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深海勲章  作者: 伊阪証


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ライト版深海勲章後編

KP「深部の扉へ現れた文章は消えずに残っている。『深部への進行には、死者の帰還手順を理解すること』。二人の勲章は反応しているが、扉は閉じたまま動かない。」

PL1「手順を理解したかどうか、扉が判断する?」

PL2「理解だけなら資料を読めばいい。実行まで求めるなら、ネモ船長を戻す必要がある。」

PL1「戻した後で本人に扉を開けてもらう。」

PL2「本人が開け方を知っている保証はない。」

PL1「一度通っている。」

PL2「一人で。」

PL1「だから今度は三人で通る。」

KP「扉の左右には、外周区画へ戻る通路が二本伸びている。一方は先ほど通った居住区画へ、もう一方はまだ確認していない資料区画へ続いている。資料区画側の扉には、身体図と円形の刻印が重ねて描かれている。」

PL2「まず資料。」

PL1「勲章で開くか試す。」

KP「PL1が近づくと勲章が淡く光り、扉が開く。内部には背の高い棚が並び、紙、金属板、石板、薄い透明な板など、異なる時代と材質の記録が同じ区画へ収められている。」

PL1「読むのに何年掛かる。」

PL2「時間は余っている。」

PL1「空腹も眠気も来ないから?」

PL2「読める精神が残っているとは限らない。」

PL1「死体を板で数えた後でも読める。」

PL2「それを基準にしないで。」

KP「資料区画の中央には大きな机がある。表面へ四つの図が刻まれている。一つ目は人間の肉体、二つ目は身体から離れた光のような輪郭、三つ目は二つを別々の場所へ置く図、四つ目は再び重ねる図。」

PL2「分離、保管、再接続。」

PL1「ネモ船長の状態そのもの。」

PL2「肉体はノーチラス号、本人は深部。」

PL1「では四つ目を実行すればいい。」

PL2「四つ目の周囲に線が多い。」

KP「四つ目の図には、肉体と光の輪郭以外に三つの記号が添えられている。一つは時計に似た円、一つは名前を書き込む欄、一つは二人の人間が両側から手を添える図だ。」

PL2「時間、本人確認、二人の補助。」

PL1「二人必要な理由がまた出た。」

PL2「魂と肉体を別々に確認するためかもしれない。」

PL1「私は肉体側。」

PL2「私が魂側?」

PL1「探索担当だから見えないものを探せる。」

PL2「鍵開け担当に肉体を任せる理由は?」

PL1「閉じていたら開ける。」

PL2「身体を?」

PL1「必要な装置を。」

PL2「先に言って。」

KP「机の側面には複数の引き出しがある。勲章に反応するものと、反応しないものが混在している。」

PL1「開かない引き出しから見る。」

PL2「開く方を先に。」

PL1「開かない方に重要なものがある。」

PL2「重要だから開かないとは限らない。」

PL1「重要でないなら壊しても困らない。」

PL2「結果が同じ方向へ向かっている。」

KP「PL1が開く引き出しを確認すると、手順を簡略化した資料が見つかる。文字は二人が理解できる形へ変化し、頁をめくるたびに表記が揃っていく。」

KP「『帰還には肉体、魂、本人の記憶、時間差の調整が必要』」

KP「『肉体が存在しない場合、地上活動用の代替手段を必要とする』」

KP「『現在、代替手段は未完成』」

PL2「魂だけで地上を動く方法は完成していない。」

PL1「だから肉体があるネモ船長は戻せる。」

PL2「損傷の程度による。」

KP「次の頁には、肉体の状態を三段階で分けた図がある。腐敗していない肉体、損傷した肉体、原形を失った肉体。最初の二つには再接続手順が記され、最後の一つだけ空欄になっている。」

PL1「ネモ船長は一段目。」

PL2「外傷は少ない。腐敗もしていない。」

PL1「一番簡単。」

PL2「簡単なら医師が戻している。」

PL1「医師は手順を知らなかった。」

PL2「知っていて失敗した可能性もある。」

KP「医師に関する記録を探すと、ノーチラス号から持ち帰った診療記録と同じ筆跡が資料内に見つかる。」

KP「『肉体は返還されたが、魂の位置を確認できない』」

KP「『声だけが聞こえる』」

KP「『時間差を調整せず接続すれば、肉体か魂のどちらかが損傷する』」

KP「『船内設備では実行できない』」

PL2「医師は蘇生を試そうとしていた。」

PL1「注射器は?」

PL2「肉体を保つためか、接続準備のため。」

PL1「最後の成分が空欄だった。」

PL2「都市でしか作れないものだった可能性がある。」

KP「PL2が資料を読み続ける間、PL1は反応しない引き出しへ工具を差し込む。」

PL2「今、何をしている?」

PL1「理解するために開ける。」

PL2「扉が求めている理解は、物理的な解体ではない。」

PL1「中身を見れば理解が増える。」

KP「鍵開けに成功すれば、引き出しは損傷なく開く。失敗した場合、内部の留め具が外れず、破壊を試みられる。ファンブルの場合、引き出し全体が机の反対側へ抜け、PL2の膝へ落ちる。」

PL1「ファンブル。」

PL2「何をした?」

KP「PL1が工具を捻った瞬間、引き出しが机の反対側へ勢いよく抜け、PL2の膝へ当たる。痛みはある。だが腫れも出血も広がらず、その痛みの強さだけが一定に残る。」

PL2「また止まった。」

PL1「引き出しは開いた。」

PL2「私の膝も壊した。」

PL1「歩ける?」

PL2「痛いけど動く。」

PL1「なら軽傷。」

PL2「この場所で軽傷を基準にすると、ずっと痛いまま残る。」

PL1「後で修復設備へ入れ。」

KP「抜けた引き出しの中には、人間の名前が大量に記された薄い板がある。名前の横には、肉体、魂、記憶、時間差の四項目が並び、完了した項目だけに印が付いている。」

PL2「被験者一覧。」

PL1「同意書があった。」

PL2「研究参加者一覧と言うべき。」

PL1「結果が同じでも?」

PL2「本人の意思が違う。」

KP「多くの名前は、肉体と魂の分離、記憶確認まで完了している。時間差の調整欄だけが空欄の者もいる。全項目が完了した者には、地上、深部、保管継続のいずれかが記されている。」

PL2「地上へ戻った人もいる。」

PL1「成功例がある。」

PL2「少ない。」

PL1「ゼロではない。」

PL2「肉体が残っていた者だけ。」

KP「頁を進めると、『ネモ』の名前が見つかる。肉体分離、魂確認、記憶確認には印がある。時間差調整だけが空欄で、状態欄には『本人の希望により深部進行』と記されている。」

PL1「戻せる条件は揃っている。」

PL2「本人が戻ることを選ばなかった。」

PL1「今回は聞く。」

PL2「魂へ接触できれば。」

KP「資料区画の奥には、都市内の各設備を示す簡略図がある。肉体修復を行う区画、魂の反応を確認する区画、時間差を調整する区画、深部へ続く扉が、それぞれ別の位置に記されている。」

PL1「一箇所で終わらない。」

PL2「奔走しろということ。」

PL1「まず肉体。」

PL2「ノーチラス号まで戻れない。」

PL1「返還した設備が都市にある。」

PL2「肉体を船へ返したなら、逆に回収できる可能性がある。」

PL1「その区画を探す。」

KP「図では、外周資料区画の反対側に、肉体の返還と回収を扱う区画が記されている。そこへ続く通路の一部は勲章で開くが、最後の扉だけは別の印を要求している。」

PL2「先に開くところまで行く。」

PL1「最後は開ける。」

PL2「順番に。」

KP「肉体修復区画へ続く通路では、照明が二人の前方だけを照らし、背後は順に暗くなる。扉は勲章へ反応して開く。区画内部には人間一人が横たわれる台、複数の器具、液体を収めた容器、身体図を表示する壁面が並んでいる。」

