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8/9

平原の■■■■■ 移行



 感想・誤字脱字・批評。

 お待ちしてますぅ...








 ーー昇進試験の依頼をギルドから告げられてすぐの話だ。



 昇進試験の依頼は三日間ほど前から内容を告げられるため、俺はその日ギルドに足を運んでいた。




 「なあ、聞いたかよあの話」


 「んだよ、あの、じゃ分かんねぇよ。主語を話せ主語を」



 ーーギルドは相変わらず今日も猥雑としているな。

 雑多な喧騒に、思わず心中で呟いた。


 ならず者が多い冒険者は静まる事が少ない。


 静まっている時なんて酔いつぶれた時か死んだときくらいだろう。



 そんな事を思いながらも、ギルドに着いて昇進依頼の内容を知った俺は標的ーーヴォーパルウルフを調べていた。



 名前さえ分かれば「コラム」によりその魔物の特性・姿など多くの情報が手に入る。


 その上、立体映像により体の立体図を見ることもできる。相変わらず凄まじい技術だ。


 だが、「コラム」に書かれている事が徹頭徹尾真実である保証はない。その可能性を最近になって考慮した俺は、情報の裏付けを行っていた。


 裏付けにはギルドが発刊した魔物図鑑を利用した、この図鑑は観覧が有料だがーーその分信頼性が高い。



 「....」

 

 魔物図鑑を読むふりをしつつ上に「ウィンドウ」を置いて内容に齟齬がないか調べる。



 ......齟齬は、ない。

 しかし、「コラム」は詳しすぎる。これでは裏付けも難しい。



 というのも「コラム」は生態、弱点、姿、攻撃方法、そのくらいならまだしも身体の構造、内蔵の位置、筋肉の性質まで解説するからだ。


 当然、魔物図鑑にそこまで詳しい情報が載っている訳はない。

 というよりこの「コラム」の詳しさは異常だ。この情報をどこから持ってきたと言うのだろうか?不気味な話だ。

 


 ーーー結局、「コラム」の解説は参考にはするけれど、絶対視はしない。という事で落ち着いた。

 何でも盲信は良くない。例外とはどこでもあるものだし、一つ違う事をされただけで慌てふためく暇など実戦では無いからだ。





 「アブルっているだろ?あいつがこの前から行方不明らしいぞ」



 「あぁ、クルーダにボコられたやつ?つっても門から出た所見たってやつもいるし拠点変えしたんじゃね、てかあんな綺麗にやられたら顔なんて出せねぇだろ。ただの笑いもんだ」



 「門から出たってんじゃ、平原のヴォーパルウルフに挑んで死んだのかもな...まあろくなやつでもなかったしざまぁないな」



 「にしても、最近平原行ってる時地面揺れるよな...でかい地震でも来るんかね」



 ーーーその後、たまたま聞こえて来たその話は、いやに記憶に残っている。



 アブル、この前絡んで来た冒険者。

 彼は町を去ったのだろうか?



 それとも...



 ーーー意味の無い思考だった。


 思考を打ち切った、彼がどうなろうが彼の人生。

 そう、関係が無い。


 どこか複雑な感情を覚えながら、俺は再び「コラム」を眺める作業に戻った。


 



ーーーーー





 目の前のヴォーパルウルフの動きを読む。


 全長三ラードの巨体。高さも二ラードはある。

 しなやかな筋肉に覆われた身体は、人間とは隔絶した身体能力を獲得している事を示す。


 だが、その領域でも。ーー隼の目は見逃さない。


 攻撃の出始め、カウンター狙いの誘い。

 牽制、大振りの一撃。

 


 その全てに適切な対処を引き出し、見切る。



 (...やれる、問題なく対応出来ている。倒すのは一人では難しいが、今でも食らいつけはする。)



 やはり、()()()()に書いてあった通りだ。


 俺は口角を上げた。


 冒険者の人口において、中級は四割しかいない。

 つまり十分の、四。


 その数字は、逆に言えば十分の四もいるとも言える。


 ......魔物図鑑には、超人とも言える上級冒険者と中級の冒険者は埋めがたい差が存在すると書かれていた。


 上級以上の魔物の個体は、特殊な能力や異常に高い身体性能を持つ事が多い。


 それに比べて、中級の魔物はある程度「優しい」性能をしているらしい。それでも下級と比べれば遥かに驚異的だが...



