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第18話 媚薬の行方

(それにしても、本当に可愛いな)


 目の前に座って、美味しそうにパンケーキを頬張っている陽花里をみながら、私はそう思った。頬っぺたを大きく膨らませて頬張っている陽花里は一生懸命で、まるで木の実を食べているリスみたいにみえる。


(ほっぺた、触ったらどうなるんだろう)


 つん。

 思ったと同時に、身体が動いていた。

 指を伸ばして、陽花里のほっぺたをつつく。柔らかい。もちもちしている。触るたびに、「???」と驚いた瞳で私を見つめ返してくる陽花里がやっぱり可愛い。

 お昼。

 食堂にはたくさんの学生がいる。

 私と陽花里は同じ丸テーブルに座り、向かい合ってお昼ご飯を食べていた。


(いつ見ても、髪の毛ふわふわだな…)


 陽花里のほっぺたをつつきながら、そう思う。可愛いフランス人形が生きて座っているような気がする。今日の服装もそんな感じ。大学生にしては幼すぎる格好かもしれないけど、陽花里にはよく似合っている。


「凛ちゃん、どうしたの?」


 やっとパンケーキを飲み込んだ陽花里が、ほっぺたをつつかれながら私に問いかけてくる。どうしたの、と聞かれても、ただ可愛いからなんとなくつつきたくなってしまっただけで、他に特に大きい理由があるわけでもない。

 どう返事を返そうかな、と少し悩んだ後、


「陽花里は可愛いね」

「えっ」


 想ったことを、そのまま伝えることにした。

 そもそも、私に駆け引きとかうまい言い回しとか嘘とかできるわけがないのだった。綺麗にいえば素直だし、悪く言えば単純だった。


「…凛ちゃんの方が可愛いもん」

「それはないない」


 真っ赤な顔をしてうつむいている陽花里に、これまた素直な感想を返す。

 陽花里は可愛い。

 今も、ちらちらと陽花里を見ている男たちがいるのが分かる。声をかけたがっているんだろうな、と思いつつ、誰にも渡さないぞ、と変な独占欲が湧き上がってきてしまう。

 私は…別に可愛くない。

 顔立ちは、よくいって普通だと思う。元のパーツ自体は悪くない…というか、私と同じ顔である葵が綺麗だから、たぶん整ってはいるのかな。

 でも、私自身に、綺麗になろうという意識が乏しいものだから、素材を磨くという努力をしてきていないのだ。


「…こんなに可愛いのに、どうして私のことなんか好きなのかなぁ」


 直接聞いてみる。

 ちなみに、私はもう先に食べ終わっていた。お昼はパスタ。シーフード。美味しかった。


「好き」


 陽花里が、まっすぐ言ってくる。

 さっきまであんなにおどおどしていたのに、今はぶれていない。


「凛ちゃん、好き。大好き」

「…ありがと」


 照れる。

 目を合わすのが恥ずかしくなって、逸らす。

 よく考えたら、「どうして?」の部分の理由はきけなかったのだけど、そんなこと全部飲み込んで、ただ、好きという感情を届けてくれる陽花里の存在に私はけっこう救われている。


(…本当は、私、汚いのに、な)