PL1「病院。」

PL2「手術室に近い。」

PL1「動く?」

KP「台へPL1が手を置くと、壁面へPL1の身体図が現れる。第一部で作った腕の傷、第二部で受けた小さな損傷が、その位置と形のまま表示される。」

PL2「診断できる。」

PL1「修復も?」

KP「身体図の横に、『地上帰還時の適応修復』『時間差による損耗の補正』『致命的損傷の進行停止』という項目が現れる。」

PL2「完全治療ではない。」

PL1「帰還時に問題が出ない程度へ直す。」

PL2「寿命や体調へ影響しないように。」

PL1「ハスターが帰還者へ行う処置。」

PL2「まだハスター本人とは確認していない。」

PL1「この都市を作ったのがハスターだ。」

PL2「だからといって全部を直接操作しているとは限らない。」

KP「PL1が修復の実行へ触れると、壁面へ『帰還契約未確認』と表示され、処置は始まらない。」

PL1「契約が必要。」

PL2「帰還する場合だけ。」

PL1「私たちは深部へ行く。」

PL2「最後に決める。」

PL1「今回の目的はネモ船長を戻して一緒に行くこと。」

PL2「本人が同意すれば。」

PL1「断られたら?」

PL2「説得する。」

PL1「一人で行くなと本人が書いた。」

PL2「なら断らない。」

KP「区画奥の返還記録室には、ノーチラス号と同じ形をした図が表示されている。周囲には複数の船、建物、地上施設と思われる図も並ぶ。」

PL2「肉体を元いた場所へ返す設備。」

PL1「地上帰還にも使う?」

PL2「肉体だけを返すことと、人間を帰還させることは別だと思う。」

KP「ネモ船長の記録を選ぶと、『肉体返還完了』『返還先・ノーチラス号船長室』『回収未実施』と表示される。」

PL1「回収できる。」

PL2「実行条件を見る。」

KP「『肉体の回収には、対象の本人確認、返還先の位置確認、回収後の修復準備が必要』」

PL1「本人確認は記録にある。」

PL2「肉体が本当にそこにあるかは確認済み。」

PL1「修復準備はこの台。」

PL2「ただし本人の魂が接続可能な範囲にいる必要がある。」

PL1「深部の扉の先。」

PL2「先に魂を確認しないと回収できない。」

PL1「また別区画。」

KP「返還記録の隣には、ノーチラス号船内の簡略図が表示される。船長室、医務室、通信室、小型艇格納区画。二人が探索した場所が順に示される。」

PL2「見られていた。」

PL1「都市側から船内を把握していた。」

PL2「黒い眷属が報告していた可能性もある。」

PL1「安全索の結び目まで直した。」

PL2「あれは現場担当。」

PL1「呼び方が研究所みたいになったな。」

PL2「実際、研究所の警備か案内役に近い。」

KP「船長室を選ぶと、ネモ船長の肉体が椅子へ座った状態で表示される。脈拍なし、呼吸なし、腐敗なし、接続反応なし。第一部で二人が確認した状態と一致している。」

PL2「今も変わっていない。」

PL1「回収先をこの台へ設定する。」

KP「設定は可能だが、実行を選ぶと『魂確認未完了』と表示される。」

PL1「順番が固定されている。」

PL2「肉体を先に持ってくると、本人がいない状態で修復が進む。医師と同じ失敗を避けるため。」

PL1「合理的。」

PL2「親切でもある。」

PL1「悪意なら、肉体だけ先に持ってきて試す。」

PL2「悪意を探すなら、もっと分かりやすい場所があるはず。」

KP「修復台の横には、使用済みの記録が残っている。肉体を戻せた者、戻せなかった者、途中で地上帰還を選んだ者、魂のまま保管を続けた者。失敗例も隠されていない。」

PL2「結果を改竄していない。」

PL1「信頼させるために残した可能性。」

PL2「失敗の方が多い。」

PL1「信頼させるには不利だな。」

PL2「事実を残している。」

KP「失敗例の多くは、肉体が腐敗していた、本人確認ができなかった、時間差が大き過ぎた、魂が戻ることを拒否した、のいずれかに分類される。」

PL1「魂が拒否できる。」

PL2「強制的に戻していない。」

PL1「ネモ船長が拒否したら?」

PL2「三人で行く理由を話す。」

PL1「それでも拒否したら?」

PL2「本人の選択。」

PL1「一人で行くなと書いた責任を取ってもらう。」

PL2「説得が強い。」

PL1「船長には船員を連れる責任がある。」

PL2「私たちは船員ではない。」

PL1「今からなる。」

PL2「採用されてから言って。」

KP「返還記録室の奥に、細い通路がある。扉には人間の頭部と複数の光点を重ねた印が刻まれている。」

PL2「魂の反応を確認する区画。」

PL1「開くか?」

KP「勲章は光るが、扉は半分しか開かない。隙間の向こうに複数の椅子と、壁一面の記録装置が見える。」

PL1「半分なら通れる。」

PL2「機械を壊さないように。」

PL1「私の幅では厳しい。」

PL2「扉を少し広げて。」

PL1「壊していい?」

PL2「留め具だけ。」

KP「PL1が扉の機構を調べると、破損ではなく、反対側から何かが押さえていると分かる。」

PL1「中に物が倒れている。」

PL2「人かもしれない。」

PL1「押す。」

KP「PL1が扉を押し広げる。隙間の向こうで、硬いものが床を擦る。開いた扉の裏には、人間の死体が一体倒れている。」

KP「死体は腐敗していない。片手に記録板を持ち、もう片方の手で扉を押さえた姿勢のまま止まっている。」

KP「SANチェック。成功で1、失敗で1D4減少。」

PL2「死体を調べる。」

PL1「扉を押さえていたのではなく、閉めようとしていた?」

PL2「手の向きを見る。」

KP「死体の掌は扉の内側へ向いている。外から侵入する者を防いだのではなく、扉を開けて外へ出ようとしていた姿勢だ。」

PL2「外へ出たかった。」

PL1「戻ろうとした。」

PL2「記録板を見る。」

KP「記録板には、『魂確認中断』『対象が深部へ移動』『追跡を希望』『許可されず』と残されている。」

PL1「本人を追おうとして、ここで止まった。」

PL2「許可されなかったのに無理に出ようとした。」

PL1「それでも扉は殺していない。」

PL2「止めただけ。」

PL1「止まった結果、この人は死んだ。」

PL2「死因は別かもしれない。」

PL1「君は毎回そこを残す。」

PL2「事実がないから。」

KP「死体の胸元には勲章が刻まれている。二人の印と形は同じだが、周囲の線が一部消えている。」

PL2「権限が失われた。」

PL1「許可されず、扉も開かなくなった。」

PL2「本人を追う意思だけでは足りない。」

PL1「死者を戻す手順を理解する必要がある。」

KP「二人は死体を扉脇へ移し、位置と姿勢を記録する。死体を動かしても腐敗や硬直は進まず、胸元の勲章も反応しない。」

PL2「この人は失敗例。」

PL1「私たちは同じことをしない。」

PL2「だから手順を読む。」

PL1「読んだ後で開ける。」

KP「魂反応確認区画には、向かい合う二脚の椅子と、中央の台がある。壁には大量の名前が並び、現在地を示すような光点がそれぞれの横へ浮かんでいる。」

PL2「保管されている魂の一覧。」

PL1「ネモ船長を探す。」

KP「名前を検索する仕組みは見当たらない。文字、記号、声、触れた記録によって反応するように作られている。」

PL1「名前を呼ぶ。」

PL1「ネモ船長。」

KP「壁の光点が一斉に僅かに揺れる。だが一つには絞られない。」

PL2「名前だけでは本人確認にならない。」

PL1「記憶が必要。」

PL2「本人が残した文章、肉体、所持品、仲間との関係。」

PL1「肉体はまだ回収できない。」

PL2「船長室の記録がある。」

KP「PL2がネモ船長の筆跡を記録板へ写し、中央の台へ置く。複数の光点が消え、残る数が減る。」

PL2「反応した。」

PL1「次は船外装備。」

PL2「ノーチラス号に残っている。」

PL1「返還記録から読み出せない?」

KP「中央の台へ勲章を触れさせると、ノーチラス号船内で見つけた記録の一部が光として再現される。ネモ船長の航海日誌、外部装備の記録、仲間を帰した通信、深部入口の署名。」

