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巴の怒り

(そう言えば、これを剣慎に見せた時は面白かったわね)



ある日、このカードを剣慎に見せた時

「どう?お母さん凄いでしょ」

「そうなんだ」

予想していたよりもリアクションの無い剣慎に逆に驚いて

「え?ほら日本4位だよ。強いんだよ」

「強いのは知ってるよ。でもそれよりも」

「それよりも?」

「母さんよりも強い人が3人もいることに驚いたよ」

「え?」

「別に昔から視えるって訳じゃないんだけど、母さんのオーラ凄いんだよね。それに今思い出しても、多分紅井の人達よりも圧倒的に迫力がある感じかな。だからそんな母さんに勝てる人いたんだって思ったから」



(いや~まさか剣慎にそう思われていたとはね。あの時は驚いたけど、オーラってあれは、多分、今まで紅井にいて身に付けた危機察知能力でしょう。暴力振るわれていたみたいだし、相手の機嫌を探ろうとした観察力が発展したって所でしょうね。私も感じられるけど、私があの域に達したのは十代半ばね。あー息子の才能が怖い怖い)


巴は車の移動中に剣慎の事を考えながら笑っており、竜正も巴の様子が若かりし頃の自身の妻と重なって見えたため、笑っていた。

(巴、お前もすっかり母親だな)


玄関に着き、一時的に車が止まってその後、黒崎家の屋敷に到着した。黒崎邸は、紅井邸と違って敷地面積は小さいが、洋風の大きな屋敷だった。

大勢の使用人や竜正の配下の人達が見送りに来た。

「「「お帰りなさいませ、旦那様、巴様」」」

「……どうしてこんなに大々的なのかしら?」

「そう言えば皆、巴が来るって聞いて盛り上がっていたからな……」

巴と竜正は遠い目で見ていた。


部屋でゆっくり過ごしていると、メイドの1人がノックをして部屋に入ってきた。

「失礼します。巴様に紅井家から電話があります」

「忙しいって言って用件だけ聞いてもらえる?」

「畏まりました」

(紅井…関わりたくはないけど、いつかは行かないとね)


少し時間が経つと、先程のメイドが再びノックをして部屋に入ってきた。

「失礼します。紅井家からは今日の会議での配下が不始末をしたのでその謝罪をしたいとの事です。それで来てほしいとの事でしたが」

「分かった。明日行くって行っておいて」

「?!よろしいのですか?」

「別に元々あっちに用事があったからついでよ。さっさと片付けたいって思ってね」

「分かりました。後程、そのようにお伝えしておきます」

「えぇ、よろしくね」

(いつか行こうと思っていたけど、剣慎の元の家だしそれに、()()()に会っておきましょう)


「せめて怒らせないで欲しいわね」


家族と一緒に過ごした翌日、巴は紅井邸に向かった。

屋敷に入ると、当主の弟と名乗る人が出迎えて

「当主の弟の郷鉄と申します。巴様、この度は」

「先に春美に会えるかしら?」

「え?」

「会えないのかしら?」

「分かりました。他の者に案内させます」

郷鉄は巴の圧に怯えて、他の者を呼び案内させた。


そして、案内されて部屋に入ると

「巴、久しぶりね」

「えぇ、久しぶりね春美」

剣慎の実の母親の春美が布団の上に座っていた。


「今回は家の者が迷惑かけたわね」

布団の上で頭を下げた春美を見て、巴は苛ついていた。

「いえ、その事で貴方に会いに来たわけではありませんから」


「そう!それにしても貴方に会えて良かった。2年前から重い病気にかかって外に満足に出られなくなったから」

「そう……」

一月前に息子がいなくなった事を気にしている様子ではないからだ。


暗い様子の巴と違って春美は明るく振る舞っていた。

「昔はお姉ちゃんって言ってくれたのに今は言ってくれないのね」

「立場があるから、それは仕方ないでしょ」

「まぁ、そうだけどね」

紅井春美、彼女の旧姓は黒瀬。つまりは黒崎の分家の者である。また、彼女達の祖父は同じで、巴にとって春美は従姉妹である。


(これだけは確認しておきましょう)

「そう言えば、子供…何人いるんだっけ?」

巴は本当は聞きたくはないが、紅井のそして彼女の真意を確認するために尋ねた。そして、やはり彼女の思った通りだった。


「4人よ」

「!!」

春美は指で数えながら

「斉牙と雅と誠と璃乃の4人兄妹よ。ふふふ、貴方も早く結婚して子供作ったら?貴方なら相手はいくらでも」

「春美!」

「!どうしたの?」

巴が大声で呼んだため驚いた春乃は巴に尋ねたが


「急用を思い出したからそろそろ戻るわね」

巴は立ち上がり、部屋を出ようとするも

「そうだ!巴、斉牙の先生になってくれない?日本ランキング4位の貴方なら優秀な斉牙もきっと喜ぶわ」


巴はゆっくり振り返ると

「春美、私はもうここには来ないわ。それと黒崎家次期当主として、貴方とは縁を切ります」

「え?巴どうしたの?」

「それでは」

冗談だと思っている春美に巴は冷淡にそう告げると、部屋を出ていき、玄関に向かって行った。


途中、当主の弟の郷鉄が引き止めに来たが

「もう謝罪は受けた」

この一言だけ言い残して郷鉄達を振り切って屋敷を出ていった。車に乗って帰宅中彼女はとても怒っていた。

(剣慎の事を子供と思っていないのね。もう貴方達紅井は私の敵よ)


巴は剣慎に見せたことの無いぐらいに怒っていた。そしてそれは今まで自身が怒った事と比較にもならない程でそれは真に巴が剣慎を自身の息子として大事に思っている証拠であり、そして紅井家に対する怒りである。それと失望もあった。


(春美、昔は貴方を姉の様に思ったこともあったけど、それはもうあり得ないわ。だって)

今、巴にとって大事なのは、黒崎の名でなく、自身の実力でもましてや戦闘時に使うデバイスでもない。それはたった一月しか付き合いがないにしても

彼は大事な存在である。


(私の剣慎を悲しませた報いは受けてもらう)


今日、黒崎家は紅井家との交流を完全に停止した。

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