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青の塔に滞在三日目。

霊導具に詳しいブライアは昨日から別行動だ。彼は自分と同じ土の精霊の使い手たちの仕事場を訪ねて、知識を増やしたり意見交換をしていた。エースとウーリャ、アルマの三人は、青の塔の棟梁が用意してくれた案内に連れられて溶鉱炉から流れる灼熱の鉄を眺めたり鉄を鍛錬するところを見物した。暇な時間に繁華街を散策したりと、のんびりと時間を過ごした。


ケンジは昨日までエースらと一緒だったが、今日は朝から一人で街の中心を流れる川へ行っていた。彼は砂鉄を集める子供らに混じって砂鉄採りを手伝っている。同じくらいの年齢、つまり砂鉄採取組の中では最年長の子どもらと話が合ったようだ。


前日のケンジが砂鉄採取に興味を示したきっかけは、案内役の男の説明だった。


「砂鉄を集めるのはもともと女たちと幼子、それから年寄りの仕事だったんです。でも、最近はこの街でも闇の子が増えてきましてね、今は砂鉄採りといえば闇の子らがほとんどで。……ああして川に集まって砂鉄を集めています。本来なら大きな子らはそれぞれ親の跡を継いで鍛冶場に入る年頃なんですけどね。精霊の力が使えないもんだから鍛冶場に入れない子も増えてきまして……代わりに年寄りが引退できずに現場に残っていますよ」


交渉班の一行を川の採鉄場へ案内してくれた男はそう言って、谷川の水に入って砂鉄を採っている闇の子らを見下ろしながら嘆息した。しばらく皆とそれを眺めていたケンジが、エースに向かって「後で合流する」と一言告げてから川の方へ行ってしまったのだった。





青の塔の街を案内役と一緒に歩きながら、ウーリャが足元を見てふと足を止めた。ブライアが工房に出入りし、ケンジが朝から川に行ってしまったので、滞在三日目の街歩きはウーリャとエース、アルマの三人だ。アルマは仰々しく姫と自己紹介をしてしまった手前、足首までの長さのワンピース姿で過ごしている。

そろそろこの街の景色を、継ぎ目のない石のような建物が建ち並ぶ景色を見慣れてきた。


「見て、この家の土台の部分……。あっちからずっと足跡がついてる……」

「本当だ。大ウサギの足跡だな? どうしてこんな街中に?」

「いや、そうじゃないでしょ。石なのになんでこんな、足が埋まったような足跡がつくの?」


ウーリャがエースにツッコミを入れた。それを見て、案内役がちょっと笑いながら答えた。


「ああ、タラスが珍しいんですね」

「「タラス?」」


二人が同時に聞き返した。アルマは何も言わず首を傾げている。


「ええ、タラスというのは鉄を作る時に出てくるノロ……廃棄物のことですが……ノロから取れる素材のことです。この素材を粉末にして水に混ぜて乾燥させることで、こうして石のように硬くなるんです。固まるまで天日だとちょっと時間がかかるので、こうして鳥や動物なんかが踏んだりして跡が残ることがありますね」

「へえ。粉を固めて石を作るのか……」

「たまにうっかり施工中だと気づかないで踏み込んだ酔っ払いの足跡が残っていたりしますよ」

「ふふ。その跡はずっと残るの?」ウーリャが笑っている。

「ええ、乾く前なら塗り直せますが、一度固まると摩耗するまでは何十年もかかります」

「それはちょっと恥ずかしいわね」

「鉄を作るとこんなに便利な副産物まで得られるなんて知らなかったな」


エースが感心しながらその辺の家の壁を勝手に触っている。


「この街の家はほとんどがこのタラスで造られています。壁もそうですね。一度固まってしまうととても頑丈ですよ。そうですねぇ……どこかタラスの施工をしている最中の家があったかな? 川の西側が居住区になっているので、橋を渡ってそちらへ行ってみましょう」


案内役の言葉を聞きながら、アルマがまた首を傾げた。


——で結局、大ウサギはどこから来たんだ?


谷川を渡る橋の上で、みんなは足を止めて川の流れとそこからの街の風景を眺めた。


——川にかかる橋は三本か? 街を囲んでいる壁と一体化した要塞型の橋が三本の橋とは別に街の上流に見える。遠くて見えないけど、おそらく最下流の橋も要塞型だろう。……つまり、これだけ高い壁で街を囲んでいても、川の流れに紛れれば賊は簡単に侵入できるし脱出できる?


要塞橋の壁の上は歩廊になっていて警ら隊がたくさん張り付いているのが遠目に見えた。

土手の部分は橋脚と橋脚の間隔が傾斜した地面になっている。水位が下がると橋脚の間は大ウサギどころか人間や馬でも簡単に侵入できる道となりそうだ。もちろん、警ら隊が昼夜を問わず見張っているようだが。


アルマたちは橋を渡って居住区へ入り、案内役の男に連れられてタラスの施工途中の家を見つけて施工過程を見物した。タラスを流し込む木枠を取り付けている者、紙袋からタラスの粉末を振り出して水と混ぜる者、それをコテを使って器用にならしていく者など、分担して速やかに作業が進んでいく様を見ることができた。


「風や火の使い手がいれば早く仕上げられますが、今日び強力な精霊の使い手は貴重なので……みんな製鉄の方に取られているようですね。このタラスは天日で乾かすそうです」


案内の男が工員らに聞いてきて説明した。


「外から来た人たちはこんな場面を面白がるんですねえ」

「ほんとだな。こんな作業を見物されると居心地が悪くっていけねえや」


案内の男は工員たちと笑いながら会話していた。

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