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2つの決意

ブクマとポイント評価よろしくお願いします

〈紅井邸〉

その屋敷はさながら、武家屋敷の様で毎日、人の往来が盛んであった。

そして、屋敷の奥にあるその部屋には紅井家当主の弟、郷鉄と配下の者達がいた。

「それでちゃんと始末したのか?」

紅井家当主の弟の郷鉄は配下の者達に聞いた。

「分かりません」

「分からないだと?」


郷鉄の威圧に身を震わせながら配下の1人は前に出た。

「それが、始末を頼んでいた村西と佐々木から連絡がなく、行方不明になっております。それで現在、樋口に何人か預けてその者達が捜索中であります。しかし、村西達は始末する場所を言ってなかったので時間はかかるかと思われます」


それを聞いた郷鉄は彼らに命令を下した。

「見つけ次第、始末そして報告しろ。あいつは紅井の家の恥さらしだ。斉元兄上はあやつのことは無関心だからな。それに次期当主のあいつ以外にも誠、雅、璃乃は全ての紅井の定めた水準をクリアしているが、あのごみがクリアしたのは魔力だけだ。それも遥か高い水準、紅井家の歴代の中でも高い値だ。だが、それだけでしかも無色だぞ。それがどういう意味だか分かっているのかお前達」


「それは……」

―――ドン

再び圧を強めた郷鉄は腕を振り上げて床に叩きつけた。


「我ら紅井の中に()()がいるのだぞ、魔力量が高いだけなど幻獣を代々に渡り倒してきた我ら紅井の家の恥だ。我らは長い間戦い、そして勝利してきた。そんな中、あいつは魔力が高いだけだ!見つけ出し早く始末しろ。分かったな」


「「「はい」」」

配下の者達は頭を下げて返事をすると早々に部屋から出ていった。


「これでこの家は守られる。あんな者など……」

郷鉄は剣真の顔を思い出すとすぐに顔を横に振った。

あんなのが持っているはずが無いな。あいつは時々皆のデバイスを見に行っていたが、あくまでもそれは興味があっただけだ。それに一応あいつの目を見てみたが、そんな様子は無かったからな。それに私の子供達の方があやつよりも強い。


「紅井は強くあり続けなければいけない」


▲▲▲▲


「剣兄様、剣兄様」

とある少女が屋敷を走り回り、1人の人物を探していた。

「剣兄様、どこにいるの?」

彼女は泣きそうになりながら辺りを探していると部屋の障子が開かれた。


「璃乃、お前は何をしているんだ?」

彼女は声をかけられた方を見た。

「誠兄様…」

そして彼女は少し嫌そうな顔をして、後ろに下がった。タイミングが悪く彼女の兄の紅井誠が障子を開けて、部屋から出てきた所と遭遇してしまったのだ。


彼は璃乃を見ると、呆れた様子で注意した。

「お前も紅井の者だろ。そんな所で遊んでいるんじゃない」


「剣兄様」

「はぁ?」

一瞬、誠に怯えたものの、璃乃はしっかりと言った。


「剣兄様を探していたの!」

「剣、ちっあの無能かよ。良いから忘れろ!あんな奴はもうこの屋敷にはいない」


すると璃乃は誠に寄っていって、彼の服を掴んで叫んだ。

「何で!何で剣兄様はいないの!剣兄様に会いたいよ!」


そう泣き叫ぶ璃乃を払って、突き飛ばすと彼は大声で怒鳴った。

「うるさい!あんな無能なんか!誰が気にするか!お前もさっさと紅井の人間として少しは術でも磨いたらどうだ!」


すると璃乃は泣きじゃくって

「剣兄様!剣兄様!どこなの!会いたいよー!」

「ちっうるさい!」

誠はそう言って近付いて、璃乃を叩こうとして手を上げた。

「縛」

「くっ」

すると突如、光の縄のようなものが誠の右手を捕まえて、璃乃に振るわれる前に防いだ。


「何をやっているんだ」

誠は声の方を見ると舌打ちをして左手を上げて

「降参だ。降参。ちょっと指導してやろうと思っただけだよ。斉牙兄上」

そう呼ばれた少年は誠達のもとに近付いてきて、魔法を解いた。


「誠、お前も紅井の家の者だろ。こんなつまらないことでいちいち熱くなるな。璃乃、お前もだ。そんな下らない些末なことで泣いている暇は無いぞ。俺達は一刻も早く力を付けて、幻獣との戦いに集中しなければならないのだからな」


斉牙がそう言うと正面からまた別の少年が斉牙の来た反対側から現れた。

「流石は次期当主様です」

「赤石の者か」

斉牙の言葉に頷くと近寄ってきた。


「はい、流石は紅井家の次期当主様です。私は分家の赤石光鉄と申します。これから精一杯あなた様に仕えさせてもらいます」

光鉄のその表情はにこやかに笑みを張り付けていて、忠誠を誓っているようであったが、斉牙は彼に目を合わせることなかった。


「そうか。誠、行くぞ。これから修練の時間だ。璃乃は部屋で勉強していろ」

斉牙は誠を連れて屋敷の修練堂に行ってしまった。

そして璃乃も斉牙から離れて、哀しい気持ちを押さえて自分の部屋に向かって行った。


「ちっ、それだけかよ。」

その場に残った光鉄は悪態をついていた。

(まぁ良い、あいつは紅井家の次期当主だし、それに相応しい実力も才能もある。このままあいつに付いていけば問題無いだろう)


