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【第二十六話】未来への希望と、忘却の彼方

【ルカside】



レイ・フォルテを新たな『レイ』として転生させる…か。



ヤマには表面上そのように伝えたが

実際は何かしらの強力な魂をレイの魂と繋ぎ合わせ、ひとつの新たな魂に生まれ変わらせる禁忌の術だ。


今レイの魂はすでに力を使い果たした、いわば抜け殻のようなもの。

再び力を取り戻させるにはそれ相応の代償が伴う。


しかし熾天使セラフィムである私の強力な魂を使えば、レイの魂に直接繋げることができ


同時に、その魂を持った『レイ』がシンの近くにいればシンの魂と共鳴し、存在や記憶が消えていても過去の感覚だけを残せる。



シンは記憶の残像から完全に開放され、大切な人間とともに新たな未来を歩む。


…悔いがないかと言われれば、決してないとは言いきれない。



もし私の存在が消えないのなら

その未来を、人間界で見守っていたかった。



レイ・フォルテの魂に力が宿っていくにつれて、私の意識はどんどん遠のいていく。



…そうだ。最後にせめて、シンに別れを告げないとな。


レイが生まれ変わってから少しの間だけなら、私の残り僅かな魂の力を使い

『王宮の外に現れ、別れを告げるルカ』という偽の記憶を作り出すことができるはずだ。



…無性に、眠たい。


『レイ』の魂が完成したのか。

ヤマに見つかる前に終わったことだけは救いだったな。


私は人間界に魂を落とした後、一面に結界が張り巡らされている天空の床に倒れ込んだ。




「…ヤマ、すまない。」




それが私の、最後に口に出した言葉だった。


ここまでくると、神の掟は破ってはいけないという概念などどうでもよくなってくる。






もう何に囚われることもない。


私は私の意思で、シンの未来のために神の掟を破るんだ。




【シンside】




レイに出会うまでは、できることなら毎日ずっと寝て、何も考えたくないと思っていた。


ずっと、心に大きな穴が開いた感覚だけが無ならなかった。



ホワイトローズ郷が滅びた日、俺は全身傷だらけで酷い火傷も負い、息が絶えかけていた。


後に誰かに助けられたことだけは覚えていて、気が付いたころには今の親父の家にいた。



親父から学問や剣の正しい使い方、礼儀や作法、道徳を学んだ。


なんで俺がアステルタの国王に選ばれたかは分からない。


だが国王に選ばれたからにはそれにふさわしい存在になるしかないと思い、学び成長することだけに集中し、他のことは何も考えないようにしてきた。



国王になってからも退屈な日々は続いた。



皆のために政治を行い、アステルタを守り、導く存在として日々励んでいても

この人生は俺にとって本当に価値があるのか、と。


もし俺があのとき国王になるのを拒否していたら、案外楽に過ごせていたかもしれないと。



でもレイと出会い、考え方が大きく変わった。


俺が国王になってなければ、きっと巡り会うことはできなかったかもしれないと思えた。



ずっとレイの傍にいたい。

なぜか放っておけない、感情が抑えきれない。


レイのことを考えると、いろいろな気持ちが交差して落ち着かない。


今の俺はきっと幸せなんだと思う。



でも同時に心の中で何かが引っかかっていて、苦しい。

レイと入れ違うかのように、なにか大切なことを忘れてしまったような気がする。






「…あっ、目が覚めたんだね。」


目を開いて最初に見えたのは天井ではなく、俺の顔を覗き込むように見ているレイだった。



「すまん、そのまま寝てしまった。」


「ううん。きっと疲れてるんだと思うから、寧ろシンがゆっくり休んでくれててひと安心した。」



国王である以上、大きな休みは取れない。

でもたまにはこうして休むのも必要なのかもしれない。



「…なあ、レイ。」


「なに?」



「俺さ。レイと出会ってから、色のない世界が鮮やかに彩られていくような、そういう感覚がしてて。

例えが下手くそで申し訳ないが…その、すごく感謝してる。」



「…え?嬉しいけど、どうしたの急に…」


「信じられないなら、別に信じなくてもいい。

ただ本当になんとなく、これが運命なのかもしれないと思った。」



無意識に目から涙がこぼれ落ちてくる。


手を伸ばして、レイの頬にそっと手を添えてみる。


普通なら嫌がるはずなのに、レイは全く嫌がる素振りを見せない。



「...ごめん。落ち着くまで、しばらくこうしててもいいか?」


「...うん。シンの手だから、嫌じゃないよ。」






なにか大切なことを忘れた気がして、苦しい。


でもレイに触れると、ほんの少しだけ


その苦しみから、開放されたような気がするんだ。

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