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【第二十一話】閻魔への交渉

【ルカside】




シンが私に泣きながら縋ってきたのはいつぶりだろう。



まだ拾ってから間もないころ


『なんでレイがいないの…?ひとりは、嫌だ…』


と泣きついてきたとき以来か。


今思えば、アレが作り出し幻覚がシンの記憶を書き換えていなかったら

シンはずっと自らを孤独と感じながら、日常を過ごすことになっていたのかもしれない。



だが、私はそれを心のどこかでずっと「気に食わない」と思っていた。



1年ごとに、昨日まで私を兄のように慕ってくれていたシンは

レイの作り出す『記憶』という名の幻覚により、ホワイトローズ郷が滅びた後の記憶は全てリセットされ


次の日になると、私の名前も、私たちと過ごした日々の記憶も

義父であるアルバートの名前すらも覚えていない。


そんなことが20年以上も続いていた。


アルバートの家に全身火傷を負ったシンを連れてきたとき



『俺とルカでこの子を育てるにあたって、約束してほしいことがある。


なにがあろうと、この子がグエンの子であることには変わらない。

それに、お前は神聖な立場にいる存在なんだ。


分かっているだろう、ルカ。

これ以上は、人間に余計な感情を抱くな。』



と言われたのを覚えている。



だがすまない、アルバート。その約束は守れない。



シンが心から幸せに過ごせるために、できる限りのことをしたい。

幸せそうに笑っている姿をずっと見ていたい。


そのためなら、天界の者があるべき正しい立ち振る舞いを全て捨ててもいい。


今は本気でそう思ってしまう。



この感情が一体何なのか、私自身よく分かっていない。


もしもシンの隣に実体のレイがいたら、この感情の正体が分かるかもしれない。




一歩間違えれば、かつてのグエンのように堕天するかもしれない大きな賭けだ。


人間の魂は49日間かけて『六道』と呼ばれる6つの世界を巡る。

いわゆる『六道輪廻』というものである。


その間は7日ごとに閻魔大王の裁きを受け、49日目に天国か地獄か、最終的な行き先が決まる。



だがアレは例外だ。

レイは生前、魂を他の人間に移植するという、あってはならない禁忌を犯した。


魂が彷徨い始めてから7日目の時点で、アレは即地獄行きと判決されてしまうだろう。



「…。」



レイの魂を救い出すには、私が閻魔大王と直接会って交渉し、話をつけにいくしかない。


シンやアルバートにこのことが伝われば、全て台無しになる。

私は『急用ができた。しばらく天界に戻る』といった嘘の言い訳を伝え、地獄に来た。




辺りを見渡すと、今にも崩れそうな割れかけの赤い地面が一面に広がっている。

生前に悪事を働いたであろう者たちの魂は、そんな不安定な足場の上を歩き彷徨っている。


天界も地獄も、裁きを受けた後の魂は生前の姿を手に入れる。



ここでは、それは苦しみでしかない。



地面の下にはマグマがある。

足場が崩れて下に落ちてしまえば、一生悶え続けることになる。


だが足の形がある限り、ここにいる者たちの魂は歩き続けなければいけない。




私はレイのことをよくは思っていない。


だが、シンにとっては唯一の親友であり、好きな人でもある。

口にしていなかったが、話の節々に隠しきれないほどの好意を感じた。


シンにとって、アレがそのような存在であるなら


『レイを現世に引き戻してくれ』というシンの頼みに応えてやりたい。




私は自身の翼を使い、閻魔が暮らしている王宮の入り口まで飛んでいった。


当然門番に足止めされたが、私が神の代理だと伝えると渋々王宮内へ入れてくれた。


閻魔大王は地獄においての『神』だ。

つまりそれと同等の立場であれば、直接会って話をすることを許されている。



部屋の大きな扉をノックする。



「…何者だ。」



閻魔は部屋から一歩も出てこない。明らかに警戒されている。


「ルカだ。お前に大事な話があってここに来た。」


「…入れ。」



部屋の中に入ると、玉座に座った閻魔大王が見下したような目でこちらを見ている。



白く長い髪に、紅く血で染まったような瞳。


一部に金の装飾が施され、花柄の模様が入った赤い道服を着ており


美にこだわっているのか、目の周りに華やかな化粧をしている。







「…久しいな、エンマ。相変わらず、美しい容姿だ。」

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