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心ある者へ

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「くっ…」

僕が体の痛みで目を覚ますと、そこは見知らぬ天井であった。ベッドに寝ていたもののここはどこか分からず、もしかしたら自分はもう死んでいるのではないかと思うほどであった。


「やっと目が覚めたね」


ふと声をかけられた方に目をやると、そこには褐色で白い髪の美しい女性がエプロン姿でボウルを持ちながら、何かをかき混ぜている状態で部屋に入ってきた。

その見たことの無い美しい風貌にふと思った。

「天使ですか?」


すると彼女は高笑いしていた。

「はははは!…いや~可笑しい。私にそんな事言ったの君が初めてよ。良いわね、君にはナンパ師の才能があるよ。嘘でもそんな事言ってくれてとても嬉しいよ」


「あなたが綺麗だったから言っただけで、僕は別に嘘ついてませんよ。それよりここはどこですか?」


「(なるほど、これが天然のジゴロということか。これは将来が怖いな)ここは私の家よ。近くに倒れていたから拾ってきてそこに寝かせたの。詳しい話はご飯の後にするから体が痛いだろうが、起きてリビングに来なさい」

そう言った彼女は、部屋から出て行ってしまった。


僕は体の痛みに苦しみながらも部屋を出て彼女の向かった方に行った。そこには、2人分の朝食が準備されていた。

「来たね、ほら食べるよ」


そう言って僕に座るように促した。

「いただきます」

彼女は朝食を食べ始めたので、僕も後に続いた。


「いただきます」

食べ始めた。彼女の作ったご飯はお世辞でもそんなに美味しいとは思えなかったが、でも今の僕にとっては今までで1番優しさを感じたご飯であった。今までは一人でご飯を食べていたため、誰かと一緒にご飯を食べるなんて幼い頃以来だったからだ。


「う…」

ふと僕の目から涙がこぼれてきたが彼女は敢えて何も言わず、朝食を食べ続けていた。


朝食後、彼女は自己紹介を始めた。

「さて、順番が逆になったけど、気にしないで話すわよ。まず、私の名前は巴。歳は26で上から84、57、87よ」


「?」

剣真は首を傾げていたが、すぐに

「あか、剣真です。歳は8です」

「そう、それできついと思うけど、何があったのか話してもらうわよ」


僕は巴さんの目を見て、その後俯きながら話し始めた。

「僕は、紅井家の三男でした……ですが、魔力強度と魔法の発動速度が基準値よりも凄く低くて、僕は捨てられて……それで……」


巴さんは机に身を乗り出すと僕の頬を触った。

「あかい?!あかいと言うと、貴方の父親は斉元という名前じゃない?」

「はい、そうです。父、その人を知っているんですか?」


巴さんは頭を抱えていた。

「ええ、あの馬鹿なら知っている。そうか紅井か…そう言えばあの二人組が使っていたのは炎系統だったわね。何?斉元を貶めるために貴方を殺そうとしたのかしら?」


「…いえ、僕を殺すように命令したのは、紅井の人間、つまりはその人を含んだ家族全員らしいです」

「誰から聞いたの?」

巴さんは真剣な眼差しで僕を見た。


「僕を殺そうとしたあの男が言ってました」

それを聞いた彼女はとても怒っていた様だった。

「ちっ、そうか、あの男が……何ということをしたのか、分かってないわね。それに…」

そう言うと彼女は少し考え始めた。


そして、僕が再び泣きそうになっているのをこらえていると、巴さんは回り込んで向かいにいる僕を優しく抱きしめた。

「そう、辛かったわねもう心配はいらないわ。ここに貴方を傷つける人はいないのだから。もう思いっきり泣いても良いのよ」


僕は巴さんに思いっきりしがみついて泣いた。

「わぁぁぁぁ!」

今まで溜め込んでいた分全て吐き出すかのように叫んだ。

「何で!僕は皆と違って、才能が無いんだ!」


そんなに泣いたのは後にも先にもこれだけだっただろう。

「僕はただ、母様と璃乃と一緒に暮らしたかっただけなのに!母様も僕を…」

ただただ、泣きじゃくった。


そして僕の心の中には1つの思いがあった。


「僕は、つよく、なりたい。誰よりも強くなりたい。あんな奴らに負けないくらいに!贋作(ニセモノ)なんて言われないように!」


そう言うと、巴さんは優しく頭を撫でてくれた。

「そう、それなら私が貴方を強くしてあげる。そのためには紅井との関係をばれないようにするから。剣真、いえ、誰よりも強くなりたいという気持ち、誰よりも真っ直ぐな心がある貴方の今の名前を変えて、別の名前にしないといけないわね。剣真ってつるぎの剣に真実の真かしら?」


「はい」

「そう…じゃあ、真という字に心をつけて慎という漢字にして、貴方の名前は剣慎よ。流石に音まで変えてしまったら慣れるのに時間がかかってしまうからね」


「剣慎…」

「貴方は偽物じゃない。会って間もない私にだって分かる。貴方が誰よりも必死に耐えていた事、誰よりも優しく、強い心があることはね」

僕は嬉しかった。今まで誰にも認めてもらえなかった僕の辛さを分かってくれたのは、彼女だけだったからだ。


「貴方はこれからも辛い目にあうかもしれない。でも私は力の限り尽くして、貴方を強くしてあげるわ」


そう言うと、巴さんは僕の目の前に手を伸ばしてきた。

「この手を取ったら貴方はこれから私の息子よ。さぁ、どうする?」


僕の心はすでに決まっていた。

「僕は剣慎。巴さんの息子の剣慎です。これからよろしくお願いします」

巴さんの手を掴んで僕はそう答えた。


「そう!」

巴さんは嬉しそうに笑うと

「それじゃあ、剣慎、傷が治ったら修行を始めるわよ!貴方を日本一いえ、世界一の魔法戦士(ソーサラー)にしてあげる」

「はい!」


僕と巴さんの新しい生活が始まった。

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