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ふたりきりの図書室  作者: 金石水月
12/15

花火の裏に隠したものは

「もうすぐ花火始まるね」


 八月某日。

 僕と吉川は地元の花火大会に来ていた。


「良い場所とれて良かった。ここなら綺麗に見えそう」

「うんうん、そうだね。……ところで佐藤くん、夏休みに女の子と二人で花火大会だよ。これはもう物凄くリア充だね」

「言われてみればそうかも。こんな状況、想像もしてなかったなぁ」

「私たちかなりインドア派だし、リア充っていまいちピンとこないよね」

「うん、なんか別世界の人って感じ」

「わかるよ、佐藤くん。……でもね、せっかくリア充へ一歩踏み出したんだから、ここらでもう一歩さらに踏み出してみてもいいんじゃないかな?」

「どういうこと?」

「リア充と言えば?」

「……恋人?」

「お、今日は珍しく理解が早いね!」

「うーん、でも恋人を作るのはなぁ」

「欲しくない?」

「もし作っちゃったら吉川と図書室で過ごしづらくなるからね」

「……私との時間を大切にしてくれてるっぽいのは嬉しいけど、ナチュラルに選択肢から外されてる気がする……!」


 何か言って頭を抱える吉川。

 そういえば最近こうしているところをよく見る気がするな。

 

「あ、花火始まったみたい」


 空を蛇行しながら昇る光を指さす。

 ひゅるる……と間の抜けた音が一帯に響く。

 そして一瞬の静寂の後、轟音とともに金色の花が夜空に咲き誇った。

 

「綺麗……」

「ん……」


 最初の三尺玉に続き、次々と花火が打ちあがる。

 美しい光景と音の迫力に言葉を発することなく、ただ空を見上げた。

 こちらの気持ちなど知らずに夢中で花火を見る少女の横顔を時々覗き見ながら。


 やがて時間が経ち、最後の三尺玉が再び、ひゅるる……と昇るのを見ていると「ねぇ」と聞こえた。

 隣を見て「なに?」と表情で伝えると、吉川はとても綺麗な笑顔で


「――――」


 響く轟音に言葉を隠して、それでも確かに何かを言った。


「じゃ、帰ろっか」

「――そうだね」


 聞き返すのは無粋かなと思った。

 でもきっとその答えを知る日は近い。

 そんな予感がした。

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