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平原のワイルドウルフ ①

 自分で小説書いていると、面白いってどういう状態か分からなくなる不思議。







 あれから数時間が経って陽は沈み、すっかり夜になった。

 いつもだったら寝ている時間だが、考えることもたくさんあって眠気は全くと言っていい程無い。




 ゴブリン共からユファーナを逃がした際に見かけた黒い火に覆われた鎧。一応町に帰還した後特徴だけをギルドに告げたら、神話級の一つ下...特異点級ランクのモンスターに似たようなのがいるらしくギルドの中の人達は大慌てしていた。



 幸運にも森の一部が焼かれていたことは違う冒険者が見ていたらしく嘘の報告だと思われなかったのは助かったが...



 悩みは他にもある。ユファーナの機嫌というか精神が再開後から情緒不安定な点だ、再開した時に俺を見捨てた事は気にしなくていいと言ったのにユファーナは再開後から泣き止まず、宿に帰った後も暫く泣いて俺にずっと謝っていた。


 明日どんな顔で会えばいいのか、難しい所だろう。



 そして、



 何より極めつけに大きな悩みなのは、この目の前に浮かぶ四角形の板の事だった。



 (ユファーナは、寝ている。この板が他人に見えないのはもう確かめたが...一度自分で調べ尽くしたい気持ちもある)



 もしも今の自分の姿をユファーナに見られたらなんと言われるか...真顔で虚空に向かって指をツンツンさせる男の姿はなかなかに素敵(不審者)が過ぎる。


 

...話を戻そう。この板について少しだが分かった事がある。

 まず、この板は他人には見えないという事だ。ユファーナと再開した後俺はこの板を左手に持っていたにも関わらずユファーナはこの板に反応を示さなかった。


 というよりこの板には重みもなければ厚みもない。俺には認識できるというだけで質量として存在している訳ではないような気もする。



 他にも分かった事がある、この板はサイズを自由自在に変えられ、収納ができる事だ。


 これに気がついたのはギルドに入る前、板を背中の収納袋にしまおうとした際、小さくならないかな、と念じながらしまおうとしたら小さくなったのだ。

 

 収納ができることに気がついたのはついさっき、宿に帰ってユファーナが寝た後、板を触ってみたところメニュー画面を開きますか?という文字と説明という文字が書かれていて、説明という文字を指でタッチすると画面が移り変わりこの板の説明が書かれたからだ。


 曰く、この板の名前はステータスウィンドウというらしいこと。

 曰く、ステータスウィンドウを収納したいときは消えろと念じること、出したいときはオープンと脳内で念じればいい。との事。


 分かったのは、ここまで。

 ここからは手探りでこの板ーーいや「ウィンドウ」を調べていく。



 「他に書かれていることは...これか」


 

 ⏩


 ステータスウィンドウの機能は大きく分けて三つあります。

 ステータスの上昇、スキルの入手、特性の入手です。

 この内ステータスの上昇とスキルの入手はステータスウィンドウ入手以前の取得かポイントによる取得しかできません。

 特性はイベント、特定条件の達成でも入手できます。

 ステータス値の観覧やスキルの補正値に関してはスキル「ヘルプ」が必要となります。

 ステータスランクの補正や計算式、スキルの重複判定、魔物の生態ブックの追加にはスキル「コラム」が必要となります。

 スキル「コラム」を入手するとステータスやスキルに解説が付きます。


 

 ⏩


 


 「なるほど、、、分からん」


 

 ステータス?スキル?なんだかよく分からないことしか分からなかった。

 これは...解説が付くというスキル「コラム」を一旦取らないと何も分からないのではないか?冷や汗を流しながら画面の戻ると書かれた所をタッチし、メニュー画面と書かれた所をタッチする。


 「...!?」


 

 驚いた、タッチした先にはステータス表と書かれた画面と、少し離れた右側には白色の髪の毛と琥珀色のやや鋭い目の少年ーー即ち自分が浮かび上がっていた。


 「驚いた..どんな技術なんだ?これ。そしてこの画面...」


 ステータス表にはこう書かれている。



 ⏩


 名前・クルーダ

 身長・百六十五

 年齢・十三

 所持ポイント八十


 ステータス

 力・G 

 耐久・G 

 速度・F 

 魔力・G 

 幸運・B

 頭脳・G


スキル

 剣術F 死中に活 


 特性

 隼の目


 ⏩


 なんだろう、何だかよく分からないが凄く低いステータスな気がする。俺は大丈夫なのだろうか、思わず今後の未来が不安になる。


 なんとなく力の部分にタッチすると、力と書かれた文字の横にランクアップさせますか?という文字と必要ポイント二十という文字が追加される。

 ...まだスキルの画面を見ていない、早まるのはやめておこう。


 気を取り直して画面の右上端にあるスキル表と書かれた文字にタッチする。それと同時に自分の姿は消えた。



 ...真夜中に自分の姿がずっとあるのは軽くホラーだ。消えて助かった...



