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第79話 戦うことの意味



 ――走る。



その形容が正しいかどうかはわからない。相手の懐へとダイブする一歩。それは閃光のように地面の上を変遷し、直線的な模様を描いた。地面が抉れたのは閃光が迸った後だ。まるで落雷が空中を泳いでるみたいだった。



体の芯を揺さぶる音が、空気の表面を弾く。



 動く足。


 捻れる吐息。



フィールドの中央に横断した“影”は、確かな実体の線を深々と捉えていた。緩やかな放物線もなく伸び切った「時間」。その”先端”にいたのはひかり先輩だ。カーティス先輩の視線の内側を抉るように移動した電流の軌跡は、ステップ音もないままに相手との間合いをかき消した。地面はまだそこにあったんだ。彼女と彼が足を下ろせる、――「間合い」が。


ただ、その「距離」を切り裂いたのはひかり先輩の“脚”だった。



 ――爪。



“それ”が、閃光の中にかけ走る。


時間はどこまでも速く2人の境界線を捉えていた。


息を衝く間際に投じられた前進——


その跳躍が、敵の視界の内側へと潜り込んだ。




狼の牙。



時にひかりの攻撃は、電流を身に纏った巨大な狼が、“敵の体を噛み砕いているように見える”と形容されることがあるそうだ。事実フィールドの中で起こったことは、唐突と呼ぶにはあまりにも豪快で――鋭かった。


瀕死だと思われた彼女の様子が一変し、大地が“揺れ”た。右手に出現した爪のような剣先が強烈なスパークを発しながら、地面スレスレの〈空気〉を穿つ。



 ドッ



それを「斬撃」と言って良いのかはわからない。爆発的な脚力で地面を蹴った彼女は、右手に伸ばした「牙」を下に垂れ下げたままだった。


脱力した状態からの跳躍。


その飛翔の途上に視えたのは、ギリギリまで敵の位置を呼び込もうとする「呼吸」だった。


カーティスの体に届く距離。その境界面まで近づこうとも、決して攻撃を先走らない。


確実に、——しかし大胆に仕留める。


確かな“気概”と澄み切った殺意が、1つのモーションの中に込められていた。


振りかぶった右腕と、とめどない時間の奔流の底に。



鮮血はなかった。


空気が“破れた”ような音だけが、そこにあった。


バケツをひっくり返した水が地面とぶつかる。


あるいは山から落ちてくる雪崩が、勢いよく斜面を滑り落ちる。


景色の断片そのものを変えるほどの「厚み」が、空間の中心を捉えていた。その様子はまるで口を開けた狼が、獲物の首を刈り取る姿そのものだった。



“狼の咆哮”が、なるやかな平面の鼓膜に落ちる刹那――


空間の持つ皮膚そのものが二つに千切れたような錯覚を伴いながら、鋭くも不確かな「線」が駆け抜ける。


岩の衣を着たカーティスの右半身が跡形もなく消え去る。


風が砂を散らすように、また、霧が晴れた空のように、——広がる。



地面の上に立ち尽くす1人の男の影が、まだその「場」に残っていた。


カーティスはまだ“立っていた”。


立ち、次の攻撃へと備えていた。


周りにいる候補生にもそれは微かに感じられた。


あの時確かに防御の体勢を整えようとしていた。


正面から向かってくるひかりの軌道線上に、動いていた。


 ――それでも



微かに動きが鈍ったように見えたのは、見間違えだったんだろうか…?

2人の足元で地面が僅かにうねったように見えたのは…?



 わからない。


ただ1つ言えるのは、確かな結果がそこにあるということだった。


審判団が試合終了の合図を告げた。


「明白」だったからだ。


この試合の行方。


勝敗の行方が。




 ドサッ




……勝った


ひかり先輩が勝ったんだ…!


慌てて目を擦った。クレーター状に凹んだフィールドの中心。先輩たちが放った斬撃の軌跡が、交錯した2人の地面の上を抉っていた。試合終了の合図とともに、カーティスは地面に倒れた。



…終わった


ほんとに終わったんだよな…?


つい、目を疑ってしまう自分がいた。それぐらい目まぐるしく、激しい展開だったから……


胴体を貫かれてたんだぞ…?


