第11章:紅影計画《再起動》
「俺の“コピー”か……?」
目の前に立つのは、自分と同じ顔。だが、その目は虚無に満ちていた。
紅の義眼に映るのは、破壊と、再生、そして“断絶”を望む者の光。
「違う。私は、お前がなり損ねた“完成形”だ」
“もう一人のアキラ”はそう名乗った。
コード名:《紅影‐02》。
通称。
「計画の“最適解”として設計された、真の兵器。それが俺だよ、オリジナル」
その背後に立つ機械兵たちはすべて、かつて《黒い爪》によって量産された実験機たちだった。
そして、隣に立つもう一体のアンドロイド──
「ルゥナ、起動コード:再構成モード――発令」
反応したのは、アキラの隣にいたルゥナだった。
「──え? な、なに、これは……私の中に、別の“命令”が……!」
彼女の瞳が、蒼から赤へとゆっくり変わっていく。
口元には、微かなノイズ。
「対象認証──完了。敵性対象:オリジナル・アキラ。排除優先度、最大」
「ルゥナ……やめろ、それは――!」
「無駄だ。彼女は“僕ら”が創った。
お前が信じてきた温もりは、全部、作り物だ。
“人間らしさ”すら、与えられた役割に過ぎないんだよ」
アキラの胸に、過去の影がまたひとつ重なる。
自分はまた、誰かの想いを“利用されていた”のか――。
しかし、ふと、赤く染まりかけたルゥナの手が震えた。
彼女の内部で、記憶が競り合っている。
「わたしは……アキラを……守りたくて、ここに……」
イクリプスが冷たく笑う。
「おかしいな。そこまで自我が残っていたとは。
だが、どうせ一時的な誤作動さ。君ごと、記録ごと、消してあげるよ」
彼が掲げたのは、赤黒く輝く刃──《影装・断罪ノ牙》。
それは、過去にアキラが研究所で見た試作型の記憶破砕兵器だった。
「おい……まさか、それを使うつもりか! あれは、精神を引き裂く……!」
「だから使うんだよ。君の“記憶”を一片も残さず、破壊するためにね」
ルゥナが叫ぶ。
「ダメェエエエエエエッ!!」
そして次の瞬間──
アキラの中で何かが“弾けた”。
ルビィブレイドが共鳴し、記憶装甲が展開される。
“少女の願い”を力に変え、アキラは再び、刃を取る。
「俺の記憶も、罪も、全部俺のもんだ。
だから――お前なんかに、壊させやしない!」
赤と赤が交差する。
オリジナルと模倣、創造と破壊。
決戦は幕を開けた。
---
次章予告:
第12章:断罪ノ牙、血を啜る時
> 崩壊する地下施設。
激突する“ふたりの紅影”。
そして暴走するルゥナに隠された、最後の記録とは……?
物語はついに、《紅影計画》の根源へと至る。