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第1段階終了

その日の夜、部屋に寝ている剣慎を思い出しながら巴はお酒を入れたグラスを傾けていた。


「まさか、あそこまでやるとはね」

つい、本気を出してやってしまったがそれは剣慎の実力があってこそだ。

「術式魔法オンリーだからってまさか私を熱くさせるなんてね。いや~私もまだまだね」


本来、巴は術式魔法は知識として入れているが、実践で使ったことはほとんどない。あれは、魔力を帯びた文字を紙や物、または空中に書いてそれに、より魔力を込めるという発動までに時間が掛かる上にそこまで効果の高くはなく、魔力消費も多いで魔法ある。他にも欠点はある。


それは、書いた文字は特殊な紙ではないと保存出来ないためだ。時代遅れ魔法等と言われている代物だ。だからといって、その魔法は現在使われている様々な魔法や装置等の基礎になっている。今では、デバイスとして魔核に魔力を込めて、その中に込めるのが主な使い道だ。


(最終的に剣慎が()()()()()()()()()()は剣慎次第だけどね)


こうして、その日は過ぎていった。


翌日から剣慎は分厚い本を読んで術式を身に付け、実践練習で使うという生活を1ヶ月もしていた。だが、彼には疑問があった。


そしてその疑問を、外での巴との実践練習中にぶつけた。

「なぁ、母さん」

「ん?どうしたの?」

「これって意味があるの?」

「何故、そう思ったの?」


剣慎は不満そうに文字を書いた。

「だって、詠唱魔法や陰陽術とかの他の魔法はこれよりも短時間でそれに威力も十分だけど、術式魔法は何かに書いてから魔法を発動しなきゃいけないから正直役に立つとは思えない」


すると巴は意外なことに微笑みながらこう言った。

「えぇ、その通りよ」

「ならどうして」


剣慎が言い終わる前に、巴はずっと腰にぶら下げていた剣を彼に向かって鞘ごと投げた。

「おっとっと…って危な!ってこれデバイスじゃん。いきなり投げるなんて危ないよ」


「それは旧式の安物よ。じゃあ鞘をとって軽く目に魔力を込めてその術式回路を見て」

いきなりの巴の行動に戸惑いを隠せない剣慎であったが、目に魔力を込めてデバイスを視た。すると何やら違和感を感じた。


「これ…もしかして文字?」

剣慎は今までただ複雑な図形の形をした回路だと思っていたが目に魔力を込めることでそれがより深く視えるようになっていた。また今までの術式魔術のお陰で魔力の扱いが上手くなったのか、スムーズに目に込める魔力を強められた。


「じゃあ、今度は軽くデバイスに魔力を込めてみて」

巴に従って、デバイスに魔力を込めると、術式回路に魔力が通りそして、刀身が少しだけ輝くのが視えた。だが剣慎が気になったのは刀身ではなく、術式回路の用だった。


「どうして……」

剣慎は剣型のデバイスをじっと見つめたまま固まってしまった。

「何が見えた?」

巴の疑問に剣慎は少しずつ答えた。


「強化…いやこれは部分的な硬化で刀身だけを硬くする術式、そしてその術式を固定化するための別の術式が込められている。後者のは前者の術式が剥がれないようにするためにあるのかな。後付けした感じがあるから、正直これは意味があるのか分からないけどね」


巴は驚いた様子で少し間をおくと笑って拍手した。

「……良し合格よ。というか、想像よりも凄いじゃない!」

そして巴は拍手しながら剣慎に近付いて、頭を思いっきり撫でくり回した。

「ちょ、母さん…痛いってば」

巴だけでなく、剣慎も嬉しそうにしていた。


そして家に戻るとリビングに連れてかれて2人とも椅子に座った。

「さっきのは、今まで貴方がここでしてきた事の成果の一部よ」

巴がそう言うと剣慎は首を傾げた。

「それってどういう意味?」


再び尋ねると巴はため息をついた。

「はぁ、貴方自分が何したのか分かってないのね……」

「え?」

巴にいきなりそんな事を言われて焦る剣慎だったが、すぐに自分のやっとことを考えると……

「術式回路の効果を理解したって事?」


すると、巴は何故か眼鏡をかけた。

「正解よ。それは今までは違う形に見えるという事で違いを認識していただけだけど、新たに術式の知識を身に付けた事で、その効果を理解出来た。やっぱり剣慎、貴方は記憶力も凄いのね」

「そう?」


するとまた巴はため息をついた。

「はぁ、剣慎、貴方は今まで何冊の本を頭に入れた?」

「そんなに厚くないのも合わせると確か25冊だね」

「黒崎宋永が書いた術式書4に載っている第5章3節は?」

「ああ、それなら」


すると剣慎は紙にいくつもの文字並べて書いてそれを巴に見せた。

「効果は?」

「突風で対象を上に押し上げる」

「正解よ。それで記憶力が凄くないとでも言うつもり?」

「もしかして、それって記憶力良い方なの?」

「……はぁ、それも分かってなかったのね」


(またため息をつかせてしまったけどそれほどかな?)


「いい!術式は少なくても30、1番最大のだと8593文字があるのよ。まぁ、後者のは発動するか微妙な術式だけど、ともかく!そんな複雑なものを貴方は短期間で覚えたの!私だって、これ全部覚えるのにこんなにかかったのだからね!」


巴は3本の指を立てて見せた。

「え!3ヶ月?も」

「3年よ!」


(母さん絶対大袈裟に言ったな)

「別に大袈裟に言った訳じゃないからね」

「?!」

(エスパーかよ)


「そりゃ、それだけじゃなくて他にも色々研究していたけど、それ無しでも確実に2年以上はかかっていたわよ。とにかく、貴方には馬鹿みたいな記憶力とその魔眼があるの。全く、最悪の相性よ」


最悪という事は……

「じゃあ相性悪いんだ」

「逆に良すぎるのよ」

「え?」

「はぁ、魔力を見る目とそれを理解出来る知識量。それだけでどれだけ恐ろしいか後で教えないといけないとはね」


巴は呆れながら言うと最後に真剣な顔で剣慎を見た。

「剣慎、正直予想よりは早すぎるから躊躇(ちゅうちょ)していたけどそろそろ修行は第2段階に入るから」

「第2段階?」

剣慎は巴の急な話に驚いていたが、それよりも……

(実践練習が厳しくなったら本当に死ぬかもな)

生命の危機を感じていた。


「まぁその前に明日から2、3日出掛けてくるからちゃんと修行しているのよ」

「出掛ける?」

今まで出掛けたことはあったがいつもは日帰りで2、3日なんてかけていなかったため剣慎は驚いていた。


「ちょっと偉い人に呼び出されたからね」

「偉い人に…」

「そう、ちゃんとご飯は食べるのよ。母さんの手作りが無くて大変だと思うけど」

「いや別に、それに関しては自分で作った方が美味しいから問題ないけど」

「ん?」

(あっヤバ)

剣慎は地雷を踏んでしまったことに気づいたが遅かった。


その後、剣慎はにこやかに近付いてきた巴に両手で頭をぐりぐりされてその後悶絶する羽目になってしまった。

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