 などと思いつつスキル表を見る。見て、その数に絶句した。


 自己身体操作、再生、回復魔法、気力操作、純魔力

 手加減、再現、剣術、槍術、耐魔力、疾風迅雷....


これでまだほんの一部だ、まだまだ数えきれないほどある。



 画面は指でなぞると上や下に動かす事ができるのを発見したのは良かったが、これは...


 「数が、多すぎないかこれ?十、百、千まで届きそうだぞこれ」


 この中から「ヘルプ」と「コラム」を探さなくちゃいけないのか俺?冗談きついな。

 と思いながら画面を見ていると上の方に虫眼鏡のようなマークがあるのを発見した。


 そこをタッチしてみると空欄が現れる。

 その反応にもしかして...と思いつつ指で文字を書くようにコラムと入力する。


 ⏩


 該当スキル コラム


 関連スキル ヘルプ


 ⏩


 「おぉ、、なんか凄い機能だな、ほんとこれ。でもスキルって事はこの二つもポイントかかるんだよな..確かめてみるか」


 コラム 必要ポイント二十


 ヘルプ 必要ポイント二十


 その合計必要ポイントは現在持っているポイントの半分、そしてステータスを二つGからFに引き上げられる量。

 ...これは、悩む。


 いや、待て。冷静に考えろ。そもそもこの二つのスキルがなければステータスを上げてもどういう影響があるか分からないってことだ。


 ーーーつまりステータスを上げた際不利になる要素があるかもしれない、それを避けるにはこの二つのスキルは多かれ少なかれ必要不可欠なのだろう。


 決断すれば、早かった。


 「よし、取ろう」


 二つのスキルを入手した。そして前から疑問だった特性・隼の目をタッチする。これで説明通りなら補正値やら何やらの意味が分からないことも多少分かってくる筈だ。



 ⏩

 


 特性・隼の目


 効果・所有者の認識力に百二十%の補正を掛けます。

    所有者の視力に二百%の補正を掛けます。


 text.

 隼の目は人間のソレと比べて高い性能を示す。特性・隼の目は人間の目としての性能が通常の人間種よりも高い次元にあることを意味する。


 優れた目の働きは所有者の動体視力と脳の反応を加速させる。そうした働きが速やかな動作を可能とさせ、結果として敵より一段階早い動きを実現出来るようになる。


 計算式・ステータス値(百)×ステータスランク・頭脳G(百)×百二十%の独立した補正を所有者に与える。


 ⏩



 画面を見て頭が痛くなりそうだった、ヘルプとコラムの効果は確かに有用ではあったが効果が数学チックなのは勘弁して欲しかった。


 魔法使いであるユファーナが%についてよく回復薬を作るときに授業してくれたが、ユファーナがいなければ俺はここに書かれた事を理解できなかっただろう。


 というか識字率も低いこの大陸で字が分からない者がこのウィンドウを入手したらどうするつもりだったのだろうか...





 それはともかく。

 ステータス値、ステータスランクの補正、ヘルプやコラムのお陰で分かってきた事が多くなってきた。


 ステータスランクについて前はよく分かっていなったが今なら多少はよくわかる。


 ステータスランクGやFというのは補正だ、つまりステータスランクの他に基準となるステータス値が存在し、そこにステータスのランク分の補正が掛けられる。

 恐らくGなら百%Fなら百二十%...そしてそこにさらにスキルや特性の補正が入る。そういう事なのだろう。

 一つ一つの補正は少なくとも掛け合わせかたによっては大きな力を発揮させそうだ。



 だが、、その仮説を立てて思う。

 頭脳のステータスって曖昧に過ぎないか?と。隼の目の計算式と掛け算の関係にあるのは分かったが。


 頭の良さを百二十%上昇...?自分で言ってて謎な表現だ。

 「折角ヘルプとコラム取ったんだし見てみるか」

 


 ⏩



 ステータス・頭脳


 効果・頭脳の関わる事にステータスランク分の補正

   ステータスランク分ポイントの入手に上方補正。


 text.