間違いなく、カーティス先輩の槍が彼女の華奢な体を貫通してた。あの時思わず目を瞑っちゃったんだ。どう考えてもヤバすぎる一撃だったから…



 ババッ

 


試合が終わるや否や、審判団と医療班のチームが一斉にフィールドへと駆け込んだ。

その動きは迅速かつ無駄がなく、訓練された部隊であることが一目でわかる。

彼らは迷いなく試合を終えた二人の元へと向かい、残留霊素の反応を確認しつつ身体への影響をチェックしていった。


観客席から見ていた時にはわからなかったが、間近で見ると2人とも明らかに消耗しきっていた。

特にひかり先輩は膝から崩れ落ちるようにその場に座り込んでいた。

まるでフルマラソンを走りきった直後のアスリートのように、肩で大きく息をしている。


「……っくそぉぉぉ、カーティスのヤツ……!」


悔しそうに地面を拳で叩きながらも、どこか清々しい声色だった。

一方で駆け寄った八雲先輩たちは、少し呆れたような、それでいて心配そうな顔で彼女に声をかける。


「大丈夫か?」


「……ま、なんとかね」


「運が良かったな。ここが演習じゃなかったら、頭を貫かれて終わってたぞ?」


「うるっさいなあ……まさか上からアレが降ってくるとは思わなかったし……」


「上から? ……ああ、あれか」


俺も、思い出した。


試合中、スキャナーには確かに反応が出ていた。

ただ雲のように広がる霊素反応で、てっきり高度の砂嵐が滞留してるだけかと思っていたんだ。

まさかあれが――“超巨大な岩石”だったとは。


その時だった。



 シュゥゥゥゥゥ……



静かな蒸気音のような響きが耳に届いた。

何事かと振り返ると、カーティス先輩の体から白い煙が立ち上っていた。


「……え、何だこれ……?」


驚きの声が漏れた。


白煙はただの蒸気ではなかった。

微かに光を帯び、霊素が粒子となって空気中を漂っているのがわかる。

そしてその中心――カーティスの肉体がまるで“再構築”されるかのように修復されていっていた。


「回復してんだよ。知らなかったのか? LCA直属の医療班はめちゃくちゃ優秀だぞ」


近くにいた先輩が、当然のように言う。


いや、なんとなく知ってはいた。

演習には常に医療班が控えていて、霊素を用いた高度な応急処置が可能だということは。

けど――まさか腕ごと消し飛んでいた肉体でさえ綺麗に元通りになるなんて。


「……マジで、やべーな……」


思わず息を呑む。


っていうか、これってルール的に大丈夫なのか??勝敗を決めるルールは、“戦闘不能になるかどうか”だ。ただ過剰な攻撃は失格に該当することがあるらしい。これってどう見ても「過剰」だと思うんだけど…


「大丈夫大丈夫。クラス1の候補生を甘く見んな」


カーティスの体はみるみるうちに回復していった。まるで、何もないところから物体が泡立ってきているみたいに。ブクブクと細かい粒子が膨れ上がり、消失したはずの肉体が繋ぎ合わさっていく。


