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とある不幸な少女の幸せな日常1

こんにちは。初めて書いた小説です。読みにくいところもありますが、よろしくお願いいたします。


雪原に散った赤はまるで花のように雪を彩り、月は青く、あたりを照らす。


呆然と月を見上げていると涙がこぼれた。


知らない土地にひとりぼっち。寒くて痛くて苦しい。


さっきまでお母さんと、お兄ちゃんの分のパンを食べてしまったことで喧嘩していたのに、いつの間にか知らない場所にいた。


おにいちゃん、おかあさんごめんなさい。


最後に見た光景が、あまりにも美しいそれだけがせめてもの救いだと、そのまま目を閉じた。







1.


今日は冷えると思って窓の外を見たら、いつの間にか雪が降っていた。

はらはら散る雪は大きく、この分だと積もるに違いない。


もう冬だ。この世界に来て4度目の冬になってしまった。


ぼうっと外を眺めていると、外のドアをゴンゴンたたく音がした。

「はい。空いてるよ!」

慌てて、まとめていた書類を整えて椅子から立つと、ドアが開いて

銀髪の青年が顔をだす。


「レイ。」


「師がお呼びだ。お前の書類も俺が持つからお茶の用意をしてくれ。」


あいかわらず気が付く男である。

でも、あったかい紅茶は師を喜ばせるに違いない。

今朝焼いたフルーツパウンドケーキも持っていこう。

いい出来だったから、きっと喜んでくれる。

くれる…はずだ。


「パウンドケーキ、昨日焼いたの。レイ味見して。」


目の前の男に毒見をさせておこうと、整えた書類を渡して、

キッチンに飛び込む。

お湯を火にかけて、パウンドケーキを切る。

一切れとって、レイに渡すと、微妙な顔をされた。


「毒見かよ。」


「大丈夫。多分おいしい。」


パウンドケーキ作りは得意だ。

元の世界でもしょっちゅう作っていた。

本当かよ、といいながらもレイの顔はほころんでいた。

見た目硬派そうな男な割に甘いものが好きなのである。


「甘い」


ペロッと食べて、感想はそれだけか。

幾分むっとしながらレイの縛った髪の先をひっぱる。


「いてぇな、引っ張るなよ。おいしかったよ。」


素直にそういえばいいのだ。

機嫌を直して紅茶の準備をしにキッチンに戻る。


紅茶も元の世界で大好きだった。



異世界に魔族の餌として召喚され、うっかり別の場所に飛ばされた。

中途半端に高い中空に転移の陣が出来、下の木に落下。

死ぬことはなかったが、左腕に木が貫通し、揚句足を折った。

それ以外もところどころ傷ができ、満身創痍で落ちた雪原にいるところを、近くの塔に住んでいる師に拾ってもらった。

おかしな術の気配がしたので、気になってきたのだとか。


ぼろぼろ泣いている私を発見して師は抱きしめて、慰めてくれた。

餌としての召喚のため、還る術などありはしないと知って、落ち込んで泣く私のために

必死で異世界召喚の術を探してくれている。


弟子のレイが、いつも師と一緒にいるのを羨んで、私も弟子にしてくれと頼みこんで弟子にしてもらった。

しょうがないね、怪我が治ってからだよ。といって笑って。

その時の私は言葉もわからず、碌にこの世界のことも知らない完全なるお荷物だったにもかかわらず、師匠のそばにいることを許された。


つまるところ、私は今幸せなのだ。

大好きな師の役に立つことが何よりも嬉しいのだから。



お湯が沸いたらミルクポッドを添えて砂糖はソーサーに2つづつ。

私の暖かな世界はここにある。



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