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「恋の証明」  作者: 全昇華
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「恋の証明」

眠たい目を擦りながら体を起こす。外が異様に明るい。いつもなら母さんが「(れん)起きなさい」と起こしてくれるはずなのにもう仕事に行ってしまったようだ。今は何時だ、と思い時計に視線を向けると…10:45だった。「嘘だろ!?」と思わず声に出してしまった。もう三時間目の数学が始まってる。俺は階段をかけおり、用意してあったパンを頬張り学校に向かって駆けていった。

校舎についている時計が見えた!もう11:05だ。マズイ、俺は1番数学がすきだ。今までも休み時間にはすぐに机の上に用意をして、授業では毎度のように手を挙げ発表していた。そんな数学に遅れるなんて。俺は泣きそうな顔になりながら走る速度を上げていった。

良かった。幸いなことに体育をしているクラスはいないようだ。ゼェゼェと息をしながら俺は靴を靴箱に放り込み、もう体力が限界だなんて思いながら階段を駆け上がっていった。

ようやく3Fにつくと思った瞬間、一人の女子とぶつかった。2人は踊り場に倒れ込んだ。見た感じ小柄だが気が強そうだった。「なんなんだよ、お前!俺は急いでるのに」

「あなたこそ誰ですか!保健室に行って授業サボろうと思ってたのに」

こんな奴に構っていれば、数学の授業にさらに遅れてしまう。散乱してしまった教科書と開いたバッグを取り俺は教室に向かおうとした。「待って、

どうせ今行ってもほとんど授業受けられないんだから一緒に保健室行ってサボりましょう。」確かに、そうしたい気持ちもある…数学の授業じゃなかったらそうしていた。でも、俺は数学を受けるんだ!そう思いなおし、その声を無視して階段を上がっていった。すると手を捕まれ引っ張られた。

必死に振りほどこうとしたがダメだった。そうだ、俺は握力が18しかない、学校の中でいちばん弱い男だった。

腕を引かれるがままに保健室に向かった。「あなたたちどうしたの?」「頭が痛かったので休みに来ました!」本当に頭が痛いのだったら絶対出せないような大きな声だった。やはりサボるために来ているのだと確信した。

俺たちは椅子に隣同士で座り、他愛もない話をした。彼女は白雪紬(しらゆき つむぎ)

といい、俺の隣のクラスの2組らしかった。彼女も数学が好きだそうなのだが、最近の数学が簡単すぎておもしろくなく、よくここに来てサボっていると教えてくれた。

この学年には数学の先生が二人いて、同時に2クラス教えているということを思い出し、お互い今は数学の授業なのだということに納得した。

俺と彼女は数学の話で意気投合し、踊り場での言い合いが嘘のように仲良くなった。俺が登校した頃は雲が空をおおっていたが、いまは雲ひとつ無い晴天となっていた。

「私いま、塾の問題集持ってきてるんだけど一緒に解かない?結構解きごたえあると思うよ。」俺はもちろんそれを承諾した。一次関数や角度の問題を解き、“証明”の問題も解いた。彼女が言った通り良問揃いでとても解きごたえがあった。

1時間半ほど経って、「もうそろそろ給食の時間だし教室戻ろっか」「そうね。今日は話も盛り上がったし、一緒に帰らない?」「いいよ。じゃピロティで待ってるね」俺たちは各自の教室へと戻った。教室で大丈夫か?とか聞かれたが、ちょっと頭が痛かっただけと誤魔化しておいた。

SHRが終わり、俺は少し浮かれた気持ちでピロティに向かった。友達の一緒に帰ろという誘いも断ってきたが、彼女はいなかった。10分ほど待っていたがそれでもこなかった。「やっぱり俺なんかと帰るのは嫌だよな」なんて思いながら俺は沈んだ気持ちで家に帰った。さっきまでの晴天が嘘のように雨が降り出していた。今日はあまりご飯も食べず、すぐに寝た。


次は数学の時間だ。俺はすぐに用意しようとしたがその手を止めた。もしかしたら……そんなことを考えながら長谷川先生に「今日も頭が痛いので保健室で休んできます。」とだけいって保健室に向かった。長谷川先生に「昨日も保健室に行ってたが体調は大丈夫なのか?」と聞かれたが「はい」とだけ言った。

ガラガラ。

保健室のドアを開ける。今日は保健の先生が不在のようだ。保健室の奥の方に目をやると、やはりと言うべきか彼女がいた。「昨日はほんっとにゴメン。約束したのすっかり忘れてた。今日こそ一緒に帰ろう!」俺は黙って頷いた。

「今日も数学が面白くないからサボったのか?」

「そうだよー。やっぱり保健室最高だよね〜」

今日も昨日のように笑い合いながら話していると、彼女はbe動詞と一般動詞の違いもよく分かってないぐらい英語が出来ないと言うことがわかった。

俺もそこまでできる訳じゃないが

「今度教えてあげるよ」

といってしまった。やったーと喜ぶ無邪気な顔が綺麗だった。

今日こそは…と思いピロティで、待っていると彼女がきた。ついガッツポーズをしてしまいそうになったが抑えた。彼女いわく昔から算数が得意でその流れで数学も好きになったらしい。

偶然にも俺も全く同じ経緯で数学を好きになった。彼女の家は意外に近く、俺の家から徒歩4、5分のところにあった。それなのに今まで彼女のことを知らなかったのはギリギリ小学校の校区が違うかったからだろう。

