6:テンプレ回収
「んぉ……??」
目を開けるとやけに見慣れた天井が目に入り、思い出そうとすると同時にだんだんと脳が覚醒していく。ここは…八千代先輩の家…だよな……?
あぁ……夢じゃなかったか。やっぱり昨日の人は八千代先輩だったのか…。布団から出て枕元に置いてあった作務衣に着替え、階段を下りる。下っているうちにものすごくいい匂いが…!こ、この嗅ぐだけでお腹が空いてくる匂いはっ…!!!
「おっ、ようやく起きてきたか」
「お、おはようございます……」
「おう、おはようさん。とりあえず顔洗ってこい」
何度もやったやり取りのはずなのに、妙に懐かしく感じる。それになんかすごい心が和んでくる……ようやく一息付けたんだなぁ…
「「ごちそうさまでした。」」
いや~めっちゃ食べた!ご飯3杯もおかわりしちゃったよ。それにおかずが僕の好きなものばっか!終始お箸が止まらなかった…。
食器を下げて洗い物を手伝った後、改めて椅子に座る。
「さて、カナ。そろそろ聞かせてもらうぞ。お前がこの半年間何をしていたのかを。」
「はい…ちょっとにわかには信じがたい話なんですけど…」
「あぁ、ゆっくりでいいからな。」
そこから僕は、あの夜先輩達と別れてからの出来事をかくかくしかじかと話していった。『ユートピア・エンド』のアップデートの事や、その後に見た夢の事、狼達との戦いの事、廃校の時間の流れが異常だった事などを。
______大体1時間後、先輩はようやく口を開いた。
「にわかには信じがたいが、この世界の惨状を見る限りお前さんの話は本当なんだろうな…」
「本当に信じてくれて一安心です」
一息つくのに淹れてくれたほうじ茶を飲む。沁みるなぁ…。
「で、どうするんだこれから?まだその感じだと『ギルド』でホルダー登録もしてないだろ?」
「な、なんすかそれ?」
「そうだった、知らないんだったな。悪かった、これ見てくれ。」
そういって僕の目の前に免許証みたいなカードを置いてくれた。
「これがホルダー登録証。『アルカナ』に目覚めた奴はこれの登録がマストになったんだ」
「はぁ…な、なんで??」
「政府が決めたんだよ。まぁ要するに運転免許だ。これで大体分かるだろ?」
「えぇ…なんとなく。」
「よしっ、早速行くか。車出してやるよ。」
「あ、ありがとうございます!それと…少し寄り道したいんですけど…」
「ん?どこにだ??」
「ケータイショップと、服屋にちょっと…」
ちゃちゃっとスマホを再契約し、服屋でジップパーカーとTシャツ、下着や靴下、ジーンズを数枚購入。預金が程々減ったがまぁ許容範囲内だ。
そして数分後、昨日も見た『ギルド』とやらに到着。大学の面影はあるが如何せん周りの人間が鎧やらを身に着けており、何だかコスプレ会場に来たみたいだ。テンションは上がるが、自分の場違い感がすごい。
「ほれ、あそこの部屋で新規の登録ができるからパッと済ませてこい。部屋に入るだけでいいからな。」
「え゛、先輩ついてきてくれないんですか!?」
「アホか、さっさと行って来い。俺はあそこの武器売店にいるからな~」
武器売店って…そんなのあるのかよ…。
部屋の入り口前で番号が書かれた紙を貰い、そろ~っと部屋に入った訳だが…ひ、人が多いっ!こんな狭い部屋に何人いるんだよ!そんなぎちぎちの部屋で待機すること10分…。
『大変お待たせいたしました。これより午後の部の新規登録手続きを行います。番号順にご案内いたしますので、少々お待ちください。』
そんなアナウンスが流れると、周りの人たちがガヤガヤと騒ぎ始めた。聞き耳を立ててみると、どうやらこの新規登録というのは大学入試のようなもので、奥の部屋にあるパネルに触れてそのパネルが何色に光るかでランクが決まり、最高ランクのSが金色で最低ランクFは灰色に光るんだとか。Sよりも上のXもあるが何色に光るか分からないらしい。その色で今後の収入や将来設計にかかわるらしく…なるほど、だからこんなに盛り上がってるのか。
『次、番号101~250までの方奥へお進みください。』
おっ、呼ばれた呼ばれた。ぞろぞろと流れていく人の波に加わり奥の部屋に向かう。部屋はコンクリートブロックに囲まれ、その真ん中に件のパネルが置いてある台座がポツンと置いてあるとても無機質な部屋だった。
「では新規登録を行いますので101番の方から順番に前へ出て、こちらのパネルに手を当てて下さい。」
ギルドの職員さんたちが列の前に立ち「〇〇番から〇〇番の方々はこちらに並んでくださーい!!」と声を張り上げているのでそそくさと自分の番号の場所へ向かう。ちなみに番号は「123」だ。
早速最初の人が手を当てようとしてる。何という自信満々の顔だ…。触れた瞬間、パネルから灰色の光が轟ッとあふれ出した。…あ、ムンクみたいな顔になってら。くわばらくわばら……
続々と進んでいくがムンクがじゃんじゃん量産されていく。そしてあっという間に僕の番が来た。
………正直Fでも何でもいいや。才能があれだけ豊富なんだ、困ることもないでしょ。最悪後方で武器作ってるだけでもいいし…。
よいしょっと………アレ??光らない…もういっちょ……………あら?なんかパネルの様子が…変??
「す、すみません。パネルが変なんですけど…………うおっ!?」
振り返ってみるとその場に職員さん全員が目を見開いてあんぐりしている。えっなに、怖いんですけど。
「もももももももももももも申し訳ございませんここここここここちらの別室で待機して頂いてもよよよよよよよよよよろしいでしょうか。」
え、え~と…何かやっちゃいました???
読んでいただきありがとうございます。
ランクの色の序列ですが
無(X)→金(S)→銀(A)→赤(B)→黄(C)→青(D)→緑(E)→灰(F)
となっています。C以降は雰囲気で決めました。