22:第16階層攻略戦③ 決戦前夜
陳謝。
前回の戦闘からおおよそ半日後、僕らは階層ボス『イマジナリーパピヨン』がいるであろう階層奥の巨大な扉の前にいる。そこで全員の武器の整備であったりドロップ品などの整理をすることになった。ボス部屋の前は強力なセーフティゾーンになっており、ゲームの時もこんな感じにアイテムを買えたり直したり出来る場所だった。
「おーいこっちに薬草何個かくれないか?」
「りょうかーい。あ、それは武器の素材にできるからあっちの籠に入れといてね」
せっせと働き次の戦いに備えてみんなが動き回ってる。かくいう僕もみんなの武器の整備に精を出してる。……嘘です。もう半日も中腰でハンマーを振り続けてるからそろそろ腰とか腕が逝きそう……!!
…そういやこのハンマーって使う度に成長するとか何とかフレーバーテキストに書いてあったよな?今ってどうなってんだろ?確か…こいつを見つけてから大体…2ヶ月くらいか。何回使ったか覚えてないけど多分100は越えてる気がするし、この作業終わったら確認してみるか。残り10個くらいだ、もっかい集中し直して終わらせてやる!
「あっ、カナタさん追加で武器制作お願いしたいんですけど…5つくらい。」
「え゛……ま、まっかせて下さいよ!後でコンセプトとか聞くんでちょっと待っててくださいね!」
僕の武器たちもメンテしないといけないし…これは徹夜コースになるかな…いや、大丈夫!気合い入れ直したんだ、今日中に全部片付けて風呂はいって寝るぞ!!!
怒涛の作業中………
……結局寝れなかった。1人安請け合いしたらねずみ算式に全員の武器のメンテをする事になり、そこからはただひたすらにハンマーを振り続けて気がついたら次の日の昼になってた…。そこから死んだように半日ぶっ倒れて、目を覚ますとボス戦に向けての最終ブリーフィングがちょうど終わっていた。ワラワラと解散したっぽいムード感が漂っている。
「あ!彼方やっと起きたんだ!今さっきブリーフィングが終わったとこだったけど、今からウチが口頭で説明しようか?」
「いや、大丈夫。前にユーリィから概要は聞いてるし、それよりこれ、羽曳野さんの防具類。ちょっと強化とか手直ししといから。」
「……美鈴。」
「ん???何??」
「…んもうっ!前にカナタに言ったでしょ!?ウチの事は下の名前で呼んでって!!」
「あ……そういやそうだった。ごめん、美鈴。」
「…うん!!分かればヨシ!!防具、ありがとうね!!」
…相変わらず元気な子だなぁ。それにしてもどうしてそこまで下の名前で呼ばせたいんだろ?姉ちゃんからも名前呼び強制刺せられてたけどなんか流行りとかなにかなのか??
その後補修した武器や防具を持ち主に返したり残っていた自分の武器を強化したり技能の再査定をすることにした。ここでの戦闘でレベルも73から77まで上がっていた。 …やっぱレベルの上がり幅がおかしいな。ここのモンスターもとい異獣のレベルが高いのは確定か。レベリングが容易くなったのは嬉しい反面、ピンチにもなりやすくなるってのは面倒だな……。ゲームなら喜んでるところだけど今は命かかってるから正直嬉しくないし…。
あっ…てか、これが当たり前の思考になってるのヤバいか?元々はこんなのありえなかった訳で…ファンタジーが思考に染み付き始めてるのは流石に……。僕はまだこの世界になってから体感1〜2ヶ月位だけど僕以外はもう半年以上だもんな…。にしても僕以外の人はこんなイカれたゲームの世界に馴染んでるんだ??