――これが、LCA中央医療局直轄の特別医療班《通称:再構班》による、即時再生術式とその結界領域。


 「第六術式ブロック、正常稼働確認。霊素反応、経路内で安定。再生位相、あと12%」

 「神経接続ポイント、回復完了」

 「筋繊維、順次再構成中――部位13、臓器領域に若干の遅延あり。最適化アルゴリズム移行します」


淡々と、だが異常なまでの精度で処理が進められていく。


フィールド脇に設置された半球型の転送装置 《メディカル・ドーム》の中、白い光に包まれた無数の幾何学式が、カーティスの身体を中心に展開していた。


その中心に立つのは、一人の異彩な存在――


「はいはい、どいてどいて〜。ここから先、素人立ち入り禁止ね〜」


そう言いながら現場にズカズカと入り込んできたのは、真っ白なコートに電子回路めいた模様を刻んだ制服を着た女性。


白銀の髪を乱雑に編み込み、片目を覆い隠す長い前髪。

腕には金属製の管とバイタルタグの束。

背中には医療とは到底思えないほどゴツい霊素タンクが担がれ、それに繋がる幾本ものチューブが歩調に合わせて揺れていた。


「霧崎……アマネ……」


先輩の1人が眉をひそめる。


「あっれ?その言い方、なんか嫌そうじゃない?」


「嫌です。正直に言うと」


「ひど〜い!私はただ、命を守りに来てるだけなのに?」


そう言って、彼女――LCA特務医療官、霧崎アマネはにたりと笑った。



 シュゥゥゥゥゥ……



カーティスの身体から立ち上る白煙は、正確には「蒸気」ではない。

それは霧崎の術式――《液相再構式・即時霊素再生》が展開する、水霊素の中間相だった。


「霊素反応、安定領域に入った。肋骨は再接続済み、神経経路あと7%……っと」


手元のスキャナで魔導核の周波を読み取りつつ、霧崎はカーティスの周囲に半透明の水膜を何重にも展開していく。


「おい、ちょっとそれ……マジで元に戻るのか?」


誰かが言う。


霧崎は片手でガムをぷちっと鳴らしながら、あっさり答える。


「戻すよ。“本来あるべき形”にね。

 肉体も、神経も、霊素の流れも」


その指が軽く動くたび、水膜が淡く輝く。


霧のように漂っていた霊素が、まるで磁石に吸い寄せられるようにカーティスの体へと集まり、失われた肉と骨の間を“内側から”膨らませていく。


「すげぇ……」


雷牙は思わず呟いた。


「これが、医療……なのか?」


「違うよ」


霧崎はピシャリと断言した。


「これは“戦闘維持術”。

あんたらみたいな候補生が、戦場で“止まらない”ための応急処置だ」


目の前で泡立つように再生していくカーティスの腕。

断面だったはずの部分が細胞単位で位置を補正されながら縫い合わされていき、神経が光の筋となって走る。


「痛みはある?」


「……っス……けど、なんとか……」


「バカ言ってんじゃない。あと30秒は座ってろ。いま魔導核と神経を“同期”してるとこなんだから」


そう言うと霧崎は右手の手袋をパチンと外し、直接カーティスの胸に触れた。


「はい、吸って。吐いて。

 ほら、息と一緒に、“元に戻った”って思え。

 術式ってのは、“心”が信じないと定着しないからね」


彼女の言葉と共に、カーティスの顔が微かに苦悶から安堵へと変わっていく。


「……あんた、すごいな」


そう呟いたのは、ひかり先輩だった。


息を荒げながらも、横たわったまま彼女を見上げている。


霧崎は笑ったまま片目の前髪をくいっと持ち上げた。


「すごくなきゃ、アンタらの面倒なんて見てらんないでしょ?」


言葉とは裏腹に彼女の手つきは繊細で、霊素の動きは緻密で美しかった。


「場所が場所だったら死んでたね〜、マジで。

魔導核ズレてたら再生すらできなかったんだから。

“演習”でよかったね、ほんと」


言葉の最後に、かすかに優しさが混ざった気がした。


 


 ――ブクブク……



最後の霊素が吸収され、

カーティスの肉体は完全に“元に戻った”。


服こそボロボロだったが、身体そのものは一分の歪みもなく――“再構”されていた。


「……さすが、“再構班”のトップ」


誰かが呟く。


霧崎は手をパン、と叩いた。


「さーて、次はどのバカが壊れてくれるのかな〜?」


どこか楽しげに言いながら彼女は再びチューブをたなびかせ、演習場の外れへと戻っていった。


その背中に誰も何も言えなかった。

ただ、その存在が“後方支援”という言葉では収まらない切り札だということだけは――誰の目にも明らかだった。



「最後、どうやったんだい?」


八雲先輩はひかり先輩に尋ねていた。気になることがあるみたいだった。


「なんの話?」


「迅雷狼影が出現したあの時、異常な回復速度を見せたよね?」


「…ああ」


「キミの特性については理解しているつもりだ。だけど正直驚いたよ。魔力を吸収したわけじゃないんだろ?」


「まーね。あんたも知ってるだろ?私たちの体はいわば魔力を閉じ込めるための「器」だ。『ギア』もその一部に過ぎない。ウチの子は文字通りカーティスのギアを“喰った”。「魔力」そのものへと変換したんだ。それを一時的に“借りた”だけだよ」


2人の会話は小難しくて、何がなんやらって感じだった。


先輩のギアの能力、俺たち術者の体の構造。


まだまだ未熟な候補生の俺たちにとっては、どれもまだ理解が難しい事柄だった。俺の体もいつかあんなふうに回復するようになるんだろうか…?だとしたら気味が悪いな…。便利なんだろうけど、死ぬに死ねないってことだよな??裏を返せば。


「そういえば、剛坂も勝ったらしいよ?」


「そうなのか?でもまあアイツの相手はクラス1になったばかりのやつでしょ?大した自慢にはならないよ」


「…剛坂って?」


「僕たちとは違う班の候補生だよ。ここに来る途中で、他のグループが戦ってる試合を見かけたでしょ?観戦席の最前列にいたあの“大柄”な男、――彼が剛坂だよ」


ああ、そうだそうだ。八雲先輩を見つけるなり全力で手を振ってきてたやたら愛嬌のある巨人。あの人も勝ったんだ。じゃあ、今のところヨナリア支部チームは全員勝ったってことか。


…あれ、あの眼帯の人は?


