7:図書館迎撃戦 その1
よく分からないまま別室に案内されてもうそろそろ30分…扉の外からはバタバタと騒がしい音が鳴り止まない。八千代先輩待たせちゃってるなぁ…早く帰りたい…。
それからもう10分後、スーツを着たメガネの7:3分けの男が部屋に入ってきて僕の目の前に座りひと息つくと…
「初めまして。私『ギルド』日本支部ランク管理部部長の蹉跎 真夜と申します。」
「あ、ご丁寧にどうも…」
THE・サラリーマンといった感じの蹉跎さん。目の隈が気になるがそれ以外はとても爽やかな印象だ。
「さて、紅時彼方様。おめでとうございます。あなたは世界で11人目のXランクのホルダーでございます。」
「は、はぁ……へ!?」
え、Xランク!?それって1番上のランクだよな確か…
「つきましては彼方様の能力を測らせていただくために、こちらのタブレットに触れて頂きたいのです。」
「す、すみません。別にいいんですけど1つ質問をしてもいいですか??」
「ええ、どうぞ」
「えっとじゃあ…僕がXランクに選ばれた理由を」
「かしこまりました。では手短に、先程のパネルは対象者の『魔力』を計測する機械です。そちらで計測した値が1500を超えている方をギルドはXランクにすると設定いたしました。彼方様の魔力は『2580』。ちなみにこれは歴代でもかなりの数値です。」
「な、なるほど…」
2580が高い数値…?『魔力』ってMPの事だよな?……お世辞にも凄いとは思えないけど…。
「それではこちらに手を…」
まだいくつか疑問があるけど、警戒しながら手を置く。するとタブレットから光が漏れ出し、部屋全体を包み込んだ。
「おぉ…素晴らしいっ…!!」
「あ、あのっ!!いつまでこうしてたらいいんですかっ!?」
「まだこの数値で発展途上とはっ!!凄い!!凄い逸材だ!!!!!宝の山だっっっ!!!!」
「おーいっっ!!!!蹉跎さぁーん!?もしもーし!!!!!!!」
「あはっ、あはははははははははははは!!!!!!!!!!!最っ高だ!!」
だ、ダメだ!この人おかしくなってる!慌ててタブレットから手をどける。光は徐々に弱くなり、最終的にタブレットの中へと消えていった。
少し休憩を挟み…
「大変申し訳ございませんでしたっ!少々テンションがハイになってしましました…!」
「いえいえ、お気になさらず…」
「ありがとうございます。…では鑑定の結果なのですが、彼方様の能力値はこうなっております。」
パチンっと蹉跎さんが指を鳴らすと、空中に僕のデータらしきものが映し出された。才能部分は鑑定しきれなかったのか黒いノイズまみれだ。
「こちらのノイズはおそらくですが、彼方様の能力値がまだ発展途上のために計測できなかったものだと思われます。能力値が成長するホルダーはかなり稀ですが、決まってノイズが発生するんです。」
「へぇ~他にも成長する人がいるんですか?」
「大体各ランクごとに2~10名程いらっしゃいますが、成長するXランクは彼方様が初ですね。」
なるほど、しかし経験値システムのくせにレベルアップできないとは…
「そしてステータスがですね…TECが圧倒的に高いです。………正直言って彼方様のこの『5150』という数値は異常です。Xランクの中でもぶっちぎりで1位です。」
「えっ、そうなんですか」
まぁ、これは割り振りすぎたかな~とは思っていたけどまさかそこまで言われるとは…
「以上、こちらの数値と成長性も兼ねて…暫定ですが全世界11人のXランク『第7位』に、日本の『第4位』にランクインされると思われます。」
「…何だか実感が出てこないですけど、まぁ頑張ってみます。」
「ありがとうございます。では、もろもろ役所や政府に出す書類や検査が山ほどありますので頑張って今日で終わらせましょう。」
「あ、その前に武器売店にいる連れに先に帰っといてほしいと伝えてほしいんですが…」
「かしこまりました。」
そこから夕方前までずっと紙に名前を書いたり身体検査などをぶっ続けでこなしていった。せ、精神が擦り切れる…。
作業中、蹉跎さんにホルダーになるとどういう利点があるのかを聞いてみた。…正直引いた。めちゃくちゃプラスなことしかないじゃないか!もうなんか怖いよそこまでいくと!!!!
Xランクのメリットは…
・医療に関する全てを無料に
・全世界の交通機関(タクシー、在来線、新幹線、飛行機、フェリーetc)が使い放題
・武器や防具の料金をギルドが30%負担
・家賃、税務管理、融資なんでもギルドが補助
・『クラン』(←個人のホルダーが運営する小型の『ギルド』のようなもの。)を設立する場合、人材や資金を一部負担。
これでも半分いってるか分からないけど、ここだけでもうお腹いっぱいだ…。
「遅くまでお疲れ様です。こちらコーヒーですのでよかったら。」
「あ、ありがとうございます……」
お、ミルク淹れてくれてるじゃん。
「最後、こちらのカードを。」
「これは…?」
「こちらは彼方様のホルダーカードです。ホルダーである証明書であり、先程話したメリットを受けるために必要になるものです。」
「あぁ…これが」
「ここの、銀色になっている部分に触れてマナを流してみて下さい。直感的に流れろと念じれば勝手に流れていきますので。」
「は、はい…」
早速流してみる。するとカードは淡い金色の光に包まれ、僕の情報がどんどんカードに刻まれていく。
「はい。こちらで書類関係は以上になります。お疲れ様でした。では明日もよろしくお願いします。」
「え゛っ明日もあるんですか!?」
「明日は簡単な体力テストとホルダーに発現する特殊な能力、才能の確認だけですので。あ、動ける格好で来てくださいね。」
「わ、わかりました…。あ、後このカードって今日からもう使ってもいいんですかね??」
「えぇ、大丈夫ですよ。もう各機関に彼方様の事が通達されていますので、効力はもう発生しています。」
「お、マジですか。だったらお願いがあるんですけど…ここにタクシー呼んでいただいてもいいですか?」
「かしこまりました。ではロビーでお待ちください。」
そんなやり取りを交わし、僕は八千代先輩の家へと帰っていった。
読んでいただきありがとうございます。
ここから物語を盛り上げれるように頑張っていきます