PL2「都市が記録していた。」

PL1「本人確認に使える。」

KP「光点はさらに減り、最後に三つだけ残る。」

PL1「三人いる?」

PL2「同じ魂が時間差で三箇所に観測されている可能性。」

PL1「過去、現在、深部?」

PL2「逆行ではない。違う速度で進んだ痕跡が重なっている。」

PL1「どれが今の本人。」

PL2「本人へ聞く。」

KP「二脚の椅子の一方へPL2が座ると、壁に『観測者』と表示される。反対側の椅子には『対象』と表示されるが、誰も座っていない。」

PL1「私が対象側へ座る?」

PL2「本人ではない。」

PL1「空のままでは動かない。」

PL2「試すだけ。」

KP「PL1が対象側へ座る。中央の台が二人の勲章へ反応し、三つの光点から細い線が伸びる。線はPL1へ向かわず、深部の扉の方向へ消えていく。」

PL2「対象は深部にいる。」

PL1「私では動かない。」

PL2「本人の肉体を座らせる必要がある。」

PL1「肉体を回収するためには魂確認が必要。」

PL2「魂確認には肉体が必要。」

PL1「循環している。」

PL2「別の確認方法がある。」

KP「椅子の横には、観測者が対象の記憶を問い、返答を確認する手順が残されている。ただし対象の声が届くまで、時間差によって長い待機が必要になる場合がある。」

PL1「呼び掛ける。」

PL2「質問は本人しか答えられないもの。」

PL1「仲間を地上へ帰した理由。」

PL2「記録に答えがある。」

PL1「記録と同じ答えを本人が返せば確認になる。」

PL2「記録を読んだ別人でも答えられる。」

PL1「では、帰した後で後悔したか。」

PL2「本人しか知らない。」

KP「PL2が観測者の椅子へ座り直し、中央の台へ手を置く。」

PL2「ネモ船長。聞こえているなら答えてください。仲間を地上へ帰した後、一人で進んだことを後悔しましたか。」

KP「返答はない。」

KP「壁の三つの光点は動かない。」

KP「灯火も減らない。」

KP「時計は別々の速度で進み続ける。」

PL1「待つ。」

PL2「どれだけ?」

PL1「返事が来るまで。」

PL2「数年掛かる可能性がある。」

PL1「空腹も眠気も来ない。」

PL2「精神が持つとは限らない。」

PL1「君は質問を変えてもいい。」

PL2「返事を待つ。」

KP「二人は椅子に座ったまま待つ。」

KP「何も起きない。」

KP「PL1は区画内の扉、壁、床の構造を確認する。」

KP「PL2は光点の揺れを記録する。」

KP「時計は進む。」

KP「二人の身体は空腹を訴えず、眠りも求めない。」

KP「やがて、三つの光点のうち最も深部に近い一つが、ほんの僅かに明滅する。」

KP「中央の台から声ではない振動が伝わる。」

KP「長く引き延ばされ、言葉として聞き取れない。」

PL2「速度を変えられる?」

KP「台の側面に、複数の時間間隔を重ねる調整部がある。PL2が勲章を触れさせると、振動が少しずつ短くなる。」

PL1「続けろ。」

PL2「速くし過ぎると壊れる可能性がある。」

PL1「少しずつ。」

KP「振動は徐々に人間の声へ近づく。」

KP「最初は一つの長い音。」

KP「次に、切れ目が生まれる。」

KP「最後に、低い声が区画へ落ちる。」

ネモ船長「後悔する時間が、まだ私には来ていない。」

PL2「本人?」

PL1「質問へ答えた。」

PL2「時間が違う。」

ネモ船長「だが、一人で進んだことを正しいとは思っていない。」

PL1「なら戻ってください。」

KP「返答はすぐに来ない。光点が一度消えかけ、再び点く。」

ネモ船長「誰だ。」

PL1「あなたを追って来た二人です。」

PL2「ノーチラス号を調べ、深海生物の死骸で道を作り、都市へ到達しました。」

ネモ船長「死骸で。」

PL1「釣竿を使いました。」

ネモ船長「そうか。」

PL2「疑わないのですか。」

ネモ船長「私も使った。」

PL1「鉤を見つけました。」

KP「光点が僅かに強くなる。」

ネモ船長「なら、そこまで来たのだな。」

PL2「肉体を回収し、再接続します。」

ネモ船長「戻る必要はない。」

PL1「一人で進むなと記録に残した。」

KP「返答までの間隔が、先ほどより短くなる。」

ネモ船長「私の真似をするなと書いた。」

PL1「だからあなたも真似を続けないでください。」

PL2「今度は三人で進みます。」

ネモ船長「地上へ帰るために来たのではないのか。」

PL1「帰還方法は後で確認します。」

PL2「先に、あなたを一人にしない方法を完成させます。」

KP「三つあった光点のうち、二つが消える。最後に残った一つだけが、深部の方向で安定して点灯する。」

KP「壁へ『本人確認完了』『魂位置確認完了』『帰還意思保留』と表示される。」

PL1「保留?」

PL2「本人が戻ると言っていない。」

PL1「戻してから説得する。」

PL2「強制はできない。」

PL1「肉体まで用意して選ばせる。」

ネモ船長「聞こえている。」

PL1「なら戻ると言ってください。」

ネモ船長「君たちは強引だな。」

PL2「PL1だけです。」

PL1「PL2は死体を全部調べます。」

PL2「今それを言う必要はない。」

ネモ船長「二人で来た理由は分かった。」

KP「光点から伸びる線が、深部の扉ではなく肉体修復区画の方向へ分岐する。」

KP「『肉体回収許可』『本人確認済み』」

PL1「許可が出た。」

PL2「帰還意思は保留のまま。」

PL1「身体を戻すことには同意した。」

PL2「接続は別。」

ネモ船長「肉体を用意しろ。戻るかは、その時に決める。」

PL1「十分。」

PL2「戻る気がある返事。」

PL1「急ぐ。」

KP「二人が肉体返還記録室へ戻ると、ネモ船長の項目に新しい表示が加わっている。『魂位置確認済み』『肉体回収可能』『時間差未調整』」

PL1「回収する。」

PL2「修復台を先に準備する。」

PL1「私が台。」

PL2「私は時間差の設定。」

KP「PL1が修復台を起動すると、壁面へノーチラス号船長室の映像が現れる。椅子へ座るネモ船長の肉体、机の記録、船外装備、二人が残した痕跡が確認できる。」

PL2「黒い眷属は?」

KP「船長室の扉前に立っている。三本の腕のうち一本を扉へ、一本をネモ船長の肩へ添え、最後の一本を壁面へ向けている。」

PL1「肉体を守っている。」

PL2「回収しようとしていることを理解している?」

KP「PL2が勲章を記録台へ触れさせると、映像内の黒い存在が胸部を開く。内部の細い光が、二人の勲章と同じ形を描く。」

PL2「認証を返している。」

PL1「回収を許可した。」

PL2「最初から敵ではなかった。」

PL1「邪魔ではあった。」

PL2「警告していた。」

PL1「私たちは聞かなかった。」

PL2「言葉が足りなかった。」

PL1「三回しかなかったからな。」

KP「黒い存在はネモ船長の肉体を椅子から抱き上げる。細長い三本の腕が頭部、背中、脚を支え、損傷させない姿勢へ整える。」

PL1「丁寧だ。」

PL2「私たちが運ぶより安全。」

PL1「死骸の足場で運ぶつもりだった。」

PL2「戻れない。」

PL1「方法は探す。」

PL2「今は要らない。」

KP「回収を実行するための確認が表示される。」

KP「『肉体は死後数年を経過』」

KP「『腐敗なし』」

KP「『時間差調整前』」

KP「『接続前の修復は最小限に留める』」

PL2「完全に直してはいけない。」

PL1「魂が知っている肉体と変わるから?」

PL2「本人確認が崩れる可能性がある。」

PL1「傷と衰弱だけ軽く戻す。」

PL2「地上の時間へ適応する処置は接続後。」

PL1「実行。」

KP「二人が同時に勲章を台へ触れさせる。」

KP「ノーチラス号船長室の映像が揺れる。」

KP「黒い存在がネモ船長の肉体を抱えたまま一歩下がる。」

KP「船長室の床へ円形の光が現れる。」

KP「光は肉体の輪郭をなぞり、椅子、机、床を傷つけず、ネモ船長だけを包む。」

KP「次の瞬間、修復台の上にネモ船長の肉体が現れる。」

KP「落下はしない。」

KP「最初からそこへ横たわっていたように、背中、頭部、両腕が台へ収まる。」

KP「SANチェック。成功で1、失敗で1D4減少。」

PL1「脈なし。」

PL2「呼吸なし。体温低下。腐敗なし。」

PL1「船で見た時と同じ。」

PL2「時間差が加わっている。」

KP「修復台が身体を読み取り、壁面へ複数の異常を表示する。死後経過、筋肉の停止、臓器活動の停止、医師が投与した液体、魂との接続欠如。」

PL2「注射の成分が残っている。」

PL1「役に立つ?」

KP「資料との照合により、液体は肉体の崩壊を遅らせるものではなく、魂が戻る際に身体を本人のものとして認識しやすくする処置だったと分かる。」

PL2「医師は正しい準備をしていた。」

PL1「最後の成分が足りなかった。」

PL2「都市側の時間差調整。」

KP「修復台の横に三つの不足項目が表示される。」

KP「『魂との時間差調整』」

KP「『記憶の連続確認』」

KP「『再接続時の補助者二名』」

PL1「二人はいる。」

PL2「記憶も確認できた。」

PL1「残りは時間差。」

PL2「別区画。」

PL1「行く。」

PL2「肉体を置いて?」

PL1「台が管理している。」

PL2「誰か残るべき。」

PL1「都市に人はいない。」

PL2「だから全員奥へ進んだ。」

PL1「私たちも戻ってくる。」

KP「二人が区画を出ようとすると、修復台の照明が赤く変わり、扉が一時的に閉じる。」

PL1「閉じ込めた。」

PL2「肉体を放置するなという警告。」

PL1「一人残れ?」

PL2「二人必要な手順がある。」

PL1「なら台ごと運ぶ。」

PL2「動くか確認して。」

KP「修復台の床には複数の溝があり、勲章を触れさせると台全体が床から僅かに浮く。押せば動くが、手を離すとその位置で止まる。」

PL1「運べる。」

PL2「最初から奔走させる気だ。」

PL1「ネモ船長も連れて回る。」

PL2「死体を担ぐよりはいい。」

PL1「肉体。」

PL2「区別が必要だった。」

KP「二人は修復台を押し、時間差調整区画へ向かう。」

KP「ネモ船長の肉体は腐らず、動かず、二人の間を進む。」

KP「本人の魂は深部で待っている。」

KP「帰還意思はまだ保留されている。」

KP「それでも、蘇生へ必要な条件は初めて一つの流れへ繋がった。」

KP「肉体は回収した。」

KP「魂の位置も確認した。」

KP「本人の記憶も繋がった。」

KP「残るのは、異なる時間を生きた肉体と魂を、壊さず同じ場所へ戻すことだった。」

KP「修復台は床から僅かに浮き、押した方向へ静かに進む。車輪も駆動音もない。PL1が前から引き、PL2が後方から位置を調整する。二人が手を離すと、その場で止まる。」

PL1「軽い。」

PL2「ネモ船長の肉体が軽いわけではない。台が重さを処理している。」

PL1「運べるなら同じだ。」

PL2「違う。台が止まった時に、肉体だけ慣性で落ちる可能性を確認する。」

PL1「落ちなかった。」

PL2「一度しか止めていない。」

PL1「何度止める?」

PL2「条件が分かるまで。」

KP「PL2の指示で、PL1は修復台を少し進め、止める。もう一度進め、急に手を離す。台はその位置で止まり、ネモ船長の肉体も動かない。肩、頭部、脚は固定具に拘束されていないが、台の表面へ沿った姿勢を保つ。」

PL2「慣性も止まる。」

PL1「人間を運ぶには便利だ。」

PL2「地上で使ったら事故になる。」

PL1「地上では動かないかもしれない。」

PL2「この都市の条件に合わせてある。」

KP「通路の照明は、修復台が近づくと二人だけの時より早く点灯する。壁面には肉体の状態を示す細い線が現れ、台が進むたびに追従する。」

PL1「都市がネモ船長を認識している。」

PL2「肉体を対象として追跡している。」

PL1「魂は深部。」

PL2「肉体はここ。記憶は確認済み。時間差だけが両方を離している。」

PL1「それを合わせる。」

PL2「合わせ過ぎても壊れる。」

PL1「資料に書いてあった。」

PL2「だから急がない。」

KP「通路の分岐へ着く。左は時間差調整区画、右は医療物資保管区画、正面は封鎖されている。勲章は左と右の扉へ反応するが、正面には反応しない。」

PL1「左。」

PL2「先に右。」

PL1「時間差を調整するのでは?」

PL2「ネモ船長の肉体を動かす前に、必要な物が揃っているか確認する。」

PL1「修復台ごと右へ行く。」

PL2「通路が狭い。」

PL1「入るか試す。」

PL2「台を壁へ擦らないで。」

PL1「浮いている。」

PL2「浮いていても幅はある。」

KP「右側の扉が開く。内部には、注射器、容器、薄い布、金属製の器具が規則的に並んでいる。多くは人間の医療器具に似ているが、用途を示す表記は異なる時代の言語で重ねられている。」

