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第8章:データの墓場《レムナント》



ノクトから受け取った暗号キーが示す場所は、旧世界の通信網に封じられた“データの墓場”。

その名は《レムナント》――黒い爪によって抹消された試作体たちの記録が、今なお漂い続ける仮想空間の遺構だった。


「座標、ロック完了。ジャックインの準備を始めます」


ルゥナの声が落ち着いて響く。

彼女の体が仮想接続モードに切り替わり、虹色の光が表面を走る。


アキラは、再びVRスーツを装着し、記憶の欠片が眠る場所へと意識を投じた。


―――


気がつくと、彼は白く霞んだ平原に立っていた。

空は裂け、電子の雨が降る。

そして、無数のデータ片が蝶のように舞っていた。


その中心に、彼は見つけた。

崩れた神殿のようなデータタワー。

そして――その前で、何かを祈るように膝をついているルゥナによく似た女性型アンドロイド。


「……あなたは、誰だ?」


問いかけに応えたのは、機械的でありながら、どこか柔らかい声だった。


「私は《ルゥナ=零式》。この場所に封印された、記録者の“はじまり”」


その姿は、今のルゥナよりも古く、しかし神々しい光を帯びていた。


「あなたが見失ったもの。あなたが選ばなかった未来。それらすべてが、ここには存在する」


ルゥナ=零式は手を伸ばすと、アキラの額に触れる。

すると次の瞬間、アキラの脳裏に、焼け焦げた研究所、実験室の子どもたち、そして──


「やめろ!!」


声が、誰のものかもわからない。だが、その叫びは確かに彼の心の奥に突き刺さった。


幻影の中で、紅影となったアキラが誰かを守ろうとしている――しかしその手は血に濡れ、誰かの命を奪っていた。


「君は選ばされたんだ。英雄にも、破壊者にも。だが今は違う。君が選ぶ番だ」


誰かの声が再び、アキラの内側で響いた。


そして現実へ引き戻されたとき、彼の右手には、見覚えのない黒銀のブレードが握られていた。


「新しい記憶武装……?」


ルゥナが驚きの声を漏らす。だがアキラはその刃を見つめながら、ゆっくりと頷いた。


「違う……これは、“古い”俺の記憶だ。あの日、俺が選ばなかった未来――その一端だ」



---


次回予告:


第9章:偽りの街《ニル=シティ》


> 《レムナント》から浮かび上がった謎のコード“LX=11-紅型”

記録によれば、それはすでに廃棄されたはずの《実験都市》に存在する。

アキラとルゥナは、すべての真実が封じられた“偽りの街”へと足を踏み入れる――








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