 ともかく、中級の冒険者は四割という数字が示す通り、二人に一人程度は登り詰められる領域なのだ。



 普通の冒険者が慣れと作戦によって屠れる限界。

 それが、中級の魔物だった。



 ーーーならば。スキルと特性により常人よりも遥かに高い身体性能を持つ俺なら。




 「ヴォーパルウルフ、こいつの弱点は腹だ!魔力練る時間は稼ぐから氷か土で貫け!」



 そうだ。

 苦しくはあれど、確実に追いすがれる...!



 「分かった!殺傷力は俺の方が高い!俺がやる!二分くれ!とっておきを編む!他はクルーダの援護を頼む!」


 ヴォルケの勇ましい声が響く、出会いの当初情けなく粘りついていた男の姿はどこにもない。



 「分かった!やってみせる!」


 二分、戦闘単位においてはそれなりに長い時間だ。



 基本、戦闘に入れば決着は一瞬で終わるのが普通だ...ましてや、それが知性を持たない獣であれば尚更に。


 知性を持たない獣は確実に仕留めに来る。

 その剥き出しの殺意は対処する者の消耗を早め、ミスを誘発させる効果もある。


 ...一人なら、厳しかったかもしれない。だが今の俺には魔法使いによるサポートが付いている。



 俺の目の前で、ヴォーパルウルフは突如として後ろを振り向き攻撃を始める。マスフィの幻覚魔法だ。



 「魔物の階級が上がっていくにつれ、魔法の効果が薄くなることは知っているでしょう!?幻覚が効く時間は三十秒!息を整えなさい!」


 三十秒、貴重な時間だ。

 俺のような近接戦闘はとにかく呼吸のタイミングが難しい。


 ありがたく後方まで一時的に下がり、呼吸の回復を試みる。


 「私はあんたの援護をするわ」


 ウィンド・テアラクト


 サテファがそう告げると俺の体を風が纏う。


 「あんたの近くにヴォーパルウルフが寄ると強い風がヴォーパルウルフを襲う。上手く使いなさいよ?」


 小癪な魔法だから、あんま好きじゃないんだけどね。

 そういってサテファは少し微笑む。


 ...なるほど、ヴォーパルウルフは身体構造的に頭部が前の方にある。視界潰しに使えという事か。



 そろそろ三十秒。ヴォーパルウルフが幻覚から覚めるが...残り一分半前後を耐えればヴォルケの魔法が完成する。


 

 「防御は任せてね、合図があれば盾を投げるから」


 「あぁ...頼りにしてる。ユファーナ」



 ユファーナに言葉を返して、踏み出した。


 右の前腕を狙って斬撃を放つ。それをやつは軽快なジャンプで避け、俺への噛みつきにそのまま移行する。だが、それは。



 ーーーギャィン!?


 それは、罠だ。

 暴れる暴風がやつの顔面に叩きつけられる。サテファの魔法の効果だ。



 呻いてる隙に、全力で鼻先に蹴りを叩きこむ。

 気力操作、百六十%の暴力は五ラードほどやつを吹き飛ばした。



 「っ!ついでにこれだけ投げても!」


 追撃で回収しておいた短剣を投げる。外れた、倒れた状態から瞬時に復帰して弾かれたのが見える。



 やはり中級、手強い。

 そんな感想が脳に浮かんでくる。


 ヴォーパルウルフは一度呻くと、姿勢を低くして少し距離を取った。


 その様子は、まるで次の動作(アクション)を悩んでいるようだ、恐らく己の手札から何を切るか、やつは思考している。



 ーー膠着。ヴォーパルウルフは動かない。先程の攻撃が効いたのか安易な攻撃を控えているようだ。



 こちらは待っているだけで勝てる。

 この状況も、望む所ではあったが...




 ーーー!?

 急な悪寒に、体が勝手に回避行動を取る。

 ヴォーパルウルフが次の手札を切った。その事を回避してから理解する。



 「これは、毛を針にして飛ばしているのか!」



 ーー「コラム」にあったヴォーパルウルフの体毛硬質化とそれを利用した遠距離攻撃か。



 幸い、狙いは良くないため回避するのは簡単だが...

