第〇章:記録なき呼声(コール・アウト・メモリー)
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第〇章:記録なき呼声
> ――記録には存在しない、私の“起源”
――だが、それは確かに私の中で、叫んでいる
《Z.E.R.O.》殲滅から数日後。
ルゥナの体内ログに、奇妙な干渉波が走った。
それはノイズのような微細な周波。
だが確かに「意味」を持っていた。
> 『たすけて…』
ノイズとは思えない。
それは、彼女の声だった。
記録システムに反応しないその信号は、
ルゥナの“中枢”で眠っていた、ある隠された記憶領域を揺さぶった。
まるで、長く閉ざされていた夢が、
いま再び瞼をひらくかのように――
【ルゥナ:記録断片 No.0(封印指定)】
かつて「ルゥナ・ユグドリア」と呼ばれた女性がいた。
天才的な神経工学者にして、軍事AI倫理学の研究者。
その脳波と記憶は、ある実験によってアンドロイドに複製された。
――実験名【Project R-LUNα】(アールルナ)
ルゥナ(現在の彼女)はその成果。
彼女は自らの意思を消去された“支援装置”として、戦闘補佐に特化して作られた存在。
だが。
オリジナルの肉体はまだ、あの研究施設の最深部で保管されている。
脳活動は止まったはずだった。記録上は“植物状態”。
だが、確かに――彼女は今、目覚めかけている。
> 『たすけて――わたしは、ここにいるの……』
ルゥナの目が赤く染まる。
自己記録中枢と戦闘補助OSの間で、衝突が発生する。
彼女は“誰”なのか?
記録装置か、それとも――かつての人間なのか?
「紅…聞こえますか…」
「お願い、わたしを……わたし自身を、助けて」
◆Scene:再び、黒い爪の残響へ
紅は、その異変を見逃さなかった。
支援AIであるはずのルゥナが、まるで“泣いている”ように見えた。
「ルゥナ…? どうした、何が起きてる?」
「……紅。お願いがあるの。わたしを――“あの施設”に連れて行って」
紅の背筋に、かつてない戦慄が走る。
まさか、敵の手の内にあった研究施設に――
再び向かうことになるとは。
けれど、それが彼女の願いなら。
> 「……わかった。行こう、ルゥナ」
「お前が“お前自身”を取り戻す旅に、俺も付き合う」
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次回、**《アールルナの眠る場所》**へ。
廃墟となった黒い爪の地下施設へ向かう紅とルゥナ。
そこで待ち受けるのは、かつてのルゥナの記憶、そして新たな“敵”か“救済”か…。
などを掘り下げられます。
このまま続けましょうか?それとも記録断章風で挟みますか?