とある不幸な少女の幸せな日常2
何気ないひとこまです。なんとなく、2とつけるのもはばかれるような…
元の世界でも英語は一番苦手だった。
国語は大得意で、毎日英語の先生から特別課題をこなしているのに
一向に模試の点数がよくならなくて首を傾げられたこともある。
つまるところ、他言語習得能力が著しく低いのだ。
要領が悪いともいう。
2
「だから何度言ったら学習するんだ、お前は」
レイの呆れた声が耳に痛い。
「さっきも間違えたばっかりだろ。これはこういう構文なんだ。」
「…」
「こら、ペンを投げ出すな。思い出せ!」
やいのやいのと言われるが、どうしても思い出せないのだからしょうがない。
「レイ、休憩したいです」
「あと1ページ読んでからだ」
容赦のない言葉にがくりと肩を落として、目の前の本に向かい合う。
辞書もないこの世界では、レイの教えてくれる言葉や文字が
自分にとってとてもありがたいとわかっているが、中々上達しないのだ。
しかし、文字を覚えないことには、師の役にも立てない。
魔法も、薬品作りも上達しない。
しょんぼりしながら本とノートに向き合うが中々目当ての構文が見つからない。
「…あと1ページやったら、師にお茶を持っていこう。」
ぱあっと顔を上げると、レイが苦笑した。
「師もそろそろ休憩の時間だ。クッキーを持ってお茶にしよう。」
レイが町でジンジャークッキーと、バタークッキーを買ってきたらしい。
そこのクッキーはココナッツのようなサクサクした実が入っていてとてもおいしいのだ。
それに、お茶を持っていくと師がよっぽど忙しくない限り3人でティータイムとなる。
「…早く終わらせる」
「そうしてくれ。」
やる気を出して、ノートをまくり教えてもらった構文を調べる。
目の前に餌をチラつかされたおかげで、いつもの倍は早い時間で出された宿題を解き終えた。
「いつもこれ位早いともっと…」
「努力します」
「…お前いつもそればっか…」
そうして、早々に紅茶の支度にとりかかる。
甘いクッキーがあるから、ちょっと苦めの茶葉を出そう。
ミルクなしで砂糖。レモンのはちみつ漬けも持っていこう。
朝からこもりっぱなしの師のためにできる数少ないこと。
もっと師のためにできることが増えればいい。
あの人の笑顔をもっと増やすことが出来ればいいのに。
「がんばるよ」
にこにこしながら振り返れば、レイに怪訝な顔をされてしまった。
お茶をトレーに乗せて、クッキーとはちみつ漬けをお皿に乗せて師の部屋まで。
ドアを叩いくと返ってくる返事にすら喜びを見出す。
「お茶をお持ちしました」