開発において“自我の権利”を巡る大規模な内部訴訟が進行中。
● 若年層の離脱・逃亡問題:
・上層研究階級に適応できなかった若者たちが地下社会からの逃亡を試み、エレクトロニアやネムスへ移住・亡命するケースが後を絶たない。
・逃亡者による「内部告発」も一部存在し、ラシディアの研究倫理問題は国際社会で継続的な争点となっている。
■ 評価と立ち位置
・エレクトロニアに次ぐ“知の武器庫”でありながら、倫理的爆弾を抱える危険な国家。
・雷導連合にとっては「切れないカード」であり、ラシディアの離脱は軍事技術的に連合の崩壊を意味する。
・その一方で、地上世界の常識から隔絶された“知性至上国家”として、文化的・人道的距離は極めて大きい。
⑤《フロム海峡諸島連合》【重層軍港国家群/沿岸軍事・商業都市圏】
■ 位置と自然条件の再定義
・位置:大陸北部〜北西に伸びる海峡地帯およびその沿岸部、複数の大中規模島嶼
・海峡名:フロム海峡(Fromm Strait)
・北極海系と中央海「マガローデ洋」を接続する要衝
・強風と季節性海流が特徴で、航行の難易度が高く、戦略的価値が極めて高い
■ 成立の歴史と国家構造
・起源は約600年前、沿岸の漁村と交易港が結束して海賊・外来勢力からの自衛を目的に形成された「海峡防衛同盟」
・終焉戦役期(帝国暦1365〜)には、敵性勢力による制海権掌握を防ぐため、沿岸全域を要塞化・軍港化
・現在では、10以上の港湾都市が自治権を持つ連合国家であり、通称 《フロム連合》と呼ばれる
■ 都市構造とインフラ
・各都市は堅牢な埋立基礎の上に築かれた港湾拠点であり、主要施設(艦船ドック・戦術機整備区・監視塔)は旧軍事設計のまま運用
・高台に多層防壁都市が展開し、港湾エリアと生活エリアを分離
・港ごとに役割が分担されており:
アルゲン港:艦隊母港/雷導艦の中継点
テルミナ港:航行監視・通信網の中心
ベルトラ港:訓練・演習拠点、連合士官学校所在地
オルセイ島:漁業・物資供給の民間港
■ 政治体制と軍事連携
・政体:都市同盟型の連邦制自治体構造
・各都市が一定の主権を持ち、年に一度 《フロム軍政議会》に代表を送る
・実質的には「軍事と防衛のための協力体制」であり、中央集権は存在しない
・各都市には「港主」が存在し、政軍分離が明確化(行政・軍港指揮の二重体制)
■ 経済と生活
・基幹産業:
- 軍需製造(雷導艦部品・航行術式機構)
- 海運と中継貿易(北海圏・ヨナリア航路)
- 漁業と寒冷地型農業(塩蔵・海草養殖・地熱栽培)
- 環境は過酷で、風雪と湿潤が常態。石造建築・地下貯蔵庫・分厚い外套文化が根付いている
- 市民は防衛意識が高く、徴兵ではなく職能別常備兵制度が導入されている
■ 現代の課題と立ち位置
・雷導連合内では「防衛と主権のバランス」が常に交渉材料となる
・中央からの雷導兵配備に消極的(地元防衛志向が強いため)
・逆に、海上封鎖・航路制御などでは不可欠な軍事インフラ国家
・軍港としての性質から、中立性は保ちつつ、他大陸の商船・難民にも門戸を開く特殊な立場
⑥《セリファス統合州》【記録行政国家/文明継承の守護領】
■ 国家概要・成立経緯
―「戦わずに生き残る」ことを選び続けた国家―
セリファス統合州は、雷導大陸北東部の内陸盆地に成立した、文官統治と記録行政を基盤とする非軍事国家である。
その起源は古代王国時代にまで遡り、当時からこの地は「交易路・宗教圏・文化圏の交差点」として、法・契約・記録を担う中立地帯であった。
軍事力による覇権争いが常態化する中で、セリファスが生き残れた理由は明確だ。
この国家は早い段階で、
・武力ではなく法と記録による統治
・神権や王権から距離を置いた文官官僚制
・霊素を「利用対象」ではなく「観測・保存対象」とする思想