……いや、今そこを考えるよりステータスの確認と技能の査定をしないと。どれどれ…
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Name:カナタ
Lv:77
出身:放浪者
job:武芸者
subjob:鍛冶師
HP:2200(+600)
MP:2500(+1000)
STR:3000(+800)
STM:2400(+1200)
TEC:5000(+1150)
AGI:3300(+950)
VIT:2000(+300)
LUC:4600(+1000)
〈技能〉
・バイパースラッシュ(New)
・剣舞・烈風
・剣舞・突風(派生)
・衝振脚閃
・抜刀「綴」
・重刃・狂桜無尽
・刻印撃・六芒星
・堕落の剣Lv.2
・焃血支配術Lv.2
・カウンターリベルLv.2
・インフィニットジャンパーLv.2
・ディメンショナルムーブメント Lv.3
・クリムゾンアンブレイカブル(New)
(スピリットルーティン+オールインフルスロットル)
・プライマルアーツ閃
・デストラクションオーバーブレイクLv.2
・轟水流舞Lv.2
・ファントムブリンク(New)
(シャドウランナー+瞬速流星)
・瞬光視界Lv.2
《特殊技能》
・多彩極技(New)
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ふぅ、こんなもんかな。思ってる以上にスキルも強化されてたし収穫としてはかなりいいんじゃないか?スキルの合体もようやくできたし…でも時間的に検証の時間は無いからぶっつけ本番になりそうだな。
「カナタ、少しいいか。」
「はいはい…ってユーリィか。どうしたの?」
「明日の事でな、相談したいことがある。」
「全然いいけど…なんかあった?」
「お前が前に言ってた階層の敵Mobのレベルアベレージがどうのって言ってたろ?あれが引っかかっててな。」
「うん、でもあれはあくまで僕の予想だし…そこまで考えなくてもいいと思う。それに現状のパーティでここまで来れてるなら大丈夫でしょ。」
「そうだといいんだが…妙な胸騒ぎがするんだよ。」
…まぁたしかにボスにも強化が入ってる可能性は無きにしも非ずというか、十中八九入ってるだろうし心配するのも無理はないよな。でもパーティのメンツも階層攻略でレベルもぐんぐん上がってるだろうし…
「心配しすぎは明日のコンディション不良につながるから、一旦この話は終わりにしよう。僕も一応警戒はしとくからさ」
「……そうだな。すまなかったな、作業の邪魔して。俺様も明日に備える、お前も早く休めよ。」
「うん、それじゃまた明日。」
ユーリィを見送った後、後回しにしていた自分の武器を修繕しつつ強化もやっておいた。ひと段落ついた後にふと時計を見るともう日付が変わりかけていた。…そろそろ寝ないとな。今やれることはもう全部やったし、後は野となれ山となれ…だな。それじゃ、おやすみなさい……zzz
「…今の些細なやり取りも貴方の上司か何かに報告するの?」
「日本政府は妙に心配性だからな…。いちいち報告しないと気が済まねぇらしいのよ。」
「ふぅん…。私的にはあの子に害があるとは思えないんだけど?どうしてそこまで政府…貴方はアカトキカナタを監視したがるのかしら?」
「別に…まぁ強いて言えば大事な後輩でもあるし遠縁の親戚ってのもあるな。」
「……へぇ。」
「おっ、ようやく寝やがった。よっしゃ俺らもさっさと休もうぜ。」
そう言い残して八千代峯吉は自身の寝床へ戻っていった。カーラは目を細めつつ自身の携帯端末へ目を向けると一件のメールが送られてきた。件名は『アカトキカナタ ヤチヨミネヨシ 基本情報』。しかし、添付されていたのは峯吉の分だけだった。そして本文には兎のマークのみ。
「なるほどねぇ…。アカトキカナタは現状手に負えない、というわけね。」
兎のマーク、それは兎ヶ崎一族が深く関わっている証。世界トップクラスの権力を持つ日本の貴族が彼を世界から隠しているという理由に他ならない証拠でもある。
「紅時彼方…ますます興味が湧いてくるわね。日本は何を隠したがってるのかしら…?」




