【番外編】陛下は最高の●●●をご所望です(9)side 陛下
奥に進むと、足元も完全に氷に包まれる。
もはや床も天井も壁も氷という状況になり、完全に氷の世界へ迷い込んだようだ。
ランプの明かりがなければ、迷子になっただろう。
「陛下、見てください。こんなところに祭壇があります」
「本当ですね。この壁にレリーフのように浮き上がるのは、主の姿のように見えます。氷が生み出したこの姿に、つい祭壇を作りたくなったのでしょうね」
ここではミラと二人、祈りを捧げる。
ランプではなく、ロウソクが灯されているのも、実に神秘的だった。
と、ここまでは良かった。
「くしゅん」
ミラが小さく、くしゃみをした。
「ミラ、大丈夫ですか……?」
「はい。陛下。少し……冷えたようで」
「!」
ミラはファー付きのロングケープを羽織っているとはいえ、その下は夏用のデイドレスを着ているだけ。
この氷の洞窟の気温は……氷が維持されているのだ。0℃前後の可能性が高い。
「ミラ、震えているではないですか」
「そ、そうですね」
どうしたらいいのか。そうだ、わたしのマントを。
「へ、陛下。それでは陛下が……冷えて、し、しまい、ますっ」
遂に声まで震え始めたミラにわたしは――。
そうだ!
マントの中にくるむようにして、ミラを抱きしめる。
いきなりミラをわたしが抱きしめたわけだが、ルーカスや護衛騎士は何も言わない。
こうでもしないとミラの震えが収まらないこと。
皆、分かっているのだろう。
「へ、陛下……」
「ミラ、無理に話す必要はありません。わたしはこう見えて、剣術の訓練もし、鍛えています。筋肉もあるので、寒さにはある程度強いのです」
「な、なるほど。……あ、温かいです。陛下……」
わたしが寒さに強いと理解したミラは、それまで遠慮していたようだ。
今は自ら体をわたしに寄せた。
胸板で感じるミラの柔らかさに、心臓が大きく反応する。
こんなに密着するようにしてミラに触れるのは、初めてのこと。
り、理性が……吹き飛びそうになる……。
いや、それではあのケダモノのような第二皇子と同じになってしまう。わたしはミラの優しく聡明なところを愛しているのだ。体ありきではないのだから、これぐらいで理性を飛ばしてどうする……!
ミラを抱きしめ、温めること。
それはとても嬉しいことなのだが……。
男としての性をコントロールし、ミラに触れることの難しさを噛み締めることになる。
ただ、いろいろと我慢しているが、体は反応し、血流が大変よくなっていた。
「陛下。おかげさまでポカポカになりました」
「それは良かったです、ミラ(涙)」
氷の洞窟でのデート。
成功だったのか、失敗だったのか。
「傍から見ている限り、実にラブラブでしたよ。通常、未婚の男女が人前であのように抱きしめ合うなんて。許されませんからね。氷の洞窟でのデート、成功だったのでは!?」
ルーカスがそう言うのだから、今回は「成功」でいいのではないか。
ただ……。
「あんな風に抱き合う二人の姿を見せられた、護衛騎士達は……。みんな洞窟を出たあと『お見合いしようかな』と呟いていましたよ」
なんだか護衛騎士達の婚約ラッシュがこの後、やってきそうだと思いつつ……。
ひとまず氷の洞窟でのデートは……成功で終わった!






















