を選択し、いずれの陣営にも属しきらない「記録の場」として機能し続けた。
終焉戦役においても、セリファスは前線国家ではなかった。
だが、各国が消耗し、歴史・契約・霊素履歴が失われていく中で、「何が起き、誰が何をしたのか」を唯一体系的に保存していた国家として、その価値が急速に高まった。
雷導連合成立時、セリファスは武力も資源も持たなかったが、
「連合が成立するための法的・歴史的根拠を提示できる唯一の国家」であったため、結果として不可欠な構成国となったのである。
■ 国家機能
―支配せず、裁かず、だが忘れさせない―
セリファス統合州は、雷導連合において以下の中枢機能を一手に担う。
⚫︎国家級アーカイブ管理
・法律文書、条約、霊素事故記録、戦争経過、失われた文明史の保存
・改竄防止のため、多層暗号化された「原本保管層」と「参照用写本層」を分離
⚫︎外交・軍事協約の監査
・各国間条約の原本管理と履行監査
・条約違反の公式認定権は持たないが、「違反の記録」は必ず残す
⚫︎霊素法倫理の立法補佐
・雷導連合評議会における法理事務局を兼任
・霊素運用が人格・記憶・歴史に及ぼす影響を法体系として整理
⚫︎官僚育成国家
・高等文官、記録技官、教育官の育成
・現在、連合官僚層の約4割がセリファス出身
・「中立的思考」「感情統制」「記録倫理」を叩き込まれる教育体系
⚫︎霊素記憶律の研究
・霊素が環境・人間・歴史に与えた影響を追跡
・記憶改変・歴史歪曲の痕跡検証(特に終焉戦役関連)
■ 国家構造・統治体制
―王も神も持たない国家―
⚫︎政体:議政領主制(文官貴族制)
・代々、記録官・法官を輩出してきた文官名家による「記憶議会」が最高統治機関
・血統ではなく「家系としての記録責任」が地位の根拠
⚫︎地方制度
・古代七郡制を起源とする州制を維持
・各州は高度な自治権を持つが、中央法規と記録義務は厳守
⚫︎軍備
・常備軍なし(完全非武装)
・ただし、全市民が霊素災害・記録保全のための防災訓練を義務教育で受ける
・「逃げる」「守る」「記録を残す」ことに特化
⚫︎宗教政策
・国教なし
・神話・信仰はすべて「文化史」「思想史」として扱われる
・政教分離は憲法レベルで厳格に規定
■ 自然地理・国土と都市構造
―記録に適した土地が、国家を形作った―
⚫︎地理
・雷導大陸北東部、河川と湖沼が集中する緩やかな丘陵盆地帯
・外敵侵入が困難な地形で、古代から戦争被害が少なかった
⚫︎環境
・霊素濃度が安定しており、精神系・記憶系研究に最適
⚫︎首都:《アーカイン=セリフィア》
・大湖上に築かれた同心円状の環状都市
・内環から外環へ向けて機能が段階的に配置
都市構成:
・第一環:原典記録庫・禁書保管区
・第二環:法務院・外交文書局
・第三環:高等教育機関・研究大学
・第四環:市民居住区・生活区画
水上都市構造は防衛目的ではなく、湿度・温度・霊素安定性を最大化するための設計である。
■ 現代的課題と矛盾
―「知っていること」そのものが脅威になる―
・セリファスは「中立」であるがゆえに、各国の不都合な過去をすべて知っている国家でもある
・記録改竄・情報消去を求める圧力は年々増加
・ラシディアやエレクトロニアの人格・記憶研究に対し、法的・倫理的ブレーキ役を担うが、敵も多い
・市民の間では「何も決めない国家であること」への不安も存在
■ 連合内での立ち位置
セリファスは、
剣も雷も持たない代わりに、連合の“良心”と“墓標”を担う国家である。
誰もが都合の良い未来を語る中で、
「過去に何があったか」を消さずに残す。
それが、この国家の存在理由であり、
同時に最大の危険でもある。
⑦《ヨナリア島王国(Yonaria Island Kingdom)》
【文化特化型国家/精神媒介雷導文明】
■ 国家概要・成立経緯
