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アルマの目の前に、懐かしい極彩色が広がっている。

灼熱の太陽がジリジリと照りつける白い石畳の広場を、数人の少女たちが歩いているのを眺めていた。


金の髪色をしたその少女らは下働きの下女のようだ。南国特有の甘くてぬるい空気が漂う中、色とりどりの衣服に身を包んだ少女たちの表情は底抜けに明るい。少女らは荷の入ったカゴを脇や肩に抱えて、声高に話しながら歩いていく。





——ああ、夢を見ているんだな。あの時、マリクルス様のことを考えたから。

身体が熱い。目が開かない……。熱を出しているのか……。


アルマの意識は、故郷の地の眩しい石畳の上に立っているのに、同時に自分の身体が布団に横たわっている感覚もあった。





石畳の続く先には白亜の城が建ち、城の周りを同じく白い石造りの建物が多数取り巻いている。

城も、建物も、瀟洒な模様を象ったバルコニーを構えていて、そのバルコニーは色とりどりの花に覆われていた。随分と標高の高い場所にその城は建てられていた。


石畳のはるか下方、なだらかな山麓には、視界の果てまでを覆う広大な湿地帯が広がっている。眼下には数えきれないほどの川や湖沼が点在し、その中を悠々と巨大な生き物が無数に泳いでいるのが見える。


と、湖の一つから一際大きな生き物が飛び上がった。巨大な竜だ。

竜は羽を羽ばたかせて空高く舞い上がり、ひとしきり空を旋回した。

そして虚空を滑るように滑空しながら石畳の上空まで迫った。石畳の上を歩いていた少女らは頭上に迫る大きな影に慌てるでもなく、竜を指差して何か会話を交わしながら、少し足を早めて広場を後にする。




——夢が、続いている。




竜は、石畳の広場『竜の広場』と呼ばれるその場所に人影がなくなるまで上空を旋回していた。それから用心深く首を下に伸ばして無人の石畳を確認したのち、滑り込むように舞い降りた。その竜の体は、周りにある大きな建物一つ分よりも大きく、石畳の横にある居城の尖塔と同じくらいの高さだった。


舞い降りた竜はあたりを探すように双眸を走らせた。つと、城の中から、一人の年配の女性が現れた。その後ろを追うように、多数の男女が手に手に道具や食料を持って現れて、竜の周りに集まった。


「呼びかけに応えてくれて感謝します。長寿の竜シグルト、そなた自身に行ってもらえるとはありがたい」


進んできた女性はたっぷりと布を使って襞をとった白いドレスから、素肌の腕をあらわにして竜の顔の方へ手を差し伸べた。シグルトと呼ばれた竜は、首を低くおろして白い女性のそばにゆっくりと頭を伏せた。身体を低く伏せた竜に人々が両側から梯子をかけて登り、手際良く荷駄や鞍を括り付けていく。


「アルマを、ここへ」


白いドレスの女性、マリクルス三世のよく響く声を聞いて、白い旅装に身を固めたアルマは、シグルトの前に進み出た。





——出立の日の夢だったか。あの時に見たシグルトは本当に美しかった。ああ、竜の翼は長旅ですっかり薄汚れて傷んでしまったな。





また、場面が変わる。


気が付いたら、故郷の空から湿地帯を見下ろしていた。どうやらまだ出立の日の夢の中にいるらしい。


アルマが乗ったシグルトは見送りの竜騎の一軍隊と並走して飛んでいる。その数、三十騎。彼らが乗っている竜はシグルトよりずっと小さく明るい色をしていて、美しく列を組んで飛んでいる。竜の隊列に向かって、アルマはシグルトの首の上から大きく手を振った。かつての仲間だった騎兵たちは、皆で揃って大きく手旗を振った後、森に降下していった。しかし、皆の姿が森の樹冠に紛れたあとも、一騎だけ飛び続ける竜があった。人を乗せていない空っぽの騎竜が一騎、なおもシグルトとアルマのあとをついて飛翔を続けている。


アルマが振り返って「降下せよ」の合図を送っても、若い竜はついてくる。

まるで親を追う子のように追ってくる艶やかな深緑色の身体を、アルマはシグルトの上から呆然と眺めていた。


アルマはしばらく途方に暮れていたが、一刻ほどの追跡ののち、シグルトが痺れを切らした。それまで泰然と飛んでいたシグルトは、突然飛ぶ方向を変えて若い竜に突進し、若い竜の小さな肩のあたりに噛みついた。若い竜はひとたまりもなく体勢を崩し、ヨロヨロと降下して沼地へと消えた。若い竜はアルマの騎竜だった。


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