PL2「医師が使った注射器と同じものを探す。」

PL1「形で分かる?」

PL2「針の太さと容器の接続部。」

KP「PL2が棚を調べる。ノーチラス号で見つけた注射器と同じ規格のものが一列だけ残っている。その隣には、透明な液体を収めた小瓶が三本ある。」

PL2「最後の成分。」

PL1「全部持つ。」

PL2「一本で足りるかもしれない。」

PL1「失敗したら?」

PL2「失敗した後で二本目を使える状態とは限らない。」

PL1「だから全部持つ。」

PL2「同意。」

KP「PL1が小瓶を取ろうとすると、棚の表面へ『対象一名につき一回分』『重複使用禁止』と表示される。」

PL1「三本あっても一回しか使えない。」

PL2「やり直しはできない。」

PL1「一本だけ持つ。」

PL2「残りは位置を記録する。」

KP「PL2は注射器と液体を修復台の側面へ固定する。小瓶を置くと、台の表示へ新しい項目が加わる。」

KP「『身体認識補助剤・準備完了』」

PL1「医師が足りなかったもの。」

PL2「医師は身体を準備した。都市側の成分がなかったから接続できなかった。」

PL1「今度はある。」

PL2「時間差が合えば。」

KP「保管区画の奥には、使用済みの小瓶が並んでいる。空になったもの、途中まで残ったもの、封を切られていないもの。それぞれに名前と結果が記されている。」

PL2「成功例を見る。」

PL1「失敗例も。」

KP「成功した記録には、『接続後に記憶混乱あり』『肉体感覚の回復に時間を要した』『地上帰還時に軽度修復』とある。失敗例には、『魂の時間が肉体より先行』『肉体の時間が魂より先行』『本人が接続を拒否』とある。」

PL1「時間差はどちらにずれても駄目。」

PL2「同じ時間へ揃えるのではなく、接続できる範囲へ近づける。」

PL1「完全一致は必要ない?」

PL2「人間の身体も魂も、完全に同じ速度では動いていない。許容範囲がある。」

PL1「その範囲を測る。」

PL2「時間差調整区画で。」

KP「二人は保管区画を出る。PL1が修復台を押し、PL2は側面の表示を見ながら歩く。台の上でネモ船長の胸部は動かない。呼吸も脈もない。だが壁面へ表示される肉体の輪郭だけは、通路を進むほど僅かに明るくなる。」

PL2「深部へ近づくほど、魂との反応が強くなっている。」

PL1「本人が近い。」

PL2「距離ではない可能性もある。」

PL1「また条件が違う?」

PL2「時間差が小さくなっているのかもしれない。」

PL1「ならこのまま深部へ運べば?」

PL2「調整せずに近づけると、急に接続する可能性がある。」

PL1「それは困る?」

PL2「肉体が死んだ状態で接続したら、本人も死の状態へ引かれるかもしれない。」

PL1「止める。」

KP「PL1が手を離す。修復台はその場で止まり、肉体の輪郭を示す光も同じ明るさで固定される。」

PL2「位置で反応が変わる。」

PL1「魂までの距離?」

PL2「この都市では距離と時間が同じように扱われている。」

PL1「近づくほど同じ時間になる。」

PL2「可能性はある。」

PL1「なら調整区画は、その近づき方を制御する。」

PL2「行こう。」

KP「左側の扉へ勲章を近づける。扉は開かず、表面へ二つの円と一つの長い線が現れる。」

PL1「また二人同時。」

PL2「修復台も含めて三点。」

KP「二人が左右の円へ手を置き、修復台を中央の線へ合わせる。扉の表面に、肉体、魂、観測者二名の図が現れる。」

KP「『観測者は互いの時間を確認すること』」

PL1「時計を使う?」

PL2「時計は全部違う。」

PL1「では脈。」

PL2「私たちの脈拍を基準にする。」

PL1「肉体側と魂側で一人ずつ?」

PL2「私はネモ船長の魂反応を確認する。君は肉体の状態を見る。」

PL1「最初に決めた通り。」

KP「扉が開く。時間差調整区画は円形の部屋で、中央に修復台を置ける窪みがあり、左右に二人分の操作台がある。正面の壁には、深部へ向かう細い光の線が一本伸びている。」

