【第十八話】告白
レイは膝にうずめていた顔をゆっくりと上げる。
「あれ?」
何やら不思議そうな顔でこちらを見つめている。
「どうした?」
「髪の毛、伸びてたんだ…」
レイの手が俺の髪にそっと触れる。
くすぐったさと同時に、少し照れくさい気持ちになる。
「レイの想像する俺の髪型って、ショートなのか…」
「あっ、えっと。シン、14年前までずっと髪短かったから、つい...」
だからレイが作り出した記憶の中の俺は、髪が伸びることがなかったのか。
今、現実の見た目でこの空間に来れているということは
ここにいるレイは『レイの魂』そのもの。
やっと本当のレイに会えたんだ。
そう思うと、いろいろな感情が相まって胸がいっぱいになる。
「…シン?」
レイに会えたことが嬉しくてたまらない。
今、自分がどんな表情をしているのかも分からない。
「もしかして、泣いてる…?」
ハッとすると、レイは俺の前髪を上げ、顔色を窺っていた。
気が付いたときには、自身の目尻から数粒の涙がこぼれ落ちていた。
「ごめん、取り乱した。」
俺は服の袖で優しく目をこすった。
「ううん。僕も、会えて嬉しいのは同じだから。
でも、リスクを背負ってまでここに来て、僕と話したいことって…?」
「…ホワイトローズ郷が滅びる直前に、約束したよな。
『どこに行ったとしても、俺たちは二人で必ず生き延びる』って。」
俺はレイの目をじっと見つめる。
レイはどことなく申し訳なさそうな表情をしている。
「…別に、約束を破られたことは、今はあんまり気にしてない。
たとえ魂だけでも、レイは俺の中でずっと生き続けてくれてるから。」
「…ごめんなさい。あのときは、シンの心臓が止まりかけてて…
咄嗟に、そうするしかなかったんだ。」
「謝らなくていい。
助けてくれて、本当にありがとう。
レイが魂を俺の命に繋いでくれたおかげで、形は違っても、こうして一緒にいられてる。」
俺は深く頭を下げて礼をした。
「それで、もうひとつ話したいことがあるんだが。」
頭を上げて、再びレイの顔を見る。
「この14年間、ずっと記憶の中でレイを追いかけ続けてた。
あるとき、どうして俺はここまでレイを探そうと必死になってるんだろうって思ったんだ。
ただの友達なら、こんな気持ちにならない。
ただ、親友と捉えるのも違った。
男が男に対して強い感情を抱くのは異常だと
自分の気持ちにずっと葛藤したし、悩み続けた。
でも、記憶の中のレイと何度も会って、話して、気づいた。」
俺は胸に手を置いて、ゆっくりと深呼吸をする。
気持ちを伝える覚悟はもう出来てる。
「⸺俺は、お前のことが好きだ。」