 なるほど、近づけない。



 近づけば至近距離から撃たれる。流石に至近距離だと回避できない。ーー剣だけの戦闘は、やはり限界があるか。



 そう思いながら。俺はひたすら遠距離から放たれる針を避け続けた。なるほど、やつは俺に近接戦闘を諦めたらしい。



 ーーならば、()()すればいい。



 ユファーナに合図を送る。その合図から瞬く間に、俺の目の前には身を覆うほどの大盾が作られた。



 飛ばして来るだけなら盾で防げばいいだけの話だ。

 これでやつの攻撃は封殺した。


 それに、何より。

 ーーーもう()()だ。



 待ちわびたように、ヴォルケの魔力が爆発的に高まる。

 ヴォルケの魔法が、完成する。



 「アイスクル・アッロンゴズ。氷の氷柱!」


 その呪文の完成と同時に、ヴォルケの周りに槍を模した氷が十二本現れると、それらが急加速してヴォーパルウルフに殺到する。



 ヴォーパルウルフは素早い動きで槍を避けていくが、槍の一本に足が当たった瞬間そこが凍りつく。



 凍りついた足に動揺したのか、一瞬硬直してしまうヴォーパルウルフ。

 その隙に残った槍が殺到することで、ヴォーパルウルフは次の瞬間には氷に全身を貫かれていた。



 操作式の槍に一本でも当たると動けなくなり、残り全部必中。

 なかなかエゲツない魔法だ。



 (魔法、やっぱり強いな。俺も魔法スキル取っておくか...?)



 使用に長い時間がかかるとはいえ、一発の魔法で中級の魔物を討伐だ。格上には通じづらいといってもその有用性は高い。



 いつかは対魔法使いを考えて抗魔力スキルなども取りたい所だ。




 ヴォーパルウルフは、もはや死に体だ。

 気力関知もぼやけた()()な気力しか関知していない

...何にしても、これで終わりだった。




 戦闘の緊張感から抜け出した事で、疲れを急に自覚する。実際の戦闘時間は三分程度だが、まるで三十分戦ったような疲労を感じた。


 強い敵との戦闘は、意識が物凄い速度で削られる。



 今回は五人だったので勝てたが、ユファーナと二人で依頼に行くと考えるともう少しスキルや特性を取得しないと厳しいだろう。



 まあ、何にしても。

 視線を今日共に戦った戦友に向ける。



 今日は、ヴォルケ達とだいぶ打ち解けられた。

 一定の信用が置ける者は冒険者ではそういない。だがヴォルケ達の人柄は信用が置けるものだ。


 ...得難い人脈だった。


 実はずっと前からしてみたかった、依頼帰りの打ち上げに誘ってみようか?


 冒険譚の終わり、その日の苦労をパーティーで話し合うシチュエーションは欠かせないものだろう。



 そんな事を考えながらユファーナの元に戻る。


 「盾、ありがとうなユファーナ」


 「役に立ったみたいで良かった~私今回足手まといになりそうだったし」


 「なーに言ってるのよユファーナちゃん!分断に守り、大活躍じゃない!」


 「そうですわ、それに大体最後だけ美味しいところを持っていったヴォルケが悪いのです」


 「え、そんなキラーパス投げる?俺悪いことした?」



 皆、何だかんだ無事に達成できて嬉しいらしく、口元には笑みが浮かんでいる。悪くない、気分だった。


 早く討伐証明部位取って帰るわよー、とサテファが言う。



 ヴォーパルウルフは、討伐証明部位以外にも皮が高く売れる。鮮度が良い内に剥ぎ取ろうとして地面に座り込んだ。



 氷の氷柱や大盾形成に使った土が戻ったからか、微かな()()を感じながらも、ひとまずはヴォーパルウルフの皮の剥ぎ取りを開始することにした。

 




 ⏩


 

 スキル・魔法


 魔法は魔力を使って、行使者が望む現象を特殊な干渉法で世界から偽りの現実を投影する技能である。


 強大な魔力はそれだけ世界に干渉することができる。


 しかし高位の魔物や、多くの魔力を持つものは偽りの現実をその魔力で不安定にさせる。そのため高位の魔物には魔法が効きづらくなってしまうのだ。


 ⏩





 ......?揺れが、収まらない?










ちょっと読み返してみると描写不足かも...一章書き終わったら一回全体的に改稿します。



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