PL1「置く。」

KP「修復台を中央へ合わせると、床から短い固定具が現れ、台の位置を止める。ネモ船長の肉体を示す表示が壁面へ移り、細い線が深部の方向へ伸びる。」

PL2「魂反応区画と繋がった。」

PL1「呼ぶ?」

PL2「先に測定する。」

KP「左側の操作台には肉体の時間、右側には魂の時間が表示される。ただし数値ではなく、異なる間隔で点滅する二つの光として示される。」

PL1「肉体側は遅い。」

PL2「魂側はもっと遅い。」

PL1「どちらを動かす?」

PL2「肉体を魂へ合わせると、死後の停止をさらに引き延ばす。魂を肉体へ近づける方がいい。」

PL1「本人の時間を速める。」

PL2「速め過ぎれば、本人だけが先へ進む。」

PL1「少しずつ。」

KP「PL2が魂側の調整部へ触れる。勲章が光り、深部へ伸びる線の点滅が僅かに速くなる。」

KP「同時に、ネモ船長の指が一度だけ動く。」

PL1「止めろ。」

PL2「止めた。」

KP「点滅はその速度で固定される。指は再び動かない。」

PL1「接続した?」

PL2「反応が届いただけ。」

PL1「肉体の状態は変わっていない。」

PL2「脈も呼吸もない?」

PL1「ない。」

PL2「次は本人へ確認する。」

KP「PL2が操作台へ両手を置き、魂反応区画で使用した呼び掛けの記録を読み出す。」

PL2「ネモ船長。こちらの声が届くなら答えてください。今、身体へ触れましたか。」

KP「返答はすぐに来ない。」

KP「二つの光が異なる間隔で点滅する。」

KP「PL1はネモ船長の手首へ指を置き、肉体側の変化を待つ。」

KP「PL2は深部へ伸びる線を見続ける。」

KP「何も起こらない。」

PL1「また長い。」

PL2「速めた分だけ短くなるはず。」

PL1「その間に台を調べる。」

PL2「触らないで。」

PL1「壊さない。」

PL2「君の『調べる』は開けること。」

PL1「閉じた構造は理解しづらい。」

PL2「今は閉じている理由がある。」

PL1「待つ。」

KP「二人は待つ。」

KP「灯火は減らない。」

KP「空腹も眠気も来ない。」

KP「PL1はネモ船長の脈を測り続け、PL2は光の間隔を記録する。」

KP「やがて、肉体側の光と魂側の光が、一度だけ同時に点く。」

KP「その瞬間、ネモ船長の喉が僅かに震える。」

ネモ船長「触れた。」

PL1「声は肉体から?」

PL2「操作台からも聞こえた。」

ネモ船長「身体が遠い。」

PL2「どちらが速いと感じますか。」

ネモ船長「身体は止まっている。私は歩いている。」

PL1「戻れますか。」

ネモ船長「戻れば、歩いた時間を身体へ押し込むことになる。」

PL2「だから少しずつ近づける。」

ネモ船長「君たちは手順を見つけたのか。」

PL1「今やっている。」

ネモ船長「成功例は。」

PL2「ある。失敗例も隠されていない。」

ネモ船長「なら、私より慎重だ。」

PL1「一人ではないから。」

KP「ネモ船長の声が途切れる。魂側の光が一度遅れ、肉体側との間隔が広がる。」

PL2「離れた。」

PL1「話したことで時間を使った?」

PL2「魂側だけが進んだ。」

PL1「会話にも消耗がある。」

PL2「短く確認する。」

PL2「ネモ船長。戻る意思はありますか。」

KP「返答は先ほどより早い。」

ネモ船長「一人で戻るなら、ない。」

PL1「三人で先へ進むために戻す。」

ネモ船長「なら、戻る。」

KP「壁面の表示が変わる。」

KP「『帰還意思確認』」

KP「『接続許容範囲・計算開始』」

PL1「決まった。」

PL2「ここからが危険。」

KP「肉体側と魂側の二つの光の間へ、複数の細い線が現れる。どの線も点滅速度が僅かに異なり、そのうち一つだけが両方へ同時に接続している。」

PL2「許容範囲が見えた。」

PL1「一本だけ。」

PL2「この間隔を維持する。」

PL1「どれくらい?」

PL2「私たちの脈を使う。」

PL1「私が肉体側。」

PL2「私が魂側。」

KP「PL1はネモ船長の手首へ指を置き、自分の脈拍と肉体側の光を合わせる。PL2は勲章を魂側の操作台へ触れさせ、自分の呼吸と点滅を合わせる。」

KP「二人の呼吸は最初から揃わない。」

PL1「速い。」

PL2「君が遅い。」

PL1「戦闘後ではない。」

PL2「私は集中している。」

PL1「合わせる。」

KP「PL1が呼吸を速める。PL2が少し遅くする。二人の呼吸が近づくと、肉体側と魂側の光も同じ間隔へ寄る。」

KP「ネモ船長の胸部が、ほんの僅かに持ち上がる。」

PL1「呼吸した。」

PL2「まだ反射。」

PL1「一回でも動いた。」

PL2「次を待つ。」

KP「二人は同じ呼吸を続ける。」

KP「二回目の動きは来ない。」

KP「代わりに、修復台の側面へ新しい表示が現れる。」

KP「『時間差調整・仮固定』」

KP「『再接続には身体認識補助剤、記憶確認、補助者二名の同時操作が必要』」

PL1「条件は揃った。」

PL2「仮固定だけ。」

PL1「本接続は別区画?」

KP「壁面へ、時間差調整区画から深部入口前へ続く経路が表示される。その途中には、先ほどまで開かなかった正面の封鎖扉が含まれている。」

PL2「封鎖扉が開く。」

PL1「ネモ船長を連れて行けということ。」

PL2「深部の近くで接続する。」

PL1「本人の魂へ近い場所。」

PL2「ただし近づき過ぎる前に、仮固定を維持しなければならない。」

PL1「移動中も二人で台へ触れている?」

PL2「片方が離れればずれる。」

PL1「では一人が押し、一人が調整。」

PL2「二人必要と書いてある。」

PL1「台は自動で動く?」

KP「経路を選択すると、修復台の固定具が外れ、台がゆっくりと扉の方向へ動き始める。二人が左右の操作台へ触れている間だけ進み、片方が手を離すと止まる。」

PL1「歩けばいい。」

PL2「呼吸も合わせたまま。」

PL1「話せる?」

PL2「必要なことだけ。」

PL1「君には難しい?」

PL2「死体の確認より簡単。」

KP「二人は修復台の左右へ立つ。」

KP「PL1は肉体側の光を見て、PL2は魂側の光を見る。」

KP「呼吸を合わせる。」

KP「台が進む。」

KP「途中でPL1が足元の段差へ躓き、手を離しかける。」

PL2「離さないで。」

PL1「分かっている。」

KP「PL1は体勢を戻す。肉体側の光が僅かに遅れたが、許容範囲を外れない。」

PL1「今のは?」

PL2「まだ大丈夫。」

PL1「大丈夫という言葉を信用して進む。」

PL2「私も君の手を信用している。」

PL1「鍵開けの手を?」

PL2「今は脈を測る手。」

KP「二人は無人の都市を進む。」

KP「左右の部屋には、過去の研究者が使った道具、空の椅子、署名済みの同意書が残っている。」

KP「誰もいない。」

KP「誰もいないまま、設備だけがネモ船長の肉体と魂を追跡し、二人の呼吸へ合わせて扉を開いていく。」

KP「承の間、新しい敵は現れない。」

KP「新しい真相も明かされない。」

KP「二人が行うのは、肉体、魂、記憶、時間差を一つずつ同じ手順へ載せる作業だけだった。」

KP「だが、その作業によって初めて、ネモ船長は蘇生可能な存在として整えられていく。」

KP「修復台は、これまで閉ざされていた正面の扉へ到達する。」

KP「二人の勲章が光る。」

KP「扉の向こうから、都市の奥へ続く淡い光が差し込む。」

KP「ネモ船長の魂は、その先で待っている。」

KP「正面の扉が開く。修復台は二人の呼吸へ合わせてゆっくり進み、扉の向こうへ入る。通路は外周区画より狭く、壁と床には勲章と同じ円形の印が一定間隔で並んでいる。照明は点灯するが、修復台の進行方向ではなく、二人が来た道だけを照らしている。」