ヨナリア島王国は、エレトゥス大陸東方の環状海域に位置する列島国家であり、古代より「八島伝説」に基づく島嶼共同体として成立してきた。
雷霊素を自然環境との共鳴によって受容・制御する文明体系を持ち、精神媒介式術式 《霊詠術》を中核とする独自の雷導文化を継承している。
連合内では数少ない、技術合理主義以前の雷導文明を現在まで保持する国家である。
■ 機能:
・精神媒介式雷導術 《霊詠術》の体系的継承と教育
・雷霊素と精神波形の相互干渉に関する基礎研究
・記憶・魂・霊素の関係性に関する倫理体系の保持
・連合内における霊素運用倫理の抑止的存在
・非自動化・非人格改変型術式体系の保存
■ 特徴:
・雷霊素を制御対象ではなく対話対象として扱う思想を持つ
・術式の自動化・兵器化を拒否し、必ず「詠士個人の精神状態」を介在させる
・術式教育は精神修養・礼法・武技と不可分
・技術発展速度は遅いが、霊素暴走事故の発生率は連合最低水準
・文化・宗教・政治が分離されず、相互に強く結びついている
■ 地理・自然環境:
・火山弧に沿って形成された八つの主要島嶼と多数の小島から構成される
・地震・雷雲・季節風が頻発し、雷霊素濃度が自然に高い
・各島は固有の霊脈と地形を持ち、それぞれ異なる術式文化を形成
・中央主島 《世那霊島》に雷霊素の自然収束域が存在
■ 政治・社会構造:
・旧来は武家門派による封建的島嶼連合体
・現在は立憲王政だが、実権は八島門派評議会と民選議会の合議制
・王室は象徴的存在として宗教儀礼・外交儀式を担う
・各島は高度な自治権を保持し、術式教育と文化政策は門派主導
・中央集権化には強い拒否感が残る
■ 文化・宗教・思想:
・雷霊素・祖霊・土地を不可分とする「霊諦信仰」が社会基盤
・言語 《響語》は術式構文と一体化しており、記録と言葉は別体系
・建築・武器・都市には必ず「名」が与えられ、霊印を持つ
・死者・敵味方を問わず鎮魂儀礼を行う文化が根付く
・「術とは存在を記す行為」という価値観が共有されている
■ 軍事・術式運用:
・常備軍は小規模
・各門派が独自の防衛術式部隊を保持
・自動雷導兵器・人格改変技術は国家法で禁止
・戦闘時も霊詠儀礼を重視し、殲滅より封印・鎮静を優先
■ 連合内での立場・対立:
・エレクトロニア:
霊素支配・自動化思想と根本的対立
・教導局制度:
人格改変・標準化訓練に強く反発し、統一規格から除外
・セリファス:
記憶操作・人格再構築研究に対し倫理的批判
・一方で、霊素倫理の抑止軸として連合に不可欠な存在
■ 国家成立の歴史的経緯:
・古代:八島武家社会による島嶼連合体成立
・中世:霊詠術体系確立、門派制度固定化
・近世:雷導文明の兵器化を拒否し独自路線を維持
・終焉戦役:霊詠術による雷霊素暴走封鎖で国家存続
・現代:連合参加後も文化・術式自治を保持
【内部制度 ― 教育と軍事統合】
◆ LCA(雷導中央育成局)制度
・中心:エレクトロニア中央育成局
・支部:各連邦構成地域州に設置
- 港湾支部(フロム海峡)
- 平原支部
- 鉱山技術支部
- 記憶干渉支部
- 文化理念支部
- 深層研究支部
各支部は、局本部の育成方針に則りつつ、地域特色を活かした適性訓練・霊素研究・術式哲学教育を担う。
【国際関係と見えない戦争】
◆ 条約遵守と技術深化
雷導連邦エレグラフィアは、形式的に七極均衡条約を批准。
だが「属性技術の軍事転用禁止」を遵守しながらも、技術深化を続けている。この矛盾は、他大陸にとって最大の不信要素となっている。
◼︎継続監視対象:
・雷導網出力変動
・魔導インフラ更新頻度
・技術研究人員の移動
・エネルギー・触媒消費傾向
ルミナス聖皇国を中心に、情報監視・極秘解析が続く。
【現代評価と構造的危険】
雷導連邦エレグラフィアは、兵器ではなく文明機構としての戦争統合を成立させる国家体に進化した。
