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ふたりきりの図書室  作者: 金石水月
2/15

メガネケースに仕舞ったもの

「そういえば吉川って前はメガネをかけてたよね?」


 二人並んで本を読んでいると佐藤くんが呟いた。


「うん、今でもかけてるよ。放課後は図書室で本を読むだけだから外してるの。佐藤くんは外さないの?」

「外すと本が読みづらいからね」

「そんなに目が悪いんだ?」

「確か右も左も0.1はなかったと思う」

「へぇ、結構悪いね。ちょっとメガネ見せてよ」


 差し出されたメガネを受け取って、見るふりをしつつ彼の顔を盗み見る。

 メガネを外した彼を見るのはこれが初めてだ。

 だいぶ印象変わるなぁ。いつもが優し気な文学青年だとすると、今は茶目っ気のある男の子って感じ。

 焦点の微妙に合わない視界がもどかしい。


 もっとしっかり見たいと思って鞄からメガネを取り出して掛けると、すぐに彼も机に置いたメガネを手に取って掛けてしまった。

 あーあ、残念。

 きっとここで「メガネを外して素顔を見せて」と頼んでも彼はきっと頷いてくれない。

 また素顔を見るためには別の方法を考えなくては。


「お、久しぶりにメガネの吉川だ。なんだかちょっと得した気分」


 彼がこちらを見てニヤッと口角をあげる。


「メガネを外すのは放課後だけだから本当は素顔の方が珍しいんだよ」

「じゃあ実はいつもの方が得してたんだな」

「うんうん、そうだね」


 私は適当に頷くと、再びメガネを外した。

 彼はメガネを掛けたり外したりする私を見て不思議そうにしていたが、特に何か言ってくることはなかった。

 

 実は先程言ったメガネを外している理由は嘘だ。


 本当はメガネを外した方が少しでも可愛く見えないかなと思ったのと、彼の顔が見えすぎると緊張してしまうからだ。

 

 そんな私の小さな見栄と本音が彼に伝わらないように、メガネと一緒にそっとケースに仕舞い込んで蓋を閉じた。


「でもやっぱり吉川ってメガネ似合うよな」


 え、あれ? これからどうしよう……。

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