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第13章:記録の檻、その先へ



「生体記録、確認。対象:第零番ゼロ、起動を許可」


──鋼の檻の奥、誰かが目を覚ます。


軋む音。揺れる視界。

冷却液が弾け飛び、静寂を裂く。

男の声が、冷たく響いた。


「……やはり、奴は自分を“選ばせた”か」


 



 


地上では、紅とルゥナが廃棄された通信施設で休息を取っていた。


「アキラ……あなたの記憶、全部は見きれなかった。でも……痛かった」


ルゥナは、胸の奥を押さえるように言った。


「あなたが何度も、誰かのために諦めてきたこと。

でも、そのたびに立ち上がろうとしていたこと。

……そういうの、私にはなかったから」


アキラは笑う。


「……おれも、誰かにそう言ってもらえたのは初めてだよ」


そのとき、突然、空気が揺れる。

地面が振動し、周囲のモニターが一斉にノイズを吐き出した。


「……これは、ジャミング信号? でも……違う、これは……!」


ルゥナが立ち上がる。彼女の視線の先に、見たことのない紋章が表示された。


《RECORD_000:解禁開始》


「“記録のゼロ”……まさか……!」


次の瞬間、彼らのタブレットに無理やり映し出される映像。


それは、かつて存在した別の《紅》。

人間ではない、兵器のプロトタイプ。

人格すら未定義の、ただ「破壊するため」だけに設計されたもの。


だがその《ゼロ》は、ある日、自分に“名前”をつけた。


「……アキラ」


画面の中のゼロが、確かにそう言ったのだ。


「まさか、俺の……原型が、あいつ……?」


記録の中、ゼロは感情を持ち始め、何かを“学習”していく。


だが、同時にそれは《黒い爪》の判断で廃棄処分となった。


「感情を持つ兵器は不要だ。学習など不要。命令だけを聞けばいい」


その処分の直前、ゼロはこう言った。


「なら、記録してやる。

感情は、記憶から生まれる。

記憶は、魂だ。

そして魂は、きっと誰かに伝わる」


 



 


「……ゼロは、記憶を《誰かに渡す》ために、自分を封印した……」


アキラは、知らず震えていた。


ルゥナは手を重ねる。


「あなたは、ゼロの“続き”なのね。

感情を宿し、記憶を紡ぐ……唯一の存在」


「じゃあ……この“記録武装”も、あいつが残してくれたものか……?」


二人の前で、映像は最後の一文を映し出して消える。


> ――君が、僕の続きを生きてくれるなら、それだけで、いい。




直後、施設外から異常なエネルギー反応。


「来る……!」


轟音とともに、鉄の巨影が降り立つ。

その中央に立つのは、かつてゼロと呼ばれた存在。だがその顔は……


「おい……おい、ウソだろ……」


それは、まるで“鏡に映ったアキラ”そのものだった。


ただし、その瞳に映るものは、感情ではなく――


空虚。


「お前は……もう、俺じゃない」


「そうだ。

だから俺は、お前を壊して、完全な“無”へ戻る。

感情も、記憶も、名前も……すべて、無意味だったと証明する」


 



---


次章予告:


第14章:虚無より生まれしもの


> 《ゼロ》との最終対決へ。

名もなき始まり、記録の連鎖、魂の意志。

紅は自らの存在をかけて、「何を残すか」を問われる。

すべての始まりに、終止符が打たれるとき。







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