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アルマは城砦橋を通り、川の左岸へ渡った。これまでいた西側の居住区ではなく、宿や棟梁の館がある市街地側だ。道を誤らないように、川に近い土手の上を北進した。


船は全部で三艘だった。川の中央をゆったりとした速さで南下している。

そして、左岸から火を放っていた者が応援の三騎と合流したようで、四騎が船を追って駆けてくる。その中に見覚えのある姿を見て、アルマが叫んだ。


「ウーリャ!!」


その瞬間、ウーリャは馬上で大きく左腕を振り込んで、船に向けて火炎を放った。


「アルマ!? どうしてここに? ああ、そうじゃなくて、ケンジが……さらわれているらしいの! 河原にいた闇の子たちの話を聞いて船を追ってきたのよ!」

「やっぱり……。ケンジさんは船の中にいるんですか? さっきからボンボン炎をぶち込んでますけど」

「確証はないわ。でも、ちゃんと敵を狙ってるわよ! ほら、炎を撃ってきてるアイツよ。あいつはケンジじゃないわ」

「……ケンジさんは火が出せませんもんね。あ、ちょっと先に行っててください」


急に馬を止めたアルマに、ウーリャらは怪訝な目を向けて振り返った。


——ウーリャは好戦的だな。さて、と。……あ、いたいた。あれにしよう。


アルマは空を見上げて何かを見つけると、目を閉じた。ウーリャと他の三騎は船を追って川下に進んで行った。





次の瞬間、アルマの意識は空を飛んでいた。

川の上をゆるやかに弧を描いて飛んでいるチュウヒの意識に入り込んだのだ。

アルマの意識はチュウヒの視点と一緒になって、船の上空へと近寄った。


三艘とも積荷にコモがかけられていて、荷が何かを見ることができない。賊は一艘に三〜四名ずつ十名といったところだろうか。真ん中の船に乗って左岸のウーリャに向かって火炎を投げている男が、この船団のリーダーのようだ。まだ若く、アルマよりも幼く見えるが、腰あたりまで伸び放題の髪で顔はよく見えない。


——チュウヒ、もう少し近づいて。そう。


チュウヒが少し高度を下げて弧を描いてくれた。すると、アルマにも見覚えのある縮れた髪が最後尾の船のコモの端からのぞいているのが見えた。眠らされているのか、ピクリとも動かない。


——いた。ケンジだ。ありがとうチュウヒ、すごく助かったよ。


アルマが羽を広げた猛禽から意識を離そうとした時、リーダー格の少年の髪をかき分けるようにして、その肩に乗っていた何かの生き物が顔を出した。生き物は顔を出すとすぐに上を見た。


——ん、ネコか? あ、目があった。


少年の肩に乗っていた金色の毛並みのネコが、上空のチュウヒを一瞥した。ネコがすぐに少年の耳に鼻を寄せると、今度は少年が同じように空を見上げてチュウヒを見た。


……え? 少年にも気づかれた?





アルマは少年の左目の黒い瞳と目があったように感じたが、一瞬の間にチュウヒから追い出されるように意識が離れてしまった。少年の顔はボサボサの髪に覆われていたが、顔を斜めに走るベルトが見えていて右目に黒い眼帯をしていたように思えた。


川岸の馬の背に意識が戻ってくると、アルマはすぐに船を見た。チュウヒはすぐに高度を上げたようで、虚空に小さな点となっている。その時、少し川下になった船上から、ウーリャたちではなく遥か後方のアルマのほうへ一筋の火炎が尾をひきながら飛んできた。


——うわ、こっちに攻撃してきた!


アルマは馬の腹を蹴って駆け出させると、なんとか炎を避けた。アルマはそのまま馬を走らせてウーリャらに追いついた。


「ウーリャ! 最後尾の船にケンジがいる!他の船にもさらった子どもがいると思う。眠らされているようだ。」

「え? どうやってわかったの? いえ、今はいいわ。船がもうすぐ城砦橋を通過するわよ!」


ウーリャは目を丸くしてアルマの顔を見たが、すぐに視線を船に戻して左手を大きく振りかぶった。


「さあ総攻撃よ」

「ダメだ!ウーリャ。攻撃するな! 」アルマは警ら隊の男らに顔を向けた。「あなたたちはヴォクレールに攻撃を止めるように伝令を。船にはさらわれた子どもがたくさん乗っている。急げ!我々二名は船を追う」

「わかりました!深追いせずお戻りください!」


三名が馬を進めて城砦橋への通路へ向かった。

そしてウーリャは特別大きな炎を真ん中の船に立っている少年に向けて放った。


「私のコントロールをなめないで!」ウーリャが赤い瞳を楽しげに揺らしてアルマに言った。

「ああっ、もう!」アルマが混乱気味に叫んだ。

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