ある日の夜
不定期の投稿ですね。
ただただ、文字を打つことが好きなモノ書きとしてですので、暇な時にテキト―に読んで頂けたらと……。
あ、誤字脱字があるかもしれません(笑)
気付いたら、身体の半分が死んでいた。
見る限りではまず、両肩から下が存在していない。というより、そこだけがやけに冷たくて、熱くて、イタくて。もはやそれは未知の感覚。ただイタいから辛いんじゃなくて、もっと複雑な。それこそ、熱かったり、冷たかったりの、イタみとは違う感覚が脳を刺激しているからだと思う。
大体こんな冷静でいられるのも、意味がわからないからだ。
まあ、言えることと言えば、両手を失って一人では生きていけない。いわば半分死んでしまってるわけだ。
「あら?お目覚めのようね」
抑揚のない、冷やかな少女と思わしき声。けれど、心配をしてる感じはあったが。視界に映ることはなかった。
「初めてだ、こんな不愉快な目覚めは。思った箇所に力を入れてるのに、力が入らない感じ」
手が無いのは見たらわかることなのに、手がまるであるかのような感覚。不思議であり、気持ちが悪いこと。
正直な話し、この違和感に発狂したいのはやまやまなのだ。けど、それは無意味だ。発狂したところで腕が戻って来るわけでないし、ましてやイタみが消えるわけでもない。
嗚呼、なんという不愉快!
「不思議ね、アナタはその傷を痛いとは思わないの?」
「痛いとも。熱くて、冷たくて。けど、そんなもん誰かに訴えたとこで、どうなるわけでもないし」
腕はないが、今オレはそのイタみに耐えてこぶしを握っている。
「あら、そう。その言葉が聞けてホッとしたわ。
……それと、アナタからは見えないかもしれないけど、止血とかは済ませてあるから。そこんとこは、心配いらないわ」
コトン、と陶器が離れる音がした。多分コーヒーか、紅茶を飲んでるのだろう。オレの想像する少女像はあの作品の、アリス。白と水色を基調とした、ふりふりのドレスかなんかを着ているアレだ。まあ、そういうイメージを抱いているから、紅茶を飲んでいるのだろう。
で、再び静かな空間。
無い腕から視線を外す。どのくらいの時間が経ったにしろ、未だイタいまま。自分の身体を見ているのに、気分が悪くなってくる。
仰向けの状態。見渡す限り、黒しかない。窓もなければ、大きな電灯もないこの空間はまるで地下倉庫だ。唯一の光りは、その少女がいるであろう場所から光る、淡い白昼色だけ。目が慣れればかろうじてその無い腕を見ることができた。
「なあ、アンタ。名前はなんて言うんだ?」
ざっと10秒。返事はない。
「応えたくないのか?ならオレはアンタってこれから呼ばしてもらうぞ」
ここも返事がない。なんだ、寝てんのか。
「一応聞きたいことが山ほどあるから、聞いてるなら応えてくれ。
まずは、ここはどこなんだ」
「ちゃんとアナタの話しは聞いてるわ。それとアンタって呼ばれ方は解せないわね。だったら、セツナって呼んで、漢字で書くと、雪に水菜とかの菜」
「なんだ、起きてるじゃないか。んじゃ、セツナさん、ここはどこでしょうか」
「私の自宅兼、アナタの自宅になる場所よ」
意味がわからない。アナタの自宅になるだって?
「まさか、オレは不良か何かに襲われて両腕を失い、そして何かしらの理由でオレの部屋は売り飛ばされたとか」
ハハっ。
あり得る、実にあり得る。そもそも腕を失くした理由すら覚えていないのだ。オレが何かしらのトラブルに巻き込まれて、この状態になったと言われても十分にうなずける。ようは、悲劇の主人公ってわけだ!
「……どうしようもない、バカ、ね。もう面倒くさいから言っちゃうけど、アナタの腕は最初からなかったの。
良い?私がアナタの腕を取ったとか、誰かがアナタの腕を取ったんじゃなくて、元からアナタに腕はなかったの」
「は?じゃあ、オレの腕は生えて無かったって言いたいわけ?」
彼女の言っているコトは、意味がわからなかった。元から無いってことは、それは生まれた時から生えてなかったていうことじゃないか。だというのに、彼女はそれを否定した。
「違うわ、その証拠にアナタの肩は痛むのでしょ?
簡単に例えるなら、鹿の角が生え換わる感じ。今まであった腕は不要になったの。で、これから生えてくる腕は、そうね。本物の腕ってとこかしら」
「つまるところ、腕が勝手に取れたってことか?」
「モノ分かりが早いこと」
全然わからないからテキト―なことを言ったつもりだったが、合ってたようだ。