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25:第16階層攻略戦⑥ 胡蝶の夢を破る時・下




「……」


やっぱりなにか忘れている気がする…。僕はさっきまで大事な事をしていたはずなんだよな。なんだっけ…?


『彼方?どうしたの?』


「え?いや…なんでもないよ」


『…何か悩みでもあるならいつでも相談してもいいのよ?』


「ううん、そこまでの事じゃないから……そんなに心配しなくてもいいよ」


……


やっぱり違和感がある…。どうしてだ?いつもと変わらないはずなのに………あれ?()()()()()()()()()


(そう。(アタシ)はそうじゃなかったでしょ?)


その疑問を抱いた瞬間、とてつもない頭痛が走る。そうだっ…! そうだったっ……!! 僕は今…なにかと戦っていたはずだっ…!!


(思い出して)


意味の分からない言葉が頭に響く。思考が掻き乱される。現状を打開しないといけないのに…考えがまとまらないっ…!!


『彼方っ…!?大丈夫なの!?』


「だっ…大丈夫っ!大丈夫だから心配しなっ…!?」


頭痛が酷くなる。脳内で爆竹が破裂しているかの如く、思考がさらに阻害される。


(アナタの記憶にあったっけ?こんなの)


「何をっ…!! 言ってやがるっ!?」


視界が歪む。風景が真っ白に塗り替えられる。母さんが消える。


「がっ……!?」


手を伸ばすが、届かない。そして……思い出す。そうだっ…! 僕は今塔にいてイマジナリーパピヨンと戦ってたんだっ!! それでなにかのスキルの影響で夢を見ていたのか……!


くそっ、意識は戻ったけどここからどうやって現実に戻るかだけども…大体ああいう系のスキルって時間経過か自分で回復用のポーション飲むかしないといけないからな……


「まぁ、こういう類いので思いつくのは自傷が復活のトリガーだよな…」


インベントリを開こうとするが反応は無い。舌も噛んでみたり、自分の頬にビンタしてみたりしたがやっぱり特に何も無い……ってて。さて…次の選択肢は、周辺を歩くくらいしかないか。


大体20分程でぐるりと1周できた。無駄にだだっ広い空間だな……の割に特に何も無いときた。若干焦ってきたがとりあえず一旦心を落ち着けるために深呼吸。落ち着くがてら次の選択肢を考えてみる。


「……そういやさっきのってなんだったんだろ?」


……アレ?何を見てたんだっけ? なんか大事な夢だったはずなんだけど………ダメだ、全く思い出せない。忘却というかまるまるその時の記憶が編集でカットされたみたいだ。


うむむ……しかしそれはともかく、この現状をどうにかしないとどうしようも無いし…うん、考えるのは後。なんでもいいから行動しないと……お?


視線を足元にやると、何やら変な違和感が。慌てて座ってた場所を見てみる…そこには亀裂のような物が。さっきまでこんなの無かったはずなんだけど…いやそうじゃなくて!!


十中八九ここになにかあると僕の直観的な何かがビンビン反応している。すぐさま亀裂にむけてパンチしてみる。バキンッ、とガラスが割れるように空間に無数のヒビが広がっていく。


そして、再度視界が暗転する。微睡みから目覚めるように、意識が海底から引き上げられるように。







『……でね、それで寿くんったら風船を取ったら木から落ちちゃったの!』


「はははっ……流石にやんちゃすぎですね…!!」


『……峯吉くん、なにか考え事してる?』


「へっ!?いやいや、なんでもないですよ!!」


『ほんとにぃ~? 峯吉くんって何か考え事してる時にさ、いつもこうやって左手で口元を隠す癖あるもん!』


「へっ!? ……本当だ、確かにやってるわ」


『ふふっ……変なの!』


「はははっ……はぁ」


『ん?どうしたの?』


「……春風さんさえいれば後のことはどうでもいいと思ってたが……やっぱダメだわ」


『え?』


「ごめん、俺行くわ」


『……』


「夢でも会えて良かった、それじゃ」


『……ねぇ、一つだけお願いしてもいい?』


「別に……俺が現実に戻って覚えてるかどうかも確証は無いけど、一応聞いとく」


『探して、私を……』


意識が浮上していく。最後に聞かされた言葉が頭の中を駆け巡る。








「……て」


声がする。何だかえらく周りが騒がしいけど正直もう少し寝させてほしい……


「……た、お……ってば!!!」


ちょっ……身体揺さぶらないで!後5分でいいから寝させて……!!


