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「恋の証明」  作者: 全昇華
3/4

「擬似乱数と取り引き」

5月中旬。

今日はついに席替えが行われる。6時間目の総合の時間にするらしい。

ところで、今日は音楽がある。その音楽の時に嬉依斗に呼ばれ、俺たちは疾風の如く、圧倒的なスピードで音楽室まで向かったが、白河先生がいなかったから廊下で待たされる羽目になった。

「こんなに急がなくても良かったんじゃないか?ほら、白河先生もまだ来てないし。」

「いやいやー、それは結果論じゃないか!万が一を考えて毎回めっちゃ急いでるんだよ!」

「万が一って……そんなこと起こらないだろー。」

すると、廊下の奥の方から白河先生がやってきた。嬉依斗のテンションは上がりに上がって、「おはようございます!!」とか話しかけていたが、「鍵あけるので、ちょっとどいてください。」といわれ撃沈していた。これが「叶わぬ恋」ってやつだな。鍵を開けると、白河先生はふぅと椅子に腰を下ろした。机の上に沢山のプリントが置かれた。これを1人で持ってきたから疲れているんだなと感じた。

すると置き方が不安定だったからか山ずみのプリントは崩れ落ちた。そこですかさず嬉依斗が駆けつけて拾ってあげていた。白河先生に「ありがとうございます」と言われてとても嬉しそうな顔をしていた。

「嬉依斗、拾うの手伝うって優しいなぁ。」

「そんなの当然だろ!」とは言っていたが内心やったぁー!としか思ってないんじゃないだろうか。

今日は陽がサンサンと照りつけている。こんなにいい天気なのは今日の席替えが良くなるという暗示に違いない。などと考えていると先生が説明しだした。発表の機会はたくさんあったがその多くは嬉依斗が発表して当てていた。きっと関心意欲態度は最高だろう。

授業が終わると、嬉依斗は吹奏楽部を押しのけて白河先生と喋りにいった。

「嬉依斗また白河先生のところいってるな。」

「そうやな。こっちは白河先生ファンクラブの嬉依斗のファンクラブ()だから、観察を続けるわ!」──

5時間目の数学が始まったが鉄田が来ない。多分問題を起こした生徒を指導しているのだろう。

すると、もう1人の数学担当の先生である村木先生が教室に入って来た。

「今は鉄田先生が来れないので、自習しててください。時々先生が見に行きます。」と言って、自習用のプリントを配ったあと2組に戻っていった。

「よっしゃあ!村木先生だー!」と思った。

村木先生は長谷川先生に負けずとも劣らないぐらい優しいのだ。

自習の監督が村木先生と分かったからかクラスの雰囲気は騒がしくなった。

「白石、ここの問題教えてくれない?何でこうなるかが分からなくて。」

と数博が尋ねてきた。

「あ〜、そこはな元々こういう意味なんだよ………」

俺が数博に教え始めてから20分ほどがたった。「数博」といいかけた瞬間、鉄田が教室に入ってきた。流石に鉄田が担任になってから1か月も経つと、クラスメイトは鉄田を知覚してからの反応がとても早くなっていた。そのおかげで今回誰も鉄田には怒られなかった。その後は普通に授業であった。

早く授業が終わるのを待つも、とても時間の流れが遅い。授業時間が残り5分ほどになったとき、鉄田が「今日はこれで終わりだ。」と言い放った。

一瞬困惑したが、書かれ始めた座席の図を見て席替えをするのだと分かった。黒板にそれを書き終え、個々の机の図の中へランダムに1から順に数字が書かれた。チャイムは鳴ってしまったが、端の列の人から並んでくじを引きはじめ、それが終わった人から休み時間となった。

そして、俺の番が来た。くじにかかれた番号を見る。[17番]だ。17番の席の場所を確認すると、最悪なことに窓側の1番前の席になってしまった。

「紬、何番だった?」と小声で聞く。鉄田がいたからだ。

「私は24番だったよ。蓮くんは?」

「俺は17番だよ。めっちゃ離れてしまったな。」24番は驚くことに廊下側の1番後ろの席なのだ。

どうしようかと思っていると凌夜が話しかけてきた。

「白石、席が悪かったのか?」

「あぁ、そうだ。凌夜は?」

すると、凌夜は声をひそめていった。

「蓮の席、窓側の1番前の席だろ?ここだけの話、そこの隣の席が酒井なんだよ。それで、俺は廊下側の1番後ろの席だ。僕 の く じ と 交 換 し な い か?」

「ほんとうか!?じゃあ交換しよう!」俺たちはこっそりとくじを入れ替えた。

「もうそろそろチャイム鳴るから座ろっか。」凌夜はそういうと自分の席に戻った。俺も自分の席へと戻り、渡されたくじを開いてみると、それは廊下側の1番後ろの席などではなかった。

「ハメられた。」と思った。横の方を見ると、秋田凌夜がほくそ笑んでいた。俺はさらに絶望しつつ、席替えが始まるのを待った。

鉄田が教室に戻ってくると、早速「新しい席に移動させろー!」といい、自分は休んでいる人の席を動かし始めた。席が移動し終わり、俺は憤慨した気持ちを抑えながら腰を下ろした。

全員が移動させ終わり、「ここの席で見えにくい人はいるか?」と鉄田が質問してきた。

すると荒井が手を挙げた。荒井は紬のとなりで、俺は荒井の列の1番前だ。もしかすると…一筋の希望が見えた!

「後ろじゃ見えないのか?」

「は、はい。眼鏡はかけてるんですけど、それでも前の席じゃないと…」

と荒井は早口でいった。

「分かった、じゃあ白石、荒井と席を交代してくれるか?」

俺は目を輝かせながら「はいッ!」といった。こればかりは藤長よりも大きい、教室中に響き渡る声だった。

こうして席替えが終わってからはアンケートなどが行われ、思いのほかすぐに授業終了を告げるチャイムが鳴った。掃除を始める前に凌夜のところへいった。

「お前、よくもやってくれたなあ〜!嘘ついてんじゃねぇーよ!」

「ゴメン、ゴメン。でも、最終的には、お互いいい席になれたしいいじゃん!」

「良くねぇーよ!危うくめっちゃ離れるところだったじゃん。」

「荒井くんのおかげなんだから、お礼いってきたらー?」と凌夜がニヤニヤしながらいってきた。

もう、吹っ切れた俺は「分かった。いってきてやるよ!」とだけ、凌夜に告げて、荒井のところまでいった。

「荒井くん!君のおかげで俺、いい席になれた!ほんとにありがとう!」「ぼ、ぼく!?別になにもしてないんだけど……」

「いや!あの状況で手を挙げるなんて、普通の人は遠慮しちゃって出来ないよ!」

「え、それって僕のこと貶してる?」

荒井くんが笑ったのを初めて見た気がする。

「いやいや。そんなわけないよ!荒井くん、急だけどこれからよろしくね。」

「あ、うん、分かった。ありがとう白石くん。」思ったより仲良くなれそうだ。

掃除が終わると、凌夜に話しかけた。

「荒井くんと仲良くなれそうだったよ。凌夜も話しかけてこいよ。」

「え〜まじか!?じゃあ··」

「荒井く〜ん!ちょっとこっち来てくれない?」

と荒井くんを呼び、2人に話をさせた。お互い遠慮はしていたが、結構話も盛り上がっていたようだし、凌夜と荒井くんも仲良くやれそうで良かった。その後、3人で話をしているともう教室に鉄田がいた。

俺たちは、急いで帰る用意をし、何事もなかったかのように新しい席に座った。

「さようなら。」をしてから、紬に

「今日はホントに悪い席になるところだったけど、何とか助かったな。」

「そうね。私も誰かと交換しようかな〜って思ってたけどしなくて良かったね。」

「俺は、凌夜と交換したんだけど、紬の横の席のくじだといってたから交換したのに、全然違うくじだったんだよ!」

「だから、17番じゃない席に座ってたのね。」

「でも、荒井くんのおかげで紬のとなりになれたし、結果的には良かったけどな。」

「これからもたくさん一緒に話そうね!」

「あぁ、もちろん!」

そういうと紬は俺の手をより強く握りしめた……

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