 昨夜…じゃない、今朝まで、私は、薬をつかって自分で自分を慰めていた。

 今、好きといってくれた私は、一晩中、指をつかって乱れていたんだよ、そんな私のこと、本当にこんな純粋な子が好きでいてくれていいの、と自問自答する。


「陽花里」


 名前を呼んで、テーブルの上に手を伸ばす。

 陽花里の手を握る。指で陽花里の手のひらを触る。

 昨夜、あんなにぬるぬると濡れていた私の指は、今は乾いていて、たぶん匂いも残っていない。

 私が指を動かすたび、陽花里がぴくって反応してくれるのが、楽しい。


「凛ちゃん」


 名前を呼ばれる。食堂にはたくさん人がいて、陽花里は可愛いからちらちら見られているのに、見られちゃいけない顔をしている。そうさせているのは、私だ。

 背徳的な喜びが背中をかけあがり、そしてすぐ、冷静になる。


「ごめんね」


 そう言って、手を離し、手を戻す。

 陽花里は離された手をしばらく眺めて、そして、私の指が先ほどまで触っていた手のひらを自分の口元に持っていくと、ぺろ、と舐めた。

 陽花里の舌先はピンク色をしていて、その色が鮮やかに私の中に突き刺さる。

 陽花里の身体の中の色。

 なぜか、胸が高鳴る私は、たぶんもうどこか壊れてしまっているのかもしれない。


「凛ちゃんがしたいなら…」


 いつでも、何をしてもいいよ、と、陽花里はつぶやいた。私だけに聞こえるような小さな声で。

 どうして、そんなこと言うかな。

 可愛いフランス人形みたいな、成績優秀な大学生の陽花里は、時々、女になる。

 そんな陽花里を知っているのは…私だけ。


(もっと…みたい、な)


 何を見たいのかな、私。

 昨夜の自分の痴態を思い返してしまう。あんな私の姿、もしも陽花里に見られたら、どう思われるのだろう。さすがに引かれるかな…ううん。たぶん。陽花里は、受け入れてくれる…だろう。

 そんな確信があった。


(媚薬)


 私を狂わせたカプセル。どんなに強い意志を持っていても、それを簡単に強制的に覆してしまう、悪魔からもらった、あれ。

 今、私の鞄の中に、捨てられずに入っている。


 もしも、と思い、その浮かんだ考えを振り払い、私は、目の前に座っている、可愛くて私のことを好き、と言ってくれる私の光をみながら、ほほ笑んだ。


 陽花里も、にっこりと微笑み返してくれる。

 食堂の喧騒の中、ただ、静かな時間だけが私たちの間に流れていた。



■■■■■



 夜。

 陽花里と一緒に、手を組んで、私は都内のカラオケチェーン店に入っていた。


「もう、先に連れが入っていますので」


 受付でそう伝えて、エレベーターへと向かう。

 扉が開き、中に入っていた人がでてきて、入れ替わりに私と陽花里の2人だけで入る。手は握ったまま。陽花里はいつも通り、にこにこしている。可愛い。


 私の左手は光の右手と繋がっているので、あいている右手で6Fのボタンを押す。紫苑さんと色葉さんは、先に来ているはずだ。身体がふわっと浮き上がる感触があった。

 陽花里がくっついてくる。陽花里の匂いが私にうつる。いい匂い。好き。


「今日はカラオケなんだね」

「紫苑さんの提案だって」


 あの人は自由だから、自分のやりたいことをそのままやっているのだろう。今日はたぶん、カラオケに行きたかったから、私たちを誘ったのだ。

 色葉さんは、紫苑さんのいう事を基本的に断らないから、一緒にいるんだろうな。


 エレベーターの扉が開き、外に出る。

 ちょうどそこに、手にフリードリンクのコップを持った色葉さんが立っていた。偶然。


「凛、陽花里、こんばんは」

「色葉さん、こんばんは」

「こんばんは」

「…相変わらず、仲がいいことで」


 色葉さんが笑う。その笑いに何も含むものはない。背の高い色葉さん。今日はいつもより大人びた格好をしていた。そういえば、色葉さんは学生じゃないはずだけど、働いているとも聞いていない。いったい何してるんだろう?知り合って一緒に行動するようになってもうけっこう立つけど、よく考えたらこの人のこと、あんまり知らないような気がする。


「部屋番号は…知っているよね?」

「はい、メッセージでもらいましたから」

「じゃぁ、好きなドリンクもって入ってきて。私と紫苑はもう先に部屋に入っているから」


 紫苑、連続でもう10曲も入れているんだよ?みんなでカラオケ、といいながら、たぶん今日は紫苑の歌を聴くだけになると思うよ?と、色葉さんは嬉しそうに笑いながら歩いていった。


