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悪役令嬢でも恋には憧れます

作者: 篠宮かおる

″悪役令嬢″


それは所謂、ヒーローとヒロインの距離を縮めるために必要なかませ犬的存在である。悪であればあるほど読者はヒロインを応援するし、悪役が相応の報いを受けることで爽快な気分を味あわせてくれるとても重要な存在である。


「レイメイ=ガーテル。貴様との婚約を破棄させてもらう。」


「ご冗談は良してください。殿下。なにを言って。」


「これは本気だ。レイメイ。エレサから全てを聞かせて貰った。」


レイメイ=ガーテルは、ガーテル公爵家の一人娘である。地位の高さと激甘な親により甘やかされ、傲慢で高飛車な性格だと言われていた。そんな彼女は、婚約者であるイルファン殿下と親しくしている平民育ちの伯爵令嬢エレサ=バイニーの存在を良しとはせず、周りをも使って嫌がらせをしてきたのだ。


「君には失望したよ。レイメイ。民の上に立つ者が醜い嫉妬で民を傷つけるなど、あってはならないことだ。君に王妃は向いていない。」


「私は殿下のことを思っ。」


「私を言い訳にするのはやめろ!ここではっきり言わせてもらうが、私は君のことは嫌いだ。それでも王命には逆らえない。だから君のことを好きになろうと努力はした。しかし、そんな私の努力を君は自分で踏みにじったのだ。」


凄みを聞かせるイルファン。普通の令嬢ならここで泣くはずだが、レイメイは毅然とした態度を保ち続けた。


「殿下のお気持ちは、よく分かりました。ですが、いくら殿下といえど王命には逆らえないはずです。まずは、国王様にお話付けてください。許可が降りれば、私との婚約を正式に破棄してくださいませ…本日は気分が優れないため、失礼させていただきます。」


殿下とヒロインがなにやらゴチャゴチャ言っているが、レイメイの耳には何一つ入らなかった。




『ねぇ、お母様。恋ってなんですか?』


『恋?』


『はい。このご本には、恋とは甘く、切ないものと書いてありました。でもよく分かりません。』


『ううんと、そうね。恋っていうのは相手のことが好きすぎて、心臓がキュッとなるものよ。でも、相手のことが好きすぎるから、自分の思うようにいかないと悲しくなるの。』


『恋って悪いものですね。』


『確かに感情に振り回されるから悪いものと思っても仕方ないけど、それでも好きな相手が自分を好きになるって、それだけで幸せで暖かいものだから一概に悪いとは言いきれないわ。』


『幸せで暖かい。』


『えぇ。もう少し大人になったらレイちゃんも分かるわ。』




「結局わからなかったわ。お母様。」


殿下といる時、会えて嬉しいや、会えなくて悲しいという思いをしたことはなかった。でも、皆が言うのだ。『殿下の妃になれるなんて羨ましいです。』『殿下の婚約者になったんだ。レイメイはこの世界一幸せ者だな。』


同級生が、父親が、皆が言うのだ。ならレイメイ自身も幸せだと思わないといけないのだ。殿下の婚約者になれて、王妃になれて幸せだ。夫婦は恋をするものだから、まずは殿下に恋をしなくちゃと。


自分に言い聞かせてきた。


婚約者が他の子と仲良さそうにしているのを黙認するのは、婚約者としておかしい。


そう言われ、あらゆる手を使って警告と、実力行使をしてきた。

でも、それは悪手だったらしい。いつも優しそうな殿下があんな顔をするなんて。


「恋をしたことなんてないから、どの振る舞いが正解かなんて分かんないわよ。」




結局、殿下との婚約は解消され、今までレイメイの取り巻きが勝手に行ったものも含め全ての罪が、レイメイに着せられ、レイメイは貴族籍の返上を王命より承った。


「本当に済まない、レイメイ。」


「謝るのは私の方です。お父様。私のせいで、お父様も罰を…」


「私のことはいいんだ!レイメイ…やはり私と一緒に旅に出よう!!レイメイと一緒ならどんな事でも。」


「なにを言っていますか。例え地位が落とされたと言えど、お父様には守らねばならない民が居ます。」


「それは!私でなくても、イザックに任せれば。」


イザックとは、一人娘のレイメイが王家に嫁ぐということで、急遽跡取りとして養子にしたレイメイの従兄弟である。学園は卒業しており、次期公爵として仕事を教えて貰ってはいるものの、まだ1人でやっていけるほどではない。


「イザック兄様が可哀想です。それに民の信頼を裏切るなんてことお父様には出来ませんし、お母様もきっと望まないでしょう。」


「だが、レイメイを守れるのは、父親である私しか…」


「例え、王妃になれなくても私はきっと幸せになれます。本当の恋だって見つけます。きっと私が本当の恋を知るためにお母様が導いてくれたのですよ。だから大丈夫です。もし私が恋を知って、好きな人が出来たらお手紙を書きますから。楽しみに待っててくださいね。イザック兄様、本当にご迷惑をかけてしまって申し訳ございません。お父様をよろしくお願いします。」


「迷惑だなんてそんなこと思うはずないだろ?レイメイ、手紙楽しみに待ってるから必ず送れよ。あとレイメイに見合うかどうか、直々にみてやるから連れて来てくれると助かるかな。」


「ふふ、イザック兄様ったら。では皆さんごきげんよう。」


レイメイ=ガーテルは笑顔で公爵邸を去っていった。

この物語はレイメイが婚約破棄を言い渡されてから、レイメイの出番は終わっている。そして悪役令嬢が報いを受けたのなら、読者の興味も失せていく。


ならその後に続くのはヒロインでもヒーローでもなく、レイメイの物語。山越え谷越え…様々な困難を乗り越えたレイメイに待っているのは、



『あんたさ、その顔やめろよ。』


『その顔ってどの顔のことですか?』


『はぁー。自覚ねぇのかよ。そんなんじゃ…』


唇と唇が軽く触れ合う。


『キスされても文句もいえねーぜって、おい大丈夫か!』


『こ、腰抜けました。』


勿論ハッピーエンドだ。




気になる方がいれば、続きをと考えています。

閲覧ありがとうございました。

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