PL1「前を照らさない。」

PL2「戻る方向を示している。」

PL1「戻れないのに?」

PL2「引き返す意思だけは確認しているのかもしれない。」

PL1「ネモ船長を連れて戻れるなら考える。」

PL2「本人は深部にいる。」

PL1「だから前へ進む。」

KP「修復台が最初の円形の印を越えた瞬間、前方の扉が閉じる。背後の扉は開いたまま残る。」

PL1「止まった。」

PL2「肉体側と魂側の光は?」

KP「仮固定は維持されている。ネモ船長の肉体に変化はない。二人が手を離さなければ、修復台もその位置を保つ。」

PL1「扉を開ける。」

PL2「先に表示を見る。」

KP「前方の扉へ文字が現れる。」

KP「『再接続前の深部進行を推奨しない』」

KP「『肉体の時間と魂の時間は未確定』」

KP「『帰還を選ぶ場合、ここで停止せよ』」

PL1「推奨しないだけ。」

PL2「禁止していない。」

PL1「なら開ける。」

PL2「待って。背後の道が照らされている。帰還設備へ誘導している。」

PL1「ネモ船長を置いて?」

PL2「肉体だけを持ち帰ることもできる。」

PL1「それを帰還とは呼ばない。」

PL2「都市側も同じ考えか確認する。」

KP「PL2が文字へ触れると、新しい文章が現れる。」

KP「『魂を伴わない肉体の帰還は推奨しない』」

PL1「同意見だ。」

PL2「私たちを肉体だけ帰そうとしてはいない。」

PL1「では何を止めている?」

PL2「接続前に深部へ入ること。」

PL1「接続するには深部へ近づく必要がある。」

PL2「矛盾している。」

PL1「なら別の条件を隠している。」

PL2「悪意か?」

PL1「まだ決めない。」

KP「修復台の側面へ、別の経路が表示される。背後の外周区画へ戻る道と、壁の内側を迂回する細い保守通路。保守通路は修復台が通れない幅しかない。」

PL1「二人だけなら行ける。」

PL2「ネモ船長の肉体を置いていくことになる。」

PL1「片方が残る。」

PL2「仮固定は二人必要。」

PL1「なら台を止めてから二人で行く。」

PL2「手を離せば時間差がずれる。」

PL1「許容範囲を外れるまで猶予があるか調べる。」

KP「PL1が片手を一瞬だけ離す。肉体側の光が僅かに遅れる。すぐに戻せば許容範囲内へ復帰する。」

PL2「短時間なら動ける。」

PL1「二人同時は?」

PL2「試さない。」

PL1「片方ずつ保守通路を見る。」

PL2「私が先。」

PL1「戦闘担当が先。」

PL2「探索担当が構造を見る。」

PL1「何かいたら?」

PL2「戻る。」

PL1「戻れる幅?」

PL2「君よりは。」

PL1「それは否定できない。」

KP「PL2は魂側の操作台から手を離し、保守通路へ入る。PL1が肉体側の光と魂側の光を一人で見ながら仮固定を維持する。」

KP「保守通路の内部には、配線も配管もない。壁面へ複数の文章が刻まれている。」

KP「『肉体を失うことを死と呼ぶ者は戻れ』」

KP「『魂の継続を生と呼べない者は戻れ』」

KP「『知識は地上へ持ち帰れるが、真相は地上を壊し得る』」

PL2「警告が増えている。」

PL1「扉を開ける方法は?」

PL2「まだ見えない。」

KP「さらに奥には、人間の死体が一体座っている。背中を壁へ預け、両手で自分の胸元を押さえている。勲章は刻まれているが、円周の半分が消えている。」

KP「SANチェック。成功で1、失敗で1D4減少。」

PL2「状態を見る。」

PL1「時間は?」

PL2「魂側の光が遅れ始めたら呼んで。」

KP「PL2が死体へ近づく。腐敗はない。胸元を押さえる手の下には傷がなく、衣服も破れていない。表情は恐怖ではなく、何かを理解した直後の硬さを残している。」

PL2「死因がない。」

PL1「ここでは珍しくない。」

PL2「勲章が半分消えている。」

KP「死体の傍らには記録板が落ちている。」

KP「『戻れば家族へ話してしまう』」

KP「『話せば彼らも来る』」

KP「『来れば私と同じものを見る』」

KP「『だから戻らない』」

PL2「自分で残った。」

PL1「進んだ?」

PL2「この通路で止まった。」

PL1「なぜ?」

KP「記録板の最後には、『私は知った後の自分を地上へ戻せない』とある。」

PL2「真相を知った後、地上へ戻らない選択をした。」

PL1「都市が止めたのではない。」

PL2「自分で止まった。」

KP「PL2が記録板を戻すと、死体の勲章が一度だけ光る。壁面に新しい文章が現れる。」

KP「『帰還者には沈黙を求める』」

KP「『沈黙を受け入れない者には、帰還を認めない』」

PL2「機密保持。」

PL1「研究所らしくなった。」

PL2「真相を話せば、地上で混乱が起きる。」

PL1「死者が魂として残ると知れば、死者を取り戻そうとする。」

PL2「自殺する者も出る。」

PL1「宗教も政治も利用する。」

PL2「ハスターが遠ざける理由が見えてきた。」

PL1「善意か?」

PL2「少なくとも、隠して独占するためではない。」

PL1「証拠は?」

PL2「帰還者を受け入れた記録がある。黙るなら帰している。」

PL1「支配したいなら帰さない。」

PL2「魂を集めたいなら、ネモ船長の肉体を船へ返す必要もない。」

PL1「眷属が肉体を守る必要もない。」

PL2「悪意で考えると、行動が不自然。」

PL1「善意で考えると?」

PL2「危険を理解していない人間を止め、理解した者には選ばせ、戻る者には沈黙を求める。」

PL1「筋が通る。」

KP「PL1の前で魂側の光が一度遅れる。」

PL1「戻れ。」

PL2「今行く。」

KP「PL2が修復台へ戻り、魂側の操作台へ手を置く。二つの光は許容範囲内へ戻る。」

PL1「扉の開け方は?」

PL2「保守通路の奥に続きがある。」

PL1「次は私。」

PL2「幅が足りない。」

PL1「壁を開ける。」

PL2「保守通路を壊したら記録が読めない。」

PL1「扉を開ければ読まなくて済む。」

PL2「理解が条件。」

PL1「理解した。沈黙を受け入れる者だけ帰還できる。」

PL2「それだけではない。」

PL1「なら二人で行ける方法を探す。」

KP「PL1が前方の扉を調べる。鍵穴はない。継ぎ目はある。勲章は反応するが、開かない。」

PL1「破壊判定。」

PL2「扉が攻撃してこないことを確認してから。」

PL1「既に確認した。」

PL2「壊すと修復台へ影響が出る。」

PL1「留め具だけ狙う。」

KP「PL1が扉の端へ工具を差し込む。扉は硬いが、力を加えると抵抗するのではなく、工具の位置を避けるように継ぎ目が移動する。」

PL1「逃げた。」

PL2「壊されたくない。」

PL1「なら開けろ。」

KP「PL1が別の位置へ工具を差す。継ぎ目は再び移動する。三度目には扉の中央へ円形の印が現れ、文章が表示される。」

KP「『破壊による進行を選ぶ者へ確認する』」

KP「『肉体、魂、都市設備のいずれかを損なう可能性を受け入れるか』」

PL1「受け入れない。」

PL2「即答。」

PL1「ネモ船長を戻すために来た。壊したら意味がない。」

KP「文章が変わる。」

KP「『損なわず進む意思を確認』」

KP「扉の中央に二つの掌形が現れる。」

PL2「最初から質問すればよかった。」

PL1「私が工具を出したから答えた。」

PL2「交渉手段が破壊なのは変わらない。」

PL1「通じた。」

KP「二人が片手ずつ掌形へ置く。残る片手は修復台へ触れたまま保つ。」

KP「扉はすぐには開かない。」

KP「代わりに、二人の勲章へ同じ問いが届く。」

KP「言葉ではない。」

KP「地上へ戻った自分たちが、家族、仲間、研究者、政府、宗教家から真相を聞き出される光景が、一瞬ずつ頭の中へ流れ込む。」

KP「死者を戻せると聞いて海へ集まる人々。」

KP「肉体を捨てれば洪水を凌げると信じ、自ら死を選ぶ人々。」

KP「魂の保存を兵器、財産、支配へ利用しようとする者たち。」

KP「SANチェック。成功で1D3、失敗で1D6減少。」

PL1「これは予言?」

PL2「可能性。」

PL1「地上へ戻ったら黙る。」

PL2「研究を続ける場合でも、公表はしない。」

PL1「ハスターへ報告する。」

PL2「まだ契約はしていない。」

PL1「条件は見えた。」

KP「二人の意思が揃うと、扉の継ぎ目が中央へ戻る。」

KP「扉は静かに開く。」

KP「向こう側には、外周区画とは異なる広い空間がある。」

KP「床には複数の円形装置が並び、その中央を、深部へ伸びる一本の光が貫いている。」

KP「修復台が進み始める。」

KP「中枢観測区画へ入ると、修復台の進行が止まる。二人が操作台へ触れていても動かない。肉体側と魂側の光は許容範囲を保っている。」

PL1「故障?」

PL2「到着した。」

KP「周囲の円形装置へ、異なる時代の人間の姿が映る。肉体を持つ者、光の輪郭だけの者、輪郭の一部が欠けた者。全員が同じ方向、深部へ伸びる光を見ている。」

PL2「保管されている魂?」

PL1「研究者たち。」

KP「姿は動かない。だが完全に停止しているわけではない。誰かの指が僅かに上がり、別の者の視線が何年も掛けて動くような遅さで二人へ向く。」

KP「SANチェック。成功で1D3、失敗で1D8減少。」

PL2「全員、生きている。」

PL1「地上では死者だ。」

PL2「ここでは研究を続けている。」

PL1「都市が無人だった理由。」

PL2「全員がここか、さらに奥へ進んだ。」

KP「正面の光が揺れる。」

KP「最初は人影に見えない。」

KP「次に、細長い衣をまとった輪郭が浮かぶ。」

KP「顔は一定しない。」

KP「見る角度によって若い人間、老いた人間、仮面、空洞のいずれにも見える。」

KP「その周囲には、黄色とも白とも判別できない淡い光が漂っている。」

KP「ハスターが姿を現す。」

KP「SANチェック。成功で1D4、失敗で1D10減少。」

PL1「止めに来た?」

ハスター「もう止める段階は過ぎています。」

PL2「船内の眷属は、私たちを殺さなかった。」

ハスター「殺せば、あなた方がここまで来た意味を奪います。」

PL1「最初から説明すればよかった。」

ハスター「説明して理解できる場所ではありません。死体が腐らない。空腹が来ない。宇宙に深海がある。その全てを見てもなお、言葉だけで納得できたと思いますか。」

PL1「納得はしない。」

PL2「だから自分で確認した。」

ハスター「ええ。それが人類の強みです。」

PL1「褒めるために止めた?」

ハスター「止めたのは、知らずに進む者と、知って進む者を分けるためです。」

PL2「勲章。」

ハスター「警告を理解し、それでも先へ進む意思を称える印。そしてこの施設の鍵です。」

PL1「勲章を持っていても、深部では止めた。」

ハスター「あなた方は死を知らないまま、死者を戻そうとしていた。」

PL2「今は知っている?」

ハスター「一部だけ。」

PL1「全部話せ。」

ハスター「全部を一度に知れば、SANと呼ばれる数値だけでは済まないでしょう。」

PL2「悪意はない。」

ハスター「悪意を持つ理由がありません。」

PL1「クトゥルフと敵対しているから、人類を利用している?」

ハスター「人類は、私が手を貸す前からクトゥルフを追い込んでいました。」

KP「周囲の装置へ、海上、海底、都市、兵器、封鎖されたルルイエの断片的な映像が流れる。」

ハスター「何度洪水に流されても、何度文明を失っても、あなた方は積み直し、海へ戻り、彼を追い詰めた。」

ハスター「その執念と技術を、私は賞賛しています。」

PL2「だから文明を保存する。」

ハスター「人間は肉体を守ろうとします。しかし大洪水の弊害が肉体の腐食であるなら、最初から一時的に肉体を離れればよい。」

PL1「魂だけを回収する。」

ハスター「保管し、時間を遅らせ、大洪水が過ぎるまで待つ。」

PL2「時間逆行ではない。」

ハスター「ええ。失ったものを戻すのではありません。失うまでの時間を延ばし、地上が再び人類を受け入れられるまで存在を繋ぐ。」

PL1「その後は?」

ハスター「決まっていません。」

PL1「決まっていない?」

ハスター「魂を保管することはできます。時間を稼ぐこともできます。肉体が残っている者なら、ネモのように再接続できる場合もあります。」

ハスター「ですが、肉体を失った魂が地上で安定して活動する方法は、まだ完成していません。」

PL2「研究者たちは、それを完成させるために奥へ進んだ。」

ハスター「私が強制した者はいません。」

PL1「都市に誰も残らなかった。」

ハスター「全員が、自分も研究に参加すると決めました。」

PL2「クトゥルフTRPGなら、洗脳か生贄を疑う。」

ハスター「悪意を前提にすれば、その方が理解しやすいでしょう。」

PL1「実際には善意で全員奥へ行った。」

ハスター「善意だけではありません。興味、恐怖、家族への執着、文明を残したい欲、死者へ会いたい願い。理由はそれぞれです。」

PL2「それでも自発的。」

ハスター「ええ。」

KP「周囲の円形装置に映る人影が、非常に遅い速度で二人へ顔を向ける。」

ハスター「私は人類を善良だとは思っていません。」

ハスター「ですが、悪意をぶつけ合っても、クトゥルフを追い込むことにも、文明を守ることにも、魂を地上へ戻すことにも繋がりません。」

PL1「合理的だから協力する。」

ハスター「そして、合理だけでここまで来る人間はいません。」

PL2「ネモ船長も?」

ハスター「彼は仲間を地上へ帰し、一人で来ました。」

PL1「今度は一緒に行く。」

ハスター「彼の肉体を戻せば、選択できます。」

PL2「再接続を許可する?」

ハスター「許可は既にあります。本人が戻る意思を示しました。」

PL1「なら何を待っている?」

ハスター「あなた方が、この先で知ることを地上へ持ち出さないと理解すること。」

PL2「パニック防止。」

ハスター「死者が終わっていないと知れば、人間は死を軽く扱う者と、死者を手放せなくなる者に分かれます。」

PL1「魂を保存できると広まれば、実験する者も出る。」

ハスター「ええ。」

PL2「黙る。」

PL1「研究は続ける。」

ハスター「地上で続けても構いません。」

PL2「定期的に報告する。」

ハスター「その話は、ネモを戻した後に正式に交わしましょう。」

PL1「契約。」

ハスター「機密保持、帰還保証、共同研究。その三つです。」

PL2「帰還保証には、時間差の修復も含む?」

ハスター「地上と異なる時間を過ごした肉体と魂を、そのまま返すつもりはありません。体調、損傷、寿命へ問題が出ない範囲で整えます。」

PL1「悪意がない証拠は?」

ハスター「証拠を要求する姿勢は正しい。」

KP「ハスターが片手を上げる。修復台の表示へ、これまで隠されていなかった成功例と失敗例、帰還者の記録、研究参加者の同意が一斉に現れる。」

ハスター「私は失敗も隠していません。」

PL2「帰還者もいる。」

ハスター「います。」

PL1「帰還後に契約を破った者は?」

ハスター「一人。」

PL2「殺した?」

ハスター「再びここへ連れ戻しました。」

PL1「生きている?」

ハスター「魂として研究に参加しています。本人が選びました。」

PL2「契約違反への罰ではない?」

ハスター「地上へ戻れば、同じ情報を再び広めると本人が判断しました。」

PL1「悪意で見れば、都合の良い説明。」

ハスター「疑い続けて構いません。」

PL2「でも、行動は一貫している。」

PL1「眷属も都市も、私たちを殺さず、戻る道を示し続けた。」

PL2「真相へ近づくほど警告を増やした。」

PL1「騙して引き込む動きではない。」

ハスター「それで十分です。」

KP「ハスターが深部へ続く光へ触れる。」

KP「修復台の前方に、肉体と魂を再接続するための円形区画が開く。」

KP「中央にはネモ船長の魂を示す一つの光があり、修復台の上の肉体と同じ間隔で明滅し始める。」

ハスター「ここから先は、私が奇跡として彼を戻すのではありません。」

PL1「私たちがやる。」

ハスター「ええ。」

PL2「失敗すれば?」

ハスター「ネモの魂か肉体、あるいは両方が、今の状態へ戻れなくなる可能性があります。」

PL1「成功させる。」

PL2「手順を確認する。」

ハスター「そのために、あなた方をここまで遠ざけ続けました。」

PL1「遠ざけるのに、最後は手伝う?」

ハスター「理解せず来た者は止めます。理解して来た者は称えます。」

PL2「勲章の意味。」

ハスター「死にに行くことを称えるのではありません。」

ハスター「死に近づき、死の真相を知ると理解した上で、それでも誰かを迎えに行く意思を称えるのです。」

KP「ネモ船長の魂を示す光が一度強く点る。」

KP「修復台の上で、ネモ船長の指がゆっくりと動く。」

ネモ船長「長かったな。」

PL1「本人?」

PL2「まだ接続前。」

ハスター「声だけが先に届いています。」

ネモ船長「二人とも、そこにいるのか。」

PL1「いる。」

PL2「戻す準備もできています。」

ネモ船長「なら、今度は一人ではない。」

PL1「最初からそのために来た。」

KP「第三部の転で、二人が追っていた疑いは一つの回答へ収束する。」

KP「ハスターは人類を騙して魂を奪っていたのではない。」

KP「人類文明が再び大洪水で失われることを避けるため、肉体を一時的に離れ、魂を保管し、時間を稼ぐ第二の生存手段を研究していた。」

KP「都市の人々は犠牲者ではない。」

KP「全員が、自ら研究へ参加し、さらに奥へ進んだ。」

KP「そしてハスターが二人を遠ざけたのは、死の真相を理解しない者を守り、地上へ無秩序に持ち帰らせないためだった。」

KP「残る問題は一つ。」

KP「ネモ船長の魂と肉体を、二人の手で再び繋ぐこと。」

【第三部・結】

シーン18。時間は直後、場所は海底都市中枢再接続区画、天候は確認不能、人数はPL1、PL2、ネモ船長の肉体、ハスターで固定する。

KP「再接続区画の中央へ修復台が収まる。台の周囲には二つの操作台があり、その間へネモ船長の魂を示す光が浮かんでいる。光は人間の形を取らず、細い輪郭を何度も作っては崩し、肉体側の表示より僅かに遅い間隔で明滅している。」

