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国際ロマンス詐欺を追え!

 シェリーの保持していたマイケルからの手紙を証拠資料として提出するため、私はヘイズ王立警察にやってきた。

 当のシェリーの頭にはマイケルはもういない。今は私の従者フィリップに夢中になっている。なんて恋多き女性なのだろうか……


 シェリーはフィリップに家まで送り届けさせた。ちなみに、ミシェルも同行させている。

 もし……万が一……間違いがあったりして……二人に何かあると困るから。


 私がヘイズ王立警察に到着すると、署長のジャン・ロッシが待っていた。銀行でシェリーを説得していた警察官から連絡があったのだろう。


「マーガレット様、この度は現場の警察官が行き届かず、マーガレット様のお手を煩わせてしまったとのこと……」


 ジャンは私を見るなり謝罪した。

 ジャンはロッシ家の次男。そのロッシ家はウィリアムズ公爵家派閥の子爵家だ。警察の不手際を私から父に伝わると困るのだ。


「国民が困っていたら助けるのが私の役目です。特に大丈夫ですよ」

「そう言っていただけると……大変ありがたく……」


 ジャンに付き添われて私がヘイズ王立警察の刑事課に手紙を持ちこんだら、「またですか……」と刑事の一人からため息が漏れた。


「またってどういうこと?」

「最近、急激に国際ロマンス詐欺が増えているのです。これと同じ、ヘイズ王国の女性に手紙を送りつけて、お金を送金させようとする事件です」

「被害者は?」

「既に詐欺に騙された被害者も出ています。件数が多いので、組織的な詐欺集団だと思います」


 そういうと、刑事は手紙の差出人の住所を確認した。


「やはり、マンデル共和国ですか……」

「マンデル共和国に詐欺集団がいるのかしら」

「それは分かりません。マーガレット室長は国際ロマンス詐欺の手口をご存じで?」

「詳しくは知らないわ。『禁じられた逃避行』に似せた手紙を送ってくる以外は……」

「まさか、『禁じられた逃避行』に似せた手紙であることを見抜かれているとは……」


 すかさず、ジャンの「さすが、マーガレット室長です!」が聞こえた。


 なぜか刑事とジャンに褒められた私。悪い気はしない。

 本当はミシェルが教えてくれたのだが、別に言わなくていいだろう。

 部下の手柄は私の手柄……


「いやーなんかセリフが似てた……かな?」

「その通りです。奴らの手紙は基本的に『禁じられた逃避行』の引用です。手紙の差出人に使う名前はジョン、マイケル、ジャック、トーマスなどバラバラですが、この写真は共通しているようですね」


 刑事は私に詐欺グループが送ってきた写真を見せた。


「あぁ、フィリップ……。実は、この写真に写っているのは……私の従者のフィリップなのです」

「えぇっ? マーガレット室長の従者が詐欺を?」

「そんなわけないでしょ! 10年前に傭兵をしていた時に撮った写真らしいの。詐欺集団がフィリップの写真を勝手に使っているの!」

「そうですか……安心しました……」

「しかし……困ったものね」


 刑事は詐欺集団についての話を進める。


「警察では『詐欺集団が本当にマンデル共和国にいるのか?』について、疑問を持っています」

「どうして?」

「手紙に引用されている『禁じられた逃避行』ですが、現在出版されているのはヘイズ王国だけです。マンデル共和国では買うことができません」

「そうなの?」

「そうです。マンデル共和国で販売していないことを出版社に確認しました。さらに、マーガレット室長の従者の写真を使っている」

「どちらもヘイズ王国の人間にしかできないわね」

「だから、詐欺集団の拠点がマンデル共和国にあったとしても、ヘイズ王国の者が深く関係していることは間違いないでしょう」

「たしかに……」


 刑事の話を聞く限りでは、ヘイズ王国の人間が深く事件に関わっているのは間違いない。

 主犯格がヘイズ王国にいるのか、マンデル共和国にいるのかは微妙なところだ。

 私は警察の捜査状況を刑事に確認した。


「捜査はどこまで進んでいるの? 手紙の住所には行ってみた?」

「まだです。国際犯罪なので……マンデル共和国の警察に協力を要請してから捜査する必要がありまして……」

「つまり、捜査は進んでいないと?」

「そうです。正直、進んでいません。マンデル共和国にヘイズ王立警察が正面から乗り込むわけにもいかず……正直困っています」

「そうよね。ヘイズ王立警察がマンデル共和国で捜査するわけにいかないものね」

「マーガレット室長の方でマンデル共和国の警察に口利きしてもらえる人物をご存じありませんか?」

「うーん、どうだろ。ちょっと聞いてみるわ。まずは手紙の住所がどうなっているかを調べないといけないわね」


 状況が分かったので、私は屋敷に戻ることにした。


 警察署の出口では署長のジャンが深々と私に頭を下げている。

 私が父に言いつけないか、まだ気にしているのだ。


 それにしても、詐欺集団の拠点はマンデル共和国にあるけど、主犯格はヘイズ王国にいるかもしれない。

 それに、ヘイズ王立警察がマンデル共和国で捜査するのは難しい。

 国際ロマンス詐欺の捜査は難航しそうだ。


 ――どうしようかな……


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