幕間:猟犬は語る
才能がある=楽しいはまやかしだ。別に好きでもない剣道を嫌々習わされ、たまたま人より優れた才能があっただけ。楽しい、やりがいがあるなんて思ったこと一度も無かった。
「お前に勝つまで剣道やめねぇ」なんて言った熱血な奴は、1回戦っただけで竹刀を捨てた。
『後出しの達人』と呼ばれていたインターハイ王者は、俺の事を舐めていたのかあまりにも隙だらけだったので試合が始まった瞬間に面を叩き込んだ。そいつは今、バンドのギターをしてる。
『剣の皇帝』と言う二つ名を持った爺は、一歩も踏み込まずに怯えながら白旗を振った。期待させるだけさせて、そそくさと俺の目の前から逃げた。
『剣道にサッカーのマリーシアを持ち込んだら強いんじゃね?』とかほざいたゴミ野郎は、初手に俺の初恋をバカにしてきやがったので手首を竹刀で砕いた。
感情が揺れ動く事は多々あるが、結局呆れや苛つきであり、高揚感は無くはないが期待するだけ無駄でしか無かった。
中学生になる前にそんなことに気づいた俺は親父にもう辞めさせてほしいと嘆願した。親父はどうしようも無く旧時代の人間で、弱い奴にはよく吠え強い奴には媚びへつらう。それは家の中でも同じだった。
まぁでもその時点で剣の腕は俺の方が数段上だったのだが、その時親父に言われた
「いつかお前より強い武人が目の前にご馳走の如く湧き出てくる」
と、まるで漫画のような台詞が思春期真っ只中の俺にズガンッと響いた。結局現れる事は無かったが、その言葉だけを信じて俺は高校卒業まで剣道を続ける事ができた。その分絶望したが……
そして大学生になる前に『御庭番』へ入隊した。竹刀から真剣に持ち替える事自体対して嫌悪感も何も無く、正直かなり嬉しかったし期待もあった。……決してサイコな理由ではなくただ単純に、戦う人間の必死さが違うのではないかという理由だ。
最初に斬ったのは某国の諜報員だった。弾丸は思ってる以上に遅く、意外と簡単に斬れた。相手の方を向くと、半泣きで恐怖と驚愕と絶望が混じりあった顔をしている諜報員が、震える手で手榴弾のピンを抜こうとしていたので頸動脈を斬った。
肉の感覚は気持ち悪かった。料理で肉を切る時の何十倍も不快感と命の重さを感じた。吐きはしなかったが、2日間程夢で魘された。
けど、あくまで気持ち悪かっただけで本心は『がっかり』だった。結局拳銃でもヒリつくことはなく、『あぁ、こんなもんかぁ』って。
……そこから人を斬る事は滅多に無かった。まぁ、御庭番の仕事は要人警護だったり諜報がメインだったから、抗争に巻き込まれるとかよっぽどの事が無い限りは刀を振ることもしなくなった。
で、『あの災害』が起きた後は国の機密情報を狙う奴らがわらわらと溢れてきた。あちらも手段を選ぶ余裕もなかった、だからこちらも同様の手段を取った。斬る度に不快感は減っていったが、代わりに心が曇っていった。
合間の日常で心も晴れることもなく、親父が国のゴタゴタに巻き込まれて死んだり、可愛がってる親戚の奴が行方不明になったりして余計に俺の精神は限界に近づいていった。
……で、結局その親戚は消えた半年後にひょこっと現れて、そいつに最前線の『塔』に連れていかれたり、実はそいつが俺の監視対象になったりって感じで今に至るってわけ。
ん?この文は何って? 日記だよ日記。いつ死ぬか分かんねぇからな、自分を振り返るがてらあの女スパイに俺の過去をわざわざ読みやすくしてやってんだよ。はー俺ってばえらいなぁ。
Name:八千代峯吉
Lv:37
出身:流浪武人
job:侍
subjob:料理人
HP:700
MP:0
STR:440
STM:310
TEC:600
AGI:300
VIT:300
LUC:250
〈技能〉
無し
〈八千代流剣術〉
・一式『留』
・二式『跳』
・三式『払』
・四式『留跳』
・五式『留払』
・六式『跳払』
〈?????〉
・???の?