「六車は今日は試合がない。確か明日だよね?」


「うん。そうだね」


エレグラフィア連盟で開催される合同演習のスケジュールは日を跨いで行われる。俺たちは今日で帰るみたいだけど、全候補生が同じ日程で動いているわけじゃないらしい。


演習する地区や環境によってばらつきがあるみたいだが、そうしないと人数的に段取りが難しいからだそうだった。


次の試合に向けて先輩たちはもう準備を始めている。今の今でもう準備とか、さすがに切り替えが早すぎる気もするけど……この人たちにとってはもうそれが“普通”なんだろう。


陽炎のように揺れる空気の中、雷牙はふと立ち止まり、演習地の端に広がる影を見つめていた。先ほどまでの熱戦が嘘のように静まり返ったその場には、まだ霊素の残響だけがかすかに脈打っていた。


誰もが次の試合やそれぞれの任務へと動き出していたが、雷牙の中では何かがまだ終わっていなかった。あの戦い、あの光景、あの問い――。


心のどこかに、小さな“さざ波”が残っていた。



鉱山の崖の縁に腰を下ろした雷牙の目に映るのは、濃淡を織り成す大気と、森の緑がゆったりと広がる風景だった。山の裾から吹き抜ける冷たい風が戦いの余熱を洗い流すように肌を撫でていく。世界がゆっくりと息を整えるように、辺りは静寂を取り戻しつつあった。


さっきまで“戦場”だったクレーターの底では、今なお霧が立ち昇っていた。砕けた水飛沫が霊素粒子と溶け合い、光の帯を描いて舞い上がる。その中で淡く揺れる虹が激戦の記憶を夢のように彩っていた。


周囲の声は遠くに霞み、雷牙の耳には断片的にしか届かない。ひかり先輩や八雲先輩、他の候補生たちの笑い声や労いの言葉が、風に溶けて通り過ぎていく。


それでも雷牙の心には、ただ一つの波紋が静かに広がっていた。


彼は自分の手のひらを見つめる。そこには淡く光る霊素の残滓が宿っていた。

それは血でも汗でもない。ただ、彼自身の内から滲み出た“何か”だった。


リオンの戦いを目撃し、カーティス先輩の回復の瞬間を見届けた今、雷牙の中に一つの問いが芽生えていた。


――俺にとって“戦う”って、一体なんだ?


リオンは水と同化し、空間すら操って戦場を支配した。

カーティス先輩は己の身体を大地と融合し続けることで、あの場に最後まで立ち続けた。

ひかり先輩は悔しさと誇りを胸に、戦いの意味と向き合っていた。


それぞれが、戦いの中で何かを掴んでいた。


けれど雷牙――いや、“ライ”には、まだその答えが見つかっていなかった。


これまで戦ってきた理由は単に強さや技術を求めたからではない。むしろ彼が感じていた違和感は、自分という存在が“何”であるかを探し求めていたことへの無意識の応答だったのかもしれない。


「――俺は、《俺でいたい》のか?」


雷牙は、空を見上げた。


エレクトロニアで目覚めたあの日から、彼の中には二つの記憶が同居している。日本で生きた自分と、雷導兵“ライ”として生きる今の自分。


両方の記憶がひとつの身体に重ねられ、未だ消えることなく存在している。


他の候補生たちは自らの術式を極め、戦術を完成させ、空間を支配し、風を纏い、神経すら再構築して立ち上がった。


しかし――


雷牙には、まだはっきりとした“記憶”も“型”もない。


それは単なる悩みの中で片付けられるような話じゃないし、多分ずっと頭の中で揺れ続ける“問い”なのだろう。


雷の霊素、――クラス3としての自覚。


《パーフェクト・コピー》は確かに強力な術式だが、それは他者の力を模倣し、瞬間的に再現する術に過ぎない。


そこに“自分自身”の個性はあるのか?


戦いは美しい霊素の炸裂や術式の応酬だけでなく、それを見つめた者とその心の中に“問い”を残していく。掌にわずかに揺れる霊素粒子が、まるで問いかけているかのようだった。


――これは、本当に“俺の力”なのか?


それとも、誰かの影をなぞっているだけなのか?


崖の下では森の緑が静かに葉擦れの音を奏で、遠くの谷からは川のせせらぎが微かに聞こえてくる。


戦場の熱はまだ地中に残っているはずなのに、世界はすでに日常へと歩き始めていた。


雷牙ライはゆっくりと拳を握った。

その感触には術式も緊張も宿っていない。

ただ、自分という存在の“輪郭”だけが、そこに確かにあった。


彼はもう一度、空を見た。


雲は静かに流れていた。光は柔らかく大地を包み、森は変わらずそこに在る。



――俺は何者なのか。


何を信じ、どこへ向かうのか。



そしてこの手の中にある“力”は、本当に自分のものなのか。


答えは誰も教えてはくれない。


だが雷牙は知っていた。

戦いの意味を掴むためには、歩み続けるしかないのだと。





──────────────────────



挿絵(By みてみん)




■ 特別医療班・正式名称


雷導連邦エレグラフィア

中央教導局附属・特別医療即応部隊

《霊素再構築特別医療班(通称:再構班)》



◼︎通称:再構班さいこうはん

◼︎管轄:LCA中央教導局・戦術支援課/医療技術局

◼︎役割:

・戦場環境下での緊急蘇生・仮再生処置の実施

・霊素暴走やスキル干渉による二次被害の遮断と制御

・危険度判定と即時隔離処置、術式汚染の局所洗浄

・重傷者の移送準備および、戦場内処置可能ラインの維持

・魔導核・霊素供給系への再起動介入および臨時補填

・高出力演習・実戦級模擬戦のサポート

・肉体損壊・霊素断裂・魔導核への間接損傷


これらを想定した“戦場前提の即応再生”を専門とする。


通常の医療班が「治療」なら、

再構班は――「生存状態を成立させ続けるための維持・再起動」、および戦闘継続可能な“生存ライン”の確保を担う。




■ 特務医療官:キャラクター設定


特務医療官・水属性術式監督


 

◼︎霧崎きりさき・アマネ

・階級:LCA特務医療官

・所属:霊素再構築特別医療班・班長

・属性:水(高密度液相霊素特化)

・年齢:外見不詳(20代後半〜30代前半相当)

・性別:女性



【外見】


・白銀に近い淡色の髪を左右非対称の編み込みで束ねている

・片目を覆う前髪/覗く瞳は鮮烈な赤

・医療官でありながら、黒と黄色を基調にした戦術医療用コート、金属製の医療霊具や霊素チューブを無造作に下げている

・口元にはいつも薄く笑みを浮かべているが――それは優しさではなく、「状況を把握している者の余裕」


第一印象は“医者というより、危険な技術者”だが、現場では絶対的な信頼を置かれている。



【口調・性格】


・口調は軽く、やや乱暴

・だが術式説明や判断は異様なほど冷静かつ正確


例:


「はいはい、動くな動くな。

あー……骨、粉砕。内臓ズレ。魔導核、軽く悲鳴あげてるね」


「大丈夫。死んでないなら直せる。

死んでたら……まあ、その時は諦めよう?」


戦場に慣れきった医療官特有の割り切りを持つ。




■ 即時再生術式(水属性)


《液相再構式・即時霊素再生リコンストラクション・フルード


――これが、

雷導連邦エレグラフィアの“医療力”だった。



【術式の本質】


この再生術は、単なる「治癒」ではない。


水属性霊素の特性――

流動・充填・情報保持

これを極限まで利用した、


肉体・霊素・構造情報の“同時再構築”


である。



【工程:三段階構造】


① 霊素スキャン・位相固定

霧崎が展開するのは、半透明の水膜状霊素陣。

・負傷者の周囲に液体霊素の層を形成

・霊素・肉体・魔導核の状態を同時に読み取る

・重要なのは「現在の姿」ではない


“本来あるべき構造情報”を抽出すること


これを誤ると、

・再生後の神経誤接続

・感覚異常

・最悪、人格乖離が起こる



液相再構フルード・ビルド


白い煙の正体は、蒸気ではない。


高密度水霊素が、液体と気体の中間状態で噴出している。


・水霊素が細胞単位で侵入

・破壊された部位を内側から満たす

・骨 → 筋肉 → 血管 → 神経 → 表皮


の順で、同時並行再構築


見た目は泡立つようだが、

実際には極めて緻密な霊素制御が行われている。



③ 霊素定着・反動遮断


再生の最大の問題は「反動」だ。


・急激な肉体回復は

・神経過負荷

・魔導核の暴走

・ショック死


を引き起こす。


霧崎は最後に、水霊素で“緩衝層”を作る。


「はい、深呼吸。

今、体が『元に戻った』って思い込む時間だから」


これにより、


・痛覚

・魔力循環

・神経伝達


すべてを“回復後の状態”に再同期させる。



【制限と代償】


・魔力消費:極大

・再生後、数時間〜半日は戦闘不可

・同一部位の連続再生は不可

・魔導核そのものが破壊されていた場合、再生不能


だからこそ――


「演習で済んでよかったね」


という霧崎の言葉は、

冗談でも軽口でもなかった。


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