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【第二十話】変えることのできない運命

『…レイ!!』




そう声を出そうとしたが、背後から黒い魂糸が俺の全身に絡みついてきた。


口は塞がり、身動きすらも取れないほどに全身を強く縛られる。




ああ、そういうことか。


俺は14年間、レイが死んだ事実からずっと目を背け続けていた。


魂を通じて、ようやくそれを実感した。


レイはもう、生きていない。

俺の中に残っていたレイの魂の力も消えかかっている。


ここから現実へ戻れば、レイが作り出した記憶も、ここで交わした会話も

月日が経つと共に全て忘れてしまうのだろうか。



いっそ、俺もそっちの世界に行ければよかった。

どう足掻いても、運命は何も変わってくれさえしない。



もしも、神が許してくれるのなら



⸺どうか



『俺とレイを…現世で巡り合わせてくれ。』






気が付くと、現実に戻っていた。


隣を見ると、ルカは感情が交錯したような顔をしながら俺の左手を強く握っていた。



「…よかった、戻ってこれたのか。」


どこか安堵した表情で俺の顔を見つめている。



「なあ、ルカ。

俺って、ただ過去に縋り付いてるだけだったのかな。」



レイとずっと一緒にいたいなんて、叶わない願いだと分かっていたのに


何もできなかった自分が愚かに思えてくる。



「…それはない。

魂の持つ力は、シンが思っているよりもずっと強力な存在だ。」


「っ、でも俺は、何もできなかった!!

ルカが神の代理なら、レイの魂を引き戻すことはできないのか!?」



無茶なことを頼んでいるのは分かってる。

でも、今はこうするしか考えられる方法がない。



「…お願いだ、ルカ。頼むから、レイを…」



泣きながらルカの胸元にしがみつき、頭をうずめる。



「…」



ルカは一言も答えることなく、俺の背中に優しく手を置いていた。







あれから1年の月日が経った。


アステルタ王国の国王としてやるべきことを、国のためにできることを果たすために

毎日朝から夜遅くまで執務をしている。



あの後、ルカは急用ができたと言い天界に戻ったきり、連絡がつかなくなってしまった。



レイと過ごした14年間の記憶も、魂を通じて交わした最後の会話も

月日が経つと共にどんどん薄れてきている。



俺は、『ルカが天界にいる間』という約束で

メイドであるアレーナを一時的に秘書に命じた。


副王が不在である今、国王の俺一人でアステルタの政治を行うのは厳しい。

いくらなんでも、仕事の量が多すぎる。


ルカがいたときですら、記入しなければいけない書類は毎日山のように積み重なっていた。



「シン様っ!」


扉の向こうからアレーナの元気な声と、扉を小さくノックする音が聞こえる。



俺は咄嗟に笑顔を作った。


1年前からずっと、心から笑えなくなってしまっている。


レイもルカもいないこの場所で、幸せな気持ちで過ごせるはずもなく



「ん、入っていいぞ。」


「はい!失礼いたします。」



「要件はなんだ?」


「えっとですね、シン様のお父様から一通の手紙が届いておりましたので

直接シン様にお渡しに来ました!」


「はぁ…またか…」



俺が20歳を過ぎたときから毎年何通も

「そろそろ婚約相手を見つけて、アステルタの妃に迎え入れる者を決めてほしい。」

という趣旨の内容の手紙が送られてくる。


親父の気持ちは分かるが、はっきり言って迷惑でしかない。


俺はこの年になってもなお、人を好きになったことが一度もない。



…一度も?



でもレイと最後に会話したとき、何かそういったことを伝えたような気がする。


気のせい、なのか?

ずっと頭にモヤがかかったような感覚で、気分が悪い。




ルカは今頃、天界で何をしているんだろうか。


気にかかることが多すぎて、いったん全部忘れたいという気持ちになってしまう。



「…シン様?」


アレーナは不思議そうな顔をしながら俺の様子を伺っている。


「すまない、考え事をしてた。

そうだな…各国の貴族と王族を招待して、舞踏会でも開くか。」




舞踏会というものの、いわゆる『お見合い』だ。


正直、開いたところで縁のある人と出会うこともないと思うが


嘘でも、せめて結婚願望があると行動を示すだけで、親父を安心させる言い訳にはなるだろう。



こういうときにルカがいれば、親父からの手紙を拒否できたんだが。






「本当に、ルカは今なにしてるんだよ…」

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