第4章:爪紋師の罠 ―白銀の刃、目覚める共鳴(リンク)―
崩れた研究施設に、鋭い足音が響いた。
《爪紋師》は仮面の奥で笑みを浮かべながら、アキラへと手を伸ばす。
「さあ、“紅”。君が誰なのか――その芯まで、思い出させてやろう」
紅影が唸りを上げ、アキラの右腕が異常な熱を帯び始める。
視界は歪み、現実感が遠のいていく。
(ダメだ……ここで終わるのか……)
その瞬間だった。
天井を突き破って、白銀の閃光が舞い降りた。
着地と同時に風圧が辺りの瓦礫を吹き飛ばす。
「ターゲット確認。敵性幹部、“爪紋師”。排除プロトコル、起動」
その声は無機質なはずなのに、どこか温かく、耳に残った。
アキラが顔を上げると、そこには一人の女性が立っていた。
長い白銀の髪、青く発光する右目。人間のようでいて、どこか異質――それでも、彼女はまっすぐこちらを見つめていた。
「誰だ……お前は……?」
女は言った。
「コードネーム《ルゥナ》、型式番号LX-03。あなたを迎えに来ました、“紅”」
仮面の男が小さく舌打ちをする。
「まだ動いていたか、失敗作が……。だが所詮は、人の形をした記録媒体。ここで潰すまでよ」
次の瞬間、《爪紋師》の右手から黒い鎖が伸びた。
異形の紋様が空中に描かれ、呪術のような力が地面から噴き出す。
だが――
「共振リンク、展開。認証コード:紅影/LX-03」
ルゥナの声と共に、彼女の左手がアキラの右腕に触れた。
その瞬間、紅影が脈動する。
> ズゥン……!
右腕の装甲が変形し、紅い光がルゥナの瞳へと流れ込んだ。
二つの存在が、共鳴する。
「これは……」
アキラの視界が一気にクリアになる。
足に力が戻り、意識が研ぎ澄まされていく。
> (共振リンク――“二人で一人”の戦闘構造だ)
ルゥナが静かに告げる。
「立ってください、アキラ・カザマ。あなたはまだ終わっていない」
アキラは立ち上がり、右腕を振るった。
紅影が形を変え、一本の紅刃となって伸びる。
「……よし。じゃあ、いくか――《ルゥナ》」
「了解。戦闘プロトコル、共鳴開始」
仮面の男は嗤う。
「面白い……どこまでも、玩具らしいじゃないか。ならば、こちらも“実験”と洒落こもう」
鎖が唸り、異形の“紋様獣”が召喚される。
白銀と紅が、闇の力に立ち向かう。
そしてアキラの記憶の欠片が、戦いの中で少しずつ――灯り始める。
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次回:
第5章:歪んだ記憶、壊れた誓い
> アキラの記憶に現れる、“約束の少女”。
そしてルゥナの中に隠された、もう一つの真実が浮かび上がる――