「…ということだよ」

「凛ちゃん、一緒に選ぼう♪」


 私は陽花里と一緒にドリンクバーのある場所にいくと、手をつないだまま、それぞれコップを手にする。手を離した方が楽なんだけど、なぜかそうする気にならなかった。


「私は…オレンジジュース。凛ちゃんは?」

「コーラ、かな」


 ドリンクバーにお酒はない。

 もしもお酒が入ったら…陽花里、たぶん、私をまた舐めてくるだろうな、と思うと、首筋が少し寂しかった。舐めて欲しいと思っているのかな、私。って、何も知らないふうに装うのはやめよう。うん。私、陽花里に舐めてもらうの…好き。


 右手に、ドリンク。

 左手は陽花里と繋がって、陽花里の左手も、ドリンク。

 そんなわけで、部屋の扉の前で、止まる。

 さぁ、どうやって扉を開けようか。馬鹿か私は。


「えへへ」


 嬉しそうな陽花里。手をつないだままなのが、そんなに嬉しいのかな。こんな私の手を。

 そんなわけで、ドリンクを手にしたまま、その手をつかって扉を中に押し込んで、入る。


「きたきた、やっほー」


 マイクを手にしたままの紫苑さんが、私たちを見て嬉しそうに手をあげる。

 その横に座っている色葉さん。

 黙って、手に持っていたタンバリンをふってくる。紫苑さんが歌っている横で、たぶんずっとタンバリン振っていたんだろうな、と察せられた。


「今日は有難うございます…」


 誘っていただいて、と言いながら部屋の中に入り、陽花里とならんで座る。

 陽花里は当然のように私にひっついていて、私も当然のようにそれを受け入れていた。


 部屋はたぶん6人部屋。そこに4人だから、少しだけ余裕がある。

 色葉さんが、そっと私の前にタンバリンを差し出してきた。


(これを使え、ってことなんだろうな)


 私は、笑う。

 はいはい、付き合いますよ…


「じゃぁ、続き、いくよー」


 みんなでカラオケにきて、そしてみんなで…紫苑さんの歌声を堪能していったのだった。



■■■■■



 ドリンクバーを頼んでいたのに、なぜか、いつの間にか、テーブルの上にはお酒がたくさん並んでいた。


「えへへー」


 顔を真っ赤にしながら、手にジントニックの入ったグラスを大事そうに抱えて、陽花里が私の隣で、いつも通り…私をぺろぺろ舐めてきていた。


(…くすぐったい)


 想いながら、抵抗はしない。むしろ、陽花里の舌先が気持ちいい。

 私もお酒が入っているから、私の汗にもアルコールが含まれているかも、なんて思った。そんな私の汗も…陽花里、舐めとってくれるかもしれない。


(こんなに可愛いのにな)


 陽花里をぎゅっと抱き寄せてみる。陽花里はなんの抵抗もなく私に身体をよせて、そして近づいたまま、今度は私のほっぺたを舐めてくる。


(本当、子犬みたい)


 好き好き好き、とまとわりついてくる子犬を想像してしまう。陽花里に尻尾が生えていたら、たぶんぶんぶんと振り回している妥当な、と思う。

 よく考えたら、お酒を飲んでいつも舐めてくるなんて、女同士でそれは…ありえないんじゃないかな、とも思う。普通、じゃないよね。でも、こんな状況を受けて入れている私がいて、受け入れるというか、むしろ楽しんでいる私もいた。


(好き、って思われるのが、確認できるのが、嬉しいんだろうな)


 舐められながら、そう思った。

 コーラハイボールを呑みながら、紫苑さんを見る。

 入店して、もう2時間。

 その2時間を、文字通り紫苑さんはずっとマイクを独占していた。よく喉がつぶれないな、と思う。すごいけど…すごいけど、この人、やっぱりどこかおかしいな、と感じざるを得ない。

