【番外編】陛下は失態の返上をご所望です(2/3)
今日のイグリスは……なんだかとても輝いている。
なんというか自身が輝くよう、全力を尽くしているように感じた。
ピクニックに向かうということで、厩舎で待ち合わせした時から。
イグリスからは輝きを感じられた。
「ミラ、お待ちしていました!」
サファイアブルーの乗馬服は、中のシャツやズボンは白。グレーのロングブーツ、アイスブルーのマントと大変爽やか。
既に自身の愛馬は勿論、私のために用意してくれた馬にも馬具を着けてくれていた。
「さあ、ミラ、気を付けてください。慣れているとは思いますが、この馬とはまだ付き合いが浅いと思うので……」
彼のマントとお揃いの色のドレスを着る私が、馬に乗るのも手伝ってくれる。
「では出発しましょう。スピードはそこまで出さず、のんびり行きましょう」
そう言って馬を走らせると……。
イグリスと彼の愛馬との相性は抜群だった。
馬の動きに自然と合わせることができるので、馬自身もイグリスを乗せることが嬉しそうなのだ。
さらに騎乗中のイグリスの姿勢は、とても美しい。
体幹が鍛えられているのだろう。
その上で秀麗な笑みを浮かべ、「ミラ、森が見えてきました」と言うのだ。
しかも乗っているのは白馬。
年齢はまだ十九歳。
白馬に乗ったリアル王子様を目の当たりにした気分になる。
「馬で向かってもいいのですが、見てください。沢山の花が咲いています。ここからは歩いて行きましょうか」
「はい!」
そこからは馬を降り、馬丁に預け、イグリスにエスコートされ歩き出したが……。
「この花は別名、蝶もどきと言われているんです。横から見ると、枝にとまった蝶のように見えるでしょう」
イグリスはこの世界固有の花々を次々と紹介してくれる。子供の頃からこの森で遊んでいただけあり、森の中の動植物には詳しかった。そしてそう言った話をしている時のイグリスも……やはりキラキラしている。
それを見た私は……王子様のイグリスに普通にときめいてしまう。
「見て、ミラ。泉が見えてきました。ここのほとりでティータイムにしましょう」
同行している使用人が準備してくれている間、その泉の周囲を散歩することになった。
「この泉は陛下の瞳のように澄んでいて、大変美しいですね」
「わたしの瞳のように美しい……なんだか自分が褒められているようで嬉しいです」
「陛下の瞳も素敵ですよ。瞳だけではなく、全部。今日の陛下は輝いて見えます。ずっとドキドキです」
思わず素直な気持ちを伝えると、イグリスは顔を真っ赤にして「ミラ……それ以上は……嬉し過ぎてどうかしてしまいそうです」と深呼吸を繰り返す。
そして気分を切り替えようと思ったのか。
「スキッピングストーンをご存知ですか?」
「スキッピングストーン……?」
「見ていてください、ミラ」
そう言うとイグリスは周囲に目を走らせ、平らな手のひらサイズの石を拾い上げた。
そこでもしやと思ったが。
肘を曲げ、低い位置から腕をスイングさせると……。
手首に回転をかけ、石を投げる。
すると。
石は回転しながら飛んで行き、水面に当たり、飛び跳ねを繰り返し、さらに奥へ奥へと飛んで行く。
これは前世で言うなら水切りだ!
「陛下、すごいです。私はやったことがありませんが、見たことはあります。こんなに遠くまで飛ばせるなんて……驚きました!」
「そうですか。ミラもやってみますか?」
「私でもできるでしょうか……?」
「できますよ。コツを教えます。でもまずは石選びからです!」
こうしてイグリスの言う平らであり、手の平サイズ、かつ軽い石を探すことになる。石ころなんてそこら辺にいっぱいあると思うが、いざ探すとコロンと丸い石が多い。
しばらく探していくつかの石を確保。
続いてイグリスのデモンストレーションを何度か見て、動きの確認をした。
「何事も挑戦あるのみです。やってみますか?」
「はい!」
頭の中ではイグリスの成功イメージがあるので「できる!」と思い、投げてみると……。






















