ハスター「肉体と魂の時間差は、既に接続可能な範囲へ入っています。ただし固定は仮のものです。二人のどちらかが手順を外れれば、再び離れます。」

PL1「私が肉体側。」

PL2「私が魂側。今まで通り。」

ハスター「身体認識補助剤は、肉体側の脈が戻る直前に投与してください。早ければ魂が死体を自分と認識せず、遅ければ接続が肉体を置き去りにします。」

PL1「脈がないのに、戻る直前が分かる?」

PL2「魂側の光と肉体側の反応が重なった時。」

ハスター「ええ。二人で別々のものを見てください。一人で両方を見ようとしてはいけません。」

PL1「ネモ船長は?」

ハスター「本人確認と帰還意思は済んでいます。ただし、戻る途中で記憶の連続が切れれば、本人は自分がどちら側にいるか分からなくなります。」

PL2「その時は名前を呼び続ける。」

ハスター「名前だけでは足りません。彼が誰を帰し、なぜ一人で進んだかを繋いでください。」

PL1「失敗したら?」

ハスター「肉体だけが動く場合、魂だけが声を残す場合、両方が互いを本人と認めない場合があります。」

PL2「成功例より失敗例の方が多かった。」

ハスター「だから私が奇跡として戻すのではなく、本人を知る者が手順を行う必要があります。」

PL1「私たちは会ったばかりだ。」

ネモ船長「十分だ。」

KP「魂を示す光から声が落ちる。前よりも近く、修復台の上の肉体から聞こえたようにも、区画全体から聞こえたようにも感じる。」

ネモ船長「私を知っていた者は、もう地上へ帰した。」

PL2「だから記録を辿った。」

PL1「あなたが残したものを全部見た。」

ネモ船長「全部は残していない。」

PL1「戻った後で聞く。」

ハスター「始めます。」

KP「PL1が肉体側の操作台へ手を置く。PL2が魂側へ触れる。二人の勲章が同時に光り、肉体と魂の表示が一つの円へ収まる。」

KP「肉体側には、停止した心臓、動かない肺、崩壊していない筋肉、医師が残した認識補助処置が表示される。」

KP「魂側には、ネモ船長の名前、記憶、深部へ進んだ時間、仲間を地上へ帰した記録、帰還意思が表示される。」

PL1「肉体側、変化なし。」

PL2「魂側、間隔を上げる。」

KP「PL2が調整部を僅かに動かす。魂側の光が速くなる。ネモ船長の右手の指が一度だけ曲がる。」

PL1「指が動いた。」

PL2「まだ脈は?」

PL1「ない。」

ハスター「そのまま。急がないでください。」

KP「魂側の光が二度点く間に、肉体側は一度だけ点く。PL2は呼吸を遅くし、点滅の間隔を身体へ合わせる。PL1はネモ船長の手首へ指を置き、自分の脈と表示を比較する。」