・都市=兵器装置
・平時=戦時の機能内包
・技術・霊素網の制御が戦力
これは条約が想定しなかった「戦わずして戦場を持つ国家」であり、従来の軍事力評価では捕捉できない構造的強靭さを持つ。
【雷は眠らない】
雷導連邦エレグラフィアは、兵器を放棄していない。
だがそれは「都市という巨大な導線の中に、次の出力指令を静かに待つ戦力として潜む」という形で存在する。
条約は守られた。だが世界は終わらない。
【中枢と周縁のねじれた均衡】
このように、エレトゥス大陸連合は「平和的再建」の名のもとに統合された組織ではあるが、その内実は各国の利害と技術格差による緊張の同居である。
特に、《エレクトロニア》と《ヨナリア島王国》の関係は、「兵器国家」と「信仰と記憶の国」という対立構造の象徴であり、両者の思想と術式体系の隔たりは埋めがたい。
【まとめ】
エレトゥス大陸の連合国は、見かけ上は一枚岩の技術共同体であるが、その実態は多層的・多極的な均衡体制であり、「統一の中に不統一を抱えた国家体」である。
・エレクトロニア=技術覇権
・ネムス=民生調停
・ヨナリア=文化対抗軸
・ラシディア=闇の研究領域
・オルド=労働と対価の暴力
・フロム海峡=武装中立圏
・セリファス=死者の記憶国家
この中で雷牙やリアナ、クロエが生きる都市とは、単なる「戦いの舞台」ではなく、理想と恐怖が同居する“国家の意思”の投影体である。
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雷導連邦憲章 ――政治・外交・軍事条項(抄本)
制定:帝国暦1300年
改訂:帝国暦1335年・1350年・1363年(現行)
制定機関:連邦中央統制議会《ゼンネリウム評議会》
施行地域:雷導連邦エレグラフィア全域(構成7国家)
■ 第一章:政治構造条項
◼︎第1条【連邦主権】
雷導連邦エレグラフィア(以下「本連邦」)は、全構成国家の主権と文化的自治を尊重しつつ、雷導技術の維持・発展と共通安全保障の名のもとに統一された政治基盤を築くことを目的とする。
◼︎第2条【評議会制度】
本連邦の立法・政策調整は中央高層区 《ゼンネリウム》に設置される「統制評議会」により遂行される。構成国家は平等な代表を出すが、投票権は以下の三要素により調整される:
・技術貢献指数(TCI)
・雷導網維持率(NMI)
・緊急対処能力(ERC)
※これにより、エレクトロニア都市圏が実質的優越権を保持する構造となっている。
◼︎第3条【構成国の自治】
構成国は文化・宗教・経済・教育において独自の施策を講じることができるが、霊素・雷導技術・兵力展開に関する主権は連邦に委譲される。
■ 第二章:外交条項
◼︎第4条【均衡体制の遵守】
本連邦は、七極均衡条約を正式に批准し、「大陸間戦争の抑止」「属性兵器の非展開」「霊素倫理の国際基準」を遵守する。
◼︎第5条【霊素交流と監視】
外部国家との雷導技術共有は、連邦中央の《対外技術庁》を通じてのみ許可される。これに違反した場合、違反構成国には霊素供給制限・教育権剥奪の処置が科される。
◼︎第6条【沈黙外交原則】
本連邦は外交上、原則「技術は語らず、成果のみで示す」沈黙外交戦略を採用する。加盟国はいかなる情報戦・宣伝戦にも連邦承認なく関与してはならない。
■ 第三章:軍事条項
◼︎第7条【非軍事化の表明】
本連邦は「兵器」の開発・保有・展開を禁止する。ただし以下の範囲は「非軍事目的技術」として合法とする。
・都市防衛網としての雷導障壁
・災害救助用の即応型術式機構
・教育訓練用の模擬戦術装置
※これらが実質的には武装兵器であっても、「名目上」が合法であれば条約違反とはならない。
◼︎第8条【LCA制度の特例】