 普通、何回かマイク渡すよね…


 ずっと嬉しそうにタンバリン振っている色葉さんも、大概壊れているとは思うけど。


 さて。

 曲が終わり、次の曲が始まるまでの少しの時間を見計らって、私は紫苑さんに声をかけた。


「紫苑さん」

「なに、凛。私の歌声に惚れた?」

「歌声には、惚れていません」


 ちゃんと言葉を返す。間違ってはいない。歌声には、惚れていないのだから。


(汗、かいてるな)


 紫苑さんをみながら、そう思った。綺麗な汗。歌と一緒に流れている汗。

 次の曲の間奏が始まる。

 私も知っている曲。

 一緒に歌おうかな、と、ふと思った。マイクを見る。見て、視線を逸らす。


「昨日、詩織さんに会いに行ったんです」

「いいなー」


 詩織、という名前だけで分かるんだ。

 水無月さん、と言わなくても分かるんだ。

 なんか、すこし胸がざわついた。


「私のこと、何か言ってた?」

「化け物、って言ってましたよ」

「さすが」


 何がさすがなんだか。

 どうして嬉しそうなんだか。

 この人は…才能の塊なのに、まだ欲しがっているのだろうか。欲しがっているんだろうな。自分を高めるためとか、高尚な理由があるわけでもなく、ただ単純に、欲しい、と思ったものをそのまま欲しているんだろうな。


(私のことも)


 その一部、なんだろうな。

 なんかむかつく。


「それで」


 息をひとつ。呼吸をひとさじ。

 いろいろ考えたけど、やっぱり、私は交渉とか嘘とか謀とか、そんなの向いていないんだろうな。単純だな。


 私は鞄を取り出すと、手で中をさぐって、目的のものを取り出す。


 ことん。


 テーブルの上に、カプセルを置く。


「…凛、これは?」

「媚薬です」


 素直に、そのまま、言葉を返す。

 首筋が暖かい。陽花里がずっとくっついている。


 色葉さんが私を見ている。不思議そうな瞳。変な顔。面白い。


「へぇ…」


 紫苑さん。

 間奏が終わり、曲が始まったのに、マイクに口を寄せない。歌わない。私も知っている曲がバックに流れる。まるでなにかのBGM。


「使ったの?」

「…使いました」

「どうだった?」

「私、意志は強いほうだと思っていたんですけど…」


 紫苑さんの問いに、私は答える。


「駄目でした」

「そうなんだ」

「意志の力をねじ伏せてくる薬なんて、本当にあるんですね」


 だから、ドラッグとか麻薬とか、ああいうものがすたれることはないんだろうな、と思った。人間の意志って、脳みそが頑張って作り上げている化学反応のひとつにすぎないんだろうから、それを強制的に刺激する薬をつかえば、あらがうことなんて出来ないんだろうな。


「…気持ちよかった?」

「それ、答える必要あります?」

「必要はないけど、凛の顔見ていればだいたい分かるけど、でも、それはそれとして、凛の口から聞きたいな」

「…やっぱり、紫苑さんっていかれていますよね」

「それが私の魅力の一部なんだよ」


 そう言って笑う。やっぱりむかつく。


「気持ちよかったです。狂いそうになりました」

「凛のその姿、見て見たかったなぁ」

「あんなの見られたら、私自殺しますよ」

「おお、怖い怖い」


 笑う紫苑さん。むかつく。

 私の首筋はずっと暖かいのだけど、それは陽花里がずっと私を舐めていたからで、そんな陽花里が、なぜか不安そうに私を見つめあげていた。目が震えている。いや、凛ちゃんが死んじゃ、いや、と訴えている。


(馬鹿だな)


 誰が、どっちが、かは分からないけど、馬鹿だなぁ。

 私は、指先を陽花里の口元にもっていった。なんとなく。昨日私の身体の中に入っていた指を、陽花里は鼻先ですんと匂いを嗅いだあと、そのまま、いつも私の首先を舐める時と同じように、舌を出してぺろぺろと舐めてきてくれた。


