1:目覚め
ーーーー走る。
ーー走る。
「はっ…はっ…」
廃墟を駆ける、目標のポイントまでもう少し。くそっ!瀕死のくせにスピードが落ちてない!いい加減に諦めろよ!
MPも尽きかけてるし…チッ、こうなりゃヤケだッ!!
「〈オールインフルスロットル〉!〈プライマルアーツ閃〉!からの…〈剣舞・烈風〉!!!」
深緑のエフェクトを纏ったナイフが異獣の喉を貫く。赤黒いダメージエフェクトが飛び散り、狼型の異獣はパキッ、と砕け散った。
「ふぅ…ナイフの耐久値もギリギリだってのに厄介なやつだった…。」
そう呟きつつ、なんとか目標であった「休憩結界」に入り、「転移鏡」を取り出して…
「開放。セントラルギルド。」
…………
「カナタ・アカトキ様。D級4体、E級9体、F級21体の異獣討伐、お疲れ様です!こちら報酬金になります!」
「あぁ…ありがとうございます。」
そう言ってお金を受け取ると、僕はそそくさとギルドから抜け出した。
相変わらず他人と話すのは精神使うなぁ…。
「..あの人、またボロボロだわ…」
「そうなのよ。彼Cランクのホルダーなのにいつもここで低級の異獣ばっかり討伐してるのよ…低級は無視されて、たまに門から出てくるやつがいるの。それを狩ってくれるのありがたいのだけど…」
「何だかふと死んじゃいそうで心配だわ…」
「でも彼、装備や武器はボロボロだけどそこ以外どこも怪我しているとこなんて見たことないわ…」
「「ね~」」
「世界崩壊」からもう半年、「アルカナ」に目覚めた人々は次第に「ホルダー」と呼ばれるようになり日々「塔」に入ったり、国内外に派遣されゴーストタウンとなった街に生息している異獣を狩る様になった。
少しずつだが異獣の数は減ってはいる。でも奴らは極めて学習能力が高く「ホルダー」も苦戦を強いられ、なんだかんだ均衡を保っている状態だ。
そんな僕も「アルカナ」に選ばれてCランクのホルダーになったふりをした。なぜふりなのかをほんの少しだけ語ろうと思う。
それは「世界崩壊」直後、「ユートピア・エンド」から強制ログアウトされた直後の時………。
~~~~~~~~~~~~
「...ぶはぁっ!?」
あー怖かった。しかしなんで強制ログアウトされたんだ?なんかアナウンスがなった頃から記憶が曖昧というか、一体何だったんだろ??
もう一度「ユートピア・エンド」にログインしようとしたがどうやらメンテナンス中だとか。それで強制的にはじかれたのかな?
そう思いつつようやく眠気が戻ってきたのでベットに入り、僕は深い眠りへと落ちていった。
…ん?夢、か?にしては意識がはっきりしてるし…。
ヴォン…
うわぁっ!?なんだこれ!?……ってこれ「ユートピア・エンド」のUIか?見た感じ僕のアカウントじゃないな。ていうかこれ初期アカウントじゃんか!?…いや夢だからか。
なんか触れるっぽいし、全クリした観点から分析してもう一度作り直してみますか!SPや才能値もかなりあるし、いいアバターが作れるでしょ!!
で、できた…!!体感2時間とちょっとで僕が目指していた理想の「カナタ」がようやく完成したんだ!
Name:カナタ
出身:放浪者
job:武芸者
subjob:鍛冶師
HP:2200
MP:2500
STR:3000
STM:2400
TEC:5000
AGI:3300
VIT:2000
LUC:4600
才能
・上級武術Lv5
↳格闘術
↳槍術
↳狙撃術
↳棒術
・上級剣術Lv5
↳短剣術
↳大剣術
↳曲剣術
↳二刀流
↳抜刀術
・上級鍛造術Lv5
↳精密鍛造
↳全鉱物理解
↳高速鍛造
↳融合
↳構成物質分解・再連結
↳鍛冶炉操作
↳情熱の鍛練
↳匠の技
↳想像力強化
↳鍛冶師の豪運
↳鉱物創造
・鑑定Lv5
↳探査
↳精密鑑定
↳鑑定力補強
↳記憶読破
↳言語理解
↳予想力強化
・付与術Lv5
↳スキル付与
↳複数付与
↳連結付与
↳重複付与
・上級風水術Lv5
↳太乙
↳奇門
↳六壬
↳河洛
↳星平
↳演禽
↳奇門遁甲・九星
・考古学研究Lv5
↳マッピング補助
↳探求心向上
↳高速採掘
↳夜目
↳エコーロケーション
↳アーティファクト探知
↳アーティファクト分解
↳未知への渇望
↳★古代技術理解
↳★アーティファクト生成
・魔力操作Lv5
↳出力増加Ⅲ
↳魔力浸透Ⅱ
↳消費量効率化Ⅲ
↳身体強化Ⅲ
↳遠隔操作Ⅱ
↳性質変換
↳反応速度上昇Ⅳ
↳思考速度上昇Ⅳ
↳集中力上昇Ⅲ
↳性能臨界Ⅲ
・隠形術Lv5
↳気配遮断
↳幻影
↳隠密歩法
↳静音
↳影移動
↳致命の一撃
↳縮地
ふっふっふ…!!!我ながら素晴らしいぜ。このゲームのダメなところをすべて帳消しにしたかのような美しいステータスと才能...。
「ユートピア・エンド」はたしか資材も人員も限界ギリギリの大陸を救うというストーリーだった。
国の王様はプレイヤーに対して補助が出せず、いきなり素寒貧でストーリーが開始。序盤のモンスターがガチガチに編隊を組んでプレイヤーを三枚おろしにしてくるという心を積極的に折ってくるゴミ仕様だ。
そんな奴らを避けつつ街に到着しても武器は買えず、金が多少あったとしても初期装備であろうボロっちい剣があの編隊×10程の値段とかいうインフレ状態なのだ。
だったら自分で武器を作ったほうがめちゃくちゃ効率がいいのではないかという意見もあるが、いやもまったくもってその通り!!だけど、このゲームには現実と何ら変わりない挙動ができるという一般的には褒められる点がある。が、要するに補助がほぼ無いに等しいので現実世界での鍛冶の才能があるか、鍛造術を取得してTEC(器用度)を死ぬ気で上げないと武器を作るなんて夢のまた夢…。
そんなことも知らずに僕はずっっっっと初級鍛造術も取らずに見よう見まねだけで武器を制作し時間をかけて全クリを目指したのだった...。
今考えると無謀過ぎて泣けてくるぜ…。だけど、この新しい「カナタ」は前者は流石に無理だったが後者の鍛造術の獲得とTECの補強はできた。
さらにTECにはもう一つ隠されていた機能があったらしく、どうやら全ての修練度に対して補正がかかるとか。TECを上げるにつれて自分の才能も比例してガンガンレベルアップしていく嬉しい機能もあるのでwin-winだ。
その他欲しかった才能もしっかり詰め込めたし満足したなぁ…。
……………それにしても長い夢だな。もうそろそろぼやけてくるとかありそうって身構えてたけど、全然そんな気配もないし。
ヴォン…
『このデータを現実に反映させますか?』
Yes or No?
???何を言ってんだこれ?
オフライン版をこのデータで遊べるってことか?……まぁ悪いに越したことはないし「Yes」っと。
『ではこれよりアバター「カナタ」との同期を開始いたします。よき旅を。』
そう言って周りが光に包まれーーーー。
読んでいただきありがとうございます。
なるべく早めに才能の説明を書いて投稿します。