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第◯章 無き者(ナンナ)



 


記録因子の暴走が、遺跡の空間を引き裂いた。


天井が軋み、重力が歪む。光と闇の境界が曖昧になっていく。


紅とルゥナ、そしてグレンの存在を飲み込むように、

その“気配”は現れた。


 


> ズゥ……ッ……カチ……チチ……ギギ……




 


音ではない“何か”が空間を撫でる。


その中心に、黒よりも黒い影――《無きナンナ》がいた。


 


 


それは「形」を持たない。


ある瞬間は、人のように腕を振り上げ、

次の瞬間には、獣のように這い、

またある瞬間には、霧となり、空間全体に“記憶を喰らう触手”を伸ばす。


 


> 「……これは、記録じゃねぇ。災厄だ」




紅の声が、わずかに震えた。


“ナンナ”は「記録を持つ者」に反応する。


それは存在の証であり、同時に捕食対象でもある。


 


> 「オイ……反応してやがる。おれたちの“記録”に」




> 「来るよ……紅、“忘れられたもの”が」

ルゥナがそう告げた刹那、世界が崩れた。




 


 



 


紅の視界が、過去の情景に塗り替わる。


かつての戦場。死にゆく仲間たちの声。


自身が葬った“はず”の記憶。


 


> 「――守れなかったくせに、まだ生きてるのか」




> 「お前が“選ばなかった”記憶が、俺たちを殺したんだ」




 


頭を抱える紅の前で、“ナンナ”は笑ったように揺れる。


それは、記録因子の集合体による“記憶の投影”。


“記憶を食らう”とは、喪失させることではない。


“記憶の意味”を捻じ曲げて、再定義することだった。


 


> 「ちくしょう……これが、喰らわれるってことかよ……!」




 


だが――


その黒の中に、ひとつの光が灯る。


ルゥナの中に目覚めた“第三の人格”。


彼女は影に向かって歩み出す。


 


 


> 「ねえ、あなたは――“誰の記憶”?」




声が、記録因子の渦の中に届く。


“ナンナ”の動きが、僅かに止まった。


 


> 「記憶を喰らっても、埋まらないの?」

「だったら、わたしが“あなたの名前”になる」




 


一瞬、世界が反転する。


ルゥナの髪が銀に染まり、背から光の紋章が浮かぶ。


記録コードが全方向に拡張され、紅の腕と繋がった。


ふたりの記録が“統合”される。


 


> 「記録因子《ソースコード・∞(インフィニタス)》、起動」

「――ナンナ記録連結モード、展開」




 


《記録の鍵》の真の力が、解き放たれた。


世界の“記憶”を司るふたりが、“記録の喰らい手”へと挑む。


これは奪い合いではない。


記録の意味を問う、最終の対話である。


 


> 「記憶とは、過ちか――それとも、未来か」

「答えろよ、“無き者”……! 俺たちが、お前の記録になる!」




 



 


次章予告:「記憶の終焉、そして始まり」


> 世界が“記録”であるならば、 その書き換えは、終焉であり再生でもある。




> 紅とルゥナが見つけた、“記録の在り方”。 そして、無き者が語る“最初の記憶”。




物語はすべてを巻き込み、静かに決着へと向かう。






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