「彼方ったら!!!おーきーてー!!!!」


「んがっ!?……あれ、僕なんで寝てたんだっけ?」


「やっと起きた!! 今ものすごい状況になってるの!! ほら見てあれ!!」


「ものすごい状況……だね」


クリアになっていく思考と同時に現状を徐々に受け入れる。とりあえず今は、ボスであるイマジナリーパピヨンが狂ったように片方しかない羽根を羽ばたかせながら、地上を暴れ回っているようだ。


さらに、現状盾役が1人しか機能しておらずヒーラーが盾役に集中しているせいで、回復ポーションが枯渇している残りのメンバーはこれ以上ダメージを受けると最悪死亡するといったところだろうか……


「くそっ、動きの規則性が完全に崩壊してやがる……!」


どうする……一瞬でも隙を見出さない限り突っ込んで行ってもミンチにされるだろうし、どうにかして盾役を戦線から退けさせないともうもたないぞっ……!?


「そうだっ……!ユーリィは!?あいつなら動きを止めれるだろ!?」


「ウチもそれ思いついたんだけど、代表まだ起きないの!ずっと魘されてて何も反応が無いの!!」


「……マジ?」


「マジだよっ!!!」


これは……かなりヤバい状況かもしれん。手段があまりにも無さすぎるし、どうする……!? 撤退しようにも転移鏡は使用できないし、かといってこの状況でボスを討伐するには手札が少なすぎる……!!


後1人盾役がいれば……いや、たられば喚くより思考を回せっ!このゲームの経験者ならパターンの類似性とか見つけれるだろ! 今僕がやれる事はっ……!?


「カナ、この斧借りるぞ」


フラッと後ろから出てきた八千代先輩が呟く。先輩の手には『風雷の斧』が握られていた。


「ちょっ……先輩何する気ですか!?」


「もう1人盾役が欲しいんだろ? だったら適任は俺しかいない。弾くのは慣れっこだからな」


「いや、それは分かってるんですけど……いくら先輩でもあの不規則な動き全部を捌けるとは……」


「大丈夫大丈夫。それに俺はそう簡単には死なねぇからな、安心して俺に任せてくれ」


そういって笑いながら軽口を叩く先輩。……なら僕も腹くくるしかないな。刺し違えるつもりは毛頭無いが、死ぬ気でぶち殺してやる。気合い入れ直しも兼ねて頬を叩く。


「あっ、そうだカナ。武器もう1本くれないか? お前から貰った刀もう壊れそうなんだよ。失敗作でもいいからさ」


「えーっと……あるにはあるんすけど、失敗作というかピーキーすぎるというか……まぁでも無いよりマシなんで渡しておきます」


正直こいつを作り上げた時は声が出たものだ。効果を見るまでは……ここまで性能が尖りきっていると、産廃に片足突っ込んでると言っても過言じゃない。いやむしろゴミに近い。なんせ、肝となる効果の発動条件がM()P()()使()()()()()()()()()使()()()()()()()()()……



Name:魔刀 喰零(ぐれい)

Rank:SS

説明:MPが0の時、以下の効果が発動する。

全ステータスを1.5倍に、魔法系スキルを吸収し無効にできる。






「いいね、俺にピッタリだ」


カナから借りた刀を何度か振ってみる。……馴染む、いやそれどころか身体の一部みたいだ。自分の神経が延長したみたいな感覚だな。それにこの斧も悪くねぇ。


「ふぅ……よし、久々に気合い入れてやってみますか」


なんか身体の調子も上がってきてるみたいだし、今まで以上の動きができそうだ。

呼吸を整え、盾役の元へ走り出す。地を蹴った瞬間身体が軽すぎて転びそうになったが気にせず2歩目に移る。身体の具合を走りながら確かめつつ即修正し、斧を前面に構えボスに思いっきりタックルする。


さぁ、ここから第2ラウンドだ……!!!!







遅れてすみません

呼んでくれてありがとうございます。

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