 人間の頭脳の働きは多岐に渡る。技術の習得や、視界の情報から即座に反応する能力。一度覚えた情報の保存能力。なにより...経験から得た力を己に還元する能力。それら全てが脳の働きにより決定される。


 ⏩



 「超重要ステータスじゃないか!?」



 技術の習得、反応速度、記憶力、ポイントの増加。

 改めて並べて見ると凄まじさに絶句する。


 ヘルプとコラム、これは落とし穴過ぎだろう..

 頭脳がこんなに有用なステータスなんて普通は思えない。


 いや、まあよく考えれば納得のいく話ではある。脳の本質は頭の良さだけではなく体の制御も含まれる。道理の極みと呼べるだろう。


 しかし、、


 「頭脳が最重要ステータスって珍しいような気がするなぁ」


 思わず呟きながらも、ステータス表の

 頭脳のランクを上げFにした。

 

 これて俺の頭脳は百二十%良くなった事になるし、隼の目の効力はさらに増した事になる。

 なかなか不思議な気分だった。


 そして今さら気づく。ゴブリンが遅く感じたのはやはりこの特性のお陰か、と。





 「というか残り二十ポイントか..なにに使おう」


 FからEに上げるのは四十ポイントかかるようで今は無理だ。

 ならスキルを入手してみるか。と考えスキル表に移行する。



 取るスキルのあてはあった。

 先ほど目に映ったスキルの内の一つ、気力操作だ。

 内容を見てみる。


 ⏩


 スキル・気力操作G

 取得ポイント 二十

 効果・十分間のみ力、速度、耐久に最大百二十%の補正

   再使用に一定時間(最大二時間)が必要。


 text.

 選ばれし戦士や一部の魔物がが行使する、魔力とは別のエネルギー源による戦闘術。Gランクのそれは火事場の馬鹿力と混同されがちであり未熟な領域のスキルと呼べる。


 計算式例・ステータス値(百)×ステータスランク(百)×百二十%

 注・仙術、魔力身体強化等の強化系特定スキルは専用スキルを使用しなければ重ね掛け不可。

 

 ⏩



 デメリットも多いが十分力・速度・耐久が百二十%上昇は強い。

 切り札として持っておいて損はないだろう。


 「...!これが気か...」



取得したところ体の中に流れる気の力が自覚できた。暖かい、太陽のような力を感じる。


 ...再使用までの時間を考えると寝る前に一回使ってみるか?説明にあった最大って文字を考えると早めに最大倍率を出せるようにしておきたくはある。


 使い方は、なんとなく分かる。

 体に流れる気を意図的に操作し圧縮して、体に浸透させる。

 これでいける筈だ。



 「ハァ....!」


 いやに慣れるのが早い、頭脳のステータスを上げたせいだろうか?そう考えつつなかなかにキツイ気力操作状態を維持する。


 ...やることがない。取り敢えず十分維持しようとは思うが。暇だしウィンドウのスキルでも見てようか。



 .....ふと思った。今日はいつもどこかで感じていた優秀なユファーナへの劣等感、それを感じなかった。

 

 そうだ、俺は強くなって、いつか、彼女に頼ってもらえるような強い男になって。()()()()()()()に胸を張っていられるように。俺は....



 ....疲れて、いるのだろう。


気力操作の十分が経過したことを思考の片隅が教えてくれるが、急に発生した抗い難い眠気に俺はベットの上に倒れ込んで意識を落とした。



 ....まあ今日は本当に色々あって疲れたんだ。明日の事は明日考えよう,..



 にしても気力操作、使用後キツイな...


 そんな気が抜けた感想と共に気がつけば意識は微睡みの闇へと緩やかに消えていった。






 ......




 


 .....









 ..



















 ⏩









 「ねぇ、私あなたを見捨てたんだよ?それなのになんでそんな、何でもないように、どうでもいいように()()()()()()を見つけたような態度を取るの?...やっぱり怒ってるの?クルーダ君、クルーダ君」




 「ねぇ...」






 クルーダが睡眠を取った数分後、()()()()()ドアからユファーナがクルーダの前に現れ言葉を投げ掛ける。





 「なんで無視するの?やっぱり怒ってるの?...」






 クルーダは目覚めない。

 ユファーナはその後も一時間ほどクルーダに喋り掛け、ようやく満足したかのように己の部屋へと戻っていった。

 




 クルーダの顔には()()()()()こぼれ落ちたのか涙が残されていた。

 





 ⏩


 

 











コラム


 クルーダ


 才能タイプ・大器晩成

 魔法属性・空間


 ユファーナの幼馴染みである少年、自己評価が低いところがありよく己を卑下するが、ユファーナという後衛を活かす為に己を殺していた部分もある為普通に最下級の冒険者としては強い方である裏設定。


 ...実は少し冷淡な性格。

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