巴の仕事
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この日、巴は普段のラフな格好と違いスーツを着て、とある大きな建物に入っていった。
そこは魔法局本部。対幻獣組織の日本で最も重要な拠点である。
そして巴は受付に向かって行った。
「本日はどのような用件でしょうか?」
受付の女性が巴に尋ねたが、巴はカードを見せると受付の彼女は慌てた。
「も、申し訳ございません。会議は25階となっております」
「そ、ありがと」
それだけ言うとエレベーターに乗って、25階に向かった。
エレベーターが25階に止まると、その階には多くのボディーガードらしき人達がいて、もう既に部屋の中には大体の人は集まっているようだった。
(時間に間に合って入るから問題ないか)
そう思って部屋に入ろうとすると、1人の男性が巴の右腕を掴んで扉を開けるのを邪魔した。巴はその男の顔を見て尋ねた。
「何の用かしら?」
そう尋ねると、その男は巴を睨み付けた。
「部外者は立ち入り禁止だ。ここは日本で最も重要な会議をする場所だ。お前みたいな外人が来て良い場所じゃない!」
巴の右腕に込める力を強めながら言い放ったが、それは愚かな行為だった。巴が少しでも先程のカードを見せるなり、対応をすれば良かったのだが、残念ながら今の巴はそんな事が出来るほどではなく、むしろ機嫌がとても悪かった。
(こっちは剣慎との修行も置いてきて来たのに……)
「私って今、とても機嫌が悪いのよ」
巴はそう言うと全身を魔力で覆って自身を掴んでいる相手の腕を掴むとそのまま持ち上げて床に叩きつけた。
「や、やめて……」
何度も何度も相手が腕を離すまで床に叩きつけた。
周囲の人々は慌てて駆け寄ってきたが誰も巴を止める事は出来ず、最後にその男を壁に投げつけて彼女は部屋に入っていった。
何人かは部屋に入る彼女を止めようとしたが
「何をやっているんだ!」
1人のボディーガードがそいつらを止めた。
「何故ですか!あいつは坂田を」
「いいから黙ってろ。あれはあいつが悪い。上田、坂田はこれからボディーガードに組ませるな」
「はい」
「だから何で坂田が!」
「くどい!」
「「「!!」」」
周りをびびらせる程の覇気を出すと
「あの人が誰だか分かってない馬鹿どもはさっさと帰れ、あの人は」
部屋に入った巴は辺りを見回すと、1人の男性の元に向かって行った。
「随分、騒がしいようだったけど、何かあったのか巴?」
30代近くに見える茶髪の男性が巴に尋ねた。
「ちょっと絡まれただけだから気にしないで、パパ」
そう言って、そのテーブルのネームプレートを見て彼の隣の席に座った。テーブルは中央に向かうための人の通れる箇所はいくつかあるが大きな円形のような配置であった。
「それでは皆揃ったようなので会議を始める」
会議の内容は近年の幻獣脅威度の上昇がメインだったが次々とつまらない話に変わっていき、会議が終わると巴の父親が
「巴、母さんが会いたがっていたから私と一緒に家に帰らないか?」
「うん、そうしようと思っていた」
その後も2人で話していると、横から3人が近付いてきて
「これはこれは、黒崎の方々ではありませんか」
「翠川か何のようだ?」
巴の父親が応答すると、1番年上に見えた男性が
「愚息の挨拶に参りまして」
「初めまして、翠川清二と言います。お噂は金がねです。黒崎竜正様、そしてお久しぶりですね巴さん」
竜正が顔をしかめるのと同時に巴も不機嫌になった。
「気安く名前を呼ばないでもらえますか?」
そして巴は冷淡にそう言った。
だが、その男は巴に近付きながら熱を込めて言った。
「いや、僕ですよ。昔、北越地区のA級の幻獣討伐の時に一緒に戦った副官の翠川清二ですよ」
だが、巴は全く顔色を変えずにいた。
「覚えていません。人違いでは?」
「いえ!そんな」
「清二!」
「!…申し訳ございません」
清二は彼の父親の声で驚くとすっかり大人しくなり
「竜正さん、例の件考えてくれましたか?」
「えぇ、清条さん。何度も言ってますがお断りします」
清条は竜正を睨んだ。
「正気ですか?」
竜正は動じずにただただ冷静だった。
「翠川と組むメリットは家にはないと言ったはずですが?」
清条は苦虫を噛むような顔をした。
「後悔なさらないように」
そしてそれだけ言い残すと、去っていった。
「父さん!」
「清二黙っていろ。お前が言うことではない。お前が西宮程の実力者であったら分からなかったけどな」
すると、先程まで無口だったもう1人の男性が例をした。
「いえ、そんな事はありません」
と否定したが、清二は睨み付け、清条は気にすること無く、帰っていった。
「それじゃあ帰ろうか」
「そうね、あっ私の車はどうしようか?」
「それは、秘書の斎藤に運転させるから心配しなくて良い」
部屋を出ると、周りの人達は彼らを避けて道を空けていた。
「さっきの騒ぎは中々のようだな」
周りの人々の反応を見ながら竜正は笑って言っていた。それに対して巴も見るからに不機嫌だった。
「お陰で気分最悪よ」
「ははは、それはご苦労様。それと巴、今まで何をしていたか車で話してもらうからそのつもりでな」
「勿論、こっちもそれでお願いもあったから都合が良かった」
建物を出て、巴は車の鍵を父親の秘書に渡すとそのまま父親と一緒の車に乗った。車の中は広く、2人は向き合って話をしていた。そして、剣慎の事を話した。
「なるほど、つまりはその拾った紅井の子供を息子にしたいと」
「したいと言うか、もう私の息子よ。それに紅井とはもう関係無いから。だから面倒な手続きをお願いしたいの」
竜正は顔をしかめながら尋ねた。
「何でそこまでするんだ?その少年はお前にとって大事か?」
巴は微笑えんだ。
「うん、とっても大事よ。それに魔法使いとしては私よりも才能あるわよ。それにもう術式魔法は全て覚えたわ。それも1ヶ月でね」
「?!ほんとかね?それなら、いやちょっと考えさせてくれ」
竜正は驚いた様子でいたが、まだ納得していなかった。
「それで、楓を連れていくから」
「楓をか?それは…!まさか……巴の考えが少しだが見えてきたな」
竜正は考え出したが
「それと確実とは言えないけど魔視の瞳も持っているわよ」
「!!……分かった。手続きはしておく。まぁ、そんな巴が期待している彼なら巴が憧れていたあの人を超えることも可能だろう。それで今すぐ連れてくるわけにはいかないんだな」
「うん、家も一応名門の黒崎だからね。でも2年以内には連れてくるから期待していて」
「そうか、確かに実力で示しをつけなきゃいけないからな。そこは心配しないでおく、それと巴の方もね」
「うん、仕事はしっかりやるから。このカードに書いてあるのが嘘偽りじゃない事を示さなきゃだからね」
そう言って取り出したカードにはこう書かれていた。
黒崎=シャーロット・巴
日本ランキング4位
彼女、黒崎=シャーロット・巴はハーフであり、名門黒崎家の直系で、この国で4番目に強い魔法戦士だ。