「親父の所にでも戻るか」

そう言って何処かに行ってしまった。



「剣兄……」

璃乃は部屋に戻っても剣真がいない悲しみで泣いていたが、剣真が自分のために作ってくれた折り紙の鶴を引き出しから取り出して、大切に持った。


「いつか、私が強くなって、絶対に剣兄様と一緒に暮らすんだ。だから剣兄様、璃乃は負けないよ」

折り紙の鶴に気持ちを込めて璃乃は強くなって、いつかは剣真に会うために勉学に励むのであった。


しかし、彼女の願いが叶うのはそう簡単なことではない。


彼女は自分以外の家族、そして親族に至っても全員が剣真を見捨てていたこと、ましてや殺そうとした事を知らずにいる。そして剣真はもう紅井の者ではなく、剣慎として紅井であった事を切り捨てて生きていることも知らずにいたのであった。


▲▲▲▲


「ふうー、じっとしているのも疲れるな」

剣慎は椅子に座った状態で何やら機械のようなものを付けていた。


「はい、お疲れ~。やっぱり魔力量多いね」

巴はそう言うと、剣慎の右手に付いていた装置を彼から取り外した。

装置の画面を見た巴は笑っていたが、内心ではとても驚いていた。

(一般の魔法使いの基準値の85倍の魔力量だなんて……)


その魔力量は、あくまでもその者の持っている魔力の量を完全に測定するのではなく、リラックスした通常の状態に体を流れる魔力の量で計測する物で、100%の正確性は無いが、それに近い高さの正確性があり、また簡単に調べられる事から測定の主流になっていた。


また魔力量は魔力強度と違って主に子供の時に伸びるものであるため少年期の測定には余り意味がない。


(確かに魔力の色は無色だけど、魔力の量はまだまだ伸びる子供の段階でなおかつ、常時魔眼の発動に力を使っているはずだからこれでは将来が怖いわね。それに、剣慎の魔力を出しているとき見ていたけど、本当に無色なのかしら?あの時のプレッシャーはそれ以外に理由がある気がするけど……)


「それでどうだった?」

剣慎が巴に尋ねると巴は彼に振り向いた。

「やっぱり、多いわね。最初に見た時や傷の治りの早さからもしかしたらって思っていたけど想定外だったから」

「傷の治りの早さ?」

「えぇ、最初にあった時至る所の骨がもうバキバキに折れていたのよ」

「え?でもそれって母さんが治してくれたんだよね」


すると巴は紙を準備して何やら書き込むと、それを剣慎に見せた。そこには何やら術式が書いてあったが見たことの無い形で全く意味が分からなかった。


「これは、貴方を治した時に使った術式よ。効果としては、本人の魔力を自己治癒能力に変換する術式で魔力が高ければ高いほど効果は上がるの。まぁ、普通の人なら5日は寝たきりね」

「5日も…」


「術式はたくさん種類があるし、実践では重視されてないけど魔力強度も魔法発動速度も関係無いからこれから覚えてもらうわよ」

そう言って巴は部屋を出ていってしまった。


「魔力強度も魔法発動速度も関係ない」

僕はその言葉について考えていた。それは僕にとって今まで考えて事のないものだったからだ。


すると巴は笑いながら分厚い本を何冊も準備してテーブルの上に置いた。

「こういうのは秘伝とかの分類に入るから結構貴重な物なのよ。まあ、今では余り使われていないけどね」


あっ何か嫌な予感がする

紅井家にいた時に培われた勘がそう言っているが、その通りだった。


「それと、本に書かれてある術式を全部覚えてもらうから」

「え?これ全部……」

「まさかそんな訳無いでしょ」

「だよね!」

剣慎は安心して一息


「あと5倍は本はあるから後で取りに行くから心配しなくて大丈夫よ」

「え?」


つく事は出来なかった。むしろ中々ヤバい状態に陥ってしまっているのを感じていた。


「えーと、それらをずっと読んでいるのは……」

「安心して、外での運動もあるから」

「そうだよね」

そうか、それ込みでこれから長い間かけてって事だよな。

あーそういうことならと安心して一息つ


「取り敢えず、実践で掴んでほしいから実践練習をメインでやるから。もし万が一死にそうになってもさっきの術式使うから安心して出来るわね。あ~剣慎が魔力量多くて良かった」

「え?」


けるわけが無った。さっきよりも剣慎は顔色が悪くなり、真っ青になっていくのが分かった。

「ははは、冗談ですよね?」

乾いた笑いで巴に確認するが、彼女は笑いながら

「冗談だなんて、面白い事を言うのね。冗談の訳無いでしょ」

彼女の笑みが段々と怖くなっていってきたが、もはや逃げられる訳はないのだ。


そして剣慎は深くため息をついた後

「それで強くなれるなら」

剣慎の覚悟を決めた表情に巴は驚いていた顔を見せて、すぐに微笑んで

「えぇ、勿論よ」



その後、必死に術式を覚えた後の実践練習で術式を応用してくる彼女に苦戦して、覚えた術式を使って対抗したが、彼女が手加減を忘れていたため初日は僅か10分も掛からずにリタイアしてしまった。その日は残りの時間をベッドで安静に過ごした。


VRMMOの始まりの街にラスボス級がいます

こちらの作品もよろしくお願いします。

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