統一軍事教育制度「LCA(雷導適性訓練)」は、霊素教育の一環として正規に認可される。候補生はあくまで「術式適性者」であり、「兵士」ではないとする。
・ただし、LCA認定者が実戦投入される際は、例外条項23-βに基づく「災害対応要員」として運用される。
◼︎第9条【緊急動員権】
連邦中枢が霊素侵食、対霊性災害、大規模外的攻撃の脅威を認定した場合、全構成国家の都市機能・術式兵装を即時動員する権利を保持する。
・この条項により、「平時の都市」がそのまま「戦場」へとシームレスに転化可能となっている。
■ 第四章:霊素管理・倫理規定
◼︎第10条【霊素の公共性】
霊素は個人の所有物ではなく、雷導社会の全構成員が共有すべき公共資源である。そのため、過剰吸収・特異占有は禁止される。
◼︎第11条【人格干渉の制限】
霊素干渉技術による「記憶操作」「感情調整」「人格模倣」は、以下の条件を満たす場合に限り合法とする:
・研究拠点がラシディア深層自治区に限定されていること
・対象が非人間個体または記憶複写体であること
・監査官が立ち会い、術式の記録が全て残存していること
※これらは国際的に常に倫理問題の対象であり、“見えない火種”とされる。
■ 第五章:結語
雷導連邦エレグラフィアは、
「雷の技術を戦いではなく、秩序と繁栄の形に再定義する」という理念の下、霊素を制度に溶け込ませ、平和の中に防衛を、生活の中に戦力を織り込む体制を維持する。
だがこの秩序が崩れる時、
都市に沈む雷は――一斉に、目覚める。
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雷導適性訓練制度〈LCA〉教育理念文
帝国暦1330年制定/帝国暦1360年改訂
発行:雷導教導局
監修:連邦中央統制議会《ゼンネリウム評議会》
■ 第一節:理念
「力は天賦にあらず。適応は責任である」
本連邦は、霊素に適応する者を“選ばれし者”ではなく、“選び続ける者”と定義する。
雷導適性は偶然に授かるものではなく、制御し、理解し、社会に還元する努力の果てに成り立つ。
LCA制度は、その努力を制度化し、霊素と共に生きる術を教え、社会の構成要素として彼らを育む場である。
■ 第二節:教育の四原則
1. 制御
・術式は「強さ」の証明ではない。それは「理解の深度」である。
・自らの霊素動態を理解し、安定して運用できる者のみが、術式を“使う資格”を得る。
2. 共存
・適応者は孤高であってはならない。
・社会との接続を保持し、他者との連携を学び、「力を共有する」在り方を知ることが最も重要である。
3. 倫理
・術式の利用は、常に目的と影響を考慮しなければならない。
・たとえ合法な行使であっても、それが信頼・尊厳・環境に対して破壊的であるならば、「正当な使用」ではない。
4. 継承
・雷導の技術は個人の資産ではなく、文明の財産である。
・適応者は後世に知を残し、記録と経験を「術式の文化」として受け渡していく義務を負う。
■ 第三節:適応者に求められる心構え
・力を誇るな、使い方を誇れ。
・暴発は過失ではなく、教育の不履行である。
・英雄にならずとも、支える者となれ。
・孤独は武器にはならない。共鳴だけが、戦場を越える。
■ 第四節:雷導と文明の関係
本連邦は、雷導技術を単なる「戦術的優位の手段」と捉えない。
雷とは、
・意思を媒介し、
・都市を駆け、
・命を運ぶ文明の導線である。
その力を制御できる者とは、社会の神経系となり、文明の血管を担う者である。
だからこそ、雷導適性者の教育とは、「戦士を作ること」ではなく、「文明の担い手を育てること」に他ならない。
■ 結語
力を持つ者が選ばれるのではない。
力をどう使うかを問い続けた者だけが、未来に選ばれる。
ゆえにLCAとは――
選ばれた者の証ではなく、選び続ける者の道である。




