1:夢の中で痛みはありえないでしょ!
「あぁ〜、痛い……。」
自分の名前は、鈴木治一。
埼玉県に住んでいる大学生2年生になったばかりの学生である。
しかし、なんか身体中が痛い。いや、なんで……?
もしかして、第3次成長期が来てしまったのか。
……それはともかく、一体何が起こっているのかわからない。気づけば、視界が暗くて何も見えない。
指とかは動かせるけど、痛い。腕と足は痛くて動かすことができない。
困った……。もしかして夢?
んじゃ、寝ますか。おやすみなさいって、夢に痛みってないでしょ……。
無理〜。無理無理無理無理!!誰か助けて!!
「誰かー……。」
一人暮らしだから、声出しても意味ないんだけどね。
あーあ。声出すのも相当きつい。
なんてこった。パンナコッタ。
「どうかなさいましたか?」
「ふぇっ!?いって!!」
痛い!!
驚いた衝撃で全身が……。
紳士なおじさんみたいな人の声がするけど、どういうこと?
とりあえず助けてもらおう。
「痛い……。痛い……。」
「痛いのですか。それが因果応報というものです。しっかりとその身に刻み込んでください。」
え、冷たい?なんで?まじか〜……。
知らぬ間に、俺何かやっちゃいましたか状態だ。
でも、誰かに頼らないとしんどい。
「助けて……ください。」
「え!?……いや、失礼しました。仕方ありません。楽にさせてあげましょうか。」
「……はい。」
ーージーン。
なんか全身が暖かくなっていきた……。しかも少し明るくなった?
なんだこれ気持ち良い……ん?んん〜〜!?
「いででで!……痛い!!」
「治っている証拠ですので、少しばかり我慢してください。」
「あぁぁー!!なんでぇーーー!!!!」
「騒がないでください。」
死ぬ死ぬ死ぬ。この痛み何!?
さっきまで全身が痛くて、指を動かすのがやっとだったのに!!
今は全身の痛みで身体中が反射的に動いちゃう!?
体が作り替えられている感覚に近い気がする。そんな感覚体験したことないけど……。
……それにしても、これいつまで続くの?
◇
あれ?痛みがなくなってきた?
痛みがあったところが痺れてきた感じだ。
「これで体を動かすことができるくらいにはなりましたかな?どうですか、坊ちゃん。」
「ありがとうございました。」
身体中の包帯を取りながら話す。
てか、この包帯血だらけじゃん。しかもくさい。うぇ。
目に巻かれた包帯をとってみると、スーツを着たイケオジが椅子に座っていた。
このイケオジが声の主か。てか、やけに広い部屋だな。
「あのー……すみませんが、あなたはどちら様ですか?」
「!?……坊ちゃん、もしかして記憶がなくなってしまったのですか?」
「え……?記憶はあります。」
このイケオジは何を聞いているんだ?
しかも、さっき『坊ちゃん』って言われてたな。
頭がパンクする……。
「それでは、自分のお名前と、今いるところを答えてください。」
「自分の名前は、鈴木治一です。ここは、わかりません。」
「……これは重症ですね。あなたの名前は、ジル・フォン・マッキントッシュです。そして、今いるところはマッキントッシュ家の別邸の坊ちゃんの寝室です。ちなみに私の名前はココ・マッキントッシュと言います。」
なるほど。よくわからないな。
とりあえず、ジル・フォン・マッキントッシュが自分の名前か。
そして、このイケオジはココさん。
ん……?なんか、体が少し小さい気がする。
「ココさん、鏡はありますか?」
「あちらにございます。」
部屋に立てかけられた大きな姿見を見てみる。
……昔の自分??
あれ?多分高校生の時ぐらいだな。
「ココさん、質問したいことがたくさんあるんですけどいいですか?」
「はい、どうぞ。」
ベッドに座って話を続けた。
「今は何年何月何日ですか?」
「2034年の7月1日です。」
「ここは何て国ですか?」
「ここは日本です。」
「名前がカタカナなのはなぜですか?」
「それは、高貴な身分であるからです。」
「ありがとうございました。とりあえず大丈夫です。」
……全く大丈夫じゃない!!
自分の知っている日本だけど、何か違う!
日本で高貴な身分って何??
坊ちゃんって呼ばれてたし、もしかして自分はお偉いさんなのかもしれない。
よく考えたら、さっきの治療行為のような拷問はなんだったんだ?
「あのー……ココさん、さっき治療してくれたのってなんですか?」
「さっきのは、『魔法』でございます。」
「魔法……ですか。」
「混乱されているのでしょう。夜も遅いので、一度お休みになられた方が良いでしょう。」
「そうですね。そうします。」
「はい。それでは失礼致します。」
日本だけど、昔の自分になってて、名前がカタカナになって、『魔法』のある世界に来てしまった……??