「それで、凛はこの媚薬をどうしたい、って思っているの?」

「…よく分かりません」


 本音を漏らす。


「自分で使ってみて分かりました。強制的に引き出されるのって、気持ち悪いけど、気持ちいいです。ずるって…背骨から私が引き抜かれたみたいで。こんな経験…はじめてで、そして」


 怖いな、って思いました。

 墜ちていくのって、怖いです。


「紫苑さんが使ったらどうなるのか、興味が無いと言ったら、嘘になります」


 想ったことを、たんたんと。


「昨夜の私みたいになるのかな、狂うのかな、でも、紫苑さん…」


 もとから、狂っているじゃないですか?

 言ってやった。

 言われた紫苑さんは、嬉しそうだった。背後に流れるBGMは大きくなっていて、音が紅く彼女を包み込んでいて、妖艶な雰囲気がこぼれてやまない。


「媚薬、気持ちいいです。本当に、気持ちよかったです。溺れてしまいそうになりました。もう一度、飲みたいって、思っちゃいました」


 だから。

 私は、いりません。


「狂った紫苑さんが、もっと狂ったところが見たいです」


 だから、あげようかと思いました。


「でも、紫苑さんなら…」

「私のこと、よく分かってくれてるじゃない」


 紫苑さんは、カプセルを手にとって、それを眺めて、ちょっとだけ舐めて、そして。


「ぞくぞくする」


 そのまま、テーブルの上においてあったグラスの中に、カプセルを投げ入れた。

 しゅわぁ、という音がして、カプセルが溶けていく。


(昨夜、私の胃の中で)


 こんな風に、溶けていたのかな、と思った。

 私も、ぞくぞくした。

 私もたぶん、けっこう、狂ってきているんだろうな。


「私にとっての、一番の媚薬は…凛だよ」


 そう言って、紫苑さんは媚薬の溶けたグラスを手に取ると、そのままグラスを横に知る。

 零れていく。

 液体が、媚薬の混じったお酒が、床に広がっていく。


「…お店の人に怒られますよ」

「その前にちゃんと綺麗にしておこうね」


 私たち4人の責任なんだから、と、紫苑さんは笑った。

 いつの間にか共犯者に巻き込まれていた。


「普通に捨てればよかったじゃないですか」

「だって、この方が、かっこいいでしょう?」


 紫苑さんは笑った。

 笑って、笑って、笑い終わった後に。


「凛、好きだよ」


 と言ってきた。


「紫苑さん、他人の事好きにならない、って言ってませんでした?」

「うん、好きにならない、だからこの感情が何なのか、本当は分からない」


 でも、ぞくぞくするんだ。

 私をこんなにぞくぞくさせてくれるのは…凛だけなんだ。


 紫苑さんは笑って、隣の色葉さんが、私を睨みつけてくる。何とも言えない感情がそこに押し込められていた。


 私は大きくため息をついて、そして、答える。


「紫苑さん、他人のこと、好きになっちゃいました?」

「この感情がそうなら、たぶん、そうなんだろうね」

「なら…」


 初恋、かもしれませんね。

 私は笑って、そして、


「初恋って、実らないんですよ…大抵は」


 そう答え、紫苑さんを見つめたまま、私の隣の、暖かい子犬を抱き寄せる。


「私、陽花里とつきあってみることにします」


 紫苑さんは初恋を経験して、すぐに失恋を経験して。

 陽花里は、私のことが初恋だっていっていたかな。


 お酒に酔ったままの陽花里は、まだ自体がよく呑み込めていないみたいだったけど。


「ふにゃ?」


 と可愛い声をあげて、そのまま、私の指を愛おしそうに握りしめていた。



 最後に。


「あはははははっ、紫苑、残念!」


 色葉さんが大笑いをして、この日のカラオケは終わったのだった。

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