PL2「ネモ船長。聞こえますか。」

ネモ船長「聞こえている。」

PL2「仲間を地上へ帰した時、あなたは一緒に帰れましたか。」

ネモ船長「帰れた。」

PL1「なぜ残った。」

ネモ船長「私が帰れば、次に来る者が一人になる。」

PL2「それで自分が一人になった。」

ネモ船長「そうだ。」

KP「魂側の光が強くなり、肉体の胸部が僅かに持ち上がる。空気は入るが、吐き出されない。」

PL1「肺が動いた。まだ脈なし。」

PL2「肉体側を一段上げて。」

PL1「私が?」

ハスター「肉体側の時間を進めてください。ただし魂を追い越さないように。」

PL1「壊すより難しい。」

PL2「開けると思って。」

PL1「身体を?」

PL2「止まっている時間を。」

PL1「その言い方は危ない。」

KP「PL1が肉体側の調整部を一段だけ動かす。心臓の表示が一度収縮し、止まる。」

PL1「一回。」

PL2「魂側と一致した。」

ハスター「補助剤を。」

PL1「今。」

KP「PL1が注射器を取り、ネモ船長の胸元へ残された穿刺痕の近くへ針を入れる。透明な液体が肉体へ入る。血管を流れる速度は遅く、皮膚の下へ細い線を作る。」

KP「魂側の光が急に弱くなる。」

PL2「離れた。」

PL1「注射が早かった?」

ハスター「違います。肉体が本人を探しています。」

PL2「ネモ船長。名前を言って。」

ネモ船長「ネモ。」

PL2「足りない。」

PL1「仲間を帰した。」

PL2「一人で進んだ。」

PL1「肉体をノーチラス号へ戻した。」

PL2「次に来る者へ、一人で進むなと書いた。」

ネモ船長「書いた。」

PL1「私たちは二人で来た。」

PL2「あなたを戻して、三人で進む。」

ネモ船長「三人で。」

KP「弱くなった光が再び輪郭を作る。今度は修復台の上の肉体と同じ姿勢を取る。」

KP「SANチェック。成功で1D3、失敗で1D8減少。」

KP「魂の輪郭が肉体へ重なる。肩、胸、頭部、両腕の順に重なり、脚へ届く直前で止まる。」

PL1「脚だけ合っていない。」

PL2「ネモ船長が歩いた時間が残っている。」

ハスター「深部で進み続けた時間が、肉体より先へ出ています。」

PL1「どう戻す?」

PL2「戻さない。遅延で近づける。」

PL1「肉体を進める?」

PL2「脚の時間だけ。」

ハスター「可能ですが、失敗すれば肉体の一部だけが老います。」

PL1「別の方法。」

PL2「魂側へ、今は歩かなくていいと伝える。」

PL1「そんなことで止まる?」

ハスター「魂は時間だけではなく、本人の行動によって進みます。」

PL2「ネモ船長。止まってください。」

ネモ船長「止まれば、一人になる。」

PL1「もう二人いる。」

PL2「私たちが追いついた。」

PL1「だから今だけ止まれ。」

KP「魂の脚部が動きを止める。」

KP「肉体側の光が一度、二度、三度と点く。」

KP「重ならなかった脚部の輪郭が、少しずつ肉体へ戻る。」

PL2「今。」

PL1「合わせる。」

KP「二人が同時に調整部を動かす。」

KP「肉体と魂の光が完全に同じ間隔で点く。」

KP「ネモ船長の心臓が一度収縮する。」

KP「二度目が来る。」

KP「三度目から一定の間隔へ変わる。」

PL1「脈が戻った。」

PL2「呼吸は?」

KP「胸部が持ち上がる。空気が肺へ入り、今度は吐き出される。喉の奥で乾いた音が鳴り、唇が僅かに開く。」

PL2「ネモ船長。聞こえますか。」

ネモ船長「……聞こえている。」

PL1「目を開けられる?」

KP「瞼が震える。すぐには開かない。指が動き、修復台の表面を掴む。」

ハスター「接続は成立しました。まだ身体を起こさないでください。」

PL1「本人確認。」

PL2「仲間を地上へ帰したことを覚えていますか。」

ネモ船長「覚えている。」

PL1「一人で進んだことは?」

ネモ船長「覚えている。」

PL2「私たちを?」

ネモ船長「死骸を釣った二人。」

PL1「本人だ。」

PL2「確認基準がそこ?」

PL1「記録にない会話だ。」

ネモ船長「鉤も拾ったか。」

PL2「拾いました。」

ネモ船長「私のだ。」

PL1「本人確定。」

KP「壁面へ『魂・肉体接続完了』『記憶連続確認』『時間差安定』と表示される。」

KP「ネモ船長の皮膚へ血色が僅かに戻る。長く停止していた筋肉は動かないが、肉体が再び生きる側へ戻ったことだけは分かる。」

KP「第三部前半の問題は収束する。」

KP「ノーチラス号へ残された肉体と、深部へ進んだ魂は、PL1とPL2の手によって再び一人のネモ船長へ戻った。」

シーン19。時間はネモ船長の再接続直後、場所は海底都市中枢再接続区画、天候は確認不能、人数はPL1、PL2、ネモ船長、ハスターで固定する。

KP「修復台の表示が再接続から帰還適応へ切り替わる。ネモ船長の筋肉、臓器、神経、寿命へ影響する時間差が順に示され、地上へ戻る場合に必要な軽度修復が算出される。」

ハスター「ここから先は選択です。」

PL1「地上へ帰るか、深部へ行くか。」

ハスター「どちらを選んでも、ネモの肉体は修復します。再接続直後のままでは、歩くことも長く話すことも難しい。」

PL2「地上へ戻らなくても修復する?」

ハスター「研究へ参加する者を壊れた身体のまま使う理由がありません。」

PL1「合理的。」

ハスター「契約内容を確認します。」

KP「中枢区画の床へ三つの円が現れる。一つは地上を示す光景、一つは海底都市と深部を示す光景、一つは両者の間を繋ぐ細い線を示している。」

ハスター「第一に、地上で海底都市、魂の保管、死の真相を公表しないこと。」

PL2「パニック、自殺、宗教化、政治利用を防ぐため。」

ハスター「ええ。研究成果を地上で利用する場合も、真相をそのまま公開してはいけません。」

PL1「嘘を広めろということではない?」

ハスター「沈黙してください。必要のない偽情報は、後で別の混乱を生みます。」

PL2「第二は?」

ハスター「私があなた方を地上へ無事に帰還させること。」

PL1「時間差の調整も含む。」

ハスター「体調、肉体、寿命へ問題が残らない範囲で修復します。ただし元から存在した傷病や寿命まで、全て作り替える契約ではありません。」

PL2「ここで受けた損傷と、時間差による影響を処理する。」

ハスター「その理解で構いません。」

PL1「第三。」

ハスター「魂だけで生き延び、地上でも活動できる手段を共に研究するなら、地上で続けても構いません。定期的に成果を報告してください。」

PL2「海底へ残る義務はない。」

ハスター「ありません。」

PL1「信仰も?」

ハスター「求めません。」

PL1「人類を賞賛しているから?」

ハスター「自分抜きでクトゥルフを追い込んだ文明へ、私への服従を条件に協力を求めるほど愚かではありません。」

ネモ船長「以前も同じ条件を出したのか。」

ハスター「あなたには出していません。」

ネモ船長「なぜ。」

ハスター「あなたは仲間を帰した直後、一人で進みました。契約を説明する前に深部へ入った。」

PL1「急ぎ過ぎ。」

ネモ船長「否定はしない。」

PL2「今回は三人で聞いている。」

ハスター「ええ。」

KP「三つの円が、PL1、PL2、ネモ船長の勲章へ反応する。ネモ船長の胸元にも、薄い円形の印が浮かぶ。」

PL1「ネモ船長も持っていた。」

ハスター「一人で進む意思を示した時に刻まれました。」

PL2「研究所のパスキー。」

ハスター「同時に、警告を理解した記録です。」

PL1「契約を破った場合は?」

ハスター「地上帰還の認証を停止します。既に帰還した後で破った場合は、再度交渉します。」

PL2「強制的に魂を奪う?」

ハスター「必要なら地上から遠ざけますが、処分を目的にはしません。」

PL1「悪意がない。」

ハスター「悪意では結果に届きません。」

PL2「契約する。」

PL1「私も。」

ネモ船長「私もだ。」

KP「三人の勲章へ新しい線が一本加わる。線は円の内側から外へ伸び、地上と深部の両方へ接続する。」

KP「契約成立。」

KP「修復台がネモ船長の身体へ処置を始める。強い光も痛みもない。筋肉の停止が解け、関節が動き、呼吸が安定する。死後数年と深部の時間差は、肉体へ一度に押し込まれず、地上へ戻っても寿命を損なわない範囲へ調整される。」

PL2「私たちの損傷も?」

ハスター「帰還を選ぶなら、ここで処置できます。」

PL1「深部へ行く場合は?」

ハスター「進行に支障がある部分だけ修復します。」

PL2「膝。」

PL1「私が壊した引き出し。」

PL2「引き出しが勝手に抜けた。」

PL1「私が開けた。」

ハスター「どちらでも構いません。」

KP「PL2の膝の痛みが薄れ、PL1の腕へ残っていた傷も閉じる。全てが消えるのではなく、今後の行動へ支障が出ない状態へ戻る。」

ネモ船長「二人は地上へ帰るのか。」

PL1「あなたは?」

ネモ船長「私は先へ進む。」

PL2「また一人で?」

ネモ船長「今度は、そうならないらしい。」

PL1「最初からそのつもり。」

PL2「地上へ帰還する選択肢はある。」

PL1「契約もした。研究は地上でも続けられる。」

ネモ船長「なら帰るべきだ。」

PL1「あなたが以前、仲間へ言った言葉?」

ネモ船長「そうだ。」

PL2「彼らは帰還を望んでいた。」

PL1「私たちはあなたを迎えに来た。」

PL2「戻すだけなら終わった。でも、一人で進むなという記録まで読んだ。」

PL1「だから三人で行く。」

ネモ船長「深部では、今まで以上に死が曖昧になる。」

PL2「知っている。」

ネモ船長「肉体を失う可能性もある。」

PL1「ハスターと研究する。」

ネモ船長「地上へ戻れなくなる可能性も。」

PL2「地上へ戻る道があることを理解した上で選ぶ。」

PL1「勲章の条件と同じ。」

KP「ネモ船長は修復台の上で目を閉じる。呼吸は安定している。迷っているのではなく、二人の言葉を自分の時間へ追いつかせるように、短い沈黙を置く。」

ネモ船長「なら、今度は一緒に行こう。」

シーン20。時間はネモ船長の修復完了後、場所は海底都市中枢から深部入口、天候は確認不能、人数はPL1、PL2、ネモ船長、ハスターで固定する。

KP「修復台の固定具が外れる。ネモ船長はゆっくりと上体を起こす。数年動かなかった肉体とは思えないほど自然ではない。腕を支えに使い、呼吸を整え、PL1とPL2の手を借りて床へ足を下ろす。」

PL1「立てる?」

ネモ船長「試す。」

PL2「急に体重を掛けないで。」

ネモ船長「医師のようだな。」

PL2「死体を多く見た。」

PL1「船医より多いかもしれない。」

ネモ船長「それは誇ることではない。」

KP「ネモ船長が立つ。最初の一歩では膝が僅かに揺れる。PL1が片側を支え、PL2がもう片側の脈と呼吸を確認する。」

ネモ船長「一人で歩ける。」

PL1「一人で歩くなという話をした直後だ。」

PL2「三人で進む。」

ネモ船長「歩行の意味ではない。」

PL1「今は同じにする。」

KP「ハスターが深部へ続く光へ手を向ける。」

ハスター「ここから先は、私も全てを知っているわけではありません。」

PL2「計画を作った本人でも?」

ハスター「遅延と保管の仕組みは作りました。ですが、魂が長い時間の中で何を失い、何を新しく得るかは、観測し続けなければ分かりません。」

PL1「研究者たちは奥にいる。」

ハスター「います。」

ネモ船長「私も途中まで会った。」

PL2「どこまで進んだ?」

ネモ船長「それを説明すれば、君たちが自分で見る意味を奪う。」

PL1「説明不足はハスターだけで足りている。」

ハスター「私は忠告しました。」

PL2「軽く。」

ハスター「重く言えば、恐怖で選ばせることになります。」

PL1「今度は何を忠告する?」

ハスター「地上へ戻れる道は、今ここにあります。」

KP「中枢の一方に、ノーチラス号と地上へ繋がる帰還路が開く。明るい通路の先に、海面のような光が見える。」

KP「反対側には、光の少ない深部への通路が開く。床は途中から消え、暗闇の中へ複数の円形の足場だけが続いている。」

ハスター「帰還を選べば、契約に従って地上へ送ります。」

ハスター「進行を選べば、帰還の保証は一度保留されます。戻る方法を見つければ、その時に再び契約を履行します。」

PL2「戻る道が消えるわけではない。」

ハスター「あなた方が戻れる状態である限りは。」

PL1「ネモ船長は以前、仲間をどちらへ送った?」

ネモ船長「地上へ。」

PL1「自分は?」

ネモ船長「深部へ。」

PL2「今回は?」

ネモ船長「三人で深部へ。」

KP「PL1が帰還路を見る。地上へ戻れば、肉体は安全に修復され、研究も続けられる。海底都市の真相を明かさず、定期的に成果を送ればよい。」

KP「PL2も同じ道を見る。そこには危険を避けた者への侮辱も、研究を放棄した者への非難もない。」

KP「深部を選ぶ理由は、地上帰還が不可能だからではない。」

KP「帰還できると知り、契約も保証も得た上で、それでもネモ船長を一人にしないために選ぶ。」

PL1「行く。」

PL2「行く。」

ネモ船長「先頭は私が。」

PL1「却下。」

ネモ船長「道を知っている。」

PL2「一人で先へ行く癖がある。」

ネモ船長「船長だ。」

PL1「今は三人。」

PL2「PL1が前で障害を開ける。私が経路を確認する。ネモ船長は間。」

ネモ船長「護送されるのか。」

PL1「蘇生直後だから。」

PL2「また身体だけ戻されても困る。」

ネモ船長「反論しづらい。」

KP「PL1が深部入口へ立つ。手首の勲章が光り、最初の円形足場が現れる。」

KP「PL2が次の足場と周囲の暗闇を確認する。そこには深海生物の死骸も、人間の死体も見えない。ただ、遠くで複数の魂の光がゆっくりと動いている。」

KP「ネモ船長が二人の間へ立つ。」

ハスター「最後に確認します。」

ハスター「この先へ行けば、あなた方は死ぬとは限りません。」

ハスター「ですが、死を以前と同じ意味では使えなくなるでしょう。」

PL1「既に死体を足場へした。」

PL2「ネモ船長を死者と呼ぶべきかも迷った。」

ネモ船長「私自身も分からない。」

ハスター「それでも進みますか。」

PL1「進む。」

PL2「三人で。」

ネモ船長「今度は一緒に。」

KP「三人の勲章が同時に光る。」

KP「第一の足場が固定される。」

KP「PL1が先に乗り、破壊も鍵開けも必要ないことを確認する。」

KP「PL2が足場の位置と次の光を記録する。」

KP「ネモ船長が二人の間へ足を置く。」

KP「誰も一人で先へ行かない。」

KP「背後には、地上へ帰るための道が開いたまま残っている。」

KP「前方には、死と時間の境界がさらに曖昧になる深海が続いている。」

KP「かつてネモ船長は仲間を地上へ帰し、自分だけで進んだ。」

KP「今度は、PL1とPL2が彼を肉体へ戻し、三人で同じ境界を越える。」

KP「勲章は、死者へ贈られる弔章ではない。」

KP「死の真相へ進むと知り、それでも誰かと共に先へ行く者を称え、その道を開く鍵である。」

KP「三人は次の足場へ進む。」

KP「帰還路の光が背後で小さくなり、深部の光が一つずつ近づいてくる。」

KP「誰の姿も消えない。」

KP「誰の手も離れない。」

KP「しかし、今度こそ一人ではない、その幸せを僅かに噛み締めた。」

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