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月聖  作者: 深谷 さかな
黒い炎の魔法使い
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久々の投稿

 それは深い夜。

 いつものように月があり、街灯りがあり、人がある普通の光景。

 けれど今の私にこの夜は、不快でしかならない。

 鬱陶しいくらいに光を反射する月。

 もはや太陽が爆発でもしたのではないかと思うくらい眩しい街灯。

 聞こえてくる人の声はまるで、ゴキブリのように鬱陶しくて、目障り。

 夜とはこんなにも不可解なものだったのだろうか。

 それは、否。ただ私があかしくなっただけ。

 私は知らない道をただひたすら、当てもなく歩き続ける。瞳はもう空ろ。何を見ているのか、何の情報が欲しくてそれを見ているのか、私にすら分からない。

 だってちゃんと世界を見てしまったら、本当に目が見えなくなってしまうのだから。

 何も考えない。自分の世界だけを見続けるだけ。

 すると唐突に肩が何かにぶつかった。

「イってーな、ちゃんと前を見て歩けよ」

 謝ろうとしたけれど、その声の主は人の流れに呑まれていった。

 それからはこの空き家にたどり着くまで、幾らの人にぶつかったことか、定かでない。

 ようやくたどり着いたここは、妙に落ち着く。だから安心して、建物に入ることができたし、ちゃんと今は世界を見ることができている。

 だってここは私の家。帰るべきある場所であり、帰ってはイケない場所。

 玄関には鍵はかかっていなかった。そのまま階段を上り、私の部屋に入る。

「全部置いてある……」

 白で統一された部屋。シンプルな作りの机にクローゼット。お気に入りだった、水色のベッド。たった1週間こなかっただけなのに、懐かしい。

 精神的に疲れ切った私は、そのベッドに腰掛ける。そういえば、このマットレスの感触に惚れて買ってもらったんだっけ。

 ただただ安心する。座っているだけなのに、疲れがどんどん抜けていく感じは不思議なものだった。

「宵……さ、ん」

 私が初めて一目惚れした彼の名前を口にする。唯一存在を許した人物は、いったいどこにいるのだろう。

「会いたいよ……会いたいよぉ」

 自然と溢れてくる涙。

 私は罪を犯してしまった。彼と出会った次の日の夜に。

 後悔はなかった。だってそれは私が願ったことなのだから。

 けれど彼の顔が出てくる度に、後悔は募るばかり。

「私は、どうすれば良いのかな、宵さん」

 彼とはあの時初めて会い、あれ以来会えていない。

 そんな彼に、彼女は運命を委ねていった……。

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