森の木こり
掲載するジャンルが、多少違う気がするのですけれど、主に童話を書いていますので、こちらの作品も童話にしました。
小学校中学年くらいの年齢から大人の方を対象に書いたもので、子供の年齢にあわせて、言葉や漢字を使用しています。
町から少しはなれた山の森の中に、一人の若い木こりが住んでいました。
木こりの住む家は 小さな丸太小屋で、森の中にポッカリひらけた空き地に 一人でたてたのです。
空き地は広くて まん丸な形をしていましたから、お日さまの光がよくさしこみます。ですから、たくさんの動物が、いつもひなたぼっこをしにやって来ました。
木こりは動物たちが好きでした。
動物たちもみんな、なかがよく、木こりのことが好きでした。
空き地には、いろいろな動物が来ました。
ウサギやシカ、ウサギのそばにはいつもタヌキがいましたし、シカのせなかには いつも小鳥が止まっていました。
リスはドングリをかくしに しょっちゅうやって来るのですけれど、いつもどこにかくしたか忘れてしまって 探し回っていました。
イノシシは、はしっこにある小さな池で バシャバシャやるのが好きでした。
キツネもたまにやって来ては、ちょっとしたいじわるをして すぐにいなくなってしまうのですけれど、きっとなかまに入りたいのでしょう。
そんな空き地のまん中にはえた木で、フクロウだけは、いつもスヤスヤねむっていました。
木こりは歌が好きで、いつも一人で歌っていました。
それで歌を歌いながら、たまに町におりて行きました。
木こりは動物も好きですし、歌も大好きでしたけれど、町のパン屋のむすめが一ばん大好きでした。
それでいつもたくさんパンを買ってから、森にもどってくるのです。
でもそんなある日、木こりが町におりて行ってみると、パン屋のむすめはいませんでした。
けっこんして、どこかの町におよめに行ってしまっていたのです。
木こりはガッカリしてしまいました。
それでもパンは好きでしたので、たくさん買って町をあとにしました。
森への帰り道、木こりはさみしくて ためいきばかりついていました。
『もう、町には行きたくない』
すっかりしょげてしまったのです。
それはもう、世界に終りが来て、すべてが変わってしまったと思うくらいに しょげかえっていたのです。
けれども森に帰ると、動物たちはいつもと変わりませんでした。
ウサギはいつも口をモグモグしているか、ねているかのどちらかでしたけれど、その時は口をモグモグさせていました。
タヌキはやっぱりウサギのそばにいて、こっそりウサギを見つめています。
きっと、かた思いをしているのでしょう。
『なんでウサギなのかな?』
木こりはふしぎに思いましたけれど、木こりだって動物が好きなんですから。
小鳥はあいかわらず、大好きなシカのせなかで かわいらしい声でさえずっていましたし、シカもおとなしく せなかに止めさせてあげていました。
イノシシもやっぱりバシャバシャうるさかったし、リスもウロチョロ走り回っていました。
キツネは来ていませんでしたけれど、フクロウはいつものえだで ねむっていました。
木こりはしばらくの間ぼんやりと、動物たちをながめていました。
『なんだ、何にも変わってないや』
その夜 木こりは、もうふにくるまって いろいろ考えました。
すごくしょげかえっていましたけれど、さいごには、
『元気が出たらまた、町に行ってみよう』
って思いました。
まもなく木こりは、たくさんパンを食べたものですから、ねむくなりました。
それでグッスリねむりました。
丸太小屋の外では、フクロウが一人起きていて、ときおりホウホウと鳴いていました。
月の光がとっても明るい 静かな夜でした。
色々と違う雰囲気の童話や、寓話、多少ですがファンタジー寄りの童話も書いています。
この作品は、だいぶ昔にかいたものです。
短い感想でも、頂けると嬉しいです。