「明日も一緒に帰ろっか」なんて言って手を振って、お互い別の道に歩みを進めた。彼女は首を大きく縦にふった。

家に帰ってからも彼女のことを考え続けていた。俺は今までコイをしたことがなかったが、四六時中相手のことを考えてしまう、これが初恋なのかななんて思いながら英語を勉強したあと床についた。


今日は数学がなかった。少し悲しくなったが、早く学校が終わらないかとウキウキして時間が過ぎるのを待っていた。こんな日に限っていつもより時間が経つのが遅い。

やっとのことで学校が終わった。「あ、いたいた」彼女が独り言を言う。「じゃ帰ろっか」そう言って俺たちは帰路についた。明日は数学はあるし、保健室でサボって英語をやろうということになった。

俺は帰ると直ぐに英語の教科書を開いた。1年生の時のも引っ張り出してきて、復習と教える練習をした。


家を出て少ししたら後ろから「おはよー」という声が聞こえてきた。振り向くと彼女だった。内心飛び跳ねるほど喜んでいたが平常を装った。

「こっちの道から登校してるんだねー」「そうだよ。白雪はちがうの?」

「私はあっちの方の道から登校してるんだ。」

彼女と話しているとすぐに学校に着いてしまった。この前学校に遅刻したのが嘘のようだった。

「今日は1時間目に数学があるから保健室で会おうね。」「わかった。じゃまた後でね」

SHRが終わると「お腹が痛いので」と長谷川先生に言って保健室にいった。俺の方が先について、ちょっとした後彼女も来た。「いやぁ今日は先生に止められちゃって遅れちゃった。抜け出してきたけどね^^」彼女は笑いながらいう。

「俺も白雪みたいに気楽に生きたいぜ」と笑いながら返した。

そのあとは気合いを入れて英語を教えた。彼女は数学が得意なだけあり、理解力があったのですぐに英語ができるようになっていった。「なんで、こんなすぐに英語できるようになるの?授業中、話聞いてなかった?」「そうね、もっとちゃんと聞いていれば良かったわ。でも、できるようになったのはあなたの教え方が上手いおかげよ」

これを聞いて顔が熱くなってきたので下を向いてそれを隠した。

「どうしたのw?」「いやぁなんでもないよ」誤魔化せたのか?

11:00ぐらいに保健の先生がやってきたから体調が悪いふりをしてひそひそ2人で話してた。

「明日は俺が問題を持ってくるよ」「うん!わかった。」

どんな問題を持っていくかなんて決まっていなかったが彼女と明日も会えると思ったらそんなことどうでもよかった。

「そろそろ教室戻ろっか」と彼女が言う。「うん、そうだね。」と返し、俺達は教室に戻った。クラスのやつらに仲良くしてるのがバレないようにそそくさと戻った。

学校が終わり、彼女と帰るとき、いつもより人が多かったから、友達に2人でいるところを見られているかもしれない。そんな焦りもありいつもよりも上手く話せなかった。

家につくと、すぐに問題作りに取り掛かり始めた。めっちゃ凝った問題を作ってやるぞ!なんて思っていた。問題をどうするかをずっと考えていると、ある一つの案が思い浮かんだ。これはとっても恥ずかしいけど、

もう日も落ち、すっかり深夜テンションの俺はそれを実行することにした。

今夜は寝付けなかった。明日のことが不安で…でも楽しみで。


今日の朝彼女と話した内容はドキドキしすぎてほとんど覚えていない。6時間目に数学があったが6時間目だけ休むのもめんどくさいから給食食べ終わったら保健室に行かない?と提案したらオーケーしてくれた。

そして、給食が始まった。いただきますをした瞬間にものすごい勢いで食べ始めすぐに完食した。給食の味なんてドキドキで何も感じなかった。

食べ終わると友達に「早く食べすぎてお腹痛いから保健室行くって長谷川先生に言っといて」と伝言を残し、お腹が痛い人とは思えない軽快な足取りで保健室に行った。

早く行ったつもりだったが彼女はもうそこにいた。俺から切り出した。

「最近、平行四辺形の範囲を授業でやってるらしいから平行四辺形の問題を持ってきたよ」

「えー!?どんなんだろ。楽しみ!」「いつも平行四辺形ABCDじゃ面白くないから、今日は変えてみるね。」

できる限り普通に聞こえるように落ち着いて喋った。

「うん!分かったよー!」

そして俺はノートに平行四辺形を書き出す。記号はL……O……V……E……とふっていった。

「記号のふりかたを変えるんだね」

彼女は確かそういった。

「エルオーブイイーか〜」

英語ができるようになってきたとはいってもまだ文法だけか〜なんて思いつつ俺は返した。

「それはラブって読むんだ、じゃ今から一緒に恋の証明はじめよっか。」

彼女は頬を赤らめた。そして数秒後小さな声で「はい」といった。

俺からの告白って気づいてくれたかな〜って思いながら少し気まずい雰囲気の中で問題を解いていった。問題が解き終わり、俺は彼女に言った。

「さっきは変に伝えてしまったからもう一度言うよ。俺と付き合ってください」

今度はハッキリとした声で「はい」と返ってきた。

「もう、保健室で話す必要も無いね〜」紬が言った。

「だって付き合ちゃったもんね」俺が言う。

これからは苗字で呼び合うんじゃなくて紬、蓮くんと呼び合うようにしよう!と話しながら保健室のドアを開け、楽しそうな